血液検査の読み方
水分のバランス
腎臓・ホルモン・薬
見かけの異常値
検査結果に並ぶ「Na」「K」「Cl」。「塩分の取りすぎ?」「ミネラル不足?」と思うかもしれません。しかし、電解質の異常は食事だけでなく、水分、腎臓、ホルモン、薬の影響などで起こります。[1]
電解質とは?心臓や神経を動かすために必要な成分
電解質は、水に溶けると電気を帯びた粒子「イオン」になる物質です。体液の水分バランスや酸性・アルカリ性の調節、神経の伝達、筋肉の収縮などを支えています。
血液検査ではナトリウム(Na)、カリウム(K)、クロール(Cl)などを調べ、必要に応じてカルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、無機リン(P)も確認します。すべての採血で全項目を測るわけではありません。[1]
ナトリウム異常の原因は「塩分量」だけではありません
ナトリウムの値は、体内の塩分の総量ではなく、水分との釣り合いを反映する「濃度」です。
高くなる代表的な原因は、飲水不足などで水分が相対的に足りなくなることです。一方、低くなる原因には、嘔吐・下痢や一部の利尿薬による喪失、水分がたまる心不全、副腎ホルモンの不足などがあります。
心不全では、むくんで体に水分が多くても、血液中のナトリウムは低いことがあります。「低いから塩を増やす」とは限らず、原因に合わせた対応が必要です。[2]
カリウム異常は腎臓・薬・ホルモンが関係します
カリウムの大部分は細胞の中にあり、血液中には一部だけが存在します。余分な分は主に腎臓から尿へ排泄されます。[3]
高くなる原因、低くなる原因
高カリウムの代表例は、腎機能低下で排泄できない場合、一部の高血圧・心不全治療薬の影響、細胞が壊れて中のカリウムが出てくる場合です。
低カリウムは、下痢・嘔吐、一部の利尿薬などで起こります。カリウムは高すぎても低すぎても不整脈につながるため、食事だけで解決しようとせず、原因を確認します。[3]
また、体外に失わなくても、インスリンなどの作用で血液中から細胞内へ移ると値は下がります。血液中の値と、体全体にある量は同じではないのです。[4]
高血圧と低カリウムの組み合わせにも注意
高血圧と低カリウムがある場合は、原発性アルドステロン症も検討します。ホルモンの過剰により、血圧が上がり、尿へカリウムを捨てやすくなる病気です。ただし、この病気でもカリウムが正常なことがあります。[5]
クロール・カルシウム・マグネシウム・リンの異常
ほかの項目にも、それぞれ異常になる理由があります。以下は代表例であり、この表だけで病気を判断することはできません。
| 項目 | 高くなる代表的な原因 | 低くなる代表的な原因 |
|---|---|---|
| クロール(Cl) | 脱水、体内が酸性に傾く一部の病態 | 嘔吐による胃酸の喪失など、体内がアルカリ性に傾く病態。[6] |
| カルシウム(Ca) | 副甲状腺ホルモンの過剰、一部のがん | ビタミンD不足、副甲状腺の働きの低下など。[7] |
| マグネシウム(Mg) | 腎機能低下。マグネシウムを含む便秘薬などの影響にも注意 | 長引く下痢、栄養不足、一部の胃酸を抑える薬など。[8] |
| 無機リン(P) | 進行した腎機能低下で、尿に排泄しにくくなる場合など | 栄養不足、ビタミンD不足、副甲状腺ホルモンの過剰など。[9] |
カルシウムは、血液中のたんぱく質「アルブミン」に結合した分も測定されます。アルブミンが少ないと、実際に働くカルシウムが不足していなくても、総カルシウム値が低く出ることがあります。[7]
採血の影響で「見かけの異常値」が出ることも
採血した血液の赤血球が壊れる「溶血」が起こると、細胞内のカリウムが漏れ出し、実際より高く測定されることがあります。
必要に応じて再採血しますが、「採血のせいだろう」と自己判断するのは危険です。医師が数値、症状、腎機能、必要時の心電図などから判断します。[4]
電解質の歴史:カエルの心臓から血液検査へ
1883年:水道水が教えたカルシウムの役割
生理学者シドニー・リンガーは、カエルの心臓実験で、食塩水が蒸留水ではなく水道水で作られていたことに気づきました。蒸留水に変えると、同じ結果が得られませんでした。これは、1883年の本人の論文に記されています。[10]
水道水に含まれる微量のカルシウムなどが、心臓の収縮を保つうえで重要だったのです。この研究は、現在の輸液につながるリンゲル液の基礎となりました。[11]
イオンの理解と測定技術の発展
1884年、アレニウスは、電解質が水溶液中で電荷をもつ粒子に分かれるという考え方を学位論文で示しました。[12]
1957年にはスコウが、細胞のナトリウムとカリウムの分布を保つ「ナトリウム・カリウムポンプ」の研究につながる酵素を発見しました。[13]
現在、血液中のNa・K・Clは主にイオン選択電極法で測定されています。イオンに反応する電極を利用する検査で、こうした生理学と測定技術の積み重ねが、日常の血液検査につながっています。[14]
電解質異常で受診をすすめる症状
次のような場合は、早めに医療機関へご相談ください。
- 動悸、筋力低下、繰り返すこむら返りがある。
- 嘔吐や下痢が続き、水分を取れない。
- 電解質の異常を指摘され、再検査を勧められた。[1]
意識がおかしい、けいれん、失神、強い胸痛・呼吸困難がある場合は119番です。症状がなくても、検査をした医療機関から至急受診するよう言われた場合は、指示に従ってください。[2]
姫路市で血液検査の異常を相談したい方へ
姫路市飾磨区のえぷろんクリニックでは、診察や血圧管理、採血、必要に応じた心電図検査を行い、生活習慣病や心臓の病気を診療しています。[15]
受診時は、検査結果とお薬手帳、使用中の市販薬・サプリメントの情報をお持ちください。
姫路市で電解質の異常にお悩みの方、生活習慣病や心臓の病気が心配な方は、えぷろんクリニックまでお気軽にご相談ください。症状や検査結果を確認しながら、必要に応じて適切な検査や専門医療機関との連携を行います。
電解質についてのよくある質問
Q1. ナトリウムが低いときは、塩分を増やせばよいですか?
必ずしもそうではありません。水分が相対的に多くなり、濃度が下がっている場合もあります。心不全などでは対応を誤ると状態に影響するため、自己判断で塩分や飲水量を変えず、原因を確認してください。[2]
Q2. 電解質の異常があっても、症状がなければ大丈夫ですか?
症状だけでは判断できません。特に高カリウムでは、重い異常でも心電図に典型的な変化が出ない場合があります。再検査や受診の時期は、数値と体調、腎機能などを踏まえて判断します。[4]
Q3. カルシウムが低いと、骨粗しょう症ということですか?
血液中のカルシウム値だけで、骨粗しょう症は診断できません。アルブミンの低下などでも低く出るため、必要に応じて関連する検査を行います。骨の状態を調べる検査と、血液のカルシウム検査は別のものです。[7]
Q4. 電解質異常はスポーツ飲料やサプリメントで治せますか?
一律には治せません。原因によっては、水分や電解質を補うことが適切でない場合もあります。腎機能が低下している方では、カリウムやマグネシウムの摂取に注意が必要です。処方薬も自己中断せず、主治医に相談してください。[3]
Q5. 姫路市で、血液検査の電解質異常はどこに相談できますか?
まずは検査を受けた医療機関や、かかりつけの内科へご相談ください。えぷろんクリニックでも、診察や採血、必要に応じた心電図検査に対応しています。以前の検査結果と薬の情報があると、変化や原因を確認する助けになります。[15]
参考資料
資料確認日:
- MedlinePlus:電解質パネル(Electrolyte Panel)
- MedlinePlus:ナトリウムの血液検査(Sodium Blood Test)
- MedlinePlus:カリウムの血液検査(Potassium Blood Test)
- UK Kidney Association:成人の高カリウム血症診療ガイドライン(2023年10月)
- Endocrine Society:原発性アルドステロン症診療ガイドライン(2025年)
- MedlinePlus:クロールの血液検査(Chloride Blood Test)
- MedlinePlus:カルシウムの血液検査(Calcium Blood Test)
- MedlinePlus:マグネシウムの血液検査(Magnesium Blood Test)。PMDA:酸化マグネシウム製剤と高マグネシウム血症(2015年10月、PDF)。厚生労働省eJIM:マグネシウムと医薬品の影響。
- MedlinePlus:無機リンの血液検査(Phosphate in Blood)
- Ringer S. A further Contribution regarding the influence of the different Constituents of the Blood on the Contraction of the Heart. J Physiol. 1883;4:29–42(原論文1ページ目)
- The Physiological Society:シドニー・リンガーの研究とリンゲル液の歴史(2022年)
- Stockholm University:アレニウスと電解質の解離理論
- Skou JC. The Identification of the Sodium–Potassium Pump(ノーベル賞講演、1998年掲載)。Skou JC. The influence of some cations on an adenosine triphosphatase from peripheral nerves(1957年原論文、PubMed)。
- 医学検査:考案:イオン選択電極法によりブロム存在血清におけるクロールおよびブロム概測値を得る方法(2024年)。CDC NHANES:Na・K・Clをイオン選択電極法で測定する検査手順(PDF)。
- えぷろんクリニック:診療案内