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吸入薬の種類と使い分け|喘息・COPDと吸入器の違いを詳しく解説

呼吸器の診療ガイド

吸入薬の種類と使い分け|喘息・COPDと吸入器の違いを詳しく解説

主な対象:成人の喘息・COPD医学情報の確認日:2026年10月17日

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吸入薬の使い分けで大切なのは、「どの病気を治療するのか」「炎症を抑えるのか、気管支を広げるのか」「その吸入器を正しく使えるのか」を分けて考えることです。

喘息では、気道の炎症を抑える吸入ステロイドを含む治療が基本です。一方、COPD(慢性閉塞性肺疾患)では、長時間作用する気管支拡張薬を中心に、増悪歴や炎症の特徴に応じて薬を組み合わせます。同じ「息苦しい」という症状でも、適した薬は同じとは限りません。[1・2・3]

この記事では、主に成人の喘息・COPDに使う吸入薬を扱います。前半では薬の種類と製品の違い、後半では疾患別の使い分け、吸入器、副作用、治療の見直し方を解説します。記載する使用回数は承認用法を理解するための情報であり、ご自身の処方を変更する指示ではありません。小児・妊娠中・授乳中は、年齢や状態に応じた個別の判断が必要です。

最初に押さえたい5つのポイント

  • 喘息の基本は、炎症を抑えるICSを含む治療です。
  • COPDの基本は、気管支を広げるLABA・LAMAです。
  • 2剤・3剤配合薬は、必要な成分の組み合わせで選びます。
  • 毎日の維持薬と発作時の薬には、使い方の違いがあります。
  • 効果が不十分なときは、吸入操作と診断の再確認も大切です。

1.なぜ飲み薬ではなく「吸入薬」を使うのでしょうか

吸入薬は、空気の通り道である気管支へ薬を届ける治療です。少ない薬の量で局所に作用させやすく、全身に届く飲み薬や注射薬と比べて、全身性の副作用を抑えやすいという利点があります。ただし、全身への影響がなくなるわけではありません。[1・4]

もう一つの特徴は、薬と吸入器が一組の治療になっていることです。十分な成分が入っていても、吸う速さ、準備の操作、噴霧とのタイミングが合わなければ、肺へ届く量が不足します。「処方されている量」と「実際に肺へ届く量」は同じではないため、吸入指導が治療効果を左右します。[20]

2.吸入薬は大きく5つの系統に分けられます

略語を覚えると、商品名が変わっても薬の役割を理解しやすくなります。

分類正式な意味主な役割代表的な成分
ICS吸入ステロイド薬気道の炎症を抑え、喘息の症状や増悪を予防するブデソニド、フルチカゾン、ベクロメタゾン、シクレソニド、モメタゾン
LABA長時間作用性β₂刺激薬気管支を長時間広げるホルモテロール、サルメテロール、ビランテロール、インダカテロール、オロダテロール
LAMA長時間作用性抗コリン薬気管支を縮める神経の働きを抑え、気道を広げるチオトロピウム、ウメクリジニウム、グリコピロニウム
SABA短時間作用性β₂刺激薬発作時の気管支収縮を速やかに和らげるサルブタモール、プロカテロール
SAMA短時間作用性抗コリン薬短時間作用する気管支拡張薬。急性期などで補助的に用いるイプラトロピウム

ICSは「炎症」、LABA・LAMA・SABA・SAMAは主として「気管支の収縮」に働きます。ただし、薬の系統だけで使用場面は決まらず、病名、配合成分、国内の承認用法を合わせて判断します。[1・2・4・10・11・12・13・34・35]

ICS:喘息の土台となる抗炎症治療

喘息では、気道に炎症があり、刺激に敏感になっています。ICSはこの炎症を抑える薬です。症状が落ち着いていても炎症が残ることがあるため、処方された維持治療を続ける意味があります。ICS単剤は、今起きている強い気管支収縮を数分で解除するための発作止めではありません。[1]

LABAとLAMA:違う経路から気管支を広げる

LABAはβ₂受容体を刺激し、気管支の平滑筋を緩めます。LAMAは、アセチルコリンがムスカリン受容体を介して気管支を収縮させる作用を抑えます。作用経路が異なるため、必要な患者さんでは併用による気管支拡張を期待できます。[4・10・11]

喘息でLABAを使うときは、ICSを含む治療と組み合わせます。LABA単独、あるいはICSを含まないLABA/LAMA配合薬だけで喘息を管理する治療は適切ではありません。 COPDに承認されているLABA/LAMA配合薬を、そのまま喘息の薬として使うことはできません。[2・11・12・13・14]

SABA:処方された発作時の使い方を確認する

サルタノールなどのサルブタモール製剤、メプチンなどのプロカテロール製剤が代表例です。喘息やCOPDの急な気管支収縮に用いられますが、気道の炎症そのものを十分に治療する薬ではありません。喘息では、発作止めだけに頼り、ICSを含む治療が不足する状態を避ける必要があります。[1・2・34・36]

SABAが処方されている患者さんが、発作時に指示どおり使うことには役割があります。問題は、使用回数が増えているのに治療全体を見直さず、繰り返し吸入して受診が遅れることです。

3.主な吸入薬の商品名・成分・吸入器を比較

以下は主な製品の比較です。一般名は読みやすさのため一部の塩・水和物名を省略しています。製品選択は「薬効の順位」ではなく、必要な成分、使用可能な規格、吸入操作、継続しやすさで判断します。

3-1.ICS単剤

代表的な商品名成分主な吸入器
フルタイドフルチカゾンプロピオン酸エステル粉末式/エアゾール
パルミコートブデソニドタービュヘイラー:粉末式
キュバールベクロメタゾンプロピオン酸エステルエアゾール
オルベスコシクレソニドエアゾール
アズマネックスモメタゾンフランカルボン酸エステルツイストヘラー:粉末式
アニュイティフルチカゾンフランカルボン酸エステルエリプタ:粉末式

ICS単剤にも、成分・粒子・器具・用法の違いがあります。この表は主な携帯吸入製剤を示し、すべての剤形・規格・年齢別用法を網羅するものではありません。[1・32・33]

3-2.ICS/LABA:炎症を抑えながら気管支を広げる2剤配合薬

商品名成分〔ICS+LABA〕吸入器・定期吸入の基本国内適応のポイント
シムビコートブデソニド+ホルモテロールタービュヘイラー。喘息は通常1回1吸入・1日2回、症状に応じ調整。COPDは1回2吸入・1日2回喘息・COPD。喘息で条件を満たす処方には発作時追加吸入の用法がある
ブデホルブデソニド+ホルモテロール粉末式。製品ごとの操作を確認喘息・COPD。後発品でも追加吸入が認められた製品がある
アドエアフルチカゾンプロピオン酸エステル+サルメテロールディスカスは1回1吸入・1日2回。成人のエアゾールは1回2吸入・1日2回喘息。COPDは250ディスカス・125エアゾールに限定
レルベアフルチカゾンフランカルボン酸エステル+ビランテロールエリプタ。1回1吸入・1日1回成人喘息は100・200、COPDは100のみ
フルティフォームフルチカゾンプロピオン酸エステル+ホルモテロールエアゾール。成人は通常50規格を1回2吸入・1日2回。症状に応じ125規格を1回2~4吸入・1日2回喘息。ホルモテロール配合でも発作時追加吸入に流用しない
アテキュラモメタゾンフランカルボン酸エステル+インダカテロールブリーズヘラー。1日1回、1カプセルの内容を吸入喘息。カプセルは吸入専用で、飲まない

ブデホルは「JG」「MYL」「ニプロ」で、成人喘息における定期吸入に加えた追加吸入用法を確認できます。ただし、後発品への変更時にも操作方法と処方された用法を確認します。シムビコートもブデホルも、すべての処方で自由に頓用できるわけではありません。[4・5・6・7・8・9・37・38]

3-3.LABA/LAMA:2種類の気管支拡張薬を組み合わせる

商品名成分〔LABA+LAMA〕吸入器成人の定期用法
アノーロビランテロール+ウメクリジニウムエリプタ:粉末式1回1吸入・1日1回
ウルティブロインダカテロール+グリコピロニウムブリーズヘラー:カプセル式1回1カプセルを吸入・1日1回
スピオルトオロダテロール+チオトロピウムレスピマット:ソフトミスト1回2吸入・1日1回
ビベスピホルモテロール+グリコピロニウムエアロスフィア:エアゾール1回2吸入・1日2回

これらは国内ではCOPDの維持治療に用います。ICSを含まないため、喘息の抗炎症治療の代わりにはなりません。また、発作時に回数を増やす薬ではありません。[11・12・13・14]

3-4.ICS/LABA/LAMA:3剤配合のトリプル吸入薬

商品名・規格成分〔ICS+LABA+LAMA〕吸入器・成人の定期用法国内適応
テリルジー100フルチカゾンフランカルボン酸エステル+ビランテロール+ウメクリジニウムエリプタ。1回1吸入・1日1回喘息・COPD
テリルジー200同上。ICS量が異なるエリプタ。1回1吸入・1日1回喘息
エナジア中用量・高用量モメタゾンフランカルボン酸エステル+インダカテロール+グリコピロニウムブリーズヘラー。1回1カプセルを吸入・1日1回喘息
従来のビレーズトリエアロスフィアブデソニド+ホルモテロール+グリコピロニウム〔7.2μg/噴霧〕エアロスフィア。1回2吸入・1日2回COPD
ビレーズトリ14.4エアロスフィアブデソニド+ホルモテロール+グリコピロニウム〔14.4μg/噴霧〕エアロスフィア。1回2吸入・1日2回喘息。成人・12歳以上に用法設定

3剤配合薬は、それぞれの成分の併用が必要な患者さんに用いる維持薬です。成分が3つあることだけを理由に、初めから全員に処方する薬ではありません。[15・16・17]

LAMA単剤:スピリーバにも規格による違いがあります

スピリーバの成分はチオトロピウムです。レスピマットでは、成人喘息に1.25μg規格を1回2吸入・1日1回用い、症状・重症度に応じて2.5μg規格を使用します。COPDは2.5μg規格を1回2吸入・1日1回です。喘息ではICSなどと併用します。[10]

ここで注意したいのは、「1日1回」と「1回1吸入」は別という点です。スピリーバ・スピオルトのレスピマットは1回2吸入で所定量を投与する設計であり、自己判断で1吸入へ減らすと必要量を満たしません。[10・13]

4.喘息では、ICSを含む治療を土台に選びます

喘息の治療目標は、日中・夜間の症状を抑えることに加え、救急受診や入院につながる増悪を防ぐことです。症状の頻度だけでなく、過去の発作、呼吸機能、発作時薬の使用状況を確認します。[2]

症状が軽い場合にも、抗炎症治療を考える

症状が時々しかない患者さんでも、強い発作が起こる可能性があります。毎日の低用量ICSなど、症状とリスクに合ったICSを含む治療を選びます。SABAだけで症状をその都度抑える方法を、喘息の長期管理の基本にしないことが重要です。[1・2・22]

ICSで不十分なら、ICS/LABAなどを検討する

低用量ICSで夜間症状や活動の制限が残る場合は、まず吸入手技と継続状況を確認し、そのうえでICS/LABAへの変更、ICS用量の調整、適切なMARTなどを検討します。使用回数が少ない方が続けやすいのか、朝夕の習慣に組み込む方が合うのかも選択材料です。[2・4・7]

LAMA・トリプル吸入は「追加する理由」がある場合に

ICS/LABAを適切に使っても増悪や気流制限が残る場合は、ICSの用量・治療方式を見直し、LAMA追加や3剤配合薬を検討します。LAMA追加による平均的な改善は、主に肺機能と増悪予防であり、すべての息切れが大きく改善するとは限りません。十分な治療でも増悪を繰り返す場合は、専門医で炎症のタイプや合併症を評価し、生物学的製剤なども含めて検討します。[2・10・15・16]

安定したら減量できることもある

中用量以上のICSで約3か月以上コントロールが良好な成人では、増悪歴や呼吸機能を確認して段階的な減量を検討できます。国内学会の検討では、これは条件付きの推奨です。薬で安定している可能性もあるため、症状がないことだけでICSを自己中止することは勧められません。[28]

5.シムビコートの追加吸入、MART・SMART・AIRの違い

「毎日の薬なのに、発作のときにも使える」と説明されることがあります。これは、特定の製剤と治療方式に限られます。

用語意味
AIRICSと速効性気管支拡張薬を組み合わせる発作時治療の考え方。ICS/ホルモテロールやICS/SABAが該当する。定期治療の有無までは決まらない
MART/SMART対応するICS/ホルモテロール配合薬を、毎日の維持治療と発作時の追加治療の両方に使う方法
AIR-only毎日の定期維持吸入を行わず、必要時のAIRで治療する方式

国際的にはAIR-onlyやMARTのエビデンスがありますが、海外の推奨と日本で承認された使い方は分けて理解する必要があります。 国内のシムビコート・確認したブデホル製品では、追加吸入は定期の維持療法に加えて行う用法であり、頓用だけの使用は認められていません。[2・4・5・37・38]

国内のMART相当用法で確認する条件

シムビコートの国内電子添文では、成人喘息で、維持療法として1回1~2吸入を1日2回使用する患者さんに、発作時の追加吸入を組み込めます。この用法を処方時に指定されていることが前提です。[4]

確認事項シムビコートの国内電子添文における内容
追加の方法発作時に1吸入。数分たっても持続する場合は、さらに1吸入
1回の発作での上限最大6吸入。維持吸入に続けて追加する場合は、維持分も含めて6吸入
1日の合計維持分と追加分を合わせ、通常8吸入まで。一時的に12吸入までの規定がある
受診の目安1日合計8吸入を超える場合は受診。回数にかかわらず、効きが悪い・急速に悪化する場合も速やかに受診
この追加用法を当てはめない場合頓用のみ、COPD、維持量が1回2吸入・1日2回を超える場合など

「12吸入まで自宅で待ってよい」という意味ではありません。 重い呼吸困難では吸入回数を数えるよりも、救急対応を優先します。薬の名前、1回量、1日上限、受診の条件を、個別の行動計画として医師と確認してください。[4]

この方式では、発作時には原則として指定された同じ薬を使い、別の発作止めを自己判断で重ねません。また、レルベアやアドエアを毎日の維持薬として使いながら、シムビコートだけを発作時に足す方法とも異なります。[2・4]

また、ホルモテロールが入っていても、フルティフォーム、ビベスピ、ビレーズトリを同じように追加することはできません。 成分が一部共通していることと、発作時の追加用法が検証・承認されていることは別です。[8・14・17]

6.COPDでは「息切れ」と「増悪」を分けて考えます

COPDでは、空気を十分に吐き出せず、肺に空気が残りやすくなります。気管支拡張薬は空気の通りを改善し、息切れや活動時の負担を和らげるために使います。薬物治療に加え、禁煙、身体活動、呼吸リハビリテーションなども大切です。[3・33]

初めて維持吸入を導入する場合の考え方

GOLD 2026では、症状の負担と過去1年間の増悪歴から初期治療を検討します。ここでいう増悪は、普段の状態を超えて息切れ・咳・痰が悪化する状態です。中等度・重度の判断は、医師が臨床状態を評価して行います。[3]

初期評価吸入薬選択の基本
過去1年間に中等度・重度増悪がなく、症状が少ない〔A群〕気管支拡張薬。ごくまれな症状を除き、長時間作用薬を優先して検討
過去1年間に中等度・重度増悪がなく、症状が多い〔B群〕LABA/LAMAを基本に検討
過去1年間に中等度・重度増悪が1回以上〔E群〕LABA/LAMAを基本に、好酸球300/μL以上などでは初期トリプルも検討

2026年版では、E群の閾値が「中等度または重度の増悪1回以上」に変更されています。 ただし、E群に該当することが、そのままICSの必須使用を意味するわけではありません。初期治療の分類と、すでに治療中の患者さんの薬を調整する手順も区別します。[3・39]

LABA/LAMAで息切れが残る場合

息切れが残るときは、吸入操作、デバイスの適合、服薬の継続、運動耐容能、心不全などの併存症を確認します。息切れだけを理由に、全員へICSを追加するわけではありません。[3]

ICS追加は、増悪歴・好酸球・喘息合併から判断

LABA/LAMAによる維持治療を適切に行っていても、中等度または重度の増悪が起こる患者さんでは、血中好酸球数や肺炎リスクを踏まえ、ICSを加えたトリプル治療を検討します。血液中の好酸球は、ICSによる増悪予防効果を予測する手がかりです。

血中好酸球数COPDでのICS追加を考える目安
100/μL未満増悪予防の追加利益は一般に小さく、他の悪化要因や治療選択も重視する
100~299/μL増悪歴などと合わせて検討。高いほど利益を期待しやすい
300/μL以上ICSの利益を得やすい。増悪歴がある患者さんでは有力な検討材料

100・300は、薬の効果が突然切り替わる境界線ではありません。効果は好酸球数と連続的に関係し、同じ数値でも増悪歴や喫煙状況などで判断が変わります。好酸球が300/μL以上だから喘息と診断できるわけではなく、COPDの目安を喘息のICS中止判断に使うこともできません。[3・26]

ICSには肺炎などの不利益もあります

COPDでは、ICSを含む治療による増悪抑制と、肺炎などの副作用の両方を考えます。IMPACT試験ではトリプル治療で増悪が減る一方、LABA/LAMA群より肺炎リスクが高くなりました。[25]

安定している患者さんでも、ICSを抜いてよいかは別の判断です。SUNSET試験では、トリプル治療中で頻回増悪のないCOPD患者を対象に、ICSを外してLABA/LAMAへ変更した群と、トリプルを続けた群を比較しました。患者全体では中等度・重度増悪率に有意差はありませんでしたが、血中好酸球数300/μL以上ではICSを外した群で増悪リスクが高まりました。喘息を合併する場合はICSを含む治療を維持する原則があり、自己中止は避けます。[3・27]

7.粉・スプレー・霧:吸入器の使い分け

同じ薬の系統でも、器具が変わると吸い方が変わります。高齢であることや肺機能の数値だけで決めず、実際にその器具を使えるかを確認します。

種類基本的な吸い方選ぶときに確認すること
DPI:ドライパウダー自分の吸気で粉を分散させる。基本は勢いよく、深く吸うその器具に必要な吸気を出せるか、薬の準備や残量確認ができるか
pMDI:エアゾール噴霧とタイミングを合わせ、ゆっくり深く吸う噴霧との同調、ボンベを押す力。必要時は適合するスペーサーや補助具
SMI:ソフトミストゆっくり出る霧を、ゆっくり深く吸う回す・開ける・押す操作、噴霧中に吸い続けられるか
ネブライザー機械で薬液を霧にして吸い込む対応薬液・機種、吸入時間、清掃、介助できる人の有無

各器具に必要な吸気は異なるため、「何L/分あればすべてのDPIが使える」といった一律の基準では選びません。DPIで十分に吸えなければ、pMDIとスペーサー、SMIなどの操作を実際に試し、適した方法を考えます。ネブライザーは携帯吸入器の操作が難しい場合の選択肢ですが、より強い薬を使う装置という意味ではありません。[20・21・40・41・42]

在宅療養では「毎日実施できること」まで確認する

在宅では、吸う力だけでなく、認知機能、手指の動き、視力、介助者の理解も重要です。例えば、カプセルを毎回セットする操作が難しい、押す力が足りない、朝夕の吸入を忘れやすいといった問題に対し、器具・補助具・使用回数を見直します。診察時や薬局で、普段どおりの吸入を実際に見せていただくことが役立ちます。[20]

8.吸入効果を左右する、毎日の使い方

製品によって細かな手順が違うため、ご自身の吸入器の説明書と指導内容を優先してください。基本となる確認点は次のとおりです。[20・21・40・41]

  1. 薬の準備をする。 カバー、レバー、回転、カプセル装填、初回の空噴霧など、製品固有の操作を確認します。
  2. 吸う前に、無理のない範囲で息を吐く。 DPIの吸入口へ息を吹き込むと、湿気で粉の状態が変わるため、器具から口を離します。
  3. 吸入口を適切にくわえる。 舌で塞がず、通気口も指で塞がないようにします。
  4. 器具に合った速さで吸う。 DPIの吸い方を、そのままpMDIに当てはめないことが大切です。
  5. 吸い終わったら、可能な範囲で数秒息を止める。 苦しいのに無理な息止めは行いません。
  6. 必要な吸入数と残量を確認する。 カプセル式では内容物の残りなど、器具別の確認方法に従います。
  7. ICSを含む薬の吸入後は口をすすぎ、可能ならのどもうがいして吐き出す。 うがいが難しい方は、口腔ケアの方法を相談します。

スペーサーを使用する場合は、適合する組み合わせと手順を確認します。一般に、複数回分をまとめて噴霧してから吸うのではなく、1噴霧ずつ吸入することが大切です。器具の洗浄・乾燥も、各製品の説明に従ってください。[2・20]

薬の味が弱いことだけでは、吸入の成功・失敗を判断できません。残量表示や操作の確認が重要です。[40]

9.副作用と持病に応じた注意点

ICS:声がれ・口腔カンジダ症と、長期高用量の影響

ICSでは、声がれ、のどの違和感、口の中のカンジダ症などが起こることがあります。吸入手技、うがい、適合するスペーサー、製品や用量の見直しが対策になります。全身性ステロイドより全身への影響は少ないものの、長期間の高用量では副腎機能、骨、眼などへの影響も確認します。副作用が気になるときは、突然やめずに相談してください。[4・32・30]

β₂刺激薬:動悸・ふるえ・低カリウム血症

SABA・LABAでは、動悸、頻脈、手のふるえ、不整脈、低カリウム血症などに注意します。過量吸入や成分の重複があると影響が強くなることがあります。[4・7・13]

循環器の持病がある方では、心不全・不整脈の状態や併用薬を確認します。例えば、フロセミドなどの利尿薬でカリウムが下がっている場合、β₂刺激薬の影響が重なる可能性があります。心疾患がある方すべてで使用できないわけではありませんが、症状と電解質を含めた判断が必要です。[4]

LAMA:口の渇き、排尿障害、緑内障

LAMAでは、口の渇きや尿が出にくくなる症状などに注意します。主要製品の国内添文では、閉塞隅角緑内障、前立腺肥大などによる排尿障害が禁忌として挙げられています。すべての緑内障や、排尿障害のない前立腺肥大を一律に同じ扱いにはしません。[10・11・13・16]

薬液やミストが目に入らないようにします。眼痛・充血・かすみ、光の周りに輪が見えるなどの症状が出た場合は、急性閉塞隅角緑内障の可能性があるため、速やかに医療機関を受診してください。チオトロピウムなどでは腎機能の確認も必要です。[10・13]

牛乳蛋白アレルギーと乳糖不耐症は別です

一部の粉末吸入薬には乳糖が含まれ、微量の乳蛋白が混在することがあります。牛乳蛋白アレルギーがある方は、吸入薬を選ぶ前に必ず伝えてください。 一方、牛乳でお腹がゆるくなる乳糖不耐症は、乳糖の消化に関する問題で、乳蛋白アレルギーとは異なります。[5・7・15・30・31]

配合薬同士の重複と、他の薬との相互作用

例えば、レルベアとテリルジーには共通するICS・LABAが入っています。別の商品名だからといって、追加してよいとは限りません。薬を切り替えた後に以前の吸入薬を続けてしまわないよう、新旧どちらを使うか、お薬手帳と現物で確認します。[7・15]

また、一部の抗真菌薬・抗ウイルス薬など、吸入薬の代謝に影響する薬もあります。飲み薬、貼り薬、点眼薬を含め、使用中の薬を伝えてください。[4・9]

10.「200μg」と「100μg」で強さを比べられるのでしょうか

異なる吸入薬は、数字だけで強さを比較できません。 成分の種類、粒子の性質、器具内で量り取る量、吸入口から出る量、肺へ届く量が異なるためです。[2・4・9]

具体例が、アテキュラとエナジアのモメタゾン量です。

製品中用量のモメタゾン配合量高用量のモメタゾン配合量
アテキュラ160μg320μg
エナジア80μg160μg

電子添文には、配合量は異なるものの、肺へ到達して薬効発現が期待されるモメタゾンの粒子量は、中用量同士・高用量同士で同程度と記載されています。「エナジアに変更したのでステロイドが半分になった」と単純には説明できません。[9・16]

製品名の100・200、1回量、1日の合計量、容器全体の吸入回数も、それぞれ別の数字です。

11.吸入薬が効かないときに見直すこと

薬を増やす前に、次の点を確認します。

確認する点具体的に見ること
診断喘息・COPDを裏付ける経過や呼吸機能検査があるか
操作準備、吸う速さ、噴霧との同調、息止めができているか
継続吸い忘れ、残量切れ、使い方の勘違いがないか
環境・併存症喫煙、鼻炎、胃食道逆流、肥満、睡眠の問題などが関与していないか
別の病気心不全、不整脈、肺炎、貧血などが重なっていないか

喘息は検査時に症状が落ち着いていることもあり、1回の正常な呼吸機能やFeNOだけで完全に否定できるわけではありません。一方、咳が続くことや、吸入後に一時的に楽になったことだけで喘息と断定することもできません。[2]

横になると苦しい、むくみが増えた、体重が急に増えた、胸痛や脈の乱れがあるときは、心臓の評価も必要です。急な悪化では、肺塞栓症や気胸など、通常の喘息・COPD治療だけでは対応できない原因も考えます。[3・29]

診療での使い分けを、よくある状況から考える

以下は考え方を示す例であり、個別の診断・処方を決めるものではありません。

状況考え方
喘息で夜間症状があり、発作時薬が増えているICSを含む維持治療の実施状況を確認し、ICS/LABAやMARTなどの調整を検討
COPDで階段の息切れが残るが、増悪はない気管支拡張、吸入器、身体活動、心臓などの併存症を見直す
COPDでLABA/LAMA中にも増悪し、好酸球が高い肺炎リスクなどを考慮し、ICS追加を検討
高齢で粉末を十分に吸い込めない薬を増量する前に、他の器具・補助具・介助方法を確認
吸入しても息切れが続き、むくみや起坐呼吸がある心不全など別の原因を評価

12.使い分けの根拠となった主な臨床試験

吸入薬の価値は、吸った直後の感覚だけでなく、増悪や入院をどれだけ減らすかで評価します。ただし、試験ごとに対象患者、薬、比較相手、評価項目が違うため、異なる試験の数字を並べて製品順位をつけることはできません。

試験対象・比較主な結果と読み方
Novel START〔2019〕軽症成人喘息。ブデソニド/ホルモテロール頓用とSABA頓用などを52週比較年間増悪率は0.195対0.400、率比0.49。SABA単独依存を見直す根拠。非盲検のAIR-only試験で、MART試験ではなく、国内の頓用単独承認を意味しない。[22]
Kunaら〔2007〕有症状の成人・思春期喘息3,335例。MARTと、固定維持薬+別の発作時薬を6か月比較MARTは初回重症増悪までの期間を延長。重症増悪はMART 12件、FP/サルメテロール群19件、固定ブデソニド/ホルモテロール群16件/100人・6か月。特定の用法を検証した結果。[23]
FLAME〔2016〕増悪歴のあるCOPD。インダカテロール/グリコピロニウムと、サルメテロール/フルチカゾンを比較LABA/LAMA群が増悪予防で優位。COPDではICSが入っている方が常に優れる、という理解を支持しない。[24]
IMPACT〔2018〕症状・増悪歴のあるCOPD。ICS/LABA/LAMAと2剤治療を52週比較中等度・重度の年間増悪率はトリプル0.91、LABA/LAMA 1.21、率比0.75。一方、肺炎はトリプルで多い。対象患者を選び、利益と不利益を比較する必要がある。[25]

「年間増悪率」は1人あたりのイベント発生頻度であり、「何%の患者さんが治った」という意味ではありません。特定の試験で増悪が減ったことを、すべての喘息・COPD患者さん、すべての製品へ一律に当てはめないことが重要です。

13.受診を早めたい症状と、救急の目安

次のような場合は、早めに医療機関へ

  • 夜間や明け方の咳・息苦しさで目が覚める。
  • 発作時の吸入薬を使う回数が増えた、効いている時間が短くなった。
  • 普段より息切れが強い、痰の量や色が変わった、発熱を伴う。
  • 吸入後の動悸、声がれ、口の中の白い付着物、排尿しにくさが気になる。
  • 吸入器がうまく使えているか分からない。

特に、処方された発作時薬を指示どおり使っても十分に改善しない場合は、速やかに医療機関へ連絡し、受診してください。強い呼吸困難や会話困難などがあれば119番を利用します。[4・29・43]

14.姫路市で喘息・COPD、吸入薬について相談したい方へ

えぷろんクリニックでは、長引く咳、息切れ、喘息、COPDなどの相談・継続診療を行っています。呼吸器専門医と循環器専門医が在籍し、症状に応じて肺と心臓の両面から評価します。[29]

診察では症状や使用中の薬を確認し、必要に応じて呼吸機能検査、呼気NO検査、採血、胸部レントゲン、心電図・心エコーなどを検討します。精密検査や入院が必要な場合は、地域の専門医療機関と連携します。通院が難しい方の在宅療養についてもご相談いただけます。[29・44]

呼吸器専門医の外来は水曜・木曜です。受診前に担当医・診療案内をご確認ください。ご相談の際は、お薬手帳と実際に使っている吸入器をお持ちいただくと、成分の重複や操作を確認しやすくなります。

姫路市で喘息・COPDや長引く咳・息切れにお悩みの方は、えぷろんクリニックへご相談ください。症状と検査結果、吸入薬の使い方を確認しながら、必要な治療や専門医療機関との連携を検討します。

よくある質問

Q1.吸入薬を処方されたということは、重い病気なのでしょうか?

吸入薬は、軽い症状の喘息でも使用する基本的な治療です。吸入薬を使っていることだけでは、病気の重さは判断できません。症状、増悪歴、肺機能、必要な治療量を合わせて評価します。[1・2]

Q2.咳が治まったら、吸入薬をやめてもよいですか?

自己判断での中止は避けてください。薬で症状が抑えられている場合があります。安定が続けば減量を検討できることもありますが、病名、増悪歴、使用中の薬によって判断が異なります。[4・27・28]

Q3.シムビコートとレルベアは、どちらがよいですか?

一律には決まりません。シムビコートは通常1日2回で、条件を満たす成人喘息ではMART相当の用法があります。レルベアは1日1回の維持薬です。病状、吸入手技、継続のしやすさ、発作時の治療方式から選びます。[4・7]

Q4.吸入後にうがいを忘れたら、もう一度吸う必要がありますか?

うがいを忘れたことを理由に、追加吸入する必要はありません。気づいた時点で口をすすぎ、次回から吸入後の習慣にします。特にICSを含む薬では、口やのどに残る薬を減らすことが、局所の副作用対策になります。[30・32]

Q5.姫路市で吸入薬が合っているか、相談できますか?

えぷろんクリニックでは、喘息・COPDの診療に加え、使用中の薬や吸入方法についてご相談いただけます。お薬手帳と吸入器をお持ちください。呼吸器専門医の診療をご希望の場合は、水曜・木曜の担当日をご確認ください。[29]

医学情報の確認日:2026年10月17日。国内の適応・用法はPMDA電子添文、審査報告書、製造販売元の公式資料を確認しています。国際ガイドラインの推奨は、国内承認と区別して記載しました。

参考文献・公式資料

本文の番号から各資料へ移動できます。国内の適応・用法は電子添文等を優先し、国際ガイドライン・臨床試験の記載とは区別しました。資料の確認日:2026年10月17日。

  1. 環境再生保全機構(ERCA).成人ぜん息の薬物療法
  2. GINA.Summary Guide for Asthma Management and Prevention 2026
  3. GOLD.Global Strategy for Prevention, Diagnosis and Management of COPD: 2026 Report.初期治療・継続治療・ICSの項目
  4. PMDA.シムビコートタービュヘイラー 電子添文
  5. PMDA.ブデホル吸入粉末剤「JG」電子添文
  6. PMDA.アドエア ディスカス・エアゾール 電子添文
  7. GSK.レルベア エリプタ 電子添文
  8. PMDA.フルティフォーム エアゾール 電子添文
  9. PMDA.アテキュラ吸入用カプセル 電子添文
  10. PMDA.スピリーバ レスピマット 電子添文
  11. PMDA.アノーロ エリプタ 電子添文
  12. PMDA.ウルティブロ吸入用カプセル 電子添文
  13. PMDA.スピオルト レスピマット 電子添文
  14. PMDA.ビベスピ エアロスフィア 電子添文
  15. PMDA.テリルジー エリプタ 電子添文
  16. PMDA.エナジア吸入用カプセル 電子添文
  17. PMDA.ビレーズトリ14.4エアロスフィア 審査報告書(2026年)
  18. アストラゼネカ.ビレーズトリの気管支喘息に対する国内承認(2026年8月24日)
  19. アストラゼネカ.ビレーズトリ14.4エアロスフィア56吸入 発売のご案内(2026年10月15日)
  20. ERCA.吸入器の特徴と注意点
  21. ERCA.pMDI(加圧式定量噴霧吸入器)の特徴と注意点
  22. Beasley R, et al. Controlled Trial of Budesonide–Formoterol as Needed for Mild Asthma. N Engl J Med. 2019;380:2020–2030. doi:10.1056/NEJMoa1901963
  23. Kuna P, et al. Effect of budesonide/formoterol maintenance and reliever therapy on asthma exacerbations. Int J Clin Pract. 2007;61:725–736. doi:10.1111/j.1742-1241.2007.01338.x
  24. Wedzicha JA, et al. Indacaterol–Glycopyrronium versus Salmeterol–Fluticasone for COPD(FLAME). N Engl J Med. 2016;374:2222–2234. doi:10.1056/NEJMoa1516385
  25. Lipson DA, et al. Once-Daily Single-Inhaler Triple versus Dual Therapy in Patients with COPD(IMPACT). N Engl J Med. 2018;378:1671–1680. doi:10.1056/NEJMoa1713901
  26. Pascoe S, et al. Blood eosinophils and treatment response with triple and dual combination therapy in COPD: analysis of the IMPACT trial. Lancet Respir Med. 2019;7:745–756. doi:10.1016/S2213-2600(19)30190-0
  27. Chapman KR, et al. Long-Term Triple Therapy De-escalation to Indacaterol/Glycopyrronium in COPD(SUNSET). Am J Respir Crit Care Med. 2018;198:329–339. doi:10.1164/rccm.201803-0405OC
  28. 岡田直樹ほか.CQ6 成人喘息患者の長期管理において,中用量以上のICSにより12週間以上コントロール良好な場合にICSの減量は推奨されるか.アレルギー.2024;73(2):206–212. doi:10.15036/arerugi.73.206
  29. えぷろんクリニック.呼吸器内科の診療案内
  30. ERCA.すこやかライフ:吸入薬・吸入ステロイドに関する解説
  31. NIDDK.Definition & Facts for Lactose Intolerance
  32. PMDA.アニュイティ エリプタ 電子添文
  33. ERCA.COPDの治療に用いられる薬
  34. PMDA.サルタノール インヘラー 医薬品情報
  35. PMDA.アトロベント エロゾル 医薬品情報
  36. PMDA.メプチン エアー 医薬品情報
  37. PMDA.ブデホル吸入粉末剤「MYL」電子添文
  38. PMDA.ブデホル吸入粉末剤「ニプロ」電子添文
  39. GOLD.Key Changes to the GOLD 2026 Report
  40. ERCA.タービュヘイラーの正しい吸入方法
  41. ERCA.レスピマットの正しい吸入方法
  42. ERCA.ネブライザーについて
  43. ERCA.成人ぜん息:発作が起きたときの対処法
  44. えぷろんクリニック.公式サイト・診療案内
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