えぷろんクリニック|循環器内科の医学解説

心不全と漢方薬を詳しく解説
五苓散・木防已湯の効果と限界、副作用

心不全の治療中に、むくみや息切れ、食欲の低下が残ることがあります。漢方薬は、こうした症状に対する補助的な選択肢になり得ます。ただし、期待できることと、まだ証明されていないことを分けて考える必要があります。

情報確認日:2026年10月19日|患者さん・ご家族から医療従事者まで

最初に知っておきたいこと

  • 心不全治療の土台は、病態に応じた標準治療です。漢方薬だけに置き換えることはできません。
  • 五苓散・木防已湯などには、むくみや心不全症状の改善を示唆する報告があります。一方、死亡や再入院を減らす効果は、現時点で十分に確立していません。
  • 甘草による低カリウム血症・体液貯留、附子による中毒など、心不全の患者さんに不利益となる副作用にも注意が必要です。
今、強い息苦しさがある方へ

安静でも苦しい、横になれない、胸痛・冷汗・失神を伴う、意識がぼんやりするときは、漢方薬で様子を見ず119番などで救急受診してください。

1.心不全に漢方薬を使うとき、何を目標にするのでしょうか

心不全は、心臓の働きが低下し、息切れやむくみなどが現れる状態です。心臓の収縮する力が低下したタイプだけでなく、収縮力が比較的保たれていても、心臓が硬く、血液を受け入れにくくなったタイプもあります。

治療では、今つらい症状を和らげることに加えて、心不全の進行や入院、死亡を減らすことを目指します。「息切れが楽になった」という結果と、「将来の入院や死亡が減った」という結果は、それぞれ別に確かめる必要があります。

左室駆出率が低下した心不全では、ARNIまたはACE阻害薬・ARB、適切なβ遮断薬、MRA、SGLT2阻害薬を、血圧・腎機能・カリウム値などに合わせて組み合わせます。駆出率が保たれた心不全でも、SGLT2阻害薬やうっ血の治療、血圧・心房細動などの併存疾患管理が重要です。漢方薬は、これらの治療を踏まえて検討します。[1]

治療で確かめること患者さんにとっての意味漢方薬を読むときの注意
症状・生活の質息苦しさ、むくみ、食欲などが改善するか主観的な評価では、期待や治療環境の影響も受けます
うっ血・検査所見体重、診察所見、画像、採血などがどう変化するか一つの数値が良くなっただけで、全体の利益は断定できません
長期の転帰再入院や死亡が減るか十分な人数と追跡期間のある比較研究が必要です

「利尿薬を減らせた」という報告も、それだけで優れた治療と判断することはできません。減量後もうっ血が抑えられ、腎機能や生活の質、入院などが悪化していないかまで確認する必要があります。

2.心不全でむくむ理由:「水が多い」だけではありません

腎臓の塩分・水分調節と、静脈のうっ血

心不全では、全身に十分な血液を送り出せないと体が判断し、交感神経やレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系、バソプレシンなどの働きが変化します。その結果、腎臓が塩分や水分をため込みやすくなります。一方、心臓へ戻る側の静脈圧が上がることも、腎臓の働きや臓器の状態に影響します。

また、血液の分布が急に変わり、肺へ負担がかかる場合もあります。体重の増加が目立たなくても、急に肺のうっ血が悪化することがあります。したがって、体重や足のむくみだけで、心不全の重症度は決められません。

漢方の「水滞」と、医学的なうっ血の関係

漢方では、水分に関係する不調を「水滞(すいたい)」などの枠組みで捉えます。むくみ、めまい、口の渇き、尿の状態などを総合して処方を考えますが、水滞という概念は、心不全・腎不全・静脈不全などの診断と一対一に対応するものではありません。

足がむくんでいても、血管内の水分は十分でない場合があります。心不全以外にも、低アルブミン血症、薬剤、静脈の病気などでむくみが生じます。「むくみがあるから利水薬を足す」という判断ではなく、循環の状態と原因を確かめることが先です。

塩分と水分は、分けて考える必要があります

心不全のうっ血には、ナトリウムの蓄積が関わります。水の通り道への作用が研究されている薬でも、塩分管理や必要な利尿薬の代わりになるとは限りません。飲水量も、低ナトリウム血症、腎機能、うっ血、脱水のリスクに合わせて個別に判断します。

3.2025年版心不全診療ガイドラインでは、漢方薬をどう扱っていますか

2025年改訂版の国内ガイドラインは、急性非代償性心不全の「その他の薬物」の項で、浮腫を伴う患者さんの症状緩和や、既存の利尿薬でうっ血管理が難しい場合の補助として、木防已湯・五苓散・牛車腎気丸などの研究に触れています。[1][2]

ここで大切なのは、ガイドライン本文に記載があることと、死亡を減らす標準薬として強く推奨されていることは、同じではないという点です。記載された目的、研究規模、比較方法を確認する必要があります。

漢方薬の承認された効能・効果と、心不全患者さんを対象とした臨床研究の結果も、別の情報です。例えば五苓散には、一定の症状を伴う浮腫などの効能がありますが、それは心不全の予後改善が承認・証明されているという意味ではありません。[3]

4.五苓散:水分輸送に関わる作用と、心不全での研究

五苓散はどのような漢方薬ですか

五苓散(ごれいさん)は、沢瀉(たくしゃ)、猪苓(ちょれい)、茯苓(ぶくりょう)、朮(じゅつ)、桂皮(けいひ)を組み合わせた処方です。代表的な医療用製剤では蒼朮を使いますが、製品によって構成に違いがあります。代表製剤には甘草・麻黄・附子を含みません。[3]

アクアポリンとは何でしょうか

アクアポリン(AQP)は、細胞膜で水が通る経路となるたんぱく質です。五苓散の添付文書には、ラットの腎臓でAQP2・AQP3の遺伝子発現の低下と尿量増加を認めた研究や、培養細胞でのナトリウムチャネルへの作用が記載されています。これらは基礎研究であり、人の心不全で同じ作用がどの程度起きるかは、臨床研究で別に確かめる必要があります。[3]

五苓散の機序を理解するときの3段階
① 基礎研究

腎臓の水輸送やイオン輸送への作用を調べる

② 人での効果

尿量・むくみ・息切れが実際に改善するか確かめる

③ 長期の利益

副作用も含め、入院・死亡が減るか確かめる

①の結果だけで②・③の効果が確定するわけではありません。

五苓散を「余分な水だけを選んで排出するので、脱水しない薬」と説明するのは正確ではありません。実際の患者さんには利尿薬なども併用されるため、血圧、腎機能、食事・飲水量を含めて確認します。また、甘草を含まないことは、すべての副作用がないことを意味しません。

トルバプタンとは、同じ薬ではありません

トルバプタンは、バソプレシンV2受容体を遮断する薬です。五苓散は複数の生薬を含む処方で、同じ作用機序の薬として扱うことはできません。両者の併用で改善した症例報告はありますが、併用による相乗効果や、トルバプタンの効きにくさを解消する効果が確立したわけではありません。[4]

全国データ研究:全体では再入院を減らす関連を認めませんでした

2025年に発表された日本のDPCデータ研究では、2016~2022年に初回の心不全入院から生存退院した患者431,393人を抽出しました。背景をそろえる統計処理後、五苓散併用1,957人と非併用7,828人を比較しています。[5]

退院後1年間の心不全再入院

五苓散併用群22.1%
非併用群21.7%

ハザード比 1.02[95%信頼区間 0.92–1.13]
全体として、再入院が少ないという関連は認めませんでした。

Isogaiら、J Cardiol 2025。無作為化試験ではなく、診療情報を用いた観察研究です。

腎疾患のある集団では再入院が少ない関連も示されましたが、部分集団の結果から、すべての慢性腎臓病患者さんに効く、腎臓を保護する、とまでは言えません。一方、全体の結果が有意でなかったことだけで、個々の患者さんの症状緩和まで否定されたとも言えません。[5]

2026年の小規模研究は、どう読みますか

2026年には、トルバプタンを含む治療を受けていた心不全患者25人を、五苓散の継続群と中止群に分けて検討した単施設の後ろ向き研究も報告されました。ただし、治療経過に基づく群分けであり、全員を無作為に継続・中止へ割り付けた試験ではありません。[6]

この研究では、継続群は五苓散の開始日、中止群は中止日を追跡の起点としており、比較の出発点も異なります。中止と悪化が近い時期に起きても、五苓散中止が原因とは限りません。体調悪化や医師の判断など、中止に至った事情自体が結果に関係し得ます。新しい報告ですが、治療方針を決めるための確定的な証拠ではありません。

GOREISAN-HF試験:研究計画と結果を区別する

五苓散を標準治療に追加する効果を検証する多施設無作為化試験、GOREISAN-HFの研究計画が2023年に公表されています。これは重要な検証ですが、研究計画の論文は、有効性を示した結果の論文ではありません。本記事の調査範囲では、2026年10月19日時点で主要結果の査読論文を確認できていません。今後の更新時には、公的登録と結果論文を再確認する必要があります。[7]

5.木防已湯:息切れ・うっ血に対する特徴とエビデンス

五苓散との違い

木防已湯(もくぼういとう)は、防已(ぼうい)、石膏(せっこう)、桂皮、人参(にんじん)からなる処方です。代表的な医療用製剤には甘草・麻黄・附子を含みません。承認された効能には、呼吸の苦しさや胸の下の圧迫感など、一定の症状を伴う心臓・腎臓に関係する病気、浮腫などが含まれます。[8]

効能に使われる「心臓性喘息」は、心不全の肺うっ血に伴って喘鳴や呼吸困難が生じる状態を指し、気管支喘息と同じ病気ではありません。急にゼーゼーして苦しくなった場合は、原因を判断して緊急の治療につなげる必要があります。

血管への作用は研究されていますが、人での機序は未解明です

木防已湯やその成分には、血管の収縮・弛緩やイオンチャネルに関わる作用が基礎研究で報告されています。しかし、臨床での働き全体が明らかになったわけではありません。添付文書でも作用機序は明確ではないとされており、降圧薬や強心薬と同じような確実な効果を想定して使うことはできません。[8][9]

2019年の無作為化試験:症状の改善を示した40人の研究

急性増悪で入院した心不全患者40人を、標準治療のみの群と、標準治療に木防已湯を追加する群に割り付けた試験があります。主な評価は、入院から10日目、またはそれ以前の退院時までに、患者さん自身が評価した全身状態のVASスコアがどれだけ変化したかでした。追加群で、症状の改善が大きい結果でした。[10]

無作為化した点には意味がありますが、単施設・少人数で、プラセボを使って治療内容を隠した比較ではありません。主観的な評価は、治療への期待などの影響を受け得ます。この試験だけで、重症例にも安全、死亡を減らす、と結論づけることはできません。

2022年の長期追跡:独立した大規模試験ではありません

同じ40人を対象とした約2年間の後ろ向き追跡では、死亡や心不全再入院などをまとめた複合イベントが、標準治療群13人、木防已湯群5人でした。ただし、総死亡だけの差は統計学的に明確ではなく、基礎疾患の偏りや追跡情報の欠損もありました。[11]

この追跡報告を、2019年の試験とは別の大人数の試験が成功したように数えることはできません。症状緩和の可能性を示す研究として評価しつつ、長期の利益については、さらに確かな検証が必要です。

名称が似ていても、配合は違います

木防已湯と防已黄耆湯は別の処方です。木防已湯の代表製剤には甘草を含みませんが、防已黄耆湯には含まれます。名前だけで副作用や併用の可否を判断しないことが大切です。

6.心不全患者さんで話題になる、その他の漢方薬

漢方では、体質や症状の組み合わせである「証(しょう)」を考慮します。ただし、以下の表は自己判断で処方を選ぶための一覧ではありません。心不全による症状かどうか、循環が安定しているかを確認したうえで、個別に判断します。

処方検討される症状・位置づけ甘草/附子※主な注意点
五苓散
ごれいさん
口渇・尿量低下などを伴う浮腫。うっ血の補助治療として研究なし/なし肝機能異常、発疹。循環・腎機能の評価も必要
木防已湯
もくぼういとう
一定の所見を伴う呼吸困難・浮腫。小規模な症状改善試験ありなし/なし食欲低下、胃部不快感、下痢など
防已黄耆湯
ぼういおうぎとう
疲れやすさ・多汗などを伴う浮腫の処方。心不全の標準薬ではないあり/なし偽アルドステロン症、間質性肺炎、肝機能障害など
真武湯
しんぶとう
冷え、体力低下などを考慮する処方。心不全の予後改善は未確立なし/あり動悸、舌のしびれ、悪心など。附子の重複に注意
牛車腎気丸
ごしゃじんきがん
下肢の冷え・しびれ、排尿症状、浮腫などを総合して検討なし/あり附子関連症状、間質性肺炎、肝機能障害など。「腎気」は腎機能回復の意味ではない
六君子湯
りっくんしとう
胃腸症状や食欲不振への対症療法。直接うっ血を取る薬ではないあり/なし偽アルドステロン症、肝機能障害など。食欲低下の原因評価が先

※組成・副作用は、参考文献のツムラ医療用エキス製剤を基準に記載しています。製品ごとの最新添付文書を確認してください。副作用のすべてを列挙したものではありません。[3][8][12][13][14][15]

食欲低下やフレイルは、漢方だけで説明しない

心不全に伴う食欲低下では、消化管のうっ血、薬剤の影響、腎機能低下、感染症、消化器疾患などを見直します。六君子湯などを検討する場合も、これらの評価や、栄養支援、状態に合った心臓リハビリテーションが重要です。

「疲れやすいから補う漢方」「冷えるから温める漢方」と単純に決めると、貧血、不整脈、低血圧、心不全悪化を見逃すことがあります。また、別の国や別の配合の伝統医薬品で得られた試験結果を、国内の五苓散などへそのまま当てはめることもできません。

7.心不全では特に重要:漢方薬の副作用と相互作用

甘草による偽アルドステロン症

甘草(かんぞう)を含む薬で特に問題になるのが、偽アルドステロン症です。甘草成分の代謝物が、腎臓の酵素11β-HSD2の働きを妨げると、コルチゾールがミネラルコルチコイド受容体に作用しやすくなります。その結果、塩分・水分をため込み、カリウムを失いやすくなります。[16][17]

ため込む方向の変化

むくみ、体重増加、血圧上昇。心不全のうっ血を悪化させるおそれがあります。

カリウム低下の影響

脱力、筋力低下、こむら返り、不整脈。重い場合は危険な不整脈や筋障害につながります。

この病態では、アルドステロンが実際に高いとは限りません。典型的にはレニン・アルドステロンは抑えられます。「アルドステロンが低いから、甘草の副作用ではない」と判断しないことが大切です。

甘草の少量投与でも起こり得るため、一定の量以下なら安全とは言い切れません。医療用の漢方だけでなく、市販薬、他院の処方、グリチルリチンを含む薬の重複まで確認します。

こむら返りに芍薬甘草湯を追加するときの落とし穴

心不全の治療中に足がつる場合、利尿薬に伴う電解質異常や、脱水などが隠れていることがあります。そこへ甘草を含む芍薬甘草湯を自己判断で続けると、低カリウム血症をさらに悪化させるおそれがあります。

芍薬甘草湯の添付文書には、ループ・サイアザイド系利尿薬との併用注意に加え、重大な副作用として心不全や重い心室性不整脈などが記載されています。低カリウム血症、アルドステロン症、ミオパチーのある方には禁忌です。処方を検討する場合も、原因と検査値を確認し、投与期間を最小限にする判断が必要です。[18]

また、低カリウム血症はジゴキシン使用中の患者さんでも重要です。MRAを飲んでいるから甘草の副作用が防げる、とも言えません。薬同士の作用が相殺されることを期待して、検査を省略しないようにします。

附子を含む処方:しびれや動悸を見逃さない

真武湯や牛車腎気丸には、加工した附子(ぶし)を含みます。医療用製剤では品質管理されていますが、附子由来のアルカロイドは中毒で不整脈を起こし得るため、附子を含む処方の重複や自己増量には注意が必要です。服用後に舌・口のしびれ、吐き気、動悸、めまいが出た場合は、追加服用を避け、速やかに医療機関へ連絡してください。強い動悸、失神などがあれば救急対応が必要です。[13][14][20]

息切れの悪化が、薬剤性の肺障害である場合もあります

防已黄耆湯や牛車腎気丸など、処方によっては間質性肺炎や肝機能障害が重大な副作用として記載されています。服用後に新たな発熱、空せき、息切れが出たときは、疑わしい漢方薬を中断し、ただちに医療機関へ連絡してください。心不全自体の悪化も含めた評価が必要です。開始・変更した時期を伝え、普段の心不全治療薬の扱いは医師に確認してください。[12][14]

五苓散や木防已湯でも、発疹や消化器症状などは起こり得ます。「天然由来だから安全」「漢方なら採血は不要」という判断はできません。

8.漢方薬を検討する前に、何を確認しますか

まず、治療が必要な原因を見直します

心不全の患者さんに息切れやむくみが残っている場合、原因疾患、塩分摂取、飲み忘れ、感染、不整脈、虚血、弁膜症、貧血、腎機能、服用薬などを確認します。利尿薬の吸収が悪いのか、うっ血が残っているのか、逆に脱水や低血圧があるのかでも、対応は変わります。

漢方を足すことで、必要な標準治療の調整や専門施設への紹介が遅れてはいけません。反復入院や進行する臓器障害がある場合は、心不全専門診療、多職種支援、症状緩和を含めた治療目標の再検討が必要です。

開始前後の確認項目

確認する項目具体的な見方
目標となる症状どの症状を、どの程度改善したいのかを決めます。息切れ、むくみ、食欲などを分けて評価します
体液量と循環体重の推移、血圧、脈拍、浮腫、呼吸状態、起立時症状など。必要に応じて画像やエコーも確認します
採血ナトリウム、カリウム、腎機能、肝機能。状況に応じてマグネシウム、BNP・NT-proBNPなども評価します
薬の重複他院処方・市販薬を含め、甘草・附子などが重なっていないか確認します
継続の判断症状・所見・副作用をまとめて判断します。改善がなければ、惰性で続けず処方を見直します

再診や採血の時期は一律ではありません。高齢、腎機能低下、利尿薬の変更、低カリウム血症の既往などがあれば、より早い確認を検討します。BNPなど一つの検査値だけで有効・無効を決めず、生活の変化や身体所見も合わせます。

用量と保険適用について

参考として、ツムラの医療用五苓散・木防已湯では、成人の通常量は1日7.5gを2~3回に分けて服用する設定ですが、年齢や状態に合わせた調整が前提です。市販品や別メーカーの製品に、この量をそのまま当てはめることはできません。[3][8]

エキス顆粒の重さと、配合される生薬の重さは同じものではありません。保険診療での処方も、製品の承認された効能・効果や患者さんの症状との整合性を確認して判断します。「心不全ならどの漢方でも保険で使える」という意味ではありません。

9.姫路市で心不全・むくみ・息切れを相談するときの目安

救急受診・119番を考える症状
  • 安静でも強く息苦しい、呼吸のために横になれない
  • 胸の痛み、冷汗、失神、意識の変化を伴う
  • 唇が紫色になる、会話できないほど呼吸が苦しい

通常の外来予約や、漢方薬の効果を待つ状況ではありません。

当日中など、早めに医療機関へ連絡したい変化
  • 数日で体重が増え、足のむくみや息切れも強くなっている
  • 尿が明らかに少ない、食べられない、ふらつきが増えた
  • 漢方開始後に血圧上昇、脱力、こむら返り、動悸が出た
  • 新しい発熱・空せき・息切れ、皮膚や白目の黄染がある

体重の連絡基準は、普段の体格や状態に合わせ、主治医と個別に決めてください。

えぷろんクリニックで相談できること

姫路市飾磨区のえぷろんクリニックでは、循環器内科の視点から、心不全や生活習慣病の管理、むくみ・息切れなどの評価を行います。診察、血圧管理、採血、心電図、必要に応じた心エコーなどを通じて、病態と治療内容を確認します。呼吸器専門医も在籍しており、心臓以外の原因も考慮します。[19]

漢方薬についても、まず標準治療と安全性を確認したうえで相談に応じます。当院で扱う漢方薬は、保険適用の漢方エキス製剤です。煎じ薬は取り扱っていません。通院が難しい方の訪問診療や、入院・専門的な治療が必要な場合の地域の基幹病院との連携にも対応しています。受診時には、お薬手帳に加え、市販の漢方薬・サプリメントの製品名、体重・血圧の記録もお持ちください。

姫路市で心不全、むくみ、息切れにお悩みの方、生活習慣病や心臓の病気が心配な方は、えぷろんクリニックまでご相談ください。症状や検査結果を確認しながら、必要な検査や専門医療機関との連携を行います。

10.心不全と漢方薬について、よくある質問

Q1.心不全の薬を漢方薬に替えることはできますか?

自己判断で替えることはできません。漢方薬は、病態に合った標準治療を続けたうえで、残る症状などに対する補助として検討します。薬が多くて困る場合は、重複や必要性を主治医と見直してください。

Q2.五苓散は腎臓に優しく、脱水を起こさないのでしょうか?

そのように保証することはできません。併用する利尿薬、食事・飲水、血圧、腎機能によって安全性は変わります。腎保護効果や電解質への影響がないことも、すべての心不全患者さんで確立したわけではありません。

Q3.五苓散と木防已湯は、どちらがよく効きますか?

一律には決められません。配合も、研究された患者さんや評価項目も違います。両者の優劣を確定する十分な直接比較の根拠は、本記事の調査では確認できませんでした。症状、所見、併用薬を踏まえて選びます。

Q4.漢方薬で心不全の再入院を防げますか?

確実に防げるとは言えません。五苓散の全国観察研究では全体の再入院低下は認めず、木防已湯の長期報告も少人数です。再入院予防の基本は標準治療、自己管理、多職種支援、悪化時の早い対応です。

Q5.姫路市で、心不全治療中の漢方薬の飲み合わせを相談できますか?

えぷろんクリニックの循環器内科でご相談いただけます。お薬手帳と、市販薬・サプリメントの製品名をお持ちください。特定の漢方処方を希望される場合も、適応と安全性を診察で確認します。

この記事は一般的な医療情報です。個々の患者さんの診断、処方開始・中止・増減を指示するものではありません。急な症状は本文の受診目安に従ってご相談ください。研究結果や添付文書は更新されるため、実際の診療では最新情報を確認します。

参考文献・情報源

主要な臨床研究は、研究デザインと限界を本文に併記しました。情報確認日:2026年10月19日。文献番号のリンクから確認できます。

  1. 日本循環器学会・日本心不全学会ほか.2025年改訂版 心不全診療ガイドライン.英語版:JCS/JHFS 2025 Guideline on Diagnosis and Treatment of Heart Failure.
  2. 日本東洋医学会 EBM委員会.上記ガイドラインから漢方製剤の記載を抽出した資料.原文との位置づけ確認に使用。
  3. PMDA.ツムラ五苓散エキス顆粒(医療用)電子添文.組成、効能、用量、副作用、基礎薬理。
  4. 玉野雅裕ほか.難治性高齢者心不全に対して五苓散追加投与が有効であった2症例.日本東洋医学雑誌.2018;69:275–280.症例報告。
  5. Isogai T, et al. Association between complementary use of Goreisan and heart failure readmission: A nationwide propensity score-matched study. J Cardiol. 2025;85:220–228. doi:10.1016/j.jjcc.2024.09.010.後ろ向き観察研究。
  6. Hida Y, et al. Mid-Term Impact of Kampo Goreisan in Patients with Congestive Heart Failure Receiving Tolvaptan-Incorporated Medical Therapy. J Clin Med. 2026;15:3659.25人の後ろ向き観察研究。
  7. Yaku H, et al. Rationale and study design of the GOREISAN for heart failure trial: A randomized clinical trial. Am Heart J. 2023;260:18–25. doi:10.1016/j.ahj.2023.02.013.研究計画。公的登録:NCT04691700/jRCTs051200101。
  8. PMDA.ツムラ木防已湯エキス顆粒(医療用)電子添文.
  9. Satoh H. Pharmacological characteristics of Kampo medicine as a mixture of constituents and ingredients. J Integr Med. 2013;11:11–16. doi:10.3736/jintegrmed2013003.基礎薬理に関する論文。
  10. Ezaki H, et al. Effects of Mokuboito on symptoms in patients hospitalized for acute decompensated heart failure—A prospective randomized pilot study. J Cardiol. 2019;74:412–417. doi:10.1016/j.jjcc.2019.05.003.40人の無作為化試験。
  11. Ezaki H, et al. Effects of mokuboito on long-term clinical outcomes in patients with heart failure. Traditional & Kampo Medicine. 2022.同一集団の後ろ向き長期追跡。
  12. PMDA.ツムラ防已黄耆湯エキス顆粒(医療用)電子添文.
  13. PMDA.ツムラ真武湯エキス顆粒(医療用)電子添文.
  14. PMDA.ツムラ牛車腎気丸エキス顆粒(医療用)電子添文.
  15. PMDA.ツムラ六君子湯エキス顆粒(医療用)電子添文.
  16. 厚生労働省・PMDA.重篤副作用疾患別対応マニュアル:偽アルドステロン症.2022年改定。
  17. 日本内分泌学会.偽アルドステロン症.発症機序などの患者向け解説。
  18. PMDA.ツムラ芍薬甘草湯エキス顆粒(医療用)電子添文.
  19. えぷろんクリニック公式サイト.心不全診療、漢方薬、当院について.診療内容・医師情報の確認。
  20. 厚生労働省.自然毒のリスクプロファイル:高等植物・トリカブト.附子原料のアルカロイドによる中毒症状の確認。医療用製剤の副作用・注意事項は文献13・14を参照。