HEART TRANSPLANTATION — HISTORY, SCIENCE AND SOCIETY

心臓移植の歴史と現在
世界と日本の歩み、移植後管理、ドナー不足を考える

えぷろんクリニックの医療コラム|医師紹介(松尾晃樹院長・循環器専門医)

心臓移植は、適切な薬物治療や原因に応じたカテーテル治療・手術を行っても予後が極めて不良な末期心不全に対する、確立した治療選択肢です。補助人工心臓(VAD)で循環を支えながら移植を待つ場合もあり、VADによる治療が失敗するまで待つことが条件ではありません。手術が成功すれば終わりではありません。免疫抑制、拒絶反応と感染症の監視、移植心冠動脈病変(CAV)の早期発見、腎機能・代謝・悪性腫瘍の管理を、生涯にわたり続けます。

日本の移植後成績は世界的にみても良好です。しかし、その裏側には著しく少ないドナー数と、移植を受けた方のStatus 1待機期間が平均5年前後に及ぶという、日本特有の現実があります。本稿では、心臓移植を「歴史」「待機」「手術後の管理」「社会制度」の4つの視点から、専門的な内容まで含めて解説します。

1,144件脳死下の心臓移植累計
2026年10月7日更新
775人心臓移植希望登録者
2026年9月30日現在
306人5年以上の待機者(8月末)
同月772人の約39.6%
92.9%国内移植後5年生存率
2025年末レジストリ
数字を読むときの注意

「待機者数」「年間移植件数」「累積移植件数」「移植を受けた人の待機期間」は、集計日や対象集団が異なります。登録者総数は2026年9月末、待機期間別内訳は8月末の公表値です。5年累積生存率92.9%は、1999年2月〜2025年12月の国内移植1,046例(成人・小児を含む)を2025年末に集計した値で、2025年の移植患者だけの成績や個人の予後ではありません。累計1,144件はJOTの「心臓」欄の値で、別掲の心肺同時移植5件は含めていません。[1][1][8]

心臓移植とは――どのような患者さんが対象になるのか

心臓移植は、機能を失った心臓を摘出し、ドナーから提供された心臓を移植する治療です。日本では脳死下で提供された心臓を用います。心臓は腎臓や肝臓の一部と異なり、生体ドナーから提供することはできません。したがって、心臓移植の機会は、脳死下で提供可能なドナーの存在に直接左右されます。

対象となるのは、拡張型心筋症、拡張相肥大型心筋症、虚血性心筋症、拘束型心筋症、先天性心疾患などによる末期心不全で、最適な内科治療や外科治療を行っても予後が極めて不良と判断される患者さんです。単に左室駆出率(EF)が低いだけで決まるものではなく、心不全入院の反復、強心薬依存、運動耐容能、右心カテーテル所見、腎・肝機能、肺血管抵抗、感染症・悪性腫瘍の有無、服薬継続や支援体制まで、多職種で総合的に評価します。

専門的ポイント:移植は「病気の重さ」だけでは決まらない

移植適応では、不可逆的な肺高血圧、活動性感染症、治療困難な悪性腫瘍、重い他臓器障害、著しいフレイルなど、移植後の利益を損なう因子も評価します。年齢も重要ですが、暦年齢だけでなく生物学的年齢と全身状態を含めた個別判断が必要です。

世界の心臓移植の歴史――手術成功から「長く生きる治療」へ

1905年Alexis CarrelとCharles Guthrieが、犬を用いた異所性心臓移植実験を報告。血管吻合技術が移植外科の基礎になりました。
1960年Richard LowerとNorman Shumwayが、犬で同所性心臓移植の再現性ある手技を確立。現在の心臓移植手術につながる技術的土台を築きました。
1964年James Hardyがチンパンジーの心臓を人に移植。異種移植でしたが、臨床心臓移植へ進む過程の重要な一歩でした。
1967年南アフリカのChristiaan Barnardが世界初のヒトからヒトへの同所性心臓移植を実施。レシピエントは18日後に肺炎で死亡しましたが、移植心は機能していました。
1970年代Stanfordを中心に、心筋生検による拒絶反応診断、ドナー・レシピエント選択、免疫抑制管理が体系化されました。
1980年代シクロスポリンの導入により、拒絶反応を抑えながら感染症リスクとの均衡を取りやすくなり、生存率が大きく改善しました。
1990年代以降タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、mTOR阻害薬、感染予防、冠動脈内画像、機械的補助循環が進歩。心臓移植は「手術の成功」から「長期予後と生活の質を守る治療」へ変化しました。
現在遺伝子発現プロファイル、ドナー由来cell-free DNA、抗HLA抗体・DSA解析、ex-vivo灌流、循環停止後提供(DCD)心移植などが発展しています。ただし、利用可能性や保険適用、標準化は国・施設で異なります。

日本の心臓移植の歴史――1968年から再出発まで

1968年札幌医科大学で和田寿郎教授らが日本初の心臓移植を実施。レシピエントは83日後に死亡しました。ドナーの死の判定や移植適応をめぐる疑義と社会的議論が、その後の日本の脳死・移植医療に長い影響を与えました。
1997年「臓器の移植に関する法律」が施行され、厳格な要件のもと、脳死下の心臓・肺・肝臓などの提供と移植が法的に可能になりました。
1999年2月28日、大阪大学で臓器移植法施行後初の心臓移植を実施。日本の心臓移植医療が約30年を経て再出発しました。
2010年改正臓器移植法が全面施行。本人の書面による意思表示がなくても、本人が拒否していなければ家族の承諾で提供可能となり、15歳未満からの脳死下臓器提供への道も開かれました。
2010年代植込型LVADの普及、小児用体外設置型VAD(Berlin Heart EXCOR)の導入、移植実施施設と多職種管理の整備が進み、長期待機を支える体制が発展しました。
2025年国内心臓移植は年間116件、1999年以降の累計は1,046件となりました。一方、Status 1の平均待機期間は1,844日(約5.0年)でした。
2026年2026年春から、移植を受けなければ1か月以内に死亡する危険が高いと予測される60歳未満の患者を対象としたStatus 1A制度が運用開始。3月23日の学会合同発表では「3月末運用開始」、同年の学会論文では「4月導入」と説明されています。LVAD不適応病態、難治性右心不全、致死性不整脈、治療抵抗性VAD感染などを個別審査し、医学的緊急度を配分に反映する仕組みが加わりました。[9][3]
「日本では移植まで約4年半」は、すでに短く見える可能性があります

日本臓器移植ネットワークの一般向け資料では、過去の移植例に基づく平均的な待機期間は約4年半とされています。一方、日本心臓移植学会の2025年末レジストリでは、その年に移植を受けた症例のStatus 1平均待機期間は1,844日、成人では1,959日でした。いずれも移植を受けた方についての過去の集計で、今から登録する方の待機期間を予測する数字ではありません。血液型、体格、優先度、病状、ドナーとの適合性などで個人差があります。

日本の待機管理――補助人工心臓が「時間をつなぐ」

ドナーが少ない日本では、移植適応と認定されても、すぐに移植へ進めるとは限りません。重症心不全で自己心だけでは全身循環を維持できない場合、植込型左室補助人工心臓(LVAD)がBridge to Transplantation:BTTとして用いられます。2026年3月の学会合同発表では、2022年末までの国内集計を基に、心臓移植レシピエントの95%以上がLVADから移植に至ったと説明されています。これは資料の公表年と集計対象年が異なる数字です。

最適な心不全治療と原因治療
移植・VAD適応の多職種評価
JOT登録と優先度判定
LVAD等で長期待機を支える
ドナー適合時に移植手術

LVADは退院や社会復帰を可能にする一方、ドライブライン感染、脳卒中、消化管出血、右心不全、ポンプ血栓・機器不具合などのリスクがあります。抗凝固療法、機器パラメータ、創部、血圧、溶血所見、右心機能、栄養、リハビリテーションを継続的に管理します。日本の長い待機期間では、「移植まで生かす」だけでなく、合併症を抑え、移植後に回復できる身体機能を保つことが重要です。

一方、拘束型心筋症、右室優位の心筋症、一部の先天性心疾患などでは、左室が小さい、右心不全が主体であるなどの理由からLVADが適さないことがあります。こうした「重症だが長期待機を支える装置と相性が悪い」患者さんに、2026年開始のStatus 1Aが移植機会をどう確保するかが注目されています。

心臓移植後の管理――現在は何を、どのように見ているのか

移植後管理の目的は、免疫を弱めることそのものではありません。拒絶反応を防ぐために必要な免疫抑制と、感染症・腎障害・悪性腫瘍を増やし過ぎないことの均衡を、時間経過に応じて調整することです。検査間隔や薬剤目標値は、移植施設、移植後の時期、拒絶歴、感染リスク、腎機能などで異なります。

1.免疫抑制療法

一般にはカルシニューリン阻害薬(主にタクロリムス)、代謝拮抗薬(ミコフェノール酸モフェチルなど)、副腎皮質ステロイドを組み合わせます。腎障害、CAV、拒絶歴などによりmTOR阻害薬を含むレジメンへ調整することがあります。[11]

2.拒絶反応の監視

急性細胞性拒絶(ACR)と抗体関連型拒絶(AMR)を区別します。移植早期は定期的な心筋生検が中心で、心エコー、心電図、血液検査、ドナー特異的抗HLA抗体(DSA)などを組み合わせます。一部の低リスク成人では、末梢血の遺伝子発現解析(GEP)などを活用して生検の頻度を減らす方法もあります。検査の利用可能性や適応は移植施設によって異なります。[11]

3.感染症の予防

CMV、ニューモシスチス、真菌などを、ドナー/レシピエントの血清学的リスクと免疫抑制の強さに応じて予防・監視します。不活化ワクチンなどの非生ワクチンは種類と接種時期を移植チームと確認して計画的に用います。タクロリムスやミコフェノール酸モフェチルの投与中は、生ワクチンの接種は禁忌です。発熱が目立たない感染症にも注意が必要です。[11][6]

4.移植心冠動脈病変(CAV)

CAVは免疫学的・非免疫学的な因子による血管内皮障害と内膜肥厚が進み、冠動脈がびまん性に狭くなる病態です。太い冠動脈だけでなく、枝や微小血管にも及びます。移植心は除神経され、狭心痛が乏しいことがあります。冠動脈造影、IVUS/OCT、負荷画像などを用いて症状がなくても監視します。[11]

5.腎機能・代謝・悪性腫瘍

カルシニューリン阻害薬による腎障害、高血圧、糖尿病、脂質異常症、骨粗鬆症を管理します。皮膚がんや固形がんの検診を年齢とリスクに応じて続け、移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)にも注意します。EBウイルスの検査による監視は、移植前の感染状況などから高リスクと判断された患者さんで検討します。[11]

6.生活・リハビリ・服薬支援

移植直後の除神経心では安静時心拍数が高めで、運動開始時の心拍応答が遅れやすいため、十分なウォームアップとクールダウンが重要です。遠隔期には部分的な再神経支配が起こる例もあります。服薬アドヒアランス、妊娠、就学・就労、歯科治療、旅行を含め、多職種で生活を支えます。[11]

急性細胞性拒絶と抗体関連型拒絶

急性細胞性拒絶と抗体関連型拒絶の違い
項目急性細胞性拒絶(ACR)抗体関連型拒絶(AMR)
主な機序T細胞を中心とする免疫反応抗体、補体、血管内皮障害が中心
評価心筋生検の細胞浸潤・心筋障害をISHLT分類で評価病理・免疫染色、DSA、移植心機能、血行動態を統合
治療の考え方重症度に応じてステロイドパルス、抗胸腺細胞グロブリンなど免疫抑制強化、血漿交換、免疫グロブリン、抗B細胞・抗形質細胞治療などを病態別に検討

倦怠感、息切れ、浮腫、体重増加、動悸、血圧低下、徐脈・頻脈は拒絶反応の手がかりになり得ますが、無症候性の拒絶もあります。逆に、同じ症状は感染症や薬剤副作用でも起こります。移植後患者さんの体調変化を、症状だけで自己判断することはできません。

薬物相互作用は「追加薬」だけでなく食品にも注意

タクロリムスやシクロスポリンは治療域が狭く、CYP3AやP糖蛋白を介する相互作用を受けます。マクロライド系抗菌薬、アゾール系抗真菌薬、一部のカルシウム拮抗薬、抗てんかん薬、グレープフルーツなどで血中濃度が変化することがあります。市販薬、サプリメント、漢方を含め、開始・中止前に移植チームへ確認する必要があります。

移植後に早急な連絡が必要な症状
  • 発熱、悪寒、咳、息苦しさ、下痢・嘔吐が続く
  • 急な体重増加、むくみ、尿量低下
  • 新しい動悸、失神、血圧低下、安静時の頻脈または徐脈
  • 免疫抑制薬を内服できない、飲み忘れた、誤って重複した
  • 新しい薬・サプリメントを処方または購入した

移植後の具体的な連絡基準は、各移植施設から渡される指示を最優先してください。強い呼吸困難、意識障害、胸部症状、ショックを疑う状態では119番が必要です。

日本はなぜ心臓ドナーが少ないのか

2024年の人口100万人あたり心臓移植数は、日本0.91件、韓国3.75件、米国13.57件でした。日本は韓国の約4分の1、米国の約15分の1です。これは移植手術の技術不足を示す数字ではありません。むしろ、国内移植後5年生存率92.9%という良好な成績に対して、移植機会が少なすぎることを示しています。ただし、生存率の国際比較には、レシピエントの年齢・基礎疾患、長期待機を乗り越えた症例が選択される影響、ドナー条件などの差があり、数字だけで医療の優劣を決めることはできません。

原因を「日本人の意識」だけ、あるいは「オプトイン制度だから」と一つに還元するのは正確ではありません。少なくとも次の要因が重なっています。

  1. 脳死と人の死をめぐる歴史的・社会的背景:1968年の和田移植後に生じた不信は、脳死下提供をめぐる議論に長く影響しました。
  2. 本人の意思を家族が知らない:提供する・しないのどちらの意思も共有されていないと、突然の場面で家族が判断を背負うことになります。
  3. 提供可能性を拾い上げる院内体制:重篤な脳障害の患者さんを早期に認識し、家族に選択肢を提示し、コーディネーターへつなぐには、救急・集中治療現場の人員、教育、手順が必要です。
  4. 提供施設の負担:法的脳死判定、全身管理、家族支援、手術室・検査・搬送調整は大きな人的負担を伴います。提供できる施設が制度上・実務上限られることも影響します。
  5. ドナー評価と臓器利用の限界:高齢化、循環動態、感染、腫瘍、心機能、搬送距離・虚血時間などにより、提供意思があっても心臓移植に至らない場合があります。
「オプトアウトに変えれば解決する」とは限りません

本人の意思や家族への確認の方法は国ごとに異なります。例えば英国NHSは、家族に本人の意思を確認して支援を求め、実際に家族が反対する場合は提供を進めないと説明しています。制度だけで提供数が決まるわけではありません。提供可能者の認識、院内コーディネーション、集中治療・家族支援、国民の信頼、透明な配分制度を一体で整える必要があります。

ドナー不足が患者さんにもたらすもの

日本臓器移植ネットワークの最新総覧では、2026年9月30日時点の心臓移植希望登録者は775人です。待機期間別の直近公表集計は8月31日時点で、772人のうち306人が5年以上待機しています。長期間のLVAD補助が可能になったことは大きな進歩ですが、それは「待機の問題が解決した」ことを意味しません。

  • LVAD感染、脳卒中、出血、右心不全など、時間とともに蓄積する合併症
  • 頻回の通院、機器管理、抗凝固療法と生活上の制約
  • 就学・就労、介護者、妊娠・出産、心理面への長期的影響
  • LVADが適さない拘束型心筋症、右室主体の病気、複雑先天性心疾患などに生じる不利益
  • 小児では成長に伴う体格・機器・家族生活上の課題

2026年のStatus 1A制度は、この構造的な不公平の一部を、医学的緊急度で補正しようとする改革です。ただし、限られたドナーを誰に優先するかという配分の変更であり、ドナー不足そのものを解消する制度ではありません。公平性の検証、施設間差の監視、移植後成績の維持が欠かせません。

これからの心臓移植――増やすべきは「提供の圧力」ではなく選択を支える体制

臓器提供は、提供する意思も提供しない意思も尊重されるべきです。必要なのは、家族に提供を迫ることではなく、本人の意思が不明なまま家族だけが重い判断を背負う状況や、提供の意思があっても医療体制のために選択肢が失われる状況を減らすことです。

  • 運転免許証、マイナンバーカード、意思登録などで本人の考えを示し、家族と話す
  • 救急・集中治療施設で、提供可能性を早期に認識する仕組みを整える
  • 院内移植コーディネーターと家族支援を拡充する
  • ドナー管理、臓器評価、搬送、摘出チームを地域で支える
  • 高リスクドナーの適正利用、ex-vivo心灌流、DCD心移植などを、倫理・法制度・安全性の議論とともに検討する
  • 配分ルールと成績を継続的に公開し、社会的信頼を守る

心臓移植は、一人のドナー、家族、救急・集中治療スタッフ、コーディネーター、摘出チーム、搬送、移植施設、そして移植後を支える地域医療がつながって初めて成立します。手術室だけで完結する医療ではありません。

姫路市で重症心不全・心臓移植について相談したい方へ

心臓移植は、移植実施施設で厳格な適応評価を受ける治療です。しかし、そこへ至る前の段階――薬物治療を最適化する、心筋症や虚血・弁膜症を評価する、心不全入院を繰り返す方を早めに専門施設へつなぐ――には、地域の循環器診療が大きく関わります。

えぷろんクリニック院長は、国立循環器病研究センター移植医療部で重症心不全、補助人工心臓、心臓移植患者の管理を担当し、現在も兵庫県立はりま姫路総合医療センターで重症心不全外来と心不全チーム活動に従事しています。当院そのものは心臓移植実施施設ではありませんが、症状・検査所見・治療歴を整理し、必要な方を適切な専門医療機関へつなぐ役割を担います。

えぷろんクリニックで相談できること

  • 息切れ、むくみ、体重増加、動悸、胸痛などの評価
  • 心電図、24時間ホルター心電図、心エコー、胸部レントゲン
  • BNPを含む血液検査と、腎機能・肝機能・貧血・電解質の確認
  • 心不全薬の調整、血圧・糖尿病・脂質異常症の管理
  • 心不全退院後の再入院予防と心臓リハビリテーションの相談
  • 高度心不全治療が必要と考えられる場合の基幹病院・専門施設への紹介

姫路市で心不全にお悩みの方、心臓移植や補助人工心臓について説明を受けた方は、えぷろんクリニックまでご相談ください。症状や検査結果を確認しながら、必要に応じて適切な検査や専門医療機関との連携を行います。

心臓移植についてよくある質問

Q.心臓移植はどのような人が対象ですか?

最適な薬物治療、カテーテル治療、手術などを行っても予後不良と考えられる末期心不全が対象です。年齢、肺血管抵抗、他臓器機能、感染症、悪性腫瘍、生活・支援体制などを移植施設で総合評価します。

Q.家族から心臓を提供する生体心臓移植はできますか?

できません。心臓全体を必要とするため、生体ドナーから提供することはできません。日本の心臓移植は脳死下のドナーからの提供によって行われます。

Q.日本では心臓移植まで何年待ちますか?

JOTの一般向け資料では移植を受けた方の平均待機期間は約4年半、2025年の国内レジストリでは同年に移植を受けた方のStatus 1平均待機期間は1,844日(約5.0年)、成人では1,959日(約5.4年)でした。集計の対象や期間が異なり、今から登録する方の予測待機期間ではありません。血液型、体格、優先度、医学的適合性などで大きく異なります。

Q.心臓移植後も免疫抑制薬は必要ですか?

原則として生涯必要です。拒絶反応を防ぎながら感染症、腎障害、糖尿病、悪性腫瘍などを抑えるため、血中濃度と副作用を見ながら組み合わせや用量を調整します。

Q.移植した心臓でも心筋梗塞は起こりますか?

起こり得ます。特に移植心冠動脈病変(CAV)は冠動脈にびまん性の狭窄を起こします。移植心は除神経され胸痛が乏しいことがあるため、症状がなくても定期検査が重要です。

Q.心不全が進んでいるか、地域のクリニックでも相談できますか?

相談できます。息切れ、むくみ、体重増加、低血圧、腎機能悪化、心不全入院の反復などを評価し、高度心不全治療が必要と考えられる場合は専門施設へ紹介します。緊急性が高い症状では救急受診が優先です。

出典・参考文献

  1. 日本臓器移植ネットワーク「移植希望登録者数―現登録者数」(2026年9月30日現在)/「心臓の内訳」(2026年8月31日現在)
  2. 日本循環器学会「2025年改訂版 心臓移植に関するガイドライン」(国内の適応・歴史・移植後管理)
  3. 日本臓器移植ネットワーク「心臓移植希望者選択基準」(2026年3月16日改正適用)/藤田知之「日本の新しい心臓移植アロケーション」移植. 2026;61(1):45–49.
  4. 日本臓器移植ネットワーク「移植希望者の現状」(受術者の平均待機期間)/NHS「Understanding consent for organ donation」(英国の本人意思・家族への確認)
  5. Stolf NAG. History of Heart Transplantation: a Hard and Glorious Journey. Braz J Cardiovasc Surg. 2017;32(5):423–427.(1905年原報を引用した研究者による歴史解説)
  6. PMDA「プログラフ電子添文」「セルセプト電子添文」/ISHLT「2025年移植患者ワクチン声明」
  7. 日本臓器移植ネットワーク「脳死での臓器提供」(2026年10月7日更新)
  8. 日本心臓移植学会「心臓移植レジストリ報告:1999年2月~2025年12月31日」
  9. 日本循環器学会・日本心臓移植学会「心臓移植Status 1A制度開始にあたっての発表」(2026年3月23日)
  10. 日本臓器移植ネットワーク「日本と海外の比較」
  11. Velleca A, et al. The International Society for Heart and Lung Transplantation (ISHLT) guidelines for the care of heart transplant recipients. J Heart Lung Transplant. 2023;42:e1-e141.
  12. Peled Y, et al. ISHLT Guidelines for the Evaluation and Care of Cardiac Transplant Candidates. 2024.
  13. Nakatani T, et al. The Registry Report of Heart Transplantation in Japan (1999–2013). Circ J. 2014.
  14. Brink JG, Hassoulas J. The first human heart transplant and further advances in cardiac transplantation at Groote Schuur Hospital and the University of Cape Town. Cardiovasc J Afr. 2009;20:31-35.
  15. 日本臓器移植ネットワーク「The Law Concerning Human Organ Transplants」

本ページは心臓移植に関する一般的な医学情報を提供するもので、個別の移植適応、優先度、薬剤調整を判断するものではありません。心臓移植後の患者さんは、移植施設から示された管理方針を最優先してください。統計値と制度は2026年10月14日に確認した公開資料に基づき、今後変更される可能性があります。