在宅療養を支える制度 | 訪問看護
訪問看護の医療保険と介護保険の違い|適用条件・費用・例外を詳しく解説
「訪問看護は医療行為なのに、なぜ介護保険を使うのでしょうか」「介護保険の限度額が足りなくなったら、医療保険に変更できますか」「心不全が重症になった場合も、末期がんと同じ扱いになりますか」
訪問看護の保険制度を理解するには、看護の内容と、費用を給付する制度を分けて考えることが大切です。医療保険でも介護保険でも、訪問看護は主治医の指示に基づく看護です。点滴や創傷の処置があるという理由だけで、医療保険に決まるわけではありません。
基本は、要支援・要介護認定がある方の訪問看護は介護保険を優先し、国が定める疾病・状態や特別な指示に該当する場合は医療保険で給付するという仕組みです。15
この記事では、主に自宅などで訪問看護ステーションを利用する場合を説明します。年齢・認定・疾病の確認から、指示書、費用、2026年の制度改定まで順に整理します。病院・診療所からの訪問看護や施設入所中の利用には、別の算定規定もあります。
最初に押さえる5つのポイント
- どちらの保険を使うかは、本人や事業所が費用の都合で自由に選べるものではありません。
- 介護保険の訪問看護でも、医師の指示に基づく医療的なケアを行えます。
- 「16特定疾病」「別表第7」「別表第8」は、目的の異なる分類です。
- 在宅酸素・カテーテル・深い褥瘡などがあるだけで、医療保険へ切り替わるわけではありません。
- 医療保険の訪問看護と、介護保険の訪問介護・福祉用具などを組み合わせることは可能です。
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1.医療保険と介護保険の訪問看護を比較
| 比較する項目 | 医療保険の訪問看護 | 介護保険の訪問看護 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 医学的な必要性があり、医療保険の給付要件を満たす方。小児、介護認定のない方、医療保険を優先する例外に該当する方など | 要支援・要介護認定があり、医療保険を優先する例外に該当しない方 |
| 年齢 | 小児から高齢者まで対象になり得る | 65歳以上が基本。40~64歳は16特定疾病に起因する認定が必要 |
| 主治医の指示 | 必要 | 必要 |
| 計画 | 訪問看護指示書と訪問看護計画書に基づく | 主治医の指示、ケアプラン、訪問看護計画書に基づく |
| 訪問頻度 | 一般の基本療養費は原則週3日まで。疾病・状態・指示等による例外あり | 医療保険のような一律の週3日制限はなく、必要性・ケアプラン・算定要件等により調整 |
| 費用の組み立て | 基本療養費、管理療養費、各種加算等。対象を限定した包括方式もある | 訪問時間等に応じた単位数、地域単価、加算・減算等 |
| 自己負担 | 年齢・所得等に応じ、原則1~3割。就学前は原則2割。公費助成等で異なる場合あり | 原則1割。65歳以上で一定以上の所得がある方は2割または3割 |
| 介護の支給限度額 | 訪問看護の医療保険給付分は介護保険の限度額に算入しない | 原則として他の対象居宅サービスと合算。一部の加算等は限度額管理の対象外 |
保険区分は、看護の専門性や質を上下に分けるものではありません。また、医療保険の訪問看護でも、療養生活の支援や家族への説明は大切な役割です。17912
2.訪問看護・訪問介護・訪問診療は、役割が異なります
名称が似ていますが、誰が何を行うかを整理すると、保険の話も理解しやすくなります。
| サービス | 主な担い手 | 主な役割 |
|---|---|---|
| 訪問看護 | 看護師・保健師等。計画に基づき理学療法士・作業療法士・言語聴覚士等も関与 | 病状の観察、服薬支援、療養上の世話、医師の指示に基づく診療の補助、リハビリテーション等 |
| 訪問介護 | 訪問介護員・介護福祉士等 | 入浴・排泄・食事などの身体介護、調理・洗濯・掃除などの生活援助 |
| 訪問診療 | 医師 | 計画的な診察、病状の評価、治療方針の決定、処方、検査、訪問看護への指示等 |
たとえば、心不全の方が「医師の訪問診療で治療を調整する」「訪問看護で体調や服薬状況を確認する」「訪問介護で入浴や生活を支える」という組み合わせで療養することがあります。それぞれの役割と保険請求は別に確認します。1218
3.年齢と要介護認定で、保険の入口が変わる
65歳以上:認定があれば原則として介護保険
65歳以上の方は介護保険の第1号被保険者です。要支援・要介護状態になった原因を問わず、認定を受けることで介護サービスの対象になります。
ただし、「65歳以上なら訪問看護は必ず介護保険」という意味ではありません。 認定の有無に加えて、末期の悪性腫瘍などの疾病、特別訪問看護指示書の有無などを確認します。
認定がない方や非該当の方でも、主治医が必要性を認め、給付要件を満たせば医療保険の訪問看護を利用できる場合があります。12
40~64歳:16特定疾病による認定が必要
40~64歳の医療保険加入者は、介護保険の第2号被保険者です。この年齢では、介護が必要になった原因が、介護保険で定める16の特定疾病に該当することが、介護保険サービスを受ける条件になります。
単に介護が必要、あるいは重い病気があるというだけでは足りません。たとえば、心不全そのものは16特定疾病に含まれないため、50代で心不全がある方の訪問看護は、他の特定疾病による認定の有無も確認したうえで、医療保険の適用を検討します。23
40歳未満:医療保険の適用を検討
40歳未満は介護保険の被保険者ではありません。医療的ケアが必要な小児や若年者など、主治医が必要性を認め、給付要件を満たす方は、医療保険による訪問看護の対象となります。1
認定申請中の場合には注意が必要です。 新規の要支援・要介護認定は、申請日にさかのぼって効力が生じます。そのため、暫定ケアプランや、すでに行った訪問の請求調整が必要になることがあり、「認定結果が出るまでは必ず医療保険」とは判断できません。開始前に、ケアマネジャー・訪問看護ステーション・保険者で扱いを確認します。21
4.「16特定疾病」「別表第7」「別表第8」を混同しない
制度上もっとも誤解されやすいのが、この3つの分類です。
| 分類 | 何を判断するためのものか | 保険の振り分けとの関係 |
|---|---|---|
| 介護保険の16特定疾病 | 40~64歳の方が介護保険サービスを受けるための原因疾病 | 該当し認定を受ければ介護保険の対象になる。ただし訪問看護の医療優先例外は別に確認 |
| 特掲診療料の施設基準等・別表第7 | 指定された疾病・状態への訪問看護の取扱い | 要支援・要介護認定があっても、訪問看護は医療保険で給付する根拠になる |
| 同・別表第8 | 特別な管理を要する状態等 | 管理の評価や、医療保険での訪問日数等に関係する。これだけでは介護保険優先を覆さない |
先に「どちらの保険の対象か」を決め、その後に「その保険で何日・何回訪問でき、何を算定できるか」を確認するという二段階で考えると整理できます。345
介護保険の16特定疾病
- がん(医師が、一般に認められている医学的知見に基づき、回復の見込みがない状態に至ったと判断したもの)
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
- 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
「糖尿病ならすべて」「骨粗鬆症ならすべて」ではなく、上記の疾病・状態の条件を確認します。これらの疾病があることに加え、それに起因する要支援・要介護状態の認定が必要です。3
5.要介護認定があっても医療保険になる主な場合
① 別表第7に掲げる疾病・状態に該当する場合
2026年の現行規定では、次の疾病・状態が掲げられています。
| 疾病・状態 | 疾病・状態 |
|---|---|
| 末期の悪性腫瘍 | 多発性硬化症 |
| 重症筋無力症 | スモン |
| 筋萎縮性側索硬化症(ALS) | 脊髄小脳変性症 |
| ハンチントン病 | 進行性筋ジストロフィー症 |
| パーキンソン病関連疾患 ※ | 多系統萎縮症 ※ |
| プリオン病 | 亜急性硬化性全脳炎 |
| ライソゾーム病 | 副腎白質ジストロフィー |
| 脊髄性筋萎縮症 | 球脊髄性筋萎縮症 |
| 慢性炎症性脱髄性多発神経炎 | 後天性免疫不全症候群 |
| 頸髄損傷 | 人工呼吸器を使用している状態 |
※パーキンソン病関連疾患には、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病が含まれます。このうちパーキンソン病は、ホーエン・ヤール重症度分類がステージ3以上、かつ生活機能障害度がⅡ度またはⅢ度という条件があります。この条件を満たすかは、診断名だけでなく主治医の評価で確認します。
※多系統萎縮症には、線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、シャイ・ドレーガー症候群が含まれます。
「指定難病であればすべて医療保険になる」「脊髄損傷は部位を問わず該当する」という理解は正確ではありません。難病医療費助成の対象疾病と、この別表の範囲も異なります。4
睡眠時無呼吸症候群に対するCPAP等の使用は、別表第7の「人工呼吸器を使用している状態」と一律に同じ扱いにはなりません。機器名だけで判断せず、治療の目的と、主治医が行っている指導管理・算定区分を確認します。422
② 特別訪問看護指示書が交付された期間
急性増悪、終末期の状態変化、退院直後などにより、主治医が診療のうえで、一時的に頻回の訪問看護が必要と判断することがあります。この場合に用いるのが、特別訪問看護指示書です。
適切な特別指示に基づく訪問看護は、要支援・要介護認定のある方でも、その対象期間は医療保険で給付されます。詳しい期間・条件は次の章で説明します。56
③ 精神科訪問看護の要件を満たす場合
精神疾患に対して、精神科を標榜する保険医療機関で精神科を担当する医師が交付する精神科訪問看護指示書に基づき、精神科訪問看護基本療養費の要件を満たして行う訪問看護は、医療保険の対象になります。
ただし、要支援・要介護認定のある方に対するステーションの精神科訪問看護について、給付調整通知では、認知症でない患者への実施に限るという条件を設けています。認知症に対する訪問看護を、精神科の指示という理由だけで医療保険にすることはできません。「不眠や興奮がある」「精神科の薬を飲んでいる」という情報だけでは、保険は決まりません。病院・診療所からの精神科訪問看護には別の規定があるため、提供主体も含めて適用を確認します。78
なお、入院中の退院準備に向けた訪問や、一時外泊中の訪問看護にも、所定の要件を満たす場合の医療保険の規定があります。通常の自宅療養とは別に、病院とステーションが調整します。8
6.特別訪問看護指示書の「14日間」を正確に理解する
原則は月1回、14日以内
医師側の特別訪問看護指示加算では、急性増悪、終末期、退院直後などにより、週4回以上の頻回の訪問看護が一時的に必要と認められることが要件です。主治医は患者の同意を得て特別訪問看護指示書を交付し、一時的な頻回訪問が必要な理由等を記載します。これは必要性の判断に関する要件であり、病状の変化や入院等にかかわらず、機械的に同じ回数を実施するという意味ではありません。6
一般の特別訪問看護指示書については、訪問看護療養費の通知上、交付の日から起算して14日以内、原則として月1回という扱いです。「14回訪問できる券」ではなく、特別指示による訪問看護を行う対象期間を定めています。
医師側の訪問看護指示料の留意事項では、特別の指示に係る診療の日から14日以内と規定されています。実務では、診療日、交付日、指示期間、実際の訪問日を整合させて管理します。67
月2回の対象になる状態
次のいずれかに該当する場合は、月2回までの取扱いがあります。
- 気管カニューレを使用している状態
- 真皮を越える褥瘡がある状態
医師側の通知では、褥瘡についてNPUAP分類Ⅲ・Ⅳ、またはDESIGN-R2020のD3・D4・D5という深さの基準も示されています。単なる皮膚の発赤や浅い皮膚損傷を、同じ条件として扱うことはできません。67
介護保険の限度額不足だけでは発行の理由にならない
特別指示は、状態変化などによって、普段の訪問回数では対応できず、一時的な頻回訪問が必要になった医学的な理由に基づきます。
したがって、退院した事実だけで自動的に発行するものでも、介護保険の枠を節約するために使うものでもありません。継続的に毎日訪問が必要な場合は、その必要性に合う制度・支援体制を検討し、特別指示を無条件に反復する前提で計画しないことが大切です。6
7.在宅酸素・褥瘡・カテーテルがあっても、医療保険とは限らない
別表第8には、在宅酸素療法指導管理、在宅中心静脈栄養法指導管理、気管カニューレ・留置カテーテル、人工肛門・人工膀胱、真皮を越える褥瘡など、特別な管理を要する状態が含まれます。
2026年の現行規定には、在宅強心剤持続投与指導管理や、在宅難治性皮膚疾患処置指導管理も記載されています。これらは、具体的な管理・算定条件を満たすかどうかを確認して判断します。4
ここで区別したいのは、次の2つです。
| 確認すること | 別表第8の位置づけ |
|---|---|
| 要介護認定のある方を、医療保険の訪問看護に変更できるか | 別表第8への該当だけでは変更の根拠にならない |
| すでに医療保険の訪問看護の対象となる方へ、週3日を超えて訪問できるか | 別表第8の要件を満たせば、医学的必要性に応じて週4日以上の算定が可能になる場合がある |
たとえば、要介護2の方がCOPDで在宅酸素療法を受けていても、在宅酸素という理由だけなら、訪問看護は原則として介護保険です。酸素療法の医師による管理は医療保険で、訪問看護は介護保険、という組み合わせも成立します。578
心不全の在宅療養では、特にこの違いが重要
末期心不全そのものは、別表第7の「末期の悪性腫瘍」と同じ扱いではありません。 別表第7と給付調整の規定を照らすと、重症・終末期の心不全という診断だけを理由に、認定のある方の訪問看護が恒常的に医療保険へ移るわけではないことが分かります。
一方、急性増悪や終末期の状態変化で特別指示の要件を満たす場合、あるいは人工呼吸器の使用など別の該当条件がある場合は、その条件に沿って判断します。在宅で強心薬を持続投与している場合も、管理に関する評価と、保険を振り分ける根拠を分けて確認します。456
8.訪問回数・訪問時間はどう違う?
医療保険:「週3回」より「原則週3日まで」が正確
一般の訪問看護基本療養費は、原則として利用者1人につき週3日までです。週の区切りは日曜日から土曜日です。
別表第7・第8に該当する方や特別指示の対象期間などは、所定の要件により週4日以上の訪問が可能になります。同じ日に複数回の訪問を行う場合にも、別に医学的必要性や加算等の条件があります。医療保険には、希望すれば無制限に利用できるという仕組みはありません。
一般の訪問看護基本療養費(Ⅰ・Ⅱ)は、1回30~90分程度が標準です。ただし、訪問の種類によって時間の規定が異なり、短時間・長時間の訪問や同一建物への訪問についても、所定の条件を確認します。
精神科訪問看護は原則週3日までで、退院後3か月以内には週5日までの規定があります。精神科特別訪問看護指示は原則月1回・14日以内で、一般の特別指示にある月2回の例外をそのまま当てはめることはできません。7
介護保険:時間区分とケアプランを基に組み立てる
看護職による訪問では、20分未満、30分未満、30分以上1時間未満、1時間以上1時間30分未満などの区分があります。算定上の時間は、実測時間だけで決めるのではなく、訪問看護計画に位置づけられた内容を行うための標準的な所要時間で判断します。20分未満の訪問には別途要件があり、単純に短く分ければよいというものではありません。
医療保険の一般的な週3日制限はありませんが、主治医の指示と看護の必要性に基づき、ケアプラン、他サービスとの配分、支給限度額、各算定規定を踏まえて計画します。理学療法士等による訪問看護には、看護職の訪問と異なる時間・回数等の規定があります。9
9.指示書・主治医意見書・ケアプランの違い
| 書類 | 主な作成者 | 役割 |
|---|---|---|
| 主治医意見書 | 主治医 | 要支援・要介護認定の審査に必要な医学的情報を伝える |
| 訪問看護指示書 | 主治医 | 訪問看護の必要性、病状、処置、留意点、指示期間等を示す |
| 特別訪問看護指示書 | 主治医 | 状態変化等に伴う一時的な頻回訪問の必要性・期間等を示す |
| ケアプラン | ケアマネジャー等 | 本人の生活上の目標に沿って、介護サービス全体を調整する |
| 訪問看護計画書・報告書 | 訪問看護ステーション | 具体的な看護目標・内容を計画し、経過を主治医と共有する |
介護認定のための主治医意見書があることと、訪問看護の指示が出ていることは別です。 介護保険だから指示書が不要になるわけではありません。
通常の訪問看護指示書の有効期間は最長6か月ですが、病状に応じて短い期間で見直します。指示期間が長くても、状態変化を報告せずに同じ看護を続けてよいという意味ではありません。126
10.自己負担と利用料金の違い
自己負担割合は、医療と介護で別に確認する
| 年齢・区分 | 医療保険の原則的な負担割合 |
|---|---|
| 小学校就学前 | 2割 |
| 就学後~69歳 | 3割 |
| 70~74歳 | 2割。現役並み所得者は3割 |
| 75歳以上 | 原則1割。一定以上所得者は2割、現役並み所得者は3割 |
医療費助成や公費負担などで、実際の窓口負担が異なる場合があります。年齢だけで判断せず、現在の資格・所得区分を確認します。12
介護保険は原則1割で、65歳以上の方は所得等により2割または3割になります。40~64歳の第2号被保険者は原則1割です。医療保険が2割だから介護保険も2割、という関係ではありません。 介護保険負担割合証も確認します。2
介護保険の料金は「単位数×地域単価」で計算する
介護保険の訪問看護では、時間区分などに応じた単位数に地域単価を掛け、加算・減算を反映したうえで自己負担割合に応じた金額を計算します。
たとえば、要介護の方に対して訪問看護ステーションの看護師が行う訪問で、標準的な所要時間が30分以上1時間未満の区分は、基本部分が823単位です。説明のため1単位=10円、自己負担1割と仮定すると、基本部分の自己負担は1回823円です。
これは実際の請求総額ではありません。地域単価、緊急時訪問看護加算、特別管理加算、サービス提供体制や処遇改善に関する加算等が関わります。また、要支援の介護予防訪問看護や、病院・診療所からの訪問では基本単位が異なります。911
医療保険の料金は、1回分だけでは見積もれない
医療保険では、訪問看護基本療養費だけでなく、訪問看護管理療養費、24時間対応体制加算、特別管理加算などが関係します。訪問日数、事業所の体制、同一建物に住む利用者の状況、包括型の対象かどうかなどによっても変わります。
したがって、比較する際は、同じ月の訪問予定全体について、加算と保険外費用を含む見積もりを出してもらうことが実用的です。指示書を交付する医療機関での診療等に係る負担も、ステーションの利用料とは区別して把握します。17
交通費などの実費は、医療保険と介護保険で取扱いが異なります。介護保険では、利用者の選定により通常の事業実施地域外へ訪問した場合の交通費など、徴収できる条件が定められています。契約前に、保険内の自己負担と保険外費用を分けて確認しましょう。1920
11.介護保険の支給限度額と、高額な負担を軽減する制度
支給限度額は、訪問看護専用の枠ではない
在宅で利用する介護保険サービスには、要支援・要介護度に応じた区分支給限度基準額があります。訪問看護だけの予算ではなく、訪問介護、通所介護、福祉用具貸与など、限度額管理の対象サービスを合算する枠です。
| 認定区分 | 1か月の区分支給限度基準額 |
|---|---|
| 要支援1 | 5,032単位 |
| 要支援2 | 10,531単位 |
| 要介護1 | 16,765単位 |
| 要介護2 | 19,705単位 |
| 要介護3 | 27,048単位 |
| 要介護4 | 30,938単位 |
| 要介護5 | 36,217単位 |
これは自己負担額の上限ではなく、原則として保険給付の対象にできるサービス量の基準です。超えた部分は原則全額自己負担となります。一方、居宅療養管理指導などのサービスや一部の加算には、区分支給限度基準額の対象外となるものがあります。10
限度額が足りないときは、病状・生活機能に合った要介護度か、サービスの配分は適切か、他の支援を組み合わせられないかを検討します。限度額不足そのものが、医療保険へ変更する条件にはなりません。
「サービス量の限度」と「自己負担の上限」は別制度
| 制度 | 主な役割 |
|---|---|
| 高額療養費 | 医療保険の自己負担が所得等に応じた上限を超える場合の負担軽減 |
| 高額介護サービス費 | 介護保険の対象となる自己負担が月の上限を超える場合の負担軽減 |
| 高額医療・高額介護合算制度 | 医療保険と介護保険の対象自己負担を、年単位で合算して負担を軽減 |
介護保険の支給限度額を超えて全額自己負担した部分は、高額介護サービス費の対象ではありません。この違いを知らずに「自己負担上限があるので、サービスをいくら増やしても支払額は同じ」と考えると、見込みと実際の請求がずれてしまいます。131415
医療・介護の年間合算は、原則として同じ医療保険上の世帯で、8月から翌年7月までの対象自己負担を、高額療養費や高額介護サービス費等の支給分を差し引いた後に合算します。同居していても加入する医療保険が異なる場合は、一律にまとめられるわけではありません。15
2026年8月からは、高額療養費の月額上限の見直しと、新たな年間上限が実施されています。 年間は8月から翌年7月までです。さらに2027年8月からの所得区分の見直しも公表されているため、古い上限額の表をそのまま使わず、加入する医療保険者で対象月の取扱いを確認してください。13
12.医療保険と介護保険は併用できる?
医療保険の訪問看護と、介護保険の他サービスは組み合わせられる
たとえば、末期がんの方が、医療保険で訪問看護を受けながら、介護保険で訪問介護や福祉用具貸与を利用することは可能です。
医療保険へ切り替わるのは、該当する訪問看護の給付です。要介護認定が消えたり、ほかの介護サービスがすべて医療保険になったりするわけではありません。ケアマネジャーによる生活全体の調整も引き続き重要です。128
同じ月に、訪問看護の保険が切り替わることはある
以下は制度を説明するための仮想例です。要介護認定のある方が、10月10日の診療で一時的な頻回訪問を要すると判断され、同日に10月10~23日の特別指示が交付されたとします。
| 期間 | 訪問看護の扱い |
|---|---|
| 10月1~9日 | 原則として介護保険 |
| 10月10~23日 | 特別指示に基づく訪問看護は医療保険 |
| 10月24日以降 | 状態・指示・適用条件を再確認し、他の医療保険適用根拠がなければ介護保険へ |
このように、同じ月の中で両方の保険による利用実績が生じることはあります。一方、同じ訪問看護を両方の保険へ重複して請求することはできず、費用の都合で曜日ごとに任意に振り分けることもできません。
月途中で切り替える場合には、24時間対応・緊急時対応、特別管理などの月額加算にも給付調整があります。基本部分の日付だけでなく、その月の加算全体をステーションとケアマネジャーが確認します。78
13.具体例でみる、訪問看護の保険の違い
以下はいずれも制度説明用の仮想例であり、他の例外に該当しないことを前提としています。実際には主治医と関係事業所が病状・認定・指示内容を確認します。
| 状況 | 基本的な考え方 |
|---|---|
| 82歳、要介護2。安定した慢性心不全で病状観察・服薬支援が必要 | 原則介護保険。心不全の病名だけでは医療優先にならない |
| 上記の方が急に悪化し、主治医が在宅療養の可否を評価したうえで、一時的な頻回訪問を指示 | 特別指示の対象期間は医療保険。病状によっては入院等を優先して検討 |
| 55歳、心不全。他に16特定疾病による介護認定の対象となる病態がない | 医療保険の訪問看護の給付要件を確認 |
| 55歳、脳梗塞後遺症で要介護認定あり | 脳血管疾患は16特定疾病。訪問看護は原則介護保険 |
| 78歳、要介護3。末期の悪性腫瘍に対する訪問看護 | 別表第7に該当し、医療保険 |
| 80歳、要介護2。COPDで在宅酸素療法中 | 在宅酸素だけでは医療優先にならず、原則介護保険 |
| 72歳、要介護認定あり。パーキンソン病 | 別表第7の重症度・生活機能障害度の両条件を満たすか確認 |
| 76歳、要介護3。真皮を越える褥瘡あり | 褥瘡だけで恒常的に医療保険にはならない。特別指示の医学的要件と期間を確認 |
この表は、年齢・認定・別表・特別指示の規定を個別の条件に当てはめた整理です。「処置がある」「重症である」という情報に、保険を決める条件がすべて含まれているわけではありません。23456
14.施設に入居している場合は、自宅と同じとは限らない
有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、認知症グループホーム、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設などでは、施設の指定や提供するサービスによって、外部の訪問看護を利用できる条件が異なります。
特に、看護や医療が施設サービスの中に含まれている場合には、外部の訪問看護を別に算定できる範囲が制限されます。施設名だけで判断せず、特定施設の指定の有無や、入居者が利用している介護サービスの区分まで確認することが必要です。自宅向けの説明を、そのまま施設入所者の請求に当てはめることはできません。8
15.2026年の改定で確認したいこと
介護保険:訪問看護にも処遇改善加算が新設
2026年6月から、訪問看護・介護予防訪問看護に介護職員等処遇改善加算が新設され、加算率は1.8%とされています。所定の要件を満たし、届出を行う事業所が対象です。
これは「利用者の自己負担割合が1.8ポイント上がる」という意味ではありません。報酬単位に加算を反映し、その費用に対して本人の負担割合を適用します。11
医療保険:包括型訪問看護療養費などの取扱い
2026年度改定では、一定の高齢者向け住まい等への訪問で、対象者・事業所の体制等の要件を満たす場合の包括型訪問看護療養費が新設されました。すべての訪問看護が定額化されたわけではありません。
同一建物への訪問では、訪問時間や訪問間隔などの算定規定も確認が必要です。たとえば、基本療養費(Ⅱ)の一般の訪問では30分以上を標準とし、少なくとも20分以上を要すること、一定の短時間訪問を短い間隔で行う場合には時間を合算することなどが定められています。短時間の訪問を分割すれば、その回数分をそのまま請求できるとは限りません。716
16.訪問看護を導入するときに確認すること
最初に、主治医へ「自宅で何に困っているか」を具体的に伝えます。介護認定がある方はケアマネジャーにも相談し、認定がない方は必要に応じて市区町村や地域包括支援センターへつなぎます。
そのうえで、次の内容を関係者で共有すると、導入後の行き違いを減らせます。
- 必要な看護:病状観察、服薬、処置、栄養、排泄、リハビリテーション、家族支援など。
- 保険の根拠:認定状況、疾病・状態、特別指示の有無と有効期間。
- 訪問計画:誰が、何のために、何曜日に、どの程度の時間訪問するか。
- 費用:月全体の自己負担、加算、保険外費用、利用できる助成。
- 急変時の連絡先:時間外の相談体制、臨時訪問の扱い、主治医との連携。
24時間対応の契約や加算があっても、看護師が自宅に常駐するという意味ではありません。どこへ連絡し、どのような対応を受けられるのかを、契約時に確認しておきましょう。127
保険の確認より先に、診察・救急対応が必要な症状
急な強い息苦しさ、持続する強い胸痛、反応が悪い・意識がおかしい、突然片側の手足が動かしにくい・言葉が出にくいなどがある場合は、次回の訪問を待たず、119番を含む緊急対応を検討してください。17
終末期の療養で事前に対応方針を共有している場合は、その方針と主治医・訪問看護の連絡手順に沿って対応します。日常の息切れやむくみ、食事量・服薬状況の変化についても、悪化が続くときは早めに医療機関へ相談しましょう。
17.よくある質問
Q1.訪問看護は、医療保険と介護保険の安い方を選べますか?
自由には選べません。年齢、要支援・要介護認定、疾病・状態、指示書などの要件で決まります。まず正しい適用保険を確認し、そのうえで訪問計画や負担軽減制度を検討します。15
Q2.介護保険の訪問看護でも、点滴や褥瘡の処置はできますか?
主治医の指示と、訪問看護ステーションの対応体制などの条件を満たせば可能です。処置があるという理由だけで医療保険に変わるわけではありません。処置内容・薬剤・材料の手配も主治医と確認します。26
Q3.心不全や在宅酸素でも、訪問看護を利用できますか?
主治医が必要性を認め、給付要件を満たせば対象となります。保険は重症度や酸素使用だけでは決まらず、認定の有無と医療保険の例外を確認します。心不全で退院後の療養を支える場合にも活用を検討できます。145
Q4.医療保険の訪問看護になったら、訪問介護や介護ベッドは使えなくなりますか?
そのようなことはありません。要介護認定や各サービスの要件を満たす範囲で、介護保険の訪問介護や福祉用具貸与などと組み合わせられます。訪問看護が医療保険でも、ケアマネジャーとの情報共有は大切です。28
Q5.姫路市で訪問看護や訪問診療の利用を考えたら、どこに相談すればよいですか?
かかりつけ医、担当ケアマネジャー、入院中であれば病院の退院支援担当者にご相談ください。介護認定やサービスの相談は、姫路市の介護保険担当窓口や地域包括支援センターも窓口になります。当院でも、通院が難しい方の訪問診療や在宅療養についてご相談いただけます。218
姫路市で訪問診療・在宅療養をご検討の方へ
えぷろんクリニックでは、通院が難しくなった方の訪問診療を行い、心不全や呼吸器疾患などの在宅療養について相談を受け付けています。主治医として病状や生活状況を確認し、訪問看護・ケアマネジャーなどの関係職種と連携しながら、療養方法を検討します。
姫路市で訪問看護を含む在宅療養にお悩みの方、通院が難しく訪問診療を検討している方は、えぷろんクリニックへ診療時間内にお電話ください。訪問診療の対応可否は、ご住所・病状・訪問体制によって異なります。18
在宅療養のご相談(診療時間内)
制度確認日:2026年10月17日。記載は同日時点の公表資料に基づきます。実際の利用・請求は、対象月の告示・通知と、利用者の資格・指示内容により確認します。