ICUの栄養管理。心不全・心原性ショック

医療従事者向けの詳しい解説

からだの話と日常 / 心不全・集中治療

集中治療室(ICU)では、栄養は「体力をつけるために、できるだけ早く多く入れる」だけではありません。とくに重症心不全や心原性ショックでは、腸を使いたい一方で、腸管虚血を避けなければならないという難しさがあります。

大切なのは、カロリーの計算より先に循環動態を評価し、病期に合わせて投与経路と量を変えることです。本記事では、患者さん・ご家族にも全体像が伝わるように説明しながら、後半では医療者向けにエネルギー、蛋白質、昇圧薬、ECMO、腎機能障害、再栄養症候群まで詳しく整理します。

えぷろんクリニック / 兵庫県姫路市飾磨区 | 資料確認日:

01集中治療室(ICU)で、栄養が「治療」になる理由

重症病態では、炎症、カテコラミン、コルチゾールなどの影響で、体は強い異化状態になります。肝臓は糖を作り、脂肪と筋蛋白は分解されます。食事が入っていないから代謝が止まるのではなく、体内の蓄えを使って生命維持に必要なエネルギーを作り続けるのです。

そのため、栄養を入れれば筋分解を完全に止められるわけではありません。反対に、急性期から必要量をすべて外から入れようとすると、体内で作られているエネルギーに上乗せされ、過栄養になることがあります。過栄養は高血糖、高トリグリセリド血症、脂肪肝、二酸化炭素産生増加などにつながり得ます。ICU栄養では、不足を避けることと、入れ過ぎないことの両方が必要です。[2][3]

循環と酸素化まず蘇生・臓器灌流
少量から開始腸管の安全性を確認
段階的に増量回復期は筋力まで評価

日本版重症患者の栄養療法ガイドライン2024(JCCNG2024)は、栄養療法前の栄養評価を必要とし、経腸栄養が可能な重症患者では集中治療開始後48時間以内の開始を強く推奨しています。ただし、同じガイドラインは循環動態が不安定な患者には経腸栄養を行わないことを弱く推奨しています。つまり、早期開始と安全性評価はセットです。[1]

02心不全・心原性ショックで栄養管理が難しい理由

「低灌流」と「静脈うっ血」が腸で重なる

心原性ショックでは心拍出量が低下し、生命維持のために血流が心臓や脳へ優先されます。昇圧薬の作用も加わると、腸管を養う血流は低下しやすくなります。一方、右心不全や両心不全では、腸管の静脈側に血液が滞り、腸管壁の浮腫が生じます。入口の動脈血流が少なく、出口の静脈圧が高い状態が重なるため、消化・吸収機能が落ち、腸管虚血のリスクが高まります。[4]

むくんでいても、低栄養は否定できません

急性心不全では、水分がたまって体重が増え、血液が希釈されます。そのため、入院時体重やBMIだけで栄養状態を評価すると、低栄養や筋肉量低下を見逃します。実際、HFpEFの外来患者を対象にした研究でも、肥満が多い集団で約42%が、研究で低栄養と定義したMNA-SF 11点以下に該当し、BMIとは相関しませんでした。この区分には、通常のMNA-SF分類で「低栄養リスク」とされる8〜11点の方も含まれます。[12]

呼吸困難・腹部膨満・薬剤も摂取を妨げます

  • 呼吸仕事量の増加や非侵襲的陽圧換気で、食べること自体が難しい
  • 肝うっ血・腸管浮腫・腹水で、食欲低下や早期満腹感が起こる
  • 鎮静薬、オピオイド、カテコラミンで胃排出が遅れる
  • 利尿薬でカリウム・マグネシウムが変動し、不整脈リスクにも影響する
  • 人工呼吸器離脱後も、嚥下障害やせん妄で経口摂取が進まない

03ICU入室時の栄養評価|体重とアルブミンだけでは不十分

栄養管理は、栄養剤を選ぶ前の評価から始まります。心不全では体液変動が大きいため、現在の体重に加えて、発症前の体重、意図しない体重減少、直近の食事量、筋肉量、身体機能、炎症と臓器障害を組み合わせます。ICUに48時間を超えて滞在する患者は、ESPENでは低栄養リスクがあると考えるよう示されています。[2]

表は左右にスクロールできます。

心不全・集中治療で確認する主な項目
領域確認すること心不全での注意
入院前の情報1〜6か月の体重減少、食事量、ADL、フレイル、持病「元気なときの乾燥体重」に近い情報が重要です。
身体所見側頭筋・鎖骨周囲・大腿筋、皮下脂肪、握力、浮腫全身浮腫が筋肉・脂肪の減少を隠します。
循環・消化管昇圧薬量、尿量、末梢循環、乳酸、腹部膨満、便・胃内容右心系うっ血と低心拍出の両方を評価します。
検査P・K・Mg、血糖、腎肝機能、炎症、トリグリセリド利尿薬、腎機能障害、再栄養で大きく変動します。
画像・機能CTや超音波による筋肉量、可能なら握力・離床状況体重よりも筋肉の経時変化が役立つ場合があります。

アルブミンやプレアルブミンは炎症、希釈、肝合成、腎・消化管からの喪失などの影響を受けます。低値は重症度や予後と関連しますが、単独で「栄養が足りない」と診断したり、短期間の栄養効果判定に使ったりはできません。

04経口・経腸・経静脈栄養をどう選ぶか

食べられるなら、まず口から

意識が清明で、嚥下が安全で、呼吸状態が許せば経口摂取を優先します。ただし、「食事が出ている」と「必要量を摂れている」は別です。摂取率、食事に要する時間、むせ、疲労、呼吸数の増加を確認し、必要なら管理栄養士・言語聴覚士による評価や経口栄養補助食品を組み合わせます。

口から難しければ、使える腸を使う

経口摂取ができず、循環が安定して腸管が使用可能なら、経鼻胃管などによる経腸栄養が第一候補です。JCCNG2024は経静脈栄養より経腸栄養を弱く推奨し、48時間以内の開始を強く推奨しています。胃内への持続投与が基本で、誤嚥リスクや胃排出障害が強い場合には幽門後投与を検討します。[1][2]

静脈栄養は「悪い栄養」ではありません

腸管虚血、腸閉塞、制御されないショックなどで経腸栄養が使えない場合、経静脈栄養は重要な選択肢です。ただし、初日から推定必要量の100%を静脈で入れると過栄養になり得ます。経腸栄養が少し足りないだけの平均的な患者に、最初の1週間から補助的経静脈栄養を一律に加える利益は確立していません。一方、もともと高度低栄養で、長期間腸が使えない患者では、早期から少量の経静脈栄養を検討します。[2][3]

経路よりも「過栄養を避けること」が重要な場合があります

ASPEN 2022では、同程度のエネルギーが投与された試験では、早期の経腸栄養と経静脈栄養で主要転帰に明確な差がありませんでした。感染リスクは、カテーテル管理・血糖管理・投与量などにも左右されます。「腸なら必ず安全、静脈なら必ず危険」という単純な二分法ではありません。[3]

05心原性ショックでは、いつ経腸栄養を始めるのか

ここが心不全の栄養管理で最も重要な部分です。開始条件は「昇圧薬を使っているか、いないか」だけでは決まりません。昇圧薬・強心薬の量と方向性、平均血圧、乳酸、尿量、末梢循環、代謝性アシドーシス、肝腎機能、腹部所見を合わせ、蘇生が進み、循環と組織灌流が改善または安定しているかを見ます。

PHASE 1

未制御ショック

昇圧薬が増量中、乳酸上昇、末梢冷感や乏尿が進行、強いアシドーシスなど。経腸栄養は原則保留し、蘇生と原因治療を優先します。

PHASE 2

安定化し始めた時期

必要な支持療法下で循環指標が安定し、昇圧薬が一定または減量方向。少量・持続の胃内投与から開始し、腸管不耐を監視します。

PHASE 3

回復・同化期

臓器灌流が改善し、離床が進む時期。エネルギー・蛋白質を段階的に増やし、嚥下、筋力、退院後の食事までつなげます。

ESPEN 2023は、ショックが制御され、輸液・昇圧薬・強心薬を用いて循環目標が達成された段階なら、腸管虚血の徴候に注意しながら低用量経腸栄養を開始できるとしています。一方、JCCNG2024は循環動態不安定例で経腸栄養を行わないことを弱く推奨しています。両者に共通するのは、未制御ショックでフル投与を開始しないことです。[1][2]

医療者向け:昇圧薬使用中の経腸栄養をどう考えるか

昇圧薬投与は、それだけで絶対禁忌ではありません。重要なのは、薬剤量が増えている局面か、一定・減量方向か、灌流指標がどう変化しているかです。ASPENの実践資料にはMAPやvasopressor dose equivalentの目安もありますが、これは万能な開始基準ではありません。心原性ショックでは、右心不全・静脈うっ血・補助循環・鎮静・利尿の影響まで含めて判断します。[10]

NUTRIREA-2では、人工呼吸管理かつ昇圧薬投与中のショック患者に早期等カロリー経腸栄養を行うと、早期経静脈栄養と比べ死亡率は改善せず、嘔吐・下痢・腸管虚血などの消化器合併症が増えました。NUTRIREA-3では、同様に人工呼吸器と昇圧薬を要する患者で、最初の7日間を6 kcal/kg/日・蛋白0.2〜0.4 g/kg/日とした低投与群は、25 kcal/kg/日・蛋白1.0〜1.3 g/kg/日の標準群より死亡率は変わらず、ICU退室準備までが早く、腸管虚血などが少ない結果でした。ただし、低カロリーと低蛋白を同時に変更した試験であり、すべてのICU患者へ同じ数値を適用する根拠ではありません。[5][6]

経腸栄養を止めて、腸管虚血を再評価するサイン

新たな腹部膨満や圧痛、説明できない代謝性アシドーシス・乳酸上昇、血便、胃内容や嘔吐の急増、画像上の腸管異常、循環不安定化があれば、投与を中止または減量し、腸管虚血を含めて再評価します。乳酸値だけで安全・危険を決めることはできません。腹部所見、循環、画像、薬剤量の変化を組み合わせます。[1][10]

06カロリーと蛋白質|「何kcal・何g」が正解なのか

最も望ましいのは間接熱量測定です

重症患者の消費エネルギーは、発熱、鎮静、人工呼吸、敗血症、体温管理、離床などで日々変わります。心不全では体液貯留によって体重そのものも不正確です。可能であれば、呼気中の酸素消費量と二酸化炭素産生量から消費エネルギーを求める間接熱量測定を用います。JCCNG2024は間接熱量測定を弱く推奨しています。[1]

実施できない場合、20〜25 kcal/kg/日などの簡便式が使われますが、これは「初日から必ず全量を投与する処方」ではなく、目標を考えるための概算です。ESPEN 2023は、推算式を使う場合には最初の1週間は推定必要量の70%未満、実測した場合も急性期早期は70%を超えない低カロリー投与を勧め、3日目以降に実測消費量の80〜100%へ段階的に増やす考え方を示しています。ASPEN 2022は、最初の7〜10日間について12〜25 kcal/kg/日の範囲を弱く提案しています。[2][3]

日本と欧州で、急性期エネルギーの推奨は完全には一致しません

JCCNG2024は、治療初期に消費エネルギーより意図的に少なくしないことを弱く推奨しています。一方、ESPENは急性期の低カロリー投与を推奨します。この違いは、対象試験、消費量の測定法、「低投与」の定義、重視した転帰が異なるためです。したがって実臨床では、ガイドライン名だけで一律の割合を決めず、ショックの程度、実測の有無、低栄養リスク、再栄養リスク、非栄養性カロリーを含めて個別化します。[1][2]

蛋白質は重要ですが、多ければ多いほどよいわけではありません

蛋白質は筋肉、呼吸筋、免疫、創傷治癒に必要です。ESPENは1.3 g/kg/日を段階的に投与できるとし、JCCNG2024は1.2 g/kg/日を超える投与を弱く推奨しています。ただしエビデンスの確実性は非常に低く、その後の大規模試験も注意を促しています。[1][2]

  • EFFORT Protein試験:高栄養リスク患者で2.2 g/kg/日以上を目標にしても、1.2 g/kg/日以下と比べ退院までの期間は改善せず、AKI患者では高蛋白が有害となる可能性が示されました。[7]
  • TARGET Protein試験:3,397人を対象とした2025年の試験で、蛋白強化経腸栄養は通常蛋白製剤と比べ、90日までの生存院外日数を改善しませんでした。[8]

したがって、急性ショック期に高蛋白を一気に入れるのではなく、腎機能・尿素窒素・透析の有無・窒素喪失・離床状況を見ながら段階的に増やします。回復期には、栄養だけでなく早期離床やリハビリテーションを組み合わせることが重要です。

忘れやすい「栄養剤以外のカロリー」

プロポフォールなど脂質を含む鎮静薬、ブドウ糖輸液、クエン酸を使う持続的腎代替療法などからもエネルギーが入ります。これらを数えずに栄養剤を満量投与すると過栄養になるため、総投与量で評価します。

07心不全では、水分・塩分・電解質を栄養と一体で管理する

「栄養の水分」も水分出納に含めます

経腸栄養剤そのもの、チューブのフラッシュ、薬剤希釈液、維持輸液、抗菌薬、経静脈栄養は、すべて水分です。心不全で水分制限が必要な場合には、濃度の高い栄養剤が役立つことがありますが、濃くすれば必ずよいわけではありません。浸透圧、下痢、腎機能、必要な自由水、蛋白量まで確認します。

塩分制限は病期に応じて個別化します

外来の慢性心不全では減塩が重要ですが、ICUではショック、腎機能、低ナトリウム血症、利尿、輸液内容が刻々と変わります。「心不全だから全員に極端な無塩食」とするのではなく、うっ血と循環血漿量、血清ナトリウム、尿量、薬剤から入るナトリウムを含めて調整します。

リン・カリウム・マグネシウムは、栄養開始前から確認します

利尿薬、腎機能障害、酸塩基平衡、インスリン投与、再栄養によって電解質は大きく動きます。低カリウム血症・低マグネシウム血症は不整脈リスクを高め、低リン血症は呼吸筋・心筋・赤血球機能に影響します。栄養開始後だけでなく、開始前の値と補正可能性を確認します。

08腸管不耐と再栄養症候群をどう見つけるか

経腸栄養の「不耐」は、胃残量だけで決めません

腹部膨満、嘔吐、排便、腹痛・圧痛、胃内容、画像、乳酸、昇圧薬量の変化を組み合わせます。胃残量は測定法によるばらつきが大きく、単独の数値だけで中止すると、必要な栄養が入らなくなることがあります。JCCNG2024も複数の所見を組み合わせた評価を示しています。[1]

再栄養症候群は「やせた人だけ」の問題ではありません

長期間ほとんど食べていない患者へ糖質を含む栄養を急に入れると、インスリン上昇に伴ってリン・カリウム・マグネシウムが細胞内へ移動し、体液も貯留します。重症心不全では、低リン血症、不整脈、呼吸不全、心不全増悪として表面化する可能性があります。

リスクが高いのは、著しい体重減少、低BMI、長期の摂取不足、アルコール多飲、悪性腫瘍、吸収不良、栄養開始前のP・K・Mg低値などです。開始前にチアミンと電解質を評価し、必要に応じて補充し、少量から増量します。ESPENは最初の1週間、P・K・Mgを少なくとも毎日確認し、再栄養性低リン血症が生じた場合はより頻回に測定し、48時間のエネルギー制限後に段階的に増やすことを推奨しています。[2][9]

表は左右にスクロールできます。

毎日の再評価で見るポイント
領域見る項目見落としやすい点
循環血圧、昇圧薬量、尿量、乳酸、末梢循環単一のMAPや乳酸だけで経腸栄養の可否を決めない。
消化管腹部所見、嘔吐、便、胃内容、画像鎮静下では腹痛を訴えられないため、変化を重視。
代謝血糖、P・K・Mg、尿素窒素、TG、肝機能再栄養と過栄養の両方を疑う。
投与実績処方量ではなく実投与量、蛋白量、非栄養性カロリー検査・処置による中断を合計すると不足が大きい。
機能離床、握力、嚥下、せん妄、呼吸筋体重が戻っても筋力が戻ったとは限らない。

09ECMO・補助循環・腎機能障害など、特殊な状況

VA-ECMO・Impella・IABP

補助循環装置が入っていること自体は、経腸栄養の絶対禁忌ではありません。JCCNG2024とESPENは、ECMO中でも病態・病期・消化管の状態を考慮し、可能なら早期経腸栄養を行う考え方を示しています。[1][2]

ただしVA-ECMOを要する心原性ショックでは、装置導入後も自己心拍出、脈圧、右心不全、昇圧薬、末梢・腸管灌流が不十分なことがあります。単施設後ろ向き研究では、VA-ECMO患者の9%に急性腸間膜虚血が確認され、発症例は全例死亡でした。一方、早期経腸栄養との負の関連も報告されましたが、観察研究であり、因果関係や安全な開始条件を証明するものではありません。[11]

ImpellaやIABPでも、デバイス名だけで判断せず、循環が安定化しているかを見ます。大腿動脈アクセスでは、体位・処置・搬送による投与中断も多くなるため、実投与量を記録します。

急性腎障害・持続的腎代替療法(CRRT)

心不全では心腎連関によりAKIを合併しやすく、蛋白質の設定は難しくなります。腎機能が悪いからといって栄養を一律に絞ると筋分解が進みますが、急性期の極端な高蛋白も安全とは限りません。CRRTではアミノ酸・水溶性ビタミン・微量元素の喪失が増える一方、クエン酸抗凝固からエネルギーが入る場合があります。透析条件、尿量、窒素バランス、尿素窒素、病期を踏まえて管理栄養士・薬剤師・腎臓チームと調整します。[7][13]

肥満・サルコペニア肥満

BMIが高くても筋肉量が少ない患者はいます。実体重をそのまま掛けてエネルギー・蛋白質を計算すると過大投与になるため、間接熱量測定、理想体重・調整体重、筋肉量を使って個別化します。「体格が大きいから低栄養ではない」とは言えません。

人工呼吸器離脱後

抜管できても、嚥下障害、声門機能低下、呼吸と嚥下の協調不良が残ることがあります。むせがない誤嚥もあるため、必要に応じて嚥下評価を行います。経管栄養を早く外すことより、安全に必要量を摂取できるかを優先します。

10回復期・退院後|体重ではなく「食べる力と動ける力」まで見る

急性期を越えると、栄養管理の目的は臓器支持から、失った筋肉と機能の回復へ移ります。経腸・経静脈栄養から経口摂取へ切り替えるときは、食事摂取率だけでなく、嚥下、食欲、味覚、呼吸困難、疲労、便通、食事動作を確認します。

  • 毎食の摂取量と蛋白源を確認し、必要なら少量高栄養の補助食品を使う
  • 理学療法・作業療法と栄養のタイミングを連携する
  • 利尿後の乾燥体重を基準に、浮腫が取れたあとの本当の体重減少を再評価する
  • 退院時に、減塩・水分量・必要エネルギーを一枚の方針にまとめる
  • 退院後は体重、食欲、息切れ、むくみ、血圧を継続して確認する

心不全では「体重が減った」が、利尿で余分な水分が取れた良い変化なのか、食べられず筋肉が減った悪い変化なのかを区別する必要があります。入院中の最低体重だけでなく、食事量と身体機能を合わせて外来へ引き継ぎます。

家族が医療者へ伝えると役立つ情報

入院前の普段の体重、最近の体重減少、1日の食事量、義歯・嚥下の問題、好き嫌い、サプリメント、飲酒量、普段の歩行や生活動作を伝えてください。浮腫で入院時体重が増えている場合、発症前の情報が栄養評価に役立ちます。

11集中治療室・心不全の栄養管理についてよくある質問

Q.ICUでは、早く栄養を始めるほどよいのでしょうか?

腸管が使え、循環が安定していれば48時間以内の経腸栄養が基本です。ただし、未制御のショックでは腸管虚血の危険があるため、まず蘇生を優先します。「早いほどよい」ではなく、「安全を確認して早期に少量から」が正確です。

Q.昇圧薬を使っていると、経腸栄養はできませんか?

昇圧薬使用だけで一律に禁止とはなりません。薬剤が増量中か減量中か、乳酸・尿量・末梢循環・腹部所見が安定しているかを総合して判断します。未制御ショックでは見合わせ、安定化後に少量持続投与を検討します。

Q.心不全なら、水分と塩分はできるだけ少ない方がよいですか?

過剰な水分・塩分はうっ血を悪化させますが、ショックや低ナトリウム血症、腎機能障害がある急性期に極端な制限を一律に行うことは適切ではありません。病期、尿量、輸液、薬剤、栄養剤を含めて個別に決めます。

Q.アルブミンが低ければ、蛋白質を増やせばよいですか?

そうとは限りません。アルブミンは炎症、希釈、肝機能、腎・消化管からの喪失にも影響されます。低値だけを見て高蛋白投与を行わず、腎機能、病期、筋肉量、実際の摂取量を評価します。

Q.ECMOやImpellaが入っていても、栄養は始められますか?

装置があること自体は絶対禁忌ではありません。ただし、補助循環中でも腸管灌流が十分とは限りません。循環が安定し、腸管虚血の徴候がないことを確認しながら少量から開始します。

Q.ICU退室後も栄養管理は必要ですか?

必要です。急性期を越えた後も筋肉減少、嚥下障害、食欲低下が続きます。回復期は蛋白質とエネルギーの確保、リハビリ、心不全の減塩・水分管理を両立させます。

12姫路市で心不全の退院後管理・栄養の相談を希望される方へ

本記事で扱ったICU栄養療法は、集中治療を行う病院で、医師・看護師・管理栄養士・薬剤師・リハビリスタッフなどが連携して実施する治療です。えぷろんクリニックに集中治療室はなく、心原性ショックや重症呼吸不全の治療を外来で行うことはできません。

一方、退院後の心不全診療では、再うっ血を防ぐ減塩・水分管理だけでなく、食欲低下、体重減少、フレイル、腎機能、電解質、糖尿病などを継続して確認することが大切です。当院では、循環器専門医が診察し、必要に応じて採血、心電図、心エコーなどを行い、入院された病院と連携して治療を続けます。

次の症状は、通常の外来予約を待たず救急要請を

突然の強い息苦しさ、安静でも続く呼吸困難、冷汗を伴う胸痛、意識がぼんやりする・反応が悪い、唇が紫色になるなどがある場合は、119番へ連絡してください。

えぷろんクリニック

姫路市で心不全の退院後管理や食欲低下・体重減少にお悩みの方、生活習慣病や心臓の病気が心配な方は、えぷろんクリニックまでご相談ください。症状や検査結果を確認しながら、必要に応じて適切な検査や専門医療機関との連携を行います。

受診時は、退院時の診療情報提供書・検査結果・栄養指導書・お薬手帳・体重や血圧の記録をお持ちください。

〒672-8048 兵庫県姫路市飾磨区三宅1丁目192 田中興産ビル1階
内科・循環器内科・呼吸器内科 | 電話 079-226-3003

本記事は成人の集中治療・心不全に関する一般的な医療情報であり、個別患者の栄養処方、診断、治療方針を決めるものではありません。栄養の開始時期・投与量は、循環動態、体格、腎肝機能、嚥下・消化管機能、治療内容によって異なります。入院中は担当医療チームの判断に従ってください。

参考文献・資料

  1. 日本集中治療医学会.日本版 重症患者の栄養療法ガイドライン2024(JCCNG2024).日本集中治療医学会雑誌 2025;32(Suppl 3).早期経腸栄養、循環動態不安定例、蛋白質、間接熱量測定、腸管不耐、再栄養、ECMO。
  2. Singer P, et al. ESPEN practical and partially revised guideline: Clinical nutrition in the intensive care unit. Clin Nutr. 2023;42:1671-1689.栄養評価、経路、未制御ショック、エネルギー・蛋白質、再栄養。
  3. Compher C, et al. Guidelines for the provision of nutrition support therapy in the adult critically ill patient. JPEN. 2022;46:12-41.初期エネルギー、蛋白質、ENとPN、補助的PN。
  4. European Society of Cardiology. Nutritional support during ICU stay – a stepwise approach towards better outcomes. Acute Cardiovascular Care Highlights, 2024.急性心不全、心原性ショック、腸管灌流とうっ血。
  5. Reignier J, et al. Enteral versus parenteral early nutrition in ventilated adults with shock: NUTRIREA-2. Lancet. 2018;391:133-143.ショック患者の早期等カロリーENとPN。
  6. Reignier J, et al. Low versus standard calorie and protein feeding in ventilated adults with shock: NUTRIREA-3. Lancet Respir Med. 2023;11:602-612.ショック急性期の低カロリー・低蛋白戦略。
  7. Heyland DK, et al. The effect of higher protein dosing in critically ill patients with high nutritional risk: EFFORT Protein. Lancet. 2023;401:568-576.高蛋白投与とAKIサブグループ。
  8. Summers MJ, et al. Augmented Enteral Protein During Critical Illness: The TARGET Protein Randomized Clinical Trial. JAMA. 2025;334:319-328.蛋白強化経腸栄養と90日転帰。
  9. da Silva JSV, et al. ASPEN Consensus Recommendations for Refeeding Syndrome. Nutr Clin Pract. 2020;35:178-195.再栄養症候群のリスク評価、予防、診断。
  10. ASPEN. Indications for Enteral Nutrition in Patients with Critical Illness.昇圧薬使用中・ECMO中の経腸栄養とモニタリング。
  11. Renaudier M, et al. Acute mesenteric ischaemia in refractory shock on veno-arterial extracorporeal membrane oxygenation. Eur Heart J Acute Cardiovasc Care. 2021;10:62-70.VA-ECMO中の腸間膜虚血。単施設後ろ向き研究。
  12. Zainul O, et al. Malnutrition in heart failure with preserved ejection fraction. J Am Geriatr Soc. 2023;71:3367-3375.HFpEFにおける低栄養とBMI。
  13. Sabatino A, et al. ESPEN practical guideline on clinical nutrition in hospitalized patients with acute or chronic kidney disease. Clin Nutr. 2024.AKI・CKD・腎代替療法中の栄養。

本文の数値や推奨は、対象集団・病期・測定法によって意味が異なります。複数ガイドラインで見解が異なる点は、その違いが分かるよう併記しました。資料確認日:2026年10月14日。