
患者さん・ご家族向け
「心臓がドキドキする」「脈が飛ぶ」「胸の奥で大きく一度打つ」。動悸は、心臓の拍動をいつもより強く、速く、あるいは不規則に感じる症状です。動悸があるから必ず不整脈というわけではなく、不整脈があっても自覚しないことがあります。ここでは、心臓の電気の仕組みから、原因の見分け方、検査、受診の目安まで詳しく説明します。
動悸は「脈の速さ」と「拍動の感じ方」を分けて考える
心臓の拍動を感じる程度は、心拍数だけでは決まりません。心臓が一回に送り出す血液量、収縮の強さ、胸の姿勢、周囲の静かさ、注意の向き方などにも影響されます。夜、横になって初めて拍動を強く感じることもあります。自覚症状の強さと病気の重さが一致しないため、症状の出方と検査を組み合わせて判断します。
「脈が飛ぶ」の後に大きく打つのはなぜ?
期外収縮では、予定より早いタイミングで心臓が収縮します。早い拍動では心臓に十分な血液がたまっておらず、手首では弱くしか触れないことがあります。その後の間隔が長くなると、次の拍動が強く感じられ、「一拍飛んで、ドンと打つ」という自覚につながります。ただし、脈を触った感覚だけで期外収縮と診断することはできません。
正常な心臓は、電気の合図を順番に伝える
通常、右心房の洞結節から電気の合図が始まり、心房、房室結節、ヒス束、脚、プルキンエ線維を通って心室へ伝わります。この順序により、心房から心室へ血液を受け渡し、全身と肺へ送り出す動きが調整されます。
洞結節:拍動の合図を作る
房室結節:心房と心室をつなぐ
心室:合図に合わせて血液を送る
不整脈には、合図が速すぎる・遅すぎる場合、合図が別の場所から出る場合、伝わり方に異常がある場合があります。電気が回路の中を繰り返し回る「リエントリー」や、細胞内の電気的変化をきっかけとした異常な興奮など、起こる仕組みも一つではありません。
不整脈による動悸と、その特徴
| 代表的な状態 | 感じ方の例 | 確認すること |
|---|---|---|
| 期外収縮 | 脈が飛ぶ、胸が一度大きく打つ | 頻度、心臓の基礎疾患、心機能、症状との対応 |
| 発作性上室頻拍 | 突然始まり、突然止まる速い拍動 | 発作中の心電図、持続時間、失神や血圧低下の有無 |
| 心房細動 | 速さや間隔がばらばらに感じる | 心電図、心拍数、心機能、脳梗塞リスクなど |
| 心室頻拍など | 速い動悸に、めまい・失神を伴う場合がある | 緊急性と心臓病の評価。症状が強ければ救急要請 |
| 徐脈・房室ブロック | 脈が遅い、間が空く、強い拍動を感じる | 薬、伝導障害、息切れ・ふらつき・失神との関係 |
この表は症状を整理するためのものです。感じ方だけでは区別できず、同じ人に複数の原因が重なることもあります。期外収縮は治療不要のことも多い一方、頻発する場合や心臓病を伴う場合には追加評価が必要です。心房細動では、動悸の強さとは別に、脳梗塞予防が必要かどうかも検討します。
不整脈以外でも、心臓の拍動は速く・強くなる
運動、発熱、脱水、痛み、睡眠不足、緊張などで交感神経が働くと、正常な洞結節の拍動が速くなります。体が必要とする血液を届ける反応ですが、原因が続く場合は、その背景を調べます。
貧血・甲状腺・呼吸や循環の問題
貧血で酸素を運ぶ力が低下すると、心臓が血流を増やして補おうとするため、動悸や息切れが出ることがあります。甲状腺ホルモンが過剰な場合には、拍動が速くなり、汗、手の震え、体重減少などを伴うことがあります。心不全、呼吸器疾患、低酸素なども動悸の背景になります。
薬・嗜好品・ストレスも確認する
カフェイン、飲酒、喫煙、気管支拡張薬、一部のかぜ薬やサプリメントなどが関係する場合があります。薬を自己判断で中止せず、処方薬と市販薬を含めてお薬手帳や現物を持参してください。ストレスや不安が関係する動悸もありますが、新しい症状を初めから「気のせい」と決めつけないことが大切です。
診察では、動悸が出たときの記録が役立つ
- いつ、何をしているときに始まったか
- 突然始まるか、徐々に速くなるか。何分・何時間続くか
- 規則的か、不規則か。測れた場合の脈拍数
- 胸痛、息切れ、冷汗、めまい、失神を伴うか
- 発熱、体重変化、服薬、飲酒、睡眠不足との関係
- 心臓病の既往や、若い年齢での突然死の家族歴があるか
記録するために救急受診を遅らせる必要はありません。スマートウォッチ等の記録があれば診察で参考にできますが、通知がないことや正常表示だけで病気を否定することはできません。
検査は「発作をとらえること」と「背景を調べること」が目的
12誘導心電図は、その時点の心臓の電気の動きを記録します。症状が出ていないときには正常のこともあります。発作をとらえるためにホルター心電図などを検討し、症状の頻度に応じて記録期間や方法を選びます。
採血では、必要に応じて貧血、電解質、甲状腺機能などを調べます。心エコーでは、心臓の形、弁、収縮機能などを評価します。すべての方にすべての検査が必要なわけではなく、診察で緊急性と必要性を判断します。
当院の動悸の受診案内、不整脈・心房細動の診療案内も参考にしてください。
繰り返す動悸は相談し、危険な症状は救急要請する
新しく始まった動悸、頻度が増えた動悸、運動時の症状、生活に支障がある症状、心臓病のある方の動悸は、内科・循環器内科で相談してください。症状が続いている場合は、発作中の心電図が診断に役立つことがあります。
強い胸痛、安静時の強い息苦しさ、失神、意識がはっきりしない、冷汗を伴う急な悪化がある場合は119番へ連絡してください。脈拍の数値だけを見て待たず、症状を優先します。
動悸についてのよくある質問
Q. 心電図が正常なら問題ありませんか?
検査中に発作がなければ正常のこともあります。症状の経過を確認し、必要に応じて長時間の記録や追加検査を考えます。
Q. 期外収縮は必ず治療が必要ですか?
治療不要の場合もあります。頻度、症状、心臓病の有無、心機能などを踏まえて判断します。
Q. ストレスによる動悸と不整脈は、感じ方で区別できますか?
感じ方だけでは区別できません。初めての症状や繰り返す症状は、決めつけずに相談してください。
Q. スマートウォッチの不整脈通知だけで診断できますか?
診察の参考にはなりますが、通知だけで確定診断はできません。記録を持参し、医療用の心電図等で確認します。
Q. 姫路市で動悸を相談したいときは?
えぷろんクリニックでは、経過や服薬を確認し、心電図・採血・心エコーなどの必要性を判断します。高度な検査や入院治療が必要な場合は専門医療機関と連携します。