えぷろんクリニック

内科・循環器内科|高血圧の総合ガイド

高血圧とは、安静にして繰り返し測っても、血管にかかる圧力が高い状態が続く病気です。日本での診断基準は、診察室で上の血圧140mmHg以上、または下の血圧90mmHg以上。家庭では上135mmHg以上、または下85mmHg以上です。[1]

「症状がないのに治療は必要?」「血圧が150や160ならどうする?」「薬は一生やめられない?」。この記事では、こうした疑問に答えながら、原因・検査・生活改善・薬の治療を順に説明します。

治療の目的は、数字を下げることを通じて、将来の脳卒中・心臓病・腎臓病の危険を減らすことです。血圧の測り方と自分に合った目標を知ることが、その第一歩になります。[2]

作成・改訂日:2026年10月21日|日本の成人における一般的な高血圧の解説

最初に押さえたい、高血圧の4つのポイント

  • 高血圧は、自覚症状がほとんどないことが多い病気です。体調の良し悪しだけでは判断できません。
  • 診断の目安は、診察室で上140以上、または下90以上。家庭では上135以上、または下85以上です。1回だけで決めず、繰り返し測って評価します。
  • 治療で目指す血圧は診断基準と別です。原則として診察室130/80未満、家庭125/75未満を目指しますが、体調や副作用を見ながら個別に調整します。
  • 胸痛・強い息苦しさ・突然のまひや言葉の出にくさがあれば、血圧の数字にかかわらず119番に連絡してください。

血圧の単位はmmHgです。「上」は収縮期血圧、「下」は拡張期血圧を指します。[1][3][11]

血圧とは?「上」と「下」の意味を知りましょう

血圧とは、血液が血管の内側の壁を押す圧力です。心臓はポンプのように縮んだり、ゆるんだりしながら、全身へ血液を送り出しています。

上の血圧=収縮期血圧

心臓が縮み、血液を押し出したときの圧力です。年齢とともに動脈がしなやかさを失うと、上の血圧が高くなりやすくなります。

下の血圧=拡張期血圧

心臓がゆるみ、次に送り出す血液をためているときの圧力です。この間も、動脈の弾力によって血液は流れ続けています。

血圧は、心臓が送り出す血液の量、血管の広がり具合、動脈のしなやかさ、体内の塩分・水分などに影響されます。つまり、高血圧は「心臓の力が強いだけ」で起こるものではありません。[9]

運動、緊張、痛み、寒さなどで一時的に高くなるのは自然な反応です。問題になるのは、安静にして繰り返し測っても、高い状態が続くことです。[4]

高血圧はいくつから?基準値と治療目標は別です

「140/90以上が高血圧」「130/80未満を目指しましょう」という説明を聞き、混乱したことはありませんか。これは、病気を診断する基準と、治療で目指す目標が異なるためです。

測る場所で異なる、高血圧の診断基準と治療目標
測定する場所高血圧を診断する基準原則的な治療目標
診察室上140以上
または下90以上
上130未満
かつ下80未満
家庭上135以上
または下85以上
上125未満
かつ下75未満

単位:mmHg。診断は複数の機会の測定結果などを合わせて行います。治療目標は、日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」に基づく原則であり、一律に強く下げるという意味ではありません。[1][3]

正常血圧・高値血圧・Ⅰ~Ⅲ度高血圧の早見表

成人の血圧分類:診察室と家庭での違い
分類診察室血圧家庭血圧
正常血圧上120未満
かつ下80未満
上115未満
かつ下75未満
正常高値血圧上120~129
かつ下80未満
上115~124
かつ下75未満
高値血圧上130~139
または下80~89
上125~134
または下75~84
Ⅰ度高血圧上140~159
または下90~99
上135~144
または下85~89
Ⅱ度高血圧上160~179
または下100~109
上145~159
または下90~99
Ⅲ度高血圧上180以上
または下110以上
上160以上
または下100以上

単位:mmHg。上と下が異なる分類に当てはまる場合は、高い方の分類で評価します。この表は成人の分類であり、救急車を呼ぶかどうかは症状なども合わせて判断します。[1]

「基準が130や160に変わった」という情報はどう考える?

日本の高血圧の診断基準が、130/80や160/100に変わったわけではありません。診断基準、治療目標、健診での受診勧奨は、それぞれ意味が異なります。160/100未満なら治療を考えなくてよい、という理解は適切ではありません。[3][17]

「上だけ高い」「下だけ高い」場合も相談を

たとえば家庭血圧で「145/70」なら上の血圧が、「125/90」なら下の血圧が基準を超えています。上下の両方が高くなるまで待つ必要はありません。片方だけでも高い状態が続けば相談してください。

130台なら放置してよい、とは限りません

診察室で上130~139、または下80~89なら「高値血圧」に当たります。すぐに全員が薬を必要とするわけではありませんが、生活習慣の見直しと家庭血圧の確認が大切です。糖尿病・腎臓病・心臓病などがある方では、全体のリスクを踏まえて治療を検討します。[1]

具体例で見ると、基準と目標の違いが分かります

家庭で「130/80」が続く場合、高血圧の診断基準である135/85には届いていませんが、「高値血圧」に当たります。生活習慣や持病を確認しながら、経過をみます。一方、すでに高血圧の治療中なら、原則的な家庭血圧の目標125/75未満を上回るため、治療を見直すか相談する場面になります。薬が必要かは、この数字だけで決めません。

高齢の方の目標はどう考える?

2025年の国内ガイドラインでは、年齢によらず上記の目標が基本になりました。ただし、立ちくらみ、転倒しやすさ、体の衰え、腎機能、ほかの病気、薬の副作用などへの配慮が必要です。特に、認知機能や日常生活の動作が大きく低下している方には、臨床試験の結果をそのまま当てはめず、生活の質や治療の負担も含めて個別に判断します。目標値だけを見て、自分で薬を増やすことは避けましょう。[3][20]

腎臓病や妊娠がある場合も、個別の目標を確認しましょう

慢性腎臓病(CKD)がある方では、尿たんぱく・糖尿病の有無、腎機能、年齢、めまいや低血圧の有無などを確認します。糖尿病や尿たんぱくを伴わないCKDでは、診察室140/90未満を中間目標にし、耐えられるか確認しながら慎重に130/80未満へ下げることがあります。[20]

妊娠中・産後の高血圧は、母体と赤ちゃんの状態を踏まえた別の管理が必要です。本稿の一般成人向けの目標や救急相談の数値を、そのまま当てはめないでください。産科・主治医と受診や服薬の方針を確認しましょう。[21]

高血圧の症状は?無症状でも治療が必要な理由

高血圧は、かなり高くても自覚症状がないことがあります。「頭痛がないから」「元気に働けているから」という理由では、治療の必要性は判断できません。

頭痛、肩こり、めまいがあるときに血圧を測ると高いこともありますが、これらの症状には多くの原因があります。痛みや不安で血圧が上がる場合もあり、症状をすべて高血圧のせいにすることも適切ではありません。[4]

長い年月のうちに、血管と臓器に負担がかかります

  • 脳:脳出血や脳梗塞などの脳卒中の危険が高まります。
  • 心臓:心筋梗塞だけでなく、心臓の筋肉が厚くなることや、心不全にも関わります。
  • 腎臓:細い血管が傷み、尿たんぱくや腎機能低下につながることがあります。腎臓が悪くなると、さらに血圧が上がることもあります。
  • 血管・眼:大動脈や眼の細い血管などにも影響することがあります。

血圧の治療は、こうした病気の危険を減らすために行います。「症状を楽にする薬」というより、将来の健康を守るための治療と考えると、目的が分かりやすくなります。[2][4]

高血圧は、心不全の予防とも深く関わります

高い圧力に逆らって血液を送り出し続けると、心臓に負担がかかります。心臓の筋肉が厚く、硬くなり、血液を十分に受け入れにくくなることもあります。心臓の「押し出す力」が保たれていても、心不全になる場合があります。息切れやむくみが出てきたときは、年齢のせいと決めつけずに相談しましょう。[10][16]

血圧を下げる利益は、どんな研究で確かめられている?

治療の効果を調べるには、似た条件の人を異なる治療方針に分けて比較する研究が役立ちます。高血圧では、こうした臨床試験の結果を積み重ね、血圧を管理する利益と副作用のバランスを検討してきました。

もう少し詳しく:SPRINT試験から分かること

SPRINT試験は、糖尿病や脳卒中の既往がない、心血管病のリスクが高い50歳以上の9,361人を対象に、上の血圧の目標を120未満にする方針と140未満にする方針を比べました。追跡期間の中央値は3.26年で、主要な心血管イベントの発生率は1年当たり1.65%対2.19%、ハザード比は0.75でした。これは、より低い目標の群で相対的なハザードが25%低下したという結果です。

血圧は、座って静かに5分間休み、自動血圧計で3回測った平均を用いるなど、条件を標準化して評価しました。日常の外来や家庭で測った1回の値と、そのまま同じ条件と考えることはできません。

一方で、重い有害事象としての低血圧、失神、電解質異常、急性腎障害などは増えました。けがを伴う転倒の増加は認められませんでした。これは、血圧管理の利益と副作用の両方を確認する必要があることを示します。対象者や測定条件が決まった研究であり、すべての人が家庭血圧を120未満へ下げるよう勧める結果ではありません。個人の目標は、国内ガイドラインと体の状態を合わせて決めます。[18]

高血圧の原因は?食塩・体質と、見逃したくない病気

多くは、いくつかの要因が重なる「本態性高血圧」

多くの高血圧は、原因を一つに決められない「本態性高血圧」です。遺伝的な体質、加齢、食塩のとりすぎ、肥満、運動不足、飲酒、睡眠やストレスなどが組み合わさります。生活習慣だけに原因を求めて、ご本人を責める必要はありません。変えられる部分を一緒に探すことが大切です。[1]

別の病気が原因になる「二次性高血圧」もあります

腎臓の病気、腎臓へ向かう血管の狭窄、ホルモンの異常、睡眠時無呼吸症候群、薬の影響などで血圧が高くなることがあります。原因に合った治療が重要です。[10]

原因の詳しい確認を考えるきっかけ

  • 若い時期から高血圧がある、または急に悪化した。
  • 複数の薬を飲んでも十分に下がらない。
  • 採血でカリウムが低いと言われた。
  • 大きないびき、睡眠中の呼吸停止、日中の強い眠気がある。

たとえば原発性アルドステロン症は、副腎から血圧を上げるホルモンが過剰に出る病気です。カリウム低下は手掛かりになりますが、カリウムが正常でも否定できません。医師が必要に応じてホルモンの採血などを検討します。検査値に影響する薬もあるため、検査のために自分で休薬しないでください。[12]

一部の痛み止め(NSAIDsなど)、ステロイド、交感神経を刺激する成分を含むかぜ薬や、甘草を含む漢方薬などが血圧に影響することもあります。市販薬・漢方薬・サプリメントも含めて、使用しているものを受診時に伝えましょう。[13]

家庭血圧の測り方|朝と夜、同じ条件で記録しましょう

家庭血圧は、普段の状態を知るために役立ちます。病院で高い値が出た方も、治療中の方も、診察室の数字と合わせて記録を見せてください。

項目測定のポイント
血圧計適切な大きさのカフを使う上腕式を基本にします。服の上から巻かず、取扱説明書に沿って装着します。
朝起床後1時間以内、トイレを済ませ、朝食前・降圧薬を飲む前に測ります。
夜就寝前に測ります。入浴・飲酒・運動の直後は避け、できるだけ同じ条件で測りましょう。
姿勢椅子に座り1~2分安静に。背中を支え、足を組まず床につけ、腕を心臓の高さに支えます。測定中は話しません。
回数・記録1回の機会に原則2回測り、平均を記録します。週5日以上を目安に、できれば毎日続けましょう。

朝・夜は分けて記録し、脈拍、服薬、気になる症状も添えると診療に役立ちます。[5][9]

低い数字が出るまで測り直さなくて大丈夫です

都合のよい値だけを選ぶと、普段の状態が分からなくなります。測定条件をそろえ、高かった日も、そのまま記録しましょう。1回の上下に一喜一憂するより、数日から1週間程度の平均や、朝と夜の傾向を見ることが大切です。ただし、著しく高い値や危険な症状があるときは、記録をためるために受診を待たないでください。

病院と自宅で値が違うのはなぜ?

  • 白衣高血圧:病院で高く、自宅では高血圧の基準未満になる状態です。緊張などが関わりますが、定期的な確認は必要です。
  • 仮面高血圧:病院では高くなくても、自宅などでは高い状態です。家庭で測らないと見逃すことがあります。

診察室と家庭の評価が食い違う場合は、正しく測れた家庭血圧を重視し、必要に応じて24時間血圧測定などで確認します。[5][9]

血圧が高いとき、何科に相談する?受診と救急の目安

高血圧は、まず内科・循環器内科で相談できます。症状がなくても、健診や家庭血圧で高い状態が続いていれば受診しましょう。血圧の高さに加え、症状や持病も重要です。

次の症状は、血圧の数字を待たず119番に連絡してください

  • 突然の顔や片側の手足のまひ、ろれつが回らない、言葉が出ない。
  • 強い胸の痛み、突然の激しい背中の痛み、冷や汗。
  • 急な強い息苦しさ、意識がおかしい、けいれん。
  • 突然の経験したことのない激しい頭痛や、急な見え方の異常。

高血圧による臓器の障害や、脳卒中・心筋梗塞などの可能性があります。測り直して様子を見続けたり、ご自身で運転したりしないでください。[11][14]

血圧が140・160・180のときの対応早見表

状況取る行動の目安
診察室で上140以上、または下90以上が続く症状がなくても、内科・循環器内科へ相談します。家庭では上135以上、または下85以上を目安にします。
上160以上、または下100以上を繰り返す生活改善だけで様子を見続けず、早めに医療機関へ相談します。心臓病・腎臓病・糖尿病などがある方は、これより低い値でも相談を先延ばしにしないでください。
上180以上、または下120以上が続く危険な症状がなければ安静にして再測定し、同程度なら当日中に医療機関へ連絡します。
胸痛・強い息苦しさ・まひ・言葉の出にくさなど血圧の数字にかかわらず119番へ。測定や記録を優先して待たないでください。

一般的な目安であり、個別に指示された受診基準がある場合はその指示を優先します。妊娠中・産後は別の対応が必要です。[11][14][17]

症状がなくても、著しく高い値が続く場合は当日中に相談を

上180以上、または下120以上が出た場合、危険な症状がなければ静かに座って再測定してください。再び同程度の値なら、当日中に医療機関へ連絡し、受診の必要性を確認しましょう。症状があれば再測定より救急要請を優先します。

この数字だけで高血圧緊急症と決まるわけではありません。医療機関では、脳・心臓・腎臓などに急な障害が起きていないかを評価します。自分の判断で薬を追加し、急いで下げようとしないでください。[11]

血圧を「今すぐ下げたい」とき、どうすればよい?

まずは動作をやめて座り、落ち着いた状態で測り直します。危険な症状があるときは、安静だけで改善を待たず救急要請を優先してください。家族の降圧薬を借りる、自分の薬を追加するといった方法で急に下げようとせず、医療機関の指示を受けましょう。急な高血圧への対応と、数週間・数か月かけて行う生活改善は、目的と時間の尺度が異なります。

高い状態が続く方は、症状がなくても早めの受診を

  • 診察室で上140以上または下90以上、家庭で上135以上または下85以上が続く。
  • 上160以上または下100以上を繰り返す。特に家庭でこの値が続く場合は、受診を先延ばしにしない。
  • 薬を飲んでも高い、朝だけ高い、急に血圧が上がってきた。
  • 動悸、息切れ、むくみなどが出てきた。
  • 薬を飲んでから、立ちくらみやふらつきが増えた。

これは受診を考えるための一般的な目安です。すでに治療中の方は主治医の指示を優先してください。妊娠中・産後は別の基準で対応が必要になるため、この目安まで待たず、血圧上昇や頭痛・見え方の異常などがあれば産科へ連絡してください。

高血圧の検査では、血圧以外の何を調べる?

診察では、いつから高いか、家族の病歴、食事・飲酒・睡眠、服薬などを確認します。検査の目的は、原因の手掛かり、臓器への影響、ほかの危険因子を把握することです。

  • 採血:腎機能、カリウムなどの電解質、血糖・HbA1c、脂質などを確認します。
  • 尿検査:尿たんぱくなどから、腎臓の病気や腎臓への影響を調べます。
  • 心電図:不整脈や、心臓への負担を示す所見がないか確認します。
  • 必要に応じた検査:心エコー、ホルモン検査、睡眠時無呼吸の検査などを検討します。

全員にすべての検査が必要なわけではありません。年齢、症状、血圧、持病に合わせて選びます。血圧と同時に、糖尿病・脂質異常症・喫煙なども管理することが、心臓病の予防につながります。[9]

高血圧を改善する生活習慣|減塩・運動・睡眠の実践

① 減塩は「食塩1日6g未満」を目標に

塩分をとりすぎると、体はナトリウムとともに水分を保ちやすくなり、血圧の上昇につながります。高血圧の方には、食塩相当量で1日6g未満が勧められています。「料理に加える塩」だけでなく、調味料や加工食品など、口にするもの全体の合計です。[6]

  • 麺類の汁は飲み干さない。
  • しょうゆ・ソースは「かける」から「少量つける」へ。
  • 漬物、練り物、ハムなどが重なる食事を減らす。
  • 酸味、香辛料、香味野菜、だしの香りを利用する。顆粒だしにも塩分があるため表示を確認する。
  • 栄養成分表示の「食塩相当量」を見て、同じ種類の食品でも少ないものを選ぶ。

「減塩」と書かれた商品でも、量を多く使えば摂取量は増えます。たとえば1食の食塩相当量が2gなら、3食で6gになり、間食や追加の調味料は別に加わると考えましょう。[6]

② 食事全体を整え、野菜・果物は持病に合わせて

減塩に加え、食事全体を整える方法としてDASH食があります。野菜・果物・全粒穀物、魚や豆類、低脂肪の乳製品などを取り入れ、飽和脂肪の多い食品や甘い飲料を控える食事の考え方です。研究では降圧効果が確かめられており、特別な食品やサプリメントを買うことが前提ではありません。[19]

日本の食事に取り入れる場合も、「主菜は魚や豆腐、野菜の副菜を添える」「甘い飲料を水や無糖の飲み物に替える」など、普段の献立の組み立てから考えられます。和食でも、汁物・漬物・しょうゆが重なると塩分が増えるため、料理名より、実際の食塩量と栄養の組み合わせを確認しましょう。

野菜や果物などに含まれるカリウムは、血圧管理に役立ちます。ただし、腎機能が低い方や、カリウムが上がりやすい薬を使っている方では、摂取量の調整が必要です。カリウム入りの減塩塩やサプリメントを自己判断で増やさず、医師に確認してください。糖尿病がある方は果物の量にも配慮します。[7][15]

③ 肥満がある方は、無理のない減量を

体重の適正化は血圧管理に役立ちます。肥満がある方は、食事内容と活動量を見直し、続けられる目標を決めましょう。一方、高齢でやせている方、筋肉量が少ない方、心不全などで栄養状態が悪い方に、一律の減量は勧められません。[7]

④ 運動は、会話ができる程度の有酸素運動から

ウォーキングなどを1日30分程度を目安に、体調に合わせて取り入れましょう。最初は短い時間から始め、分けて行っても構いません。息を止めて強く踏ん張る運動は血圧を上げやすいため、負荷のかけ方に注意します。

血圧が著しく高い方や、胸痛・強い息切れがある方は、運動を始める前に医師へ相談してください。心臓病や関節の病気がある場合も、運動内容を調整します。[7][4]

⑤ 飲酒を減らし、禁煙を

飲酒量が多い方では、量や回数を減らすことが血圧の改善につながります。「血管によいから」と飲み始める必要はありません。喫煙は心臓・血管の病気の危険を高めるため、加熱式たばこも含めて禁煙を考えましょう。[7]

⑥ 睡眠と寒さ対策も、血圧管理の一部です

睡眠不足や睡眠時無呼吸は血圧に影響します。いびきや無呼吸を指摘されている方は相談しましょう。寒い時期は血圧が上がりやすいため、脱衣所やトイレなども含め、室内の急な温度差を小さくする工夫が役立ちます。[7]

生活改善だけで様子を見てよいかは、人によって違います

血圧がかなり高い方、心臓病・脳卒中・腎臓病などがある方では、生活改善と並行して薬が必要になることがあります。生活習慣を整えることと薬の治療は、どちらも血管や臓器を守るための方法です。[3]

高血圧の薬はどんな種類?なぜ毎日飲むの?

降圧薬には、血管を広げる、血圧を上げるホルモンの働きを抑える、余分な塩分・水分を出すなど、異なる作用があります。年齢、腎機能、脈拍、心臓病、妊娠の可能性などを踏まえて選びます。

よく使われる降圧薬の例
薬の種類主な働き主な注意点の例
カルシウム拮抗薬(主に長時間作用型のジヒドロピリジン系)主に血管を広げ、血圧を下げます。足のむくみ、ほてり、動悸などが出ることがあります。
ARB・ACE阻害薬血圧を上げる仕組みの一つである、ホルモンの働きを抑えます。腎機能・カリウムを確認します。ACE阻害薬では空ぜきなど。妊娠中は使えません。
少量のサイアザイド系・類似の利尿薬塩分・水分を尿へ出しやすくして、血圧を下げます。脱水やナトリウム・カリウムの低下、尿酸値の上昇などに注意します。
β遮断薬交感神経の働きを抑え、心拍数などを調整します。脈が遅くなることなどに注意します。喘息などの持病により選択を慎重に行います。

代表的な説明であり、すべての薬・副作用を示すものではありません。ほかにもMRAやARNIなどがあり、病態に合わせて使い分けます。個別の薬の注意点は医師・薬剤師に確認してください。[3][8][15]

高血圧の薬は、いつから必要?

薬を始めるかは、血圧の高さと続いている期間、心臓・脳・腎臓への影響、糖尿病や腎臓病などの持病を合わせて判断します。軽度の上昇で危険因子が少ない場合は、生活改善の効果を確認することがあります。一方、血圧が高い方や合併症の危険が高い方は、生活改善と並行して薬を始めることがあります。全員が同じ期間、薬なしで待つわけではありません。[3][17]

薬が2種類になったら、重症ということ?

必ずしもそうではありません。違う働きの薬を組み合わせると、一つの薬を多く使うより、効果と副作用のバランスを調整しやすいことがあります。複数の成分を一つの錠剤にした配合薬を使う場合もあります。[3][8]

血圧が下がったら、薬をやめてもよい?

治療中の血圧が良好なのは、薬の効果が出ているためかもしれません。そこで急にやめると、再び上がることがあります。生活習慣の改善や体調の変化により減量できる場合もありますが、自己判断で中止せず、家庭血圧を見ながら相談しましょう。薬に依存したから続ける、という意味ではありません。[9]

薬を飲んでいるのに血圧が下がらない場合は?

まずは測定方法、飲み忘れ、食塩や飲酒、併用薬を確認します。そのうえで薬の組み合わせや、睡眠時無呼吸・ホルモンの病気などを見直します。「効かない薬だ」と自己判断でやめず、家庭血圧の記録を見せて相談しましょう。[10]

副作用や飲み忘れが心配なときは

むくみ、せき、立ちくらみなどが気になる場合は、飲んでいる薬と症状の経過を伝えてください。薬の種類や量を見直せる場合があります。唇・舌・喉の急な腫れや息苦しさは、重い副作用の可能性があるため、直ちに救急受診してください。呼吸が苦しい場合は119番へ連絡します。飲み忘れたときの対応は薬によって異なるため、あらかじめ確認し、2回分をまとめて飲まないようにしましょう。[9]

妊娠を希望している方は、薬の選択について事前に処方医へ相談してください。妊娠が判明した場合、ARB・ACE阻害薬などは中止が必要なため、服用を続けず、直ちに処方医・産科へ連絡してください。妊娠の可能性がある場合も速やかに相談しましょう。[15]

高血圧の受診前に準備するとよいもの

  • 健診結果:過去の血圧・採血・尿検査の変化も参考になります。
  • 家庭血圧の記録:可能なら朝・夜を数日~1週間程度。高い値を省かず、そのまま持参してください。
  • お薬手帳:他院の薬に加え、市販薬・漢方薬・サプリメントも伝えましょう。
  • 症状のメモ:頭痛、動悸、息切れ、むくみ、立ちくらみ、いびきなどについて、始まった時期や状況を整理します。

受診までに完璧な記録を作る必要はありません。高い血圧や気になる症状があるなら、記録がそろうまで待たずに相談してください。

治療を始めた後も、測定する時間を生活の中に組み込み、受診のたびに記録を見返しましょう。「薬が多くて困る」「減塩が続かない」「通院が負担」といったことも相談内容です。続けられる方法を医療者と一緒に考えることが大切です。

高血圧について、よくある質問

高血圧は何科に相談すればよいですか?

まずは内科・循環器内科で相談できます。健診結果、家庭血圧の記録、お薬手帳があれば持参してください。腎臓やホルモンの病気が疑われる場合は、必要に応じて専門の診療科へ紹介します。

血圧が140台でも、症状がなければ受診しなくてよいですか?

症状がなくても、高い状態が続けば相談してください。上の血圧が診察室で140以上、家庭で135以上は高血圧を考える基準です。下の血圧が基準以上の場合も同様です。1回の値だけではなく、繰り返した測定で評価します。

病院だけ血圧が高い場合、薬は必要ですか?

白衣高血圧の可能性がありますが、家庭血圧の測り方や平均、持病などを確認して判断します。必ず薬が必要とも、治療が不要とも言い切れません。自宅の記録を見せて相談しましょう。

高血圧の薬は、一度飲み始めると一生やめられませんか?

長期の治療が必要な方は多い一方、生活習慣や体調の変化に合わせて減量できる場合もあります。薬を始めたこと自体が原因でやめられなくなるわけではありません。中止や減量は、家庭血圧を見ながら医師と決めます。

血圧が180以上になったら、すぐ救急車を呼ぶべきですか?

胸痛、強い息苦しさ、まひ、言葉の出にくさなどがあれば119番に連絡してください。症状がなくても、安静にして測り直し、上180以上または下120以上が続けば当日中に医療機関へ連絡しましょう。危険な症状があれば、180未満でも救急対応が必要です。

高血圧の治療は、家庭血圧を知ることから

高血圧は、症状の有無だけでは判断できません。家庭で測って記録し、健診結果とともに、お近くの内科・循環器内科やかかりつけ医へ相談しましょう。血圧を管理することは、これからの脳・心臓・腎臓を守るための取り組みです。

この記事の発信元:えぷろんクリニック(内科・循環器内科)
当院では、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病と、動悸・息切れ・むくみなどを診療しています。家庭血圧、採血・心電図などを確認し、必要に応じて専門医療機関と連携します。

この記事は一般的な情報提供を目的としています。診断や治療目標、薬の選択は、年齢だけでなく症状・持病・体調に応じて判断します。現在治療中の方は、主治医に相談してください。

参考文献・確認した一次資料

  1. 厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」。診断基準、分類、主な原因を参照。
  2. 日本高血圧学会「高血圧の10のファクト~国民の皆さんへ~」。JSH2025に基づく一般向け提言。
  3. 日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025 発刊についてのお知らせ」。診察室・家庭血圧の降圧目標、個別対応、主要降圧薬を参照。
  4. 国立循環器病研究センター「高血圧」。繰り返しの測定、症状、日常生活の留意点を参照。
  5. 日本高血圧学会「家庭で血圧を測定しましょう」。家庭血圧の測定方法を参照。
  6. 日本高血圧学会「減塩・栄養委員会」および一般向け減塩情報。
  7. 日本高血圧学会「血圧を適切に保つための10のヒント」(2025)。減塩、運動、睡眠、体重、禁煙などを参照。
  8. 国立循環器病研究センター掲載「新しい循環器病治療薬」。降圧薬の働きを参照。
  9. 日本高血圧学会ほか「一般向け『高血圧治療ガイドライン2019』解説冊子」。血圧の仕組み、家庭測定、検査、服薬の一般説明を参照。降圧目標は本冊子の旧目標を用いず、資料[3]の2025年版に基づいて記載。
  10. 循環器病研究振興財団「知っておきたい循環器病あれこれ177 高血圧と上手に付き合うために」(2026年7月1日発行)。心臓・腎臓への影響、二次性高血圧を参照。
  11. American Heart Association. When To Call 911 About High Blood Pressure(2025年8月14日最終レビュー)。著しい高血圧と危険な症状への対応を参照。日本の救急番号は119番として記載。
  12. Endocrine Society. Primary Aldosteronism: Clinical Practice Guideline(2025)。原発性アルドステロン症とカリウム、検査への薬剤の影響を参照。
  13. PMDA掲載「高血圧治療用医療機器に関する審査資料」(2022)。薬剤性高血圧の原因として知られる薬剤に関する記載を参照。
  14. 消防庁「救急車を上手に使いましょう」(2025年10月)。ためらわず救急車を呼んでほしい症状を参照。
  15. 厚生労働省・PMDA「医薬品・医療機器等安全性情報 No.401」(2023年5月、レニン‐アンジオテンシン系阻害薬の妊娠に関する注意)およびPMDA電子添文「イルベサルタン錠『オーハラ』」「イミダプリル塩酸塩錠『オーハラ』」(いずれも2025年9月改訂版)。妊娠、腎機能、カリウム等の注意点を参照。
  16. American Heart Association. Ejection Fraction Heart Failure Measurement(2025年5月30日最終レビュー)。駆出率が保たれた心不全の説明を参照。
  17. 日本高血圧学会「血圧に関する大切なお知らせ」(2024年6月7日)。診断基準と受診の目安を参照。
  18. NHLBI, NIH. Systolic Blood Pressure Intervention Trial (SPRINT) Study。研究実施機関による対象者・主要結果・副作用の解説。原著:SPRINT Research Group. A Randomized Trial of Intensive versus Standard Blood-Pressure Control. N Engl J Med. 2015;373:2103–2116. doi:10.1056/NEJMoa1511939. 測定方法はSPRINT試験プロトコルも参照。
  19. NHLBI, NIH. DASH Eating Plan(2026年2月25日更新)およびHealth Benefits of DASH。食事内容と降圧効果の研究を参照。
  20. 日本高血圧学会.The Japanese Society of Hypertension Guidelines for the management of elevated blood pressure and hypertension 2025 (JSH2025). Hypertension Research(英語版)。高齢者の機能・認知状態に応じた判断、CKDの降圧目標を参照。
  21. European Society of Cardiology. 2025 ESC Guidelines for the management of cardiovascular disease and pregnancy. Eur Heart J. 2025;46:4462–4568. doi:10.1093/eurheartj/ehaf193. 妊娠中・産後の高血圧は一般成人と分けて管理することを参照。

公開資料の確認日:2026年10月21日。文献の図表や文章の転載は行わず、一般向けに構成・説明を作成しています。