えぷろんクリニック

褥瘡・創傷ケア / 医学解説

褥瘡の見方・治療・薬の使い分け創の評価から外用薬・被覆材の選択まで

傷の色だけで薬を選ばない。
評価・除圧・血流・感染・水分管理から考える、褥瘡治療。

DESIGN-R®2020外用薬・被覆材の比較心不全・腎機能への配慮

資料確認日:2026年10月16日 / 前半:患者さん・ご家族向け 後半:専門解説

「お尻が赤くなっている」「踵が黒い」「軟膏を塗っているのに床ずれが治らない」。褥瘡(じょくそう)の治療では、傷の色だけで薬を選ぶことはできません。大切なのは、圧迫を減らし、血流と全身状態を確認したうえで、壊死・感染・水分の状態に合わせて治療を変えることです。

前半では患者さん・ご家族向けに受診とケアの要点をまとめ、後半では医療・介護職の方にも役立つよう、評価方法と外用薬・被覆材の選び方を詳しく解説します。本記事は一般的な医療情報であり、個別の創を診察せずに処方を決めるためのものではありません。

急な悪化がある場合:赤みの拡大、膿、強い痛み、発熱などは当日中の医療相談を。反応が悪い、強い息苦しさ、冷汗・ぐったりなどがあれば、通常予約を待たず119番などの救急対応を優先してください。

患者さん・ご家族へ

褥瘡・床ずれで困ったときに、まず知っておきたいこと

床ずれは「皮膚だけの傷」とは限りません

褥瘡は、圧迫やずれによって皮膚・皮下組織が傷つく状態です。血液が届きにくくなるだけでなく、組織そのものの変形も関係します。仙骨部、お尻、踵、腰骨の周囲などのほか、医療機器が接する場所にも生じます。寝たきりの方だけでなく、長時間同じ姿勢で座る方も注意が必要です。[21][4]

表面が小さくても、皮膚の下に広がる空洞がある場合があります。紫色の変化や血豆のような水疱は、深部の損傷を示すこともあります。一方、おむつが当たる範囲のただれは、尿や便による皮膚炎の場合もあり、両方が重なることもあります。見た目だけで「床ずれ」と決めつけず、原因から確認します。[4][5]

治療の中心は、薬より先に「圧迫を減らすこと」です

体位の調整、体圧分散マットレス、座位姿勢やクッションの見直しを組み合わせます。踵では、適切に下腿を支えて踵を寝具から浮かせる方法があります。ただし、支える場所に新たな圧迫が集中しないよう確認が必要です。体圧分散用具を使っていても、体位調整が不要になるわけではありません。[7][20]

体位変換の間隔は、皮膚の状態、自力で動けるか、使っている寝具、痛みや呼吸の状態によって調整します。「何時間おきなら必ず安全」という一律の決まりではありません。在宅では、ご家族だけで無理を重ねるのではなく、訪問看護やケアマネジャーと続けられる方法を考えることが重要です。[7]

傷は「乾かしすぎず、ふやかしすぎず」

創は生理食塩水や、状況に応じた清潔な流水などでやさしく洗浄し、適切な湿潤環境を保ちます。傷から出る液を吸収する薬・被覆材もあれば、乾燥を防ぐものもあります。周囲の皮膚が白くふやける、液が漏れる、逆に被覆材が固着する場合は、水分管理が合っていない可能性があります。[18][2]

赤くきれいな傷に抗菌薬や消毒薬を長期間使い続ければよいわけではありません。逆に、感染した深い傷を市販の保護材で密閉して様子を見るのも適切ではありません。黒い部分を自宅で切る、剥がす、針で突くことは避けてください。特に踵の乾燥した黒色壊死は、血流と感染の有無を確認してから方針を決めます。[6][8][18]

受診をすすめる症状と、救急の目安

  • 早めに相談:押しても消えない赤み、水疱、紫色・黒色への変化、傷の拡大、液漏れ、痛みが続く場合。
  • 当日中に、早めに医療機関へ:赤みが周囲へ広がる、膿が出る、痛みが急に強くなる、発熱する、急に食べられなくなる、普段と様子が違う場合。
  • 119番で救急要請:呼びかけへの反応が悪い、強い息苦しさ、冷汗やぐったりする状態など、全身状態が急に悪化している場合。119番で救急車を呼び、通常の予約や問い合わせを待たないでください。

高齢の方や血流が悪い方では、感染していても発熱や赤みが目立たないことがあります。傷だけでなく、元気、食事量、意識、呼吸の変化も医療者に伝えてください。[8]

食事と持病の管理も治療の一部です

食事量の低下や体重減少があれば、エネルギー・たんぱく質が足りているかを評価します。ただし、心不全や腎機能障害がある方に、水分や栄養補助食品を一律に増やすことはできません。むくみ、腎機能、嚥下状態などを踏まえ、主治医や管理栄養士と調整します。[19]

ここから専門解説

褥瘡の見方:色だけでなく、原因・深さ・周囲皮膚を評価する

専門的な評価では、「何色の創か」より先に、なぜその場所に傷ができたのか、治癒を妨げる要因が何かを考えます。失禁関連皮膚炎(IAD)、皮膚裂傷、動脈血流不全による潰瘍、接触皮膚炎などとの鑑別が必要です。[4]

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診察で確認する4つの領域
確認する領域診察・記録の要点治療につながる問い
原因と荷重部位、寝姿勢・座位、ずれ、医療機器、体圧分散用具同じ場所に負荷が繰り返しかかっていないか
血流と全身状態皮膚温、末梢動脈、糖尿病・腎機能、浮腫、食事量、活動性局所治療だけで治る条件がそろっているか
広さと深さ洗浄後の創面、最大の広がり、深さ、ポケット、露出組織表面の小ささに隠れた損傷はないか
壊死・感染・水分壊死、肉芽、滲出液、洗浄後の臭気、痛み、周囲皮膚除去・感染制御・吸水・保湿のどれを優先するか

滲出液は「多い・少ない」だけでなく、被覆材の種類と交換までの時間も合わせて評価します。臭気も、交換前だけでなく洗浄後に残るかを確認します。写真を記録する場合は同意を得て、同じ条件で撮影し、個人情報の管理に配慮します。[3][4][8]

褥瘡のステージ分類とDESIGN-R®2020の使い方

国際的なステージ分類は、どの組織まで傷ついているかを表します。以下は理解のための要約であり、正式な分類は原典と診察所見で確認します。[5]

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国際的な褥瘡分類の概要
分類主な所見見落としたくない点
ステージ1皮膚は保たれているが、圧迫しても消えない発赤などを認める皮膚が破れていないことは「放置してよい」という意味ではない
ステージ2真皮が露出する部分層の皮膚欠損脂肪やスラフが見える創、失禁によるただれを一括して分類しない
ステージ3皮膚全層が欠損し、皮下脂肪が見えることがある筋・腱・骨などの露出や直接の触知はない
ステージ4筋・腱・骨などの深部構造が露出、または直接触知できるポケットや深部感染の評価も必要
分類不能壊死組織などが覆い、損傷の深さを確定できない分類のためだけに、安定した踵の壊死を除去しない
深部損傷褥瘡(DTI)深い赤色・紫色などの変化、血性水疱などを認める表面より深い損傷が疑われ、経過中に顕在化することがある

DESIGN-R®2020では、治療経過を共通の言葉で追います

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DESIGN-R®2020の観察項目:採点表の転載ではなく、臨床上の意味を要約
項目観察すること
D:Depth深さ。創底を確認できるか、DTIが疑われるかも評価する
E:Exudate滲出液の量。実際の処置・交換の状況と合わせて判断する
S:Size創の広がり。公式の測定方法に沿って記録する
I:Inflammation / Infection炎症・感染所見。2020年版には臨界的定着疑いの項目がある
G:Granulation肉芽組織の状態と創面に占める程度
N:Necrotic tissue壊死組織の有無・性状
P:Pocket皮膚の下に広がる空洞の範囲

D(深さ)は合計点に含めず、E・S・I・G・N・Pを合計します。総点だけでなく、「滲出液は減ったがポケットが増えた」など、各項目の変化を読み取ることが重要です。「臨界的定着疑い」は、細菌の存在やバイオフィルムを確定する検査ではなく、その項目だけで全身抗菌薬を開始するものでもありません。[3][8]

褥瘡治療の優先順位:除圧・血流・壊死・感染・水分管理

治療計画は、次の順序で組み立てると整理しやすくなります。ただし、感染症の緊急対応と除圧などは並行して進めます。これは一つの薬を機械的に選ぶアルゴリズムではなく、見落としを減らすための実務的な整理です。

01

負荷を取り除く

圧迫・ずれ・座位・寝具を見直す。

02

血流と全身を評価

末梢循環、栄養、持病、治療目標を確認する。

03

壊死・感染に対応

除去の適否と感染の広がりを判断する。

04

水分を調整する

外用薬と被覆材を一組として選び直す。

05

治癒を支え、再評価

肉芽・上皮化を保護し、停滞の原因を探る。

体位変換は「一律2時間おき」で完結しません

国際ガイドライン第4版では、適切な全身用体圧分散サーフェスを使用している褥瘡リスクのある人の多くで、2時間または3時間ごとの体位変換を選択肢とする条件付き推奨が示されています。ただし、エビデンスの確実性は非常に低く、すでに褥瘡がある人に、その間隔を無条件に当てはめる推奨ではありません。皮膚の反応、患者の希望、睡眠、痛み、呼吸循環の状態を見て調整します。[7]

踵の黒い壊死は、血流評価より先に軟らかくしない

乾燥して密着し、周囲の発赤・腫脹や排液などを伴わない安定した踵の壊死は、必ずしも除去しません。特に虚血が疑われる場合は、除圧と観察を行いながら血流評価を優先します。反対に、排膿、軟化、周囲炎症、全身状態の悪化などがあれば、安定した壊死という前提が崩れるため、速やかな再評価が必要です。[6]

下肢では皮膚温や動脈の触知などを確認し、必要に応じてABI・足趾の血圧評価などの追加検査や血管専門診療につなげます。局所の「血流改善薬」を塗ることは、重い動脈血流不全に対する評価や治療の代わりにはなりません。[4][16]

褥瘡の感染:消毒薬・抗菌薬を使う前に区別すること

慢性創から細菌が検出されることと、治療を要する感染症があることは同じではありません。新たな痛み、滲出液の増加、脆く出血しやすい肉芽、創の拡大、周囲へ広がる発赤などを、全身状態と一緒に判断します。臭気だけで感染の有無や重症度を決めることもできません。[8]

局所感染と、全身抗菌薬が必要な感染を分ける

局所にとどまる問題では、洗浄、必要なデブリードマン、圧迫・湿潤環境の是正と、適応を選んだ局所抗菌治療を検討します。周囲へ広がる蜂窩織炎、深部感染、敗血症、骨髄炎などでは、全身抗菌薬や外科的な感染源への対応が必要になることがあります。菌名や薬剤選択は、感染部位・重症度・腎機能・既往の培養結果などで変わります。[6][8]

培養は結果が治療方針に役立つ場面で行い、洗浄・必要な処置後の適切な検体を採取します。深部感染が問題となる場合は、表面をぬぐっただけの検体より組織検体が有用なことがあります。ただし、重い感染症への対応を、理想的な検体が取れるまで遅らせてはいけません。[8]

「ぬるぬるしている=バイオフィルム」ではありません

治療しても炎症や治癒停滞を繰り返す創では、バイオフィルムの関与を考えることがあります。しかし、肉眼で確定することはできません。見た目だけを理由に、健常な組織まで繰り返し削ることは避けます。局所抗菌治療も目的と評価期限を決め、反応が乏しければ治療全体を見直します。[8]

骨が見えるだけでは、骨髄炎の確定にはなりません

骨露出は重要な所見ですが、それだけで骨髄炎と断定しません。診察、画像、必要に応じた骨組織の培養・病理などを組み合わせて判断します。長期の抗菌薬投与や手術の判断が関わるため、専門診療との連携が重要です。[6]

褥瘡の外用薬は「有効成分」と「基剤」で使い分ける

外用薬には有効成分と、それを保持する「基剤」があります。基剤の性質は、創の水分環境に影響します。同じ肉芽形成を助ける薬でも、水分を吸うタイプと、乾燥を防ぐタイプでは使いどころが異なります。[2]

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「薬効」と「基剤」を分けて考える
基剤・製剤の特徴創への働きの考え方代表例と注意点
油脂性基剤水分の蒸発を抑え、保護する白色ワセリン、アズノール、プロスタンディンなど。多量の滲出液の吸収は期待しにくい。
水を含む乳剤性クリーム乾いた付着物などに水分を与えやすいゲーベンクリームなど。すでに湿潤が強い創では過湿に注意する。
マクロゴールなどの水溶性基剤・吸水性製剤余分な水分を吸収する方向に働くアクトシン、ブロメライン、一部のヨウ素製剤など。製剤ごとに吸水性は異なり、乾燥しすぎにも注意する。

実際の湿潤環境は、外用薬だけでなく、上に重ねる被覆材、交換間隔、創から出る液の量で決まります。薬と被覆材を別々に処方するのではなく、一つの組み合わせとして評価することが大切です。[2][18]

褥瘡に使う薬の比較:ユーパスタ・ゲーベン・フィブラストなど

以下は、代表的な薬の役割を整理したもので、特定の薬の優越性を示す表ではありません。製品の承認された効能・用法、禁忌、患者背景を確認し、診察した医師が選択します。在庫・供給状況や採用薬は施設ごとに異なります。

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褥瘡に使用する主な外用薬の使い分け
一般名・代表的な商品名主な役割・基剤選択を検討する状態注意点・切り替えの考え方
ユーパスタ軟膏
精製白糖・ポビドンヨード
ヨウ素による抗菌作用と、白糖・基剤による吸水。滲出液があり、局所感染への対応も必要な創で検討。乾燥した創や、感染が落ち着いた上皮化期へ漫然と継続しない。ヨウ素等への過敏症、甲状腺・腎機能、広範囲・長期使用に注意。[9]
カデックス軟膏0.9%
ヨウ素/カデキソマー製剤
ヨウ素の抗菌作用と、担体の吸水性を利用。滲出液を伴う創で、局所感染制御と水分調整を考える場合。製剤残留も含めて交換時に洗浄・確認する。乾燥しすぎ、ヨウ素関連の注意点に留意。[10]
ヨードコート軟膏0.9%
ヨウ素
抗菌作用と、吸水性を持つ製剤設計。滲出液を伴い、抗菌作用も必要と判断した場合。カデックス等と同じヨウ素製剤でも、基剤・取り扱いは同一ではない。乾燥とヨウ素関連の有害事象に注意。[11]
ゲーベンクリーム1%
スルファジアジン銀
局所抗菌作用。水を含むクリームで、乾いた壊死・付着物の軟化に働く。血流を評価したうえで、比較的乾燥した壊死を伴い、感染への対応も必要な創で検討。酵素的デブリードマン薬ではない。多量の滲出液では過湿に注意。成分・スルホンアミド過敏症等を確認。ブロメラインとの混合は避ける。[12][2]
ブロメライン軟膏
ブロメライン
タンパク分解酵素による壊死組織の除去。血流、出血リスク、感染への対応を評価して、酵素的除去が適すると判断した壊死創。感染治療の代わりにはならない。痛み・出血・正常組織への刺激に注意。壊死が除去され新しい肉芽ができたら継続しない。[13]
アクトシン軟膏3%
ブクラデシンナトリウム
肉芽形成・上皮化を促す作用。水溶性基剤による吸水性もある。壊死・感染への対応後、滲出液がある肉芽形成期の創で検討。抗菌薬ではない。乾燥傾向の創では基剤による乾きすぎに注意し、滲出液の減少に合わせて再評価。[14][2]
フィブラストスプレー
トラフェルミン(bFGF)
細胞増殖・血管新生などを介して肉芽形成を促す。創床を整え、感染など治癒を妨げる因子への対応を行った創。投与部位に悪性腫瘍、またはその既往がある場合は禁忌。抗菌作用はない。約4週間で改善しなければ他の治療を検討する。[15]
プロスタンディン軟膏0.003%
アルプロスタジル アルファデクス
局所血流・肉芽形成・上皮化を促す作用。油脂性基剤。壊死・感染への対応後、滲出液が少なく乾燥傾向の創で検討。重篤な心不全、出血中、妊娠中・妊娠の可能性、成分過敏症は禁忌。抗血栓薬使用時も注意。動脈血流不全そのものの治療を代替しない。[16][2]
白色ワセリン/アズノール軟膏
アズノール:ジメチルイソプロピルアズレン
油脂性基剤で保護し、乾燥を防ぐ。感染や壊死が問題とならない、滲出液の少ない浅い創・上皮化期の保護で検討。抗菌薬や壊死除去薬の代わりにはならない。滲出液が多い場合は別途水分管理が必要。[2]

ヨウ素製剤は「同じ薬」として扱わない

ユーパスタ、カデックス、ヨードコートはいずれもヨウ素を利用しますが、白糖、担体、吸水性高分子などの構成が異なります。創の水分量、洗浄時の除去性、周囲皮膚への刺激、患者背景から選びます。「ヨウ素の濃度が高そうだから強い」といった比較だけでは決められません。広い創に長く使う場合や甲状腺・腎機能の問題がある場合は、添付文書に沿った評価が必要です。[9][10][11]

フィブラストと悪性腫瘍:部位の区別が重要です

禁忌は、投与する部位に悪性腫瘍がある場合と、その部位に悪性腫瘍の既往がある場合です。他の部位のがんや既往を、すべて同じ禁忌と扱うわけではありませんが、添付文書に沿った慎重な判断が必要です。通常と異なる経過の難治性潰瘍では、腫瘍性病変などを除外する評価も検討します。[15][1]

旧資料を読む際の注意:トレチノイン トコフェリル(オルセノン軟膏)は、2026年1月にメーカーから販売中止が案内されています。本表では、現在の選択肢として通常比較する薬とは分けています。個別の残存在庫の有無を示すものではありません。[17]

ガイドラインの推奨は「すべての創に有効」という意味ではありません

日本皮膚科学会の2023年版褥瘡診療ガイドラインでは、ステージIII以上の褥瘡に対するカデキソマー・ヨウ素、ブクラデシン、ポビドンヨード・シュガーの外用に、弱い推奨が示されています。この評価は特定の臨床疑問に対するもので、他の薬がすべて無効であるという意味でも、3剤のどれかが必ず最良という意味でもありません。比較試験の限界と、目の前の創の状態を分けて考える必要があります。[1]

褥瘡の被覆材:吸う・保湿する・保護するを使い分ける

被覆材(ドレッシング材)は、傷を単に隠すものではありません。吸水、保湿、保護、交換時の損傷軽減を担います。薬を塗らず、適切な被覆材を中心に管理するほうが合う創もあります。[18]

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創面を覆う材料と、周囲皮膚を守る材料の使い分け
種類主な目的・検討する場面注意点
非固着性の接触層肉芽や新しい上皮を保護し、交換時の損傷を減らす接触層だけでは液を十分に吸えない製品もあるため、必要な二次被覆材を組み合わせる
フォーム材滲出液の吸収と保護吸収量・厚み・粘着部の刺激を確認する。厚い材を貼っても除圧の代わりにはならない
ハイドロコロイド比較的浅く、滲出液が少量〜中等量の創の湿潤維持感染、壊死、血流不良がある創を自己判断で密閉しない
アルギン酸塩・ゲル化繊維系比較的多い滲出液の吸収乾燥した創に漫然と使わない。深部に使用する場合は過充填・残留を避ける管理が必要
ハイドロゲル乾燥した創に水分を補い、自己融解を助ける安定した虚血性の踵壊死を、血流評価前に湿らせる目的では使わない
皮膚保護剤・亜鉛華軟膏など創の周囲を滲出液、尿、便から保護する創面の治療と周囲皮膚の保護を分ける。保護剤を深い創へ一律に充填するものではない

被覆材は、創の深さ・滲出液・周囲皮膚と製品の仕様に合わせて選びます。感染が疑われるときは、単に「銀入り」などへ交換するだけで済ませず、診断と感染源への対応を行います。交換時に新しい肉芽を傷つける、漏れや浸軟が続く、乾燥して貼りつく場合は、組み合わせを見直します。[18][8][2]

傷の変化に合わせた薬の切り替え:5つの考え方

次の表は、診察時の考え方を説明するための整理です。患者さんが写真や色だけで薬を選ぶための処方表ではありません。

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状態別の治療方針:単純な「色と薬」の対応では決めない
創の状態最初に確認すること局所治療の考え方
乾燥し、密着した黒色の踵壊死血流、感染所見、治療目標除圧・保護・観察を優先することがある。自動的に軟化・除去へ進めない。
壊死があり、滲出液・炎症も目立つ感染の広がり、血流、排液の必要性適切な壊死への処置と感染制御、吸水を組み合わせる。軟膏だけで深部感染を待たない。
壊死・感染は落ち着いたが、滲出液が多い残る圧迫、ポケット、過湿吸水性の薬・被覆材を検討する。抗菌目的の薬を続ける必要があるか再評価する。
きれいな肉芽が育ち、滲出液が減った乾きすぎ、交換時の外傷吸水を弱め、保護・保湿と上皮化への配慮に切り替える。
表面は赤いが、大きさが変わらない圧迫・ずれ、血流、感染、栄養、創縁、別の病態成長因子を追加する前に、治癒を止めている原因を探し直す。

これらの判断は、ガイドライン・薬剤の添付文書・創の評価を組み合わせたものです。たとえば、滲出液が減ったのに強い吸水性の組み合わせを続けると、治療の目的と創の状態がずれてしまいます。最初に合っていた治療が、治癒の途中から合わなくなることがあります。[2][6][8]

深い褥瘡の治療:デブリードマン・陰圧閉鎖療法・専門診療

デブリードマンは、創を治す条件を整える処置です

デブリードマンは、治癒を妨げる壊死組織などを除去する処置です。外科的・保存的鋭的処置、酵素的除去、自己融解を利用する方法などから、血流、感染、出血、痛み、患者の希望を踏まえて選択します。広い感染性壊死や深部の膿瘍では、軟膏の効果を待つより、適切な外科的対応が優先される場合があります。[1][6]

陰圧閉鎖療法(NPWT)や手術を検討する場面

深い褥瘡などでは、創床と全身状態を整えたうえで陰圧閉鎖療法を検討します。壊死、感染源、露出組織、出血リスク、周囲皮膚などの評価が必要で、除圧や感染対策を置き換える治療ではありません。難治例では再建手術も選択肢になりますが、再発を防ぐ生活・介護環境まで含めた検討が必要です。[1][6]

「治す」だけが唯一の目標とは限りません

重い基礎疾患や終末期では、治癒の見込み、処置の痛み、移送や体位変換の負担を考慮します。患者さんの意向に沿って、痛み、臭気、滲出液を抑え、過ごしやすさを優先することも妥当な目標です。処置を増やすことと、患者さんにとってよい医療は同じではありません。[6]

褥瘡と栄養管理:心不全・腎機能障害がある方で注意すること

局所処置が整っていても、摂取不足や全身状態の悪化があれば治癒が進みにくくなります。体重の変化、実際の摂取量、筋肉量、嚥下、食事介助の状況などを評価します。血清アルブミンだけで栄養状態を診断しないことも重要です。炎症、浮腫、腎機能などの影響を受けるためです。[19]

WHSガイドラインでは、摂取不足があり栄養支援を行う際の目安として、エネルギー30〜35 kcal/kg/日、たんぱく質1.25〜1.5 g/kg/日が示されています。ただし、すべての患者にそのまま処方する値ではありません。体格、肥満、浮腫を含む体重、腎機能、病状、療養目標などから調整します。[6]

糖尿病などの持病、痛み、失禁、活動性も合わせて整えます。在宅では「処置が正しいか」だけでなく、必要な物品が届くか、介護者が無理なく交換できるか、困ったときに連絡できるかまで確認して、治療を続けられる体制をつくります。

褥瘡が治らないとき:薬を追加する前に再評価する

処置のたびに、感染の悪化、出血、痛み、液漏れ、浸軟、薬や粘着材による皮膚炎を確認します。経過は同じ尺度と測定方法で記録し、創の面積だけでなく、深さ、肉芽、滲出液、ポケット、症状がどう変化しているかを読み取ります。[3][4]

除圧や適切な処置を行っても、おおむね2週間で改善の兆しが乏しい場合は、感染を含め治癒を妨げる要因を再評価する目安になります。ただし、急な悪化を2週間待つという意味ではありません。局所抗菌治療についても、反応を確認して中止・変更・追加評価を判断します。[6][8]

褥瘡・床ずれの治療に関するよくある質問

Q. 褥瘡には、ユーパスタとゲーベンのどちらがよいですか?

A. どちらかが常に優れているわけではありません。ユーパスタは抗菌と吸水、ゲーベンは抗菌と水を含むクリームの性質が選択に関わります。壊死・感染・滲出液・血流を評価して決めます。[9][12][2]

Q. 踵が黒くなっています。黒い部分は取ったほうがよいですか?

A. 自己判断で取らないでください。乾燥して密着し、感染所見がない安定した踵の壊死は、除去しない場合があります。血流と感染の評価が先です。排膿や周囲の赤み、全身状態の悪化があれば速やかに受診してください。[6]

Q. 床ずれは、毎回消毒したほうが治りやすいですか?

A. 一律に消毒を続けるのではなく、やさしい洗浄と適切な水分管理が基本です。抗菌性の薬剤は、感染の状態と創への影響を評価して使います。処方中の薬を自己判断で中止せず、治療の目的を確認してください。[18][8]

Q. 心不全があります。褥瘡の塗り薬にも注意が必要ですか?

A. 必要です。プロスタンディン軟膏は重篤な心不全に禁忌で、出血や抗血栓薬にも注意事項があります。また、栄養や水分の増量も個別の調整が必要です。持病と内服薬を処方医に伝えてください。[16][19]

Q. 褥瘡の薬は、傷が治るまで同じものを使い続けるのですか?

A. 傷の状態に応じて見直します。壊死・感染・滲出液・肉芽の状態が変われば、外用薬と被覆材の組み合わせも再評価します。薬の開始・中止や混合は自己判断で行わず、治療を担当する医療者に確認してください。[2][18]

まとめ:傷を評価し、治療の目的に合わせて薬を選ぶ

褥瘡治療では、除圧と血流・全身状態の評価を土台に、壊死・感染・滲出液・肉芽・創周囲皮膚を確認します。外用薬は有効成分だけでなく基剤の性質も踏まえ、被覆材と一組で選ぶことが重要です。[1][2][6]

治療の途中で創の状態は変化します。「最初に選んだ薬を続ける」こと自体を目的にせず、処置の目的と反応を確認し、必要に応じて治療を見直します。薬剤の開始・中止・混合や処置の変更は自己判断で行わず、治療を担当する医療者に確認してください。[2][18]

参考資料・添付文書

2026年10月16日に確認した公開資料を基に作成しています。薬剤の使用時には、その時点の電子添文・供給情報を確認してください。ガイドラインの正式な採点表・図表は転載せず、説明用に要約しています。

  1. 日本皮膚科学会.創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン(2023):2 褥瘡診療ガイドライン 第3版.
  2. 日本皮膚科学会.創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン(2023):1 創傷一般ガイドライン 第3版.
  3. 日本褥瘡学会.改定DESIGN-R®2020:評価ツール・使用マニュアル.
  4. NPIAP・EPUAP・PPPIA.International Guideline 第4版:Skin and Tissue Assessment(2026年公開).
  5. EPUAP.Pressure Ulcer Classification.
  6. Wound Healing Society.WHS Guidelines for the Treatment of Pressure Ulcers: 2023 update.
  7. NPIAP・EPUAP・PPPIA.International Guideline 第4版:Repositioning.
  8. International Wound Infection Institute.Wound Infection in Clinical Practice: International Consensus Update 2026.
  9. PMDA.ユーパスタ軟膏:電子添文.
  10. PMDA.カデックス軟膏0.9%:電子添文.
  11. PMDA.ヨードコート軟膏0.9%:電子添文.
  12. PMDA.ゲーベンクリーム1%:電子添文(2025年12月改訂).
  13. PMDA.ブロメライン軟膏5万単位/g:電子添文(2025年7月改訂).
  14. PMDA.アクトシン軟膏3%:電子添文.
  15. PMDA.フィブラストスプレー:電子添文.
  16. PMDA.プロスタンディン軟膏0.003%:電子添文.
  17. サンファーマ.オルセノン軟膏0.25% 販売中止のご案内(2026年1月).
  18. 日本褥瘡学会.褥瘡の治療について.
  19. NPIAP・EPUAP・PPPIA.International Guideline 第4版:Nutrition in Pressure Injury Prevention and Treatment.
  20. NPIAP・EPUAP・PPPIA.International Guideline 第4版:Preventing Heel Pressure Injuries.
  21. NPIAP・EPUAP・PPPIA.International Guideline 第4版:Pressure Injury Etiology.
  22. 日本褥瘡学会.改定DESIGN-R®2020 使用マニュアル(公式PDF).
  23. NPIAP・EPUAP・PPPIA.International Guideline 第4版:Glossary(2026年9月公開).