採血で何がわかる?
BLOOD TESTS — UNDERSTANDING YOUR RESULTS
血液検査の項目・基準値・異常値の見方を詳しく解説
「健康診断の結果にHやLが付いているけれど、どういう意味?」「肝臓の数値が高いと言われた」「貧血や腎臓の検査は、どこを見ればよいの?」
血液検査は、貧血、炎症、肝臓・腎臓の状態、血糖や脂質の異常などを調べる手がかりになります。
この記事では、成人の健診や内科診療で見かける採血項目を中心に、「何を調べているのか」「異常値にはどのような意味があるのか」を解説します。後半では、症状に応じて追加する検査にも触れます。
1.最初に知っておきたい「基準値」の考え方
基準範囲・診断基準・治療目標は別のもの
検査票の「H」は基準範囲より高いこと、「L」は低いことを表します。
検査票に書かれた「基準範囲」は、多くの場合、一定の条件を満たす健康な人の測定値の中央約95%が含まれる範囲です。そのため、健康な人でも範囲から少し外れることがあります。検査方法や施設によって範囲が異なる項目もあるため、まずは手元の検査票に記載された範囲と単位を確認してください。[3]
一方、病気の診断や、将来の病気を予防するための判断には、別の基準を使います。例えばLDLコレステロールには脂質異常症の診断基準がありますが、治療で目指す値は、心筋梗塞の既往や糖尿病などの有無によって変わります。「検査票でHが付かない値」と「自分にとって望ましい値」は、必ずしも同じではありません。[4]
以下に示す基準範囲は成人の一例です。小児、妊娠中の方などには、そのまま当てはめないでください。
2.血算:赤血球・白血球・血小板を調べる検査
血算は、血液中の細胞の数や特徴を調べる検査です。「CBC」「血球検査」と記載されることもあります。[1]
表が画面に収まらない場合は、左右にスクロールしてご覧ください。
| 項目 | 主に調べていること |
|---|---|
| 赤血球数:RBC | 酸素を運ぶ赤血球の数 |
| ヘモグロビン:Hb | 赤血球の中にある、酸素を運ぶたんぱく質の濃度 |
| ヘマトクリット:Ht | 血液の体積に占める赤血球の割合 |
| 白血球数:WBC | 感染や炎症などに関わる白血球の数 |
| 血小板数:PLT | 出血を止める働きに関わる血小板の数 |
これらは一つずつではなく、組み合わせて確認します。[1]
Hb:貧血を判断する中心的な項目
Hbが低い場合は、貧血を考えます。ただし、貧血の原因は鉄不足だけではありません。 出血、ビタミン不足、慢性の炎症、腎臓病、血液の病気なども原因になります。疲れやすさ、息切れ、動悸などが手がかりになりますが、症状の程度は数値だけでなく、低下する速さなどにも左右されます。[5], [6]
Hbの共用基準範囲の例は、男性13.7〜16.8 g/dL、女性11.6〜14.8 g/dLです。これは健康な集団から設定した範囲であり、貧血の診断基準そのものとは区別します。[3]
HbやHtが高い場合も、単純に「血液が多くて健康」とは言えません。脱水で血液が濃縮している場合などがあり、赤血球数や体の状態と合わせて判断します。[1]
MCV・MCH・MCHC:貧血の種類を考える補助項目
MCVは赤血球の平均的な大きさです。小さい場合は鉄欠乏性貧血など、大きい場合はビタミンB12・葉酸不足などを考える手がかりになります。ただし、MCVが正常でも貧血は起こりますし、大きさだけで原因は決まりません。[7]
MCHは赤血球1個あたりのヘモグロビン量、MCHCは赤血球内のヘモグロビン濃度です。RDWという項目があれば、赤血球の大きさのばらつきを表します。いずれもHbやMCVなどと組み合わせて評価します。[8]
WBC:高いから細菌感染、低いから安心、とは限らない
白血球は、感染症や炎症で増えることがありますが、喫煙、ストレス、薬の影響などでも変動します。逆に、薬や骨髄の異常などで減ることもあり、白血球の数だけで感染症の有無や原因を決めることはできません。[9]
白血球分画では、好中球、リンパ球、好酸球などの内訳を確認します。好中球は主に細菌への防御、リンパ球はウイルスなどへの免疫に関わりますが、検査結果は症状や経過と一緒に読む必要があります。共用基準範囲の例は、WBC 3,300〜8,600/μLです。[9], [3]
PLT:出血のしやすさを評価する手がかり
血小板が大きく減ると、あざが増える、鼻血が止まりにくい、皮膚に小さな赤い点が出るなど、出血しやすくなることがあります。減少の原因には、感染症、免疫の異常、肝臓や骨髄の病気などがあります。一方、血小板の増加は、炎症や鉄欠乏などでも起こります。血小板数だけで「血液が固まりやすい・固まりにくい」のすべてがわかるわけではありません。[10]
共用基準範囲の例は15.8〜34.8万/μLです。検査票によって「万/μL」「×10³/μL」などの表示が異なるため、単位にも注意してください。[3]
3.鉄・フェリチン:鉄不足の有無と原因を考える検査
貧血や鉄不足が疑われる場合には、血算に加えて鉄に関する検査を行います。
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| 項目 | 主な意味 |
|---|---|
| 血清鉄:Fe | 血液中を流れている鉄の量。時間帯などによって変動する |
| フェリチン | 体内に蓄えられている鉄の量を考える手がかり |
| TIBC:総鉄結合能 | 鉄を運ぶたんぱく質が、どれだけ鉄を結合できるかの目安 |
| TSAT:トランスフェリン飽和度 | 鉄を運ぶたんぱく質の結合能力のうち、鉄で満たされている割合 |
血清鉄だけが低いのか、貯蔵している鉄も不足しているのかなどを、複数の項目で確認します。Hbが低くなる前に鉄不足が起こっている場合もあります。[11], [12]
注意したいのは、フェリチンは炎症があると高くなるため、「正常・高値だから鉄不足ではない」とは言い切れないことです。慢性の炎症がある場合には、体内に鉄があっても、赤血球を作るためにうまく利用できなくなることもあります。[13]
鉄欠乏が見つかったら、食事だけでなく、月経量の多さや胃腸からの出血など、原因の確認が重要です。特に男性や閉経後の女性の鉄欠乏性貧血では、消化管からの出血などを調べる必要があります。自己判断でサプリメントだけを続けず、原因と治療方法を相談しましょう。[12]
4.肝臓・胆道の検査:AST・ALT・γ-GTP・ALP・ビリルビン
AST・ALT:肝細胞の「傷み」を示す項目
ASTとALTは、細胞内にある酵素です。細胞が傷つくと血液中に出てきて、数値が上昇します。ALTは肝臓との関連が強く、ASTは肝臓以外の筋肉などの影響も受けます。AST・ALTは、肝臓の働きそのものを直接測っているわけではありません。[14], [15]
上昇の原因には、脂肪肝、飲酒、ウイルス性肝炎、薬による肝障害などがあります。「お酒を飲まないから肝臓は大丈夫」とは限りません。日本肝臓学会は奈良宣言2023で、ALTが30 U/Lを超えたら、かかりつけ医に相談することを勧めています。検査票の基準範囲内であっても、評価の対象になる場合があります。[14], [16]
γ-GTP・ALP・ビリルビン:胆汁の流れなども確認する
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| 項目 | 主に確認すること・注意点 |
|---|---|
| γ-GTP/γ-GT/GGT | 肝臓や胆道の異常を考える項目。飲酒や薬などでも上がり、「飲酒量の検査」だけではない |
| ALP | 胆汁の流れが妨げられる場合などに上昇する。骨にも由来するため、肝臓以外の原因も考える |
| 総ビリルビン:T-Bil | 赤血球の分解に伴って生じる物質。肝臓で処理され、胆汁へ排泄される。増えると黄疸の原因になる |
| LDH | 多くの臓器・組織にある酵素。さまざまな細胞の傷害で上がるため、単独では原因臓器を特定できない |
AST・ALTが中心に上がっているのか、ALPやγ-GTPが目立つのかなど、数値の組み合わせが原因を考える手がかりになります。[2], [15]
ALPは測定方法に注意が必要です。IFCC法の共用基準範囲の例は38〜113 U/Lですが、以前使われていたJSCC法とは数値の尺度が異なります。昔の検査結果と比較するときは、単純な増減だけで判断しないでください。[3]
肝臓の状態を詳しく判断する際には、アルブミンや血液凝固の検査など、肝臓がたんぱく質を作る働きに関する項目も確認します。[2]
5.腎臓の検査:クレアチニン・eGFR・尿素窒素
クレアチニン:筋肉量の影響も受ける
クレアチニンは筋肉の代謝に伴って生じ、主に腎臓から排泄される物質です。腎臓のろ過機能が低下すると上昇しやすくなりますが、筋肉量などの影響も受けます。そのため、クレアチニンが低いから必ず腎機能がよい、というわけではありません。[17]
eGFR:腎臓のろ過機能を推定した値
eGFRは「推算糸球体ろ過量」の略で、一般的にはクレアチニン、年齢、性別などを用いて計算します。単位はmL/分/1.73m²で、「eGFR 60=腎臓が60%働いている」という厳密な意味ではありません。 必要に応じて、筋肉量の影響が比較的小さいシスタチンCを使って評価することもあります。[17], [18]
慢性腎臓病(CKD)は、eGFR 60未満、または蛋白尿などの腎臓の障害を示す所見が、3か月を超えて持続する場合に診断します。eGFRが60以上でも、蛋白尿やアルブミン尿などがあればCKDの場合があります。反対に、eGFRが60〜89という数値だけで、直ちにCKDと決まるわけではありません。[19]
腎機能の評価では、採血に加えて尿検査も重要です。また、1回の結果だけでなく、以前と比べてどの程度・どの速さで変化しているかを確認します。なお、「慢性と判断するには3か月を超える持続が必要」という意味であり、急な悪化を3か月放置してよいということではありません。[19], [17]
BUN:尿素窒素は脱水や食事の影響も受ける
BUNは、たんぱく質が分解されてできる尿素に含まれる窒素を測る検査です。腎機能低下のほか、脱水やたんぱく質摂取量などの影響を受けるため、BUNだけで腎臓の状態は判断できません。クレアチニンやeGFRなどと合わせて読みます。[20]
6.血糖・HbA1c:糖尿病に関する検査
血糖は「その時点」、HbA1cは「一定期間」の状態
血糖は採血した時点の血液中のブドウ糖濃度です。食事からの経過時間によって変わるため、空腹時なのか、食後なのかを区別します。[21]
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は、ヘモグロビンに糖が結び付いた割合です。過去2〜3か月の血糖状態を反映し、特に直近の約1か月の影響を強く受けます。Hbは貧血の評価、HbA1cは血糖の評価に使う別の指標です。[22]
糖尿病が疑われる数値の目安
日本糖尿病学会では、次のいずれかを満たす場合を「糖尿病型」と判定します。
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| 検査 | 糖尿病型の基準 |
|---|---|
| 空腹時血糖 | 126 mg/dL以上 |
| 随時血糖 | 200 mg/dL以上 |
| 75gブドウ糖負荷試験の2時間値 | 200 mg/dL以上 |
| HbA1c | 6.5%以上 |
ただし、「糖尿病型の検査結果」と「糖尿病の確定診断」は同じではありません。通常は再検査などで確認し、HbA1cだけが繰り返し高くても、それだけでは糖尿病と確定しません。 一方、同じ採血で血糖とHbA1cの両方が糖尿病型なら、1回の検査で診断できる場合があります。症状などによって診断の進め方は異なります。[21]
HbA1cが血糖を正確に反映しない場合もある
貧血、出血、輸血、赤血球の寿命が変わる病気や治療などがあると、HbA1cと実際の血糖が一致しないことがあります。「HbA1cは低いのに血糖が高い」などの食い違いも、診察で確認する大切な情報です。治療中の目標値は、低血糖の危険性なども考慮して個別に設定します。[22]
7.脂質の検査:LDL・HDL・中性脂肪・non-HDL
LDLコレステロールは細胞にコレステロールを届ける働きがあり、増えすぎると動脈硬化に関わります。HDLコレステロールは、余分なコレステロールを回収する働きに関係します。中性脂肪(TG)はエネルギー源となる脂質で、食事や飲酒などの影響を受けます。[23]
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| 項目 | 脂質異常症の診断基準 |
|---|---|
| LDLコレステロール | 140 mg/dL以上。120〜139 mg/dLは境界域 |
| HDLコレステロール | 40 mg/dL未満 |
| 中性脂肪:TG | 空腹時150 mg/dL以上、随時175 mg/dL以上 |
| non-HDLコレステロール | 170 mg/dL以上。150〜169 mg/dLは境界域 |
non-HDLは「総コレステロール-HDLコレステロール」で計算し、LDL以外も含めた動脈硬化に関わるリポたんぱくのコレステロール量を評価する指標です。上記の「空腹時」は、基本的に10時間以上の絶食を指します。[24]
大切なのは、診断基準を超えた人全員に同じ治療をするわけではないことです。心筋梗塞・狭心症の既往、糖尿病、慢性腎臓病、年齢、喫煙などから、将来の病気の起こりやすさを評価して治療方針を決めます。[25]
また、「HDLが高いから、LDLが高くても問題ない」という考え方は正しくありません。総コレステロールだけを見るのではなく、LDL・HDL・TGの内訳を確認しましょう。[25]
8.尿酸:高いだけで痛風と決まるわけではない
尿酸は、プリン体が分解されてできる物質です。血液中の尿酸が増えすぎると、尿酸塩の結晶ができ、関節で炎症を起こす痛風などにつながることがあります。[26]
尿酸値が7.0 mg/dLを超えると、高尿酸血症と定義します。 ただし、高尿酸血症と、実際に関節炎を起こした「痛風」は別です。数値だけで自己判断せず、痛風発作の有無、腎臓の状態などを含めて相談してください。[27]
9.総たんぱく・アルブミン:栄養だけの検査ではない
総たんぱく(TP)は血液中のたんぱく質の総量、アルブミン(Alb)はその主要な成分です。アルブミンは肝臓で作られ、血管内に水分を保つ働きや、さまざまな物質を運ぶ働きがあります。低下する原因には、肝臓で作る量の減少、腎臓などからの喪失、炎症などがあり、原因に応じた評価が必要です。[28]
「アルブミンが低い=食事のたんぱく質が足りない」と決めつけないことが重要です。アルブミンだけでは、栄養状態や筋肉量を正確に判断できません。 栄養評価では、食事量、体重の変化、筋肉の状態、病気や炎症の影響なども確認します。[29]
10.電解質:ナトリウム・カリウム・クロール・カルシウム
電解質は、体の水分バランスや神経・筋肉の働きに関わる成分です。共用基準範囲の例は、Na 138〜145 mmol/L、K 3.6〜4.8 mmol/L、Cl 101〜108 mmol/L、Ca 8.8〜10.1 mg/dLです。実際の判定では検査施設の基準範囲を確認します。[3], [30]
Na:食べた塩分量をそのまま示す数値ではない
ナトリウム(Na)は、体内の水分とのバランスが重要です。脱水で高くなることもあれば、体に水分がたまって薄まることで低くなることもあります。腎臓、心臓、ホルモン、薬なども関係します。Naが低いからといって、自己判断で塩分を増やすことは避けてください。 クロール(Cl)は、Naなどと合わせて体液や酸・アルカリのバランスを考える際に確認します。[31]
K:心臓のリズムに関わる重要な項目
カリウム(K)は、筋肉や心臓の電気的な働きに関わります。腎機能低下や薬の影響などで高くなり、下痢や一部の利尿薬などで低くなることがあります。大きな異常は不整脈につながるため、軽視できません。[32]
一方、採血した血液の赤血球が壊れる「溶血」などによって、実際より高く測定されることもあります。ただし、「採血のせいだろう」と自分で決めつけず、再検査などの指示に従うことが大切です。[33]
Ca:血液中のカルシウムと骨密度は別
カルシウム(Ca)は、神経や筋肉、心臓の働きなどに関わります。血液中のカルシウムの一部はたんぱく質と結び付いているため、アルブミンの低下などによって、総カルシウム値の解釈が変わることがあります。必要に応じて、実際に働く形の「イオン化カルシウム」を測定します。[30]
なお、血液中のカルシウムが正常でも、骨粗しょう症を否定することはできません。骨の強さを評価する検査は、採血とは別に考えます。[30]
11.CRP:炎症の手がかり。ただし原因まではわからない
CRPは、体内に炎症があると増えやすい、肝臓で作られるたんぱく質です。感染症だけでなく、自己免疫疾患、けが、手術後などでも上がります。CRPだけで、炎症の場所や原因、細菌感染かどうかを確定することはできません。[34]
炎症が起きてから数値が上がるまでには時間差があるため、発症早期の低いCRPだけで安心することもできません。抗菌薬が必要かどうかも、CRP単独ではなく、症状、診察所見、ほかの検査などから判断します。[35], [34]
CRPは施設によって基準範囲が異なり、例えば上限0.14 mg/dLや0.3 mg/dLなどがあります。mg/dLとmg/Lでは数値の表し方が10倍違うため、インターネット上の数値と比較するときは単位にも注意してください。[3], [15]
12.症状に応じて追加することがある採血項目
以下は、全員が健診で測定する項目ではなく、症状や診療目的に応じて選ぶ検査です。
CK:筋肉の傷害を調べる
CK(CPK)は主に筋肉にある酵素で、筋肉が傷つくと上昇します。筋肉の病気だけでなく、激しい運動や筋肉注射などの影響でも上がるため、採血前の活動や症状を確認することが重要です。[33]
アミラーゼ:膵臓だけでなく唾液腺にも関連
アミラーゼ(AMY)は、でんぷんの消化に関わる酵素です。膵臓だけでなく唾液腺にも由来するため、高値だからといって、すぐに膵炎とは判断できません。腹痛などの症状や、必要に応じた追加検査と合わせて評価します。[33]
TSH・FT4・FT3:甲状腺の働きを調べる
TSHは甲状腺にホルモン産生を指示するホルモン、FT4・FT3は血液中の遊離型甲状腺ホルモンです。典型的には、甲状腺ホルモンが不足するとTSHが上がり、甲状腺ホルモンが多すぎるとTSHが下がります。ただし、病気の種類や薬などで例外があるため、組み合わせで判定します。[36]
BNP・NT-proBNP:心臓にかかる負担の手がかり
BNPとNT-proBNPは、心臓の壁に負担がかかったときに増えやすく、心不全の診断や経過観察に使います。心臓の筋肉が壊れた量を直接示す検査ではありません。[37]
日本心不全学会は、BNP 35 pg/mL以上、NT-proBNP 125 pg/mL以上を、心不全の可能性を考慮する基準として示しています。ただし、この値を超えただけで心不全と確定するわけではありません。 年齢、腎機能、心房細動などで高くなり、肥満では低く出ることもあるため、症状や心エコーなどと合わせて判断します。BNPとNT-proBNPでは数値の尺度も異なります。[37]
トロポニン:心筋の傷害を調べる
トロポニンは心臓の筋肉の傷害を捉える検査で、心筋梗塞を疑う場合などに測定します。ただし、心筋梗塞以外でも上昇することがあり、発症直後は十分に上がっていないこともあります。胸の痛みがある場合に、1回の採血結果だけで安全と判断することはできません。[38]
13.採血前後によくある質問
採血前は、必ず食事を抜く必要がありますか?
すべての採血で絶食が必要なわけではありません。空腹時血糖など、検査の目的によって絶食が必要な場合もあれば、食後の状態を確認する場合もあります。検査を受ける医療機関の指示に従ってください。指示された時間内に食事をした場合も、隠さず伝えることが大切です。[39]
水を飲んでもよいですか? 薬はどうすればよいですか?
採血のための絶食では、一般に水は飲めます。ただし、ほかの検査を同時に受ける場合などは指示が異なることがあります。薬は自己判断で中止せず、食事を抜く場合の飲み方・使い方を事前に確認してください。特に糖尿病の治療中は、食事と薬の調整について指示を受けましょう。サプリメントの使用も伝えてください。[39]
血液検査が正常なら、がんもありませんか?
一般的な採血で、すべてのがんを調べられるわけではありません。腫瘍マーカーも、がんがあっても上がらない場合や、がん以外で上がる場合があります。腫瘍マーカーが正常であることは、「がんがない証明」にはなりません。 症状や診察所見に応じて、画像検査、内視鏡検査などを組み合わせて判断します。[40]
異常値があれば、すぐに救急受診が必要ですか?
異常値すべてが緊急というわけではありません。ただし、強い胸痛、安静にしていても苦しい息切れ、意識がおかしい・失神した、出血が止まらないなどの症状がある場合は、検査値にかかわらず救急受診を検討し、重い症状では119番に連絡してください。[38], [10], [31]
また、医療機関から「至急受診してください」「今日中に再検査が必要です」と連絡があった場合は、症状がなくても指示に従ってください。この記事の数値だけで、受診を先延ばしにしないようにしましょう。
14.まとめ:採血結果は「数値」「組み合わせ」「経過」で読み解く
採血結果を理解するうえで大切なのは、赤字やH・Lの数を数えることではありません。どの項目が、どの程度変化し、ほかの検査や症状とどうつながるかを確認することです。特に、腎機能のように尿検査が重要な項目や、脂質のように持病によって治療目標が変わる項目では、採血の数値だけで判断しないことが大切です。[19], [4]
※本記事は成人の血液検査に関する一般的な情報です。個々の検査結果の評価や、薬の開始・中止・変更は、診察した医師と相談してください。
参考文献・情報源
参考情報確認日:2026年9月12日。基準範囲と診断基準・治療目標は区別してご確認ください。
- 米国国立医学図書館 MedlinePlus:Complete Blood Count (CBC) 本文へ戻る
- 米国国立医学図書館 MedlinePlus:Liver Function Tests 本文へ戻る
- 日本臨床検査標準協議会(JCCLS):日本における主要な臨床検査項目の共用基準範囲 本文へ戻る
- 国立循環器病研究センター:脂質異常症 本文へ戻る
- 米国血液学会(ASH):Anemia 本文へ戻る
- 米国国立糖尿病・消化器病・腎疾病研究所(NIDDK):Anemia in Chronic Kidney Disease 本文へ戻る
- 米国国立医学図書館 MedlinePlus:MCV (Mean Corpuscular Volume) 本文へ戻る
- 米国国立医学図書館 MedlinePlus:Red Blood Cell (RBC) Indices 本文へ戻る
- 米国国立医学図書館 MedlinePlus:White Blood Count (WBC) 本文へ戻る
- 米国国立医学図書館 MedlinePlus:Platelet Tests 本文へ戻る
- 米国国立医学図書館 MedlinePlus:Iron Tests 本文へ戻る
- 米国血液学会(ASH):Iron-Deficiency Anemia 本文へ戻る
- NIDDK:Anemia of Inflammation or Chronic Disease 本文へ戻る
- 日本肝臓学会:奈良宣言2023(一般の方向け) 本文へ戻る
- 公立八鹿病院:主な検査の基準値 本文へ戻る
- 日本肝臓学会:奈良宣言2023(医療従事者向け) 本文へ戻る
- 米国腎臓財団(NKF):Estimated Glomerular Filtration Rate (eGFR) 本文へ戻る
- 日本腎臓学会:腎機能測定ツール 本文へ戻る
- 日本腎臓学会:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023 第1章 本文へ戻る
- 米国国立医学図書館 MedlinePlus:BUN (Blood Urea Nitrogen) 本文へ戻る
- 日本糖尿病学会:糖尿病診療ガイドライン2024 第1章 糖尿病診断の指針 本文へ戻る
- NIDDK:The A1C Test & Diabetes 本文へ戻る
- 日本動脈硬化学会:コレステロール摂取量に関するQ&A 本文へ戻る
- 日本動脈硬化学会:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版 第2章 本文へ戻る
- 日本動脈硬化学会:健康診断で異常を言われたら? 本文へ戻る
- 公益財団法人 痛風・尿酸財団:尿酸について 本文へ戻る
- 公益財団法人 痛風・尿酸財団:尿酸値の正常値 本文へ戻る
- 米国国立医学図書館 MedlinePlus:Albumin Blood Test 本文へ戻る
- Evans DC, et al. The Use of Visceral Proteins as Nutrition Markers: An ASPEN Position Paper. Nutr Clin Pract. 2021;36:22–28. 本文へ戻る
- 米国国立医学図書館 MedlinePlus:Calcium Blood Test 本文へ戻る
- 米国国立医学図書館 MedlinePlus:Sodium Blood Test 本文へ戻る
- 米国国立医学図書館 MedlinePlus:Potassium test 本文へ戻る
- 一般社団法人 日本衛生検査所協会:検査項目の詳細 本文へ戻る
- 米国国立医学図書館 MedlinePlus:C-Reactive Protein (CRP) Test 本文へ戻る
- Healthdirect Australia:C-reactive protein (CRP) blood test 本文へ戻る
- NIDDK:Thyroid Tests 本文へ戻る
- 日本心不全学会:血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント2023年改訂版 本文へ戻る
- 米国国立医学図書館 MedlinePlus:Troponin Test 本文へ戻る
- 米国国立医学図書館 MedlinePlus:Fasting for a Blood Test 本文へ戻る
- 国立がん研究センター がん情報サービス:腫瘍マーカー検査とは 本文へ戻る
- えぷろんクリニック 公式サイト 本文へ戻る