えぷろんクリニック からだの話と日常

ケレンディアとは?
一般名:フィネレノン腎臓と心不全の治療で
知っておきたいこと

作用のしくみから、臨床試験の数字、
服用中の採血まで。

公開日・資料確認日:2026年10月10日 / 内科・循環器内科

「糖尿病の治療中に、腎臓を守る薬が増えた」「心不全でケレンディアを勧められた」。薬が増えると、何のために飲むのか気になるものです。ケレンディアは商品名で、一般名(成分名)はフィネレノンです。心臓や腎臓の病気の悪化を抑えるために使われる薬です。期待できる効果と、服用中に気をつけたい点を整理します。1,2

01ケレンディア(フィネレノン)は、どんな薬?

心臓や腎臓の細胞には、ミネラルコルチコイド受容体(MR)という、ホルモンの信号を受け取る仕組みがあります。MRが働きすぎると、炎症や「線維化」などに関わる信号が強まります。線維化とは、組織が硬くなり、働きにくくなる変化です。

ケレンディア(一般名:フィネレノン)はこのMRに結合し、過剰な働きを抑えます。MRの働きを抑える薬をMRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)と呼び、本剤は非ステロイド型に分類されます。血糖値を下げるための薬ではなく、心臓・腎臓の病気の進行を抑えることを目指します。傷んだ臓器を元通りにする薬、という意味ではありません。1,2

細胞内のMRにフィネレノンが作用し、心臓と腎臓の炎症・線維化に関わる信号を抑える模式図
図1 心臓・腎臓に共通する作用点。臓器は概念的に描いています。出典:文献1・2。

02どんな腎臓病・心不全に使う?

日本での承認適応は、下の2つです。病名だけで決めるのではなく、腎機能・カリウム・尿検査・心エコー・併用薬などを合わせて判断します。1

スマートフォンでは、下の表を左右にスクロールしてご覧ください。

ケレンディア(フィネレノン)を検討する病気
病気対象と確認すること
2型糖尿病を合併する
慢性腎臓病(CKD)
末期腎不全・透析中は適応から除かれます。適さない場合を除き、ACE阻害薬またはARBによる治療を受けている方が対象です。腎機能だけでなく、尿中アルブミンなども確認します。アルブミン尿は、血液中のたんぱく質が尿に漏れ出ている状態です。
慢性心不全標準的な心不全治療を受けており、左室駆出率が保たれた、または軽度低下した方が対象です。主要試験はLVEF 40%以上で行われました。腎機能が著しく低下している場合など、開始できないことがあります。糖尿病の合併は必須ではありません。

LVEF(左室駆出率)は、心臓が1回の収縮で送り出す血液の割合です。この数字だけで心不全の有無は決まりません。駆出率が低下した心不全での本剤の有効性・安全性は確立しておらず、ほかのMRAから一律に置き換える薬ではありません。1,5

03腎臓と心不全への効果を、数字で見る

腎臓病:進行に関する出来事が少なくなった

FIDELIO-DKD試験では、2型糖尿病とCKDがあり、アルブミン尿を認める5,734人を対象に検討しました。両群ともACE阻害薬またはARBなどの治療を受けたうえで、フィネレノンか、有効成分を含まないプラセボを追加しています。追跡期間の中央値は2.6年でした。3

腎不全、4週間以上続くeGFRの40%以上の低下、腎臓の病気による死亡を合わせた評価項目は、フィネレノン群で17.8%、プラセボ群で21.1%でした。観察された割合の差は3.3ポイントです。ハザード比は0.82で、これは追跡期間中の発症までの時間も考慮した指標です。透析だけを比較した数字ではありません。3

腎複合評価項目の発症割合はプラセボ21.1%、フィネレノン17.8%。ゼロ起点の棒グラフ
図2 FIDELIO-DKDの主要評価項目。割合の差とハザード比は異なる指標です。出典:文献3。

別のFIGARO-DKD試験では、心血管死・心筋梗塞・脳卒中・心不全入院を合わせた出来事がフィネレノン群12.4%、プラセボ群14.2%(追跡期間の中央値3.4年)で、主に心不全入院の減少が結果に寄与しました。4

心不全:入院・緊急受診などの繰り返しを減らした

FINEARTS-HF試験は、LVEF 40%以上の心不全患者6,001人を対象とし、追跡期間の中央値は32か月でした。心不全による入院・緊急受診と、心血管疾患による死亡を合わせた総イベントは、フィネレノン群1,083件、プラセボ群1,283件でした。同じ人に繰り返し起きた入院なども数えています。総イベントの発現率はフィネレノン群で相対的に16%低下しました。一方、心血管死だけの有意な減少は確認されていません。5

総イベントはプラセボ1283件、フィネレノン1083件。発現率比0.84。心血管死だけの有意な減少はなし
図3 FINEARTS-HFでは、同じ人に起きた再入院なども数えています。人数のグラフではありません。出典:文献5。

04副作用と、カリウム・腎機能の採血

特に注意する副作用は、血液中のカリウムが増える高カリウム血症です。重くなると不整脈につながるおそれがあり、体調だけでは気づけないこともあります。腎機能の変化や、血圧低下によるめまいにも注意します。eGFRは、腎臓が血液をろ過する働きの目安です。1,2

服用を始める前に確認し、開始・再開・増量から4週間後、その後も定期的に採血します。心不全では減量を含む用量調節後も確認が必要です。カリウム値や腎機能によっては、4週間より前にも検査します。1

服用前、開始・再開・増量4週間後、その後も定期的にカリウムと腎機能を確認。心不全では減量を含む用量調節後も確認する流れ
図4 採血時期の基本。腎機能やカリウム値に応じ、より早い時期にも確認します。出典:文献1。

ほかの薬や食品との組み合わせも確認を

クラリスロマイシン、一部の抗真菌薬・新型コロナ治療薬など、併用できない薬があります。ほかのMRAやカリウム製剤、市販の鎮痛薬、サプリメントも含めて、お薬手帳と一緒に医師・薬剤師へ伝えてください。グレープフルーツや、セント・ジョーンズ・ワート(セイヨウオトギリソウ)を含む食品・サプリメントの摂取は控えてください。1,2

服用量や増減の基準は、腎臓病と心不全で異なります。自己判断で量を変えず、症状や検査結果に合わせて調整します。妊娠する可能性がある方は服用中の避妊が必要です。妊娠した、妊娠の可能性がある、または授乳中の場合は医師にご相談ください。服用中は授乳を避けます。1,2

05姫路市で心不全・腎機能が気になる方へ

息切れやむくみには、心臓以外の原因もあります。次の変化がある場合は、早めに医療機関へご相談ください。服用中にしびれや脱力、強いふらつきが現れたときは、次の予約日を待たず、医師・薬剤師に連絡してください。

  • 以前より歩くと息切れする、足のむくみが増えた
  • 短期間で体重が増えた、横になると息苦しい
  • 健診で腎機能の低下や尿蛋白を指摘された
  • 服用中にしびれ、力が入りにくい、強いふらつきなどが出た
安静にしても強く息苦しい・胸痛・失神があるとき

通常の予約を待たず、119番などで救急受診してください。フィネレノンを追加して様子を見ることはしないでください。

えぷろんクリニックでは、循環器専門医の視点で症状や検査結果を確認し、血圧管理、採血、心電図、必要に応じた心エコー、生活習慣病の継続管理を行います。呼吸器専門医も在籍しており、原因に応じた診療や専門医療機関への紹介、訪問診療の相談にも対応しています。

薬の目的も、検査結果も、一緒に確認します。

姫路市で息切れやむくみにお悩みの方、生活習慣病や心臓の病気が心配な方は、えぷろんクリニックまでお気軽にご相談ください。症状や検査結果を確認しながら、必要に応じて適切な検査や専門医療機関との連携を行います。

兵庫県姫路市飾磨区三宅1丁目192 田中興産ビル1階
電話:079-226-3003

06ケレンディア(フィネレノン)のよくある質問

Q.糖尿病がなくてもケレンディアを使うことはありますか?

はい。適応に合う慢性心不全では糖尿病がなくても使用を検討します。一方、腎臓病に対する国内の承認適応は、確認した電子添文では2型糖尿病を合併する慢性腎臓病です。1

Q.血糖値やむくみを改善する薬ですか?

血糖値を下げることを主目的とした薬ではありません。また、急な息苦しさやむくみを自分で追加服用して治す薬ではなく、病気の悪化を抑えるための治療の一つです。1

Q.SGLT2阻害薬やほかの心不全の薬はやめてよいですか?

自己判断で中止しないでください。フィネレノンは標準治療に加えて使うことがあり、薬の役割は異なります。併用する薬は腎機能や血圧、カリウムを見ながら医師が判断します。1

Q.調子がよければ採血を省いてもよいですか?

省かず、予定どおり受けてください。カリウムの上昇や腎機能の変化は、体調だけでは分からないことがあります。飲み忘れても2回分を一度に飲まないでください。2

Q.姫路市で心不全や腎機能について相談できますか?

えぷろんクリニックの内科・循環器内科でご相談いただけます。健診結果、これまでの採血結果、お薬手帳をお持ちください。状態に応じて専門医療機関と連携します。

一般的な医療情報です。治療の適否は、診察と検査結果に基づいて個別に判断します。処方の開始・中止・変更は主治医にご相談ください。

参考文献・情報源

  1. PMDA:ケレンディア錠10mg/20mg 電子添文(2026年3月改訂・第8版)
  2. PMDA:ケレンディア錠 患者向医薬品ガイド(2026年10月更新)
  3. Bakris GL, et al. FIDELIO-DKD. N Engl J Med. 2020;383:2219–2229.
  4. Pitt B, et al. FIGARO-DKD. N Engl J Med. 2021;385:2252–2263.
  5. Solomon SD, et al. FINEARTS-HF. N Engl J Med. 2024;391:1475–1485.
  6. FIND-CKD:Finerenone in Persons with Chronic Kidney Disease without Diabetes. N Engl J Med. 2026;395:533–545. doi:10.1056/NEJMoa2604625.

図表は上記資料を基に独自作成。臨床試験(文献3–6)はBayerの資金提供により実施されています。公開日・資料確認日:2026年10月10日。