冠動脈造影検査ってどんな検査?
― 心臓の血管を、直接のぞいてみる ―
「狭心症の疑いで、心臓カテーテル検査を勧められた」
「入院と聞いて、少し不安。手術ではないの?」
「造影剤って、大丈夫なのかな?」
――前回の安定狭心症でも名前が出てきた 冠動脈造影検査。診断をはっきりさせ、これからの治療方針を決めるための、大切な検査です。今回は、その中身をやさしくお話しします。
01冠動脈造影検査って、どんな検査?
冠動脈造影検査(かんどうみゃくぞうえいけんさ) は、手首や足の付け根の動脈から カテーテル(細い管) を入れて、心臓を養う血管である冠動脈まで進め、造影剤(ぞうえいざい) という薬を流しながらX線で撮影する検査です。これによって、冠動脈のどこが、どのくらい狭くなっているかを 直接、映し出す ことができます。
ちなみに、「心臓カテーテル検査」「冠動脈造影検査」、英語の頭文字をとった 「CAG(シーエージー)」 ――呼び方はいろいろ出てきますが、いずれも 同じ検査 を指しています。
ここで大切なのは、これは 「検査」であって、「手術」ではない ということです。ただし、心エコー図検査やCTのように体を傷つけない検査とは違い、動脈の中にカテーテルを入れるぶん、体への負担は少しあります。そのため、検査のあとは安静が必要で、多くは短い入院を伴います。
冠動脈造影検査は、狭くなった場所や、その程度を いちばん正確に見られる 検査です。そのため、これからの治療方針を決めるための「基準」となる、大切な検査と位置づけられています。
02なぜ、この検査をするの?
冠動脈が狭くなっていないかは、運動負荷心電図や、体を傷つけない 冠動脈CT検査 などでも、ある程度「推定」することができます。では、なぜわざわざカテーテルを入れる検査をするのでしょうか。
それは、「これからどうするか」を決めるためです。お薬で様子を見るのか、カテーテルで血管を広げる治療をするのか、あるいはバイパス手術がよいのか――治療方針を正しく決めるには、狭くなった場所と程度を、正確に知る必要があります。それを直接見られるのが、この検査なのです。
そのため冠動脈造影検査は、治療を視野に入れた段階で行われることが多い検査です。「この検査をする=すぐに大変な治療」というわけではなく、まず正確な地図を手に入れて、落ち着いて方針を考えるための一歩です。
03検査は、どんなふうに進むの?
検査の大まかな流れは、次のとおりです。多くは意識のある状態で行いますが、痛みはほとんどありません。
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穿刺部の麻酔と、管の入り口づくり
カテーテルを入れる場所(主に手首)に局所麻酔をして、管の通り道となる細い筒(シース)を入れます。痛みを感じるのは、この麻酔のときくらいです。
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カテーテルを冠動脈まで進める
血管に沿って、カテーテルを心臓の冠動脈の入り口まで進めます。血管の中には痛みを感じる神経がないため、進めているあいだの痛みはほとんどありません。
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造影剤を流して撮影する
造影剤を注入しながら、いろいろな角度からX線撮影を行います。造影剤が入ると、胸から体にかけて 一瞬ぽっと熱くなる感じ がありますが、すぐに治まります。
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必要に応じて、検査を追加する
心臓のポンプの動きを見る検査や、冠攣縮(血管のけいれん)を確かめる誘発試験(第9回でお話ししたタイプ)、狭さが血流にどれくらい影響しているかを測る検査などを、あわせて行うことがあります。
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管を抜いて、止血・安静
撮影が終わったらカテーテルを抜き、穿刺部を しっかり押さえて止血 します。止血が確認できるまで、安静にして過ごします。
手首から? 足の付け根から?
カテーテルを入れる場所は、いくつかありますが、近ごろは 手首(橈骨動脈:とうこつどうみゃく) から行うことが多くなっています。出血が少なく、止血が楽で、検査のあとに体を動かしやすいという利点があるためです。手首からが難しい場合には、足の付け根(大腿動脈:だいたいどうみゃく) などが選ばれます。
検査だけであれば、30分ほどで終わることが多いです(治療もあわせて行う場合は、もう少し時間がかかります)。
04この検査で、何がわかるの?
造影剤を流すと、冠動脈がX線の画像に 黒く(灰色の背景に暗く) 浮かび上がります。血管が狭くなっているところは、細くくびれて見えるため、狭さの 場所と程度 が、はっきりわかります。
それに加えて、次のようなこともわかります。
- 冠攣縮の有無:第9回でお話しした冠攣縮性狭心症が疑われるときは、薬を使った 誘発試験 で、血管がけいれんしやすいかを確かめます。
- 心臓のポンプの働き:心臓が血液を送り出す力(動き)も、あわせて調べることができます。
この検査で手に入る「冠動脈の地図」が、これからの治療方針を決める土台になります。狭さの場所・程度がわかってはじめて、お薬・カテーテル治療・手術のうち、どれがその方に合っているかを、しっかり考えられるのです。
05受ける前に、知っておきたいこと
検査を安全に受けていただくために、事前の準備や確認がいくつかあります。よくあるご質問を、まとめておきます。
施設の指示に従って
造影剤を使う検査のため、食事や飲み物について案内があります。準備の内容は施設ごとに異なりますので、受ける施設の指示に従ってください。
施設によって異なります
短い入院で行う施設もあれば、日帰りで行う施設もあります。どちらになるかは、受ける施設や、その方の状態によって変わります。
一部は調整することも
血液をサラサラにするお薬や、糖尿病のお薬などは、検査の前に 調整・休薬することがあります。必ず主治医の指示に従い、自己判断でやめないでください。
当日の運転は避けて
検査当日は、ご自身での車・バイク・自転車の運転は避けていただきます。ご家族の送迎など、帰りの手段を用意しておくと安心です。
造影剤について、事前に必ずお伝えいただきたいことがあります。冠動脈造影検査では ヨードを含む造影剤 を使います。過去に造影剤で アレルギー(じんましん・気分不良など)が出たことがある方や、腎臓の働きが低下している方は、必ず事前にお知らせください。造影剤は腎臓に負担がかかることがあるため、その方に合わせた確認や対策を行います。
06検査のあとと、気になる安全性
検査が終わったら、いちばん大切なのは 穿刺部の止血と安静 です。カテーテルを入れたのは動脈なので、しっかり血が止まるまで、押さえて安静にします。手首から行った場合は、固定用のバンドを巻いて過ごすことが多く、足の付け根から行った場合は、寝て安静にする時間が長めになります。
検査のあと、穿刺した場所に 出血・強い腫れ・強い痛み・しびれ・色の変化 などがあれば、がまんせずスタッフに伝えてください。造影剤を体の外に出しやすくするため、水分をとるようすすめられることもあります(これも施設の指示に従ってください)。
安全性について ― 広く行われている検査です
冠動脈造影検査は、日本中で 数多く行われている、確立した検査です。多くの方が、大きな問題なく検査を終えています。
一方で、動脈を扱う検査である以上、穿刺部の出血、造影剤によるアレルギーや腎臓への負担、血管の傷 などが、まれに起こることがあります。だからこそ、検査中はスタッフが常に見守っています。胸の苦しさや気分の悪さを感じたら、どうぞ遠慮なくお伝えください。
07最後に ― 「これからどうするか」を決める一歩
冠動脈造影検査は、心臓の血管を直接見て、「これからどうするか」を決めるための、確かな一歩です。検査でわかった狭さの地図をもとに、経過観察・お薬の調整・カテーテル治療・バイパス手術など、その方に合った方針を選んでいきます。
当院(兵庫県姫路市・えぷろんクリニック)では、この検査が必要かどうかのご相談と、連携する専門病院へのご紹介、そして 検査後の見守り を行っています。「カテーテル検査を勧められたけれど不安」という段階でも、どうぞお気軽にご相談ください。
「検査」と聞くと身がまえてしまいますが、冠動脈造影検査は、正しい治療を、その方に合った形で選ぶための大切な準備です。わからないこと・不安なことは、検査の前に遠慮なく質問してください。納得して受けていただくことが、何より大切です。
えぷろんクリニックのご案内
当院について
えぷろんクリニックは、姫路市飾磨区にある循環器内科・呼吸器内科・内科のクリニックです。これまで地域に親しまれてきた「田中クリニック」の理念を引き継ぎ、2025年12月より新たな名前で診療を続けています。
- 循環器専門医と呼吸器専門医の両方が在籍し、息切れや胸の症状の原因を総合的に診断します
- 院内に心エコー図・心電図・血液検査・呼吸機能検査などを備え、必要な初期検査を当日に行えます
- 兵庫県立はりま姫路総合医療センター・姫路医療センターなどと連携し、入院・手術や精密検査が必要な場合もスムーズにご紹介します
- 院長は兵庫県立はりま姫路総合医療センターでも診療を行っており、心不全外来・地域連携にも携わっています
- 在宅酸素・人工呼吸器対応や終末期ケアを通じて、ご自宅での療養も支えています
診療理念
「心に寄り添い、信頼される医療の提供」
医学的根拠に基づいた正確な医療を提供しつつ、患者さまとの信頼関係を大切にした診療を行っています。患者さまと丁寧に向き合い、納得いただける治療方針を共に考え、地域の皆さまにとって 「いつでも相談できる、安心できる存在」 となれるよう努めています。