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HEART FAILURE / 心不全の薬

コララン(イバブラジン)とは?心不全での効果・エビデンス・使い分け

作用・適応・エビデンス情報確認:2026年10月18日

心不全の治療では、血圧やむくみに加えて、「心臓が1分間に何回動いているか」も大切な情報になります。コラランは、この心拍数に働きかける薬です。

ただし、脈が速い人なら誰にでも使うわけではありません。有効性を示した患者さんには、心臓の収縮機能、心電図のリズム、心拍数、これまでの治療など、共通する条件があります。

この記事では、コラランの特徴、日本での適応、代表的な臨床試験、実際の使い分けを、基本から専門的な内容まで解説します。医学情報は2026年10月18日時点で確認しています。

最初に押さえたい4つのポイント

  • 主な役割は、心臓のペースメーカーに働きかけて心拍数を下げることです。
  • エビデンスの中心は、洞調律で心拍数が高い、左室駆出率の低下した慢性心不全です。
  • 主要試験で最も明確だった利益は、心不全の悪化による入院の減少です。
  • β遮断薬などの標準治療、徐脈・心房細動・併用薬の確認と合わせて使います。

根拠:[1]、[6]、[14]

今、強い症状がある方へ

安静にしていても息苦しい、強い胸痛が続く、冷汗を伴う、意識がおかしい場合は、119番へ連絡してください。心不全の薬の相談や通常の外来予約を待つ状態ではありません。[18]

1.コラランはどのように心拍数を下げる薬?

洞結節の「If電流」に働く

コラランの一般名はイバブラジンです。薬の分類はHCNチャネル遮断薬で、洞結節のペースメーカー電流であるIf電流を抑えます。

洞結節は、心臓の拍動の出発点になる場所です。ここでは細胞の電気的な状態が徐々に変化し、一定の水準に達すると次の拍動を始める信号が出ます。イバブラジンは、その電気的な変化の進み方を緩やかにし、次の拍動までの間隔を長くします。洞結節では、主にHCN4というチャネルがこの作用に関係しています。3 4

専門的には、活動電位の第4相に当たる拡張期脱分極の傾きを小さくする作用です。チャネルの活動に依存して阻害が進む性質がありますが、適切な心拍数で自動的に作用が止まるわけではありません。徐脈を起こす可能性があるため、投与後の確認が必要です。4

心筋の収縮力や血圧への直接的な影響が比較的小さい

イバブラジンは、心筋の収縮力を直接弱めたり、血管を広げたりすることを主作用とせず、心拍数を下げます。左室機能が低下した患者さんを対象とする小規模な単回投与試験でも、心拍数の低下とともに左室駆出率や1回拍出量が保たれることが確認されています。5

この特徴は、血圧低下などでβ遮断薬を十分に増量できない場合に役立つことがあります。ただし、「血圧が絶対に下がらない」「低血圧でも安全に使える」ことを意味しません。 日本の電子添文では、高度の低血圧は禁忌です。1

2.なぜ心不全で心拍数を下げるのでしょうか?

拍動が速いと、心臓が血液を受け取る時間が短くなる

心臓は、収縮して血液を送り出し、拡張して次の血液を受け取ります。心拍数が上がると1拍の周期が短くなり、とくに拡張する時間が短くなります。

例えば1分間に60回なら1拍は1秒、100回なら0.6秒です。心拍数を適切に下げることは、心臓が血液を受け取る時間の確保や、心筋の酸素需要の軽減につながり得ます。この生理学的な考え方が、イバブラジンを使う背景にあります。19

「速いほど悪い」「遅いほどよい」とは限らない

心臓が1分間に送り出す血液量は、概念的には次の式で表されます。

心拍出量 = 1回拍出量 × 心拍数

心臓が1回に十分な血液を送り出せないとき、心拍数を上げて補っている場合があります。脱水や出血、発熱、貧血、甲状腺の病気などで脈が速い場合も、まず原因を評価する必要があります。16

したがって、治療で確認すべきなのは「何回まで下がったか」と「全身の血流や症状がどうなったか」の両方です。脈の数字だけを見て薬を増やすことはできません。進行した心不全で低灌流が続く場合、徐拍化する薬の減量・中止を検討することもあります。15

3.日本でコラランを使うのは、どのような患者さん?

日本の電子添文では、洞調律で、投与開始時の安静時心拍数が75回/分以上の慢性心不全が対象です。標準的な心不全治療を受けていることが前提になります。1

確認する項目判断のポイント
心不全の状態慢性心不全であり、急性増悪やショックの状態ではないか
心電図のリズム洞結節から拍動が始まる「洞調律」か
心拍数開始時の安静時心拍数が75回/分以上か
β遮断薬その患者さんが耐えられる用量まで使われているか。使えない理由があるか
左室機能主要試験の対象であるLVEF35%以下などの患者背景に合うか
安全性血圧、伝導障害、肝機能、妊娠の可能性、相互作用などに問題がないか

最大忍容量は「全員が最大用量まで飲む」という意味ではない

最大忍容量とは、血圧や症状などを踏まえて、その患者さんが無理なく続けられる範囲で最も多い用量です。少量であっても、増量すると状態が悪くなる場合には、その量が最大忍容量になります。

国内では、β遮断薬が不耐容・禁忌などで使用できない患者さんにも投与できます。したがって「β遮断薬の併用が必ず必要」とする説明も厳密には正しくありません。ただし、β遮断薬の利益と同等に置き換えられることが証明されているわけではありません。1 15

EF35%以下という条件の正確な位置づけ

LVEF(左室駆出率)は、左室に入った血液のうち、1回の収縮でどれくらいを送り出せたかを表す指標です。

日本の効能・効果欄に、LVEFの数値は直接記載されていません。一方で、臨床試験の患者背景を理解して適応患者を選ぶよう求められています。有効性の根拠の中心は、LVEF35%以下の症候性心不全です。 「EFに関係なく慢性心不全なら使える」と広げることは適切ではありません。1 14

JCS/JHFS 2025心不全診療ガイドラインでも、条件を満たす症候性HFrEFへの追加を考慮する位置づけです〔推奨クラスIIa、エビデンスレベルB-R〕。海外の資料には心拍数70回/分を基準とする記載もありますが、日本の開始基準は75回/分以上として区別します。14

4.SHIFT試験:何が改善し、何は証明されなかったのか

コラランの位置づけを決めた代表的な研究が、2010年に発表されたSHIFT試験です。

対象は、LVEF35%以下、洞調律、安静時心拍数70回/分以上で、過去1年以内に心不全入院歴のある症候性慢性心不全患者でした。6,558人を無作為化し、6,505人を解析、追跡期間の中央値は22.9か月でした。標準治療にイバブラジンを追加する群と、プラセボを追加する群を比較しました。6

主な結果

評価項目イバブラジン群プラセボ群ハザード比〔95%信頼区間〕
心血管死または心不全悪化による入院〔主要評価項目〕24.5%28.7%0.82〔0.75–0.90〕
心不全悪化による入院15.9%20.6%0.74〔0.66–0.83〕
心血管死13.9%15.0%0.91〔0.80–1.03〕
全死亡15.5%16.9%0.90〔0.80–1.02〕

ハザード比は、追跡中のイベント発生の速さを群間で比較した指標で、1より小さい値はイバブラジン群で少ない方向を示します。95%信頼区間は推定の不確実性を表し、1をまたぐ場合は、通常の基準では有意差があると言えません。

表の発生割合は、試験期間中に各イベントを経験した患者の割合です。心不全入院・心血管死は、主要複合評価項目の「最初のイベント」だけに限定しない各項目の結果を示しています。年率ではありません。6 7

主要複合評価項目のハザードは相対的に18%低下し、心不全入院のハザードは26%低下しました。患者さんの発生割合としては、主要評価項目が28.7%から24.5%へ、約4.2ポイント少なかったという結果です。「18%低下」は18ポイント減少という意味ではありません。6 7

「死亡率を18%下げた」という説明は不正確

SHIFT全体では、心血管死と全死亡は、それぞれ単独では統計学的な有意差を示しませんでした。心不全による死亡は副次的な解析で減少しましたが、それを全死亡や心血管死全体の効果と同一視することはできません。6

したがって、この試験から最も明確に伝えられるのは、「適切な患者さんで、心不全の悪化による入院を減らす根拠がある」ということです。

心拍数75回/分以上の事後解析では、死亡にも良好な結果

一方、開始時の心拍数が75回/分以上の患者に絞った解析では、全死亡はHR 0.83〔95%信頼区間0.72–0.96〕、心血管死はHR 0.83〔0.71–0.97〕と、いずれも有意に減少しました。8

この結果は日本の適応に近い患者群における利益を示唆します。ただし、当初の計画で定められた主要解析ではなく、事後解析です。試験全体と同じ確実性で扱うことはできません。「死亡抑制は全く期待できない」と言い切るのも、「死亡を減らすことが全体で確立した」と説明するのも行き過ぎです。

心臓の形や働きにも変化がみられた

SHIFTの心エコー副研究では、8か月後の左室収縮末期容積の減少や、LVEFの改善が報告されました。LVEFの平均変化はイバブラジン群で約+2.4ポイント、プラセボ群で約−0.1ポイントでした。10

これは、心拍数の調整が長期的には心臓の構造・機能にも影響し得ることを示す補助的な根拠です。全員のEFが同じだけ上がるという予測値ではありません。

5.J-SHIFT試験:日本人のデータはどう読む?

日本人を対象としたJ-SHIFT試験では、LVEF35%以下、洞調律、安静時心拍数75回/分以上などの条件を満たした254人を、各127人の2群に分けました。追跡期間の中央値は589日でした。9

主要評価項目である心血管死または心不全入院は、イバブラジン群20.5%、プラセボ群29.1%。ハザード比は0.67でしたが、95%信頼区間は0.40–1.11、P値は0.1179で、主要評価項目の統計学的な有意差には至っていません。

心不全入院という副次評価項目には良好な結果がみられました。ただし、この試験は海外SHIFTとの結果の方向の整合性を確認する設計であり、日本人だけで大規模な優越性を証明した試験と同じには扱えません。9

「日本人でも33%の有意なリスク低下を証明した」という説明は避け、「海外試験を支持する方向の結果だが、日本人試験単独では主要評価項目の不確実性が残る」と理解するのが適切です。

6.ほかの試験が示す、コラランの効果の範囲

心拍数を下げる薬理作用があっても、すべての心疾患で入院や死亡が減るわけではありません。

試験主な対象結果と読み方
BEAUTIFUL〔2008年〕安定冠動脈疾患+LVEF40%未満、10,917人心血管死・心筋梗塞入院・心不全入院の主要複合評価項目は改善せず。HR 1.00〔0.91–1.10〕。11
SIGNIFY〔2014年〕臨床的な心不全のない安定冠動脈疾患、19,102人心血管死または非致死性心筋梗塞は6.8%対6.4%、HR 1.08〔0.96–1.20〕で改善せず。12
EDIFY〔2017年〕EFが保たれた心不全を対象として実施、LVEF45%以上、179人8か月で心拍数は下がったが、E/e′・6分間歩行距離・NT-proBNPの改善を示せず。13

SIGNIFYの結果をHFrEFへそのまま当てはめない

SIGNIFYでは、活動を制限する狭心症のサブグループに有害な方向の結果がみられました。ただし、この試験では最大1回10mg・1日2回が使用されており、日本の心不全治療での最大用量より多く、対象疾患も異なります。承認条件を満たすHFrEFの治療を同じ結果で評価することはできません。12

欧州では条件付きで安定狭心症の症状改善にも承認されていますが、日本のコラランの承認適応と、海外での狭心症の使い方は区別する必要があります。19

「拡張する時間が長くなるからHFpEFにも効く」とは言えない

EFが保たれた心不全では、運動時に心拍数を十分に上げられないことが活動制限に関わる患者さんもいます。22人を対象とした小規模なクロスオーバー試験では、イバブラジンによる運動時心拍数の低下と、最高酸素摂取量〔peak VO₂〕の悪化が報告されました。20

EDIFYで評価したE/e′は心臓の充満圧を推定する心エコー指標、NT-proBNPは心臓への負担を反映する血液の指標です。これらも改善しなかった結果は、心拍数を下げるという機序だけでは、機能指標や運動能力の改善を保証できないことを示しています。13

同試験の組み入れ基準はLVEF45%以上で、死亡や入院の差を決める大規模試験ではありません。結果を「HFpEF全例で必ず悪化する」と広げることも適切ではなく、HFpEFに一律使用する根拠にはならないという理解が妥当です。

7.現在の心不全治療で、どこに位置づける?

収縮機能が低下した心不全では、病状に応じて次の4系統を組み合わせる治療が基本になります。14 15

薬の系統代表例・主な位置づけ
ARNI、またはACE阻害薬/ARBサクビトリル・バルサルタンなど。神経体液性因子への介入を含む基盤治療
β遮断薬ビソプロロール、カルベジロールなど。交感神経の過剰な刺激を抑える基盤治療
MRAスピロノラクトン、エプレレノンなど。ミネラルコルチコイド受容体を阻害する基盤治療
SGLT2阻害薬ダパグリフロジン、エンパグリフロジンなど。心不全の基盤治療

コラランは、こうした治療を評価したうえで、残っている高い心拍数に対応する追加薬として検討します。うっ血があれば利尿薬の調整、原因となる弁膜症や虚血、不整脈があればその治療も必要です。

2026年のESC心不全ガイドラインでも、基盤治療を最適化した症候性HFrEFに対する追加治療として位置づけられています。β遮断薬はまず導入・増量し、その後に残る心拍数を評価する考え方です。15

β遮断薬と「どちらが優れているか」という比較では決められない

β遮断薬には、HFrEFの生命予後を改善する根拠があります。イバブラジンの作用は主として心拍数調節であり、β遮断薬の交感神経に対する作用全体を置き換えるものではありません。15

β遮断薬の役割を保ちつつ、最大忍容量でも残る心拍数に別の機序で対応するという考え方が基本です。β遮断薬を飲みやすい薬に置き換える目的で、自己判断で中止してはいけません。

現在の4剤併用下で、SHIFTと同じ効果量とは限らない

SHIFTは、ARNIやSGLT2阻害薬が現在のように使われる前の試験です。β遮断薬は約89%、MRAは約60%に使用されていました。6 7

そのため、現在の4系統を十分に導入した患者さんで、追加効果の大きさがSHIFTと同じかは、この試験だけでは分かりません。 これは試験背景から考えられる限界です。「現在の治療では無効」という結論も導けないため、残るリスクと患者さんの条件から追加を判断します。

8.実際には、どのような場面で追加を考える?

標準治療を行っても、洞調律の心拍数が高い

症候性HFrEFで、うっ血や血圧が安定し、β遮断薬を含む治療を調整しても、安静時心拍数75回/分以上が続く場合です。心拍数だけでなく、LVEF、症状、入院歴、薬の忍容性をまとめて評価します。1 14

β遮断薬を増量しにくいが、心拍数への介入が必要

血圧低下や症状などでβ遮断薬の増量が難しい患者さんでは、コラランの特徴が選択の助けになります。ただし、低血圧の原因が脱水や低心拍出であれば、先にその原因に対応します。収縮期血圧90mmHg未満、または拡張期血圧50mmHg未満では禁忌です。1

心不全入院後、安定化しても高い心拍数が残る

SHIFTの対象に近いのは、心不全入院歴があり、その後の安定した治療下でも心拍数が高い患者さんです。「退院後の再入院予防を考える薬」という説明には根拠があります。6

一方、不安定または急性心不全、心原性ショックは日本では禁忌です。入院しているかどうかだけで判断するのではなく、急性増悪から安定化した段階かを見極めます。1

心房細動による速い脈には、別の治療判断が必要

コラランの国内使用対象は洞調律です。心房細動の標準的な心拍数調節薬として使う薬ではありません。 投与中に心房細動が発現した場合、日本の電子添文では中止するよう定められています。新しい動悸や不規則な脈は、心電図で確認します。1

9.飲み方と、目標とする心拍数

日本では通常、1回2.5mgを1日2回、食後から開始します。必要に応じ、2週間以上の間隔で忍容性を確認しながら調整し、1回量は2.5mg・5mg・7.5mg、最大で1回7.5mgを1日2回です。1

安静時心拍数・状態電子添文に基づく調整の考え方
60回/分を超える忍容性を確認しながら、必要に応じて段階的に増量
50〜60回/分目標範囲。症状なども確認して維持量を設定
50回/分未満、または徐脈に関連する症状段階的に減量
2.5mgを1日2回でも、50回/分未満や症状が続く電子添文では中止する

これは処方を調整する医師のための目安であり、ご自身で増減する表ではありません。 心拍数が目標範囲でも、めまい・倦怠感・血圧低下があれば再評価が必要です。1

「75回/分以上」は開始時の基準、「50〜60回/分」は服用中の目標です。治療によって75回/分を下回ったことだけを理由に中止するわけではありません。

飲み忘れても、2回分をまとめて飲まないでください。飲み忘れた際の対応は、処方時の指示と患者向医薬品ガイドに従います。2

10.知っておきたい副作用と注意点

徐脈:脈が遅くなりすぎる

めまい、ふらつき、強いだるさ、血圧低下、失神などが手がかりになります。症状が出た場合は処方元に連絡し、失神や強い息苦しさ、意識の異常を伴う場合は救急対応が必要です。心拍数に加えて、血圧や心電図で確認します。2

光視症・霧視:光がまぶしく感じる、見え方がかすむ

視野の一部が一時的に明るく見える、光の輪や残像のように感じることがあります。心臓以外のHCNチャネルへの作用も関係すると考えられています。3

視覚症状やめまいがあるときは運転や危険な機械の操作を避け、医師に相談してください。新たな見え方の異常を、自己判断で薬の副作用と決めつけることも避けます。2

心房細動・伝導障害・QT延長

脈が不規則になった、新しい動悸が出た場合は、心房細動などを確認します。房室ブロックやQT延長に関連する不整脈にも注意が必要です。定期的に心拍数・リズムを確認し、必要に応じて心電図検査を行います。1 17

副作用の数字を見る場合は、「薬との関連があると判断された副作用」と「試験期間中に起きた有害事象」を区別する必要があります。電子添文と臨床試験で異なる集計の数字を、同じ発症率として比べることはできません。

妊娠、肝機能、ペースメーカーにも確認が必要

妊婦または妊娠している可能性のある方、重度肝機能障害〔Child-Pugh C〕の方などには使用できません。妊娠する可能性がある方は服用中と最終服用後3日間の避妊が必要です。服用中の授乳は避け、妊娠を予定する場合も処方医に相談してください。1 2

洞不全症候群、洞房ブロック、第三度房室ブロックがある方にも原則使用できません。ただし、ペースメーカーを使用している方はこの禁忌から除かれ、元のリズムや機器の設定を含めて判断します。1

腎機能低下そのものによる一律の禁忌や、日本独自の腎機能別減量表はありませんが、これは重度腎障害や透析での安全性が十分に確立しているという意味ではありません。腎機能・電解質・併用薬を含めた判断が必要です。3

11.ほかの薬・食品との飲み合わせ

イバブラジンは主にCYP3Aという酵素で代謝されます。この働きを強く妨げる薬を併用すると、血中濃度が上がり、過度の徐脈などを起こすおそれがあります。1

区分代表的な薬・食品注意する理由
併用禁忌ベラパミル、ジルチアゼム血中濃度上昇に加えて、心拍数低下作用が重なる
併用禁忌クラリスロマイシン、イトラコナゾール、ボリコナゾールなど代謝を強く妨げ、血中濃度が上がる
併用禁忌リトナビル含有製剤、エンシトレルビル〔ゾコーバ〕など一部の感染症治療薬にも重大な相互作用がある
併用注意フルコナゾールなど血中濃度が上がることがある
注意が必要グレープフルーツジュース血中濃度が上がることがある
併用注意QT延長作用のある薬、低カリウム血症を起こし得る利尿薬徐拍化に伴い、不整脈リスクに注意が必要

上の表は代表例です。最新の電子添文には、コビシスタット含有製剤、ジョサマイシン、セリチニブなども併用禁忌として記載されています。1

他院や薬局で薬を受け取る際は、コラランを服用していることを必ず伝えてください。 とくに、風邪や感染症で新しい薬を処方されるときの確認が大切です。心不全で通常併用する薬まで一律に避けるのではなく、医師・薬剤師が組み合わせを確認します。2

12.受診時には、何を記録しておくとよい?

薬の調整では、診察室で測った心拍数だけでなく、普段の状態が役立ちます。

  • 安静にして測った血圧・脈拍と、測定した時間
  • 体重の推移、足のむくみ、息切れの変化
  • めまい・ふらつき・動悸・見え方の変化
  • お薬手帳と、新しく追加された薬・市販薬・サプリメント

新しい症状や悪化があれば、記録をそろえるために受診を遅らせる必要はありません。心不全治療中で体重やむくみが短期間に増えた、横になると息苦しいなどの場合は、早めに医療機関へ連絡してください。2 18

13.コラランについてよくある質問

Q1.安静時の脈が75回以上なら、コラランが必要ですか?

いいえ。75回/分という数字は、条件を満たす慢性心不全患者への開始基準です。健康な人も含めた異常の境界ではありません。まず心電図のリズム、心機能、脈が速い原因を確認します。1 16

Q2.コラランは、寿命を延ばす薬ですか?

主要試験全体で最も明確だったのは心不全入院の減少です。全死亡・心血管死単独の有意差は示されませんでしたが、心拍数75回/分以上の事後解析では死亡減少が認められています。研究全体と部分的な解析を分けて理解する必要があります。6 8

Q3.血圧が低くても使えますか?

血圧への直接的な作用は比較的小さい薬ですが、低血圧なら誰でも使えるわけではありません。国内では収縮期血圧90mmHg未満、または拡張期血圧50mmHg未満は禁忌です。数値だけでなく症状や全身の血流も評価します。1

Q4.心房細動による動悸にも使えますか?

国内の対象は洞調律の慢性心不全であり、心房細動の標準的な心拍数調節薬ではありません。服用中に心房細動が発現した場合は、電子添文上は中止して治療を見直します。1

Q5.姫路市で、心不全の薬や退院後の管理を相談できますか?

えぷろんクリニックでは、心不全の相談や退院後の継続診療に対応しています。紹介状、心エコーなどの検査結果、お薬手帳、血圧・脈拍・体重の記録があればお持ちください。必要な検査や病院との連携を検討します。18

14.姫路市で心不全・息切れ・むくみのご相談を

コラランの使用は、心拍数だけで決めるものではありません。心不全の病型、リズム、血圧、症状、現在の薬を合わせて評価し、治療全体の中で役割を判断します。

姫路市飾磨区のえぷろんクリニックでは、循環器専門医が心不全の相談や継続診療を行っています。心電図、採血、心エコーなどを必要に応じて組み合わせ、高血圧・糖尿病・脂質異常症の管理、地域の基幹病院との連携、通院が難しい方の訪問診療についても相談できます。18

姫路市で息切れやむくみにお悩みの方、生活習慣病や心臓の病気が心配な方は、えぷろんクリニックまでご相談ください。 症状や検査結果を確認しながら、必要に応じて適切な検査や専門医療機関との連携を行います。

参考文献・一次資料

  1. PMDA.コララン錠 電子添文.2026年3月改訂、第8版.電子添文
  2. PMDA.コララン錠 患者向医薬品ガイド.2026年10月更新.患者向ガイド
  3. 小野薬品工業.コララン 医薬品インタビューフォーム.2026年10月改訂、第10版.インタビューフォーム
  4. Thollon C, et al. Use-dependent inhibition of hHCN4 by ivabradine and relationship with reduction in pacemaker activity. Br J Pharmacol. 2007. 原著
  5. Manz M, et al. A single intravenous dose of ivabradine lowers heart rate but does not depress left ventricular function in patients with left ventricular dysfunction. Cardiology. 2003;100:149–155. PubMed
  6. Swedberg K, et al. Ivabradine and outcomes in chronic heart failure (SHIFT): a randomised placebo-controlled study. Lancet. 2010;376:875–885. DOI: 10.1016/S0140-6736(10)61198-1. PubMed
  7. FDA. Corlanor prescribing information, 2019. Section 14.1 / Table 3〔SHIFTの患者数・発生割合の照合に使用。日本の処方条件は文献1を参照〕. FDA資料
  8. Böhm M, et al. Heart rate at baseline influences the effect of ivabradine on cardiovascular outcomes in chronic heart failure: analysis from the SHIFT study. Clin Res Cardiol. 2013;102:11–22. DOI: 10.1007/s00392-012-0467-8. PubMed
  9. Tsutsui H, et al. Efficacy and Safety of Ivabradine in Japanese Patients With Chronic Heart Failure — J-SHIFT Study. Circ J. 2019;83:2049–2060. DOI: 10.1253/circj.CJ-19-0227. 原著
  10. Tardif JC, et al. Effects of selective heart rate reduction with ivabradine on left ventricular remodelling and function: results from the SHIFT echocardiography substudy. Eur Heart J. 2011;32:2507–2515. 原著
  11. Fox K, et al. BEAUTIFUL trial. Lancet. 2008;372:807–816. DOI: 10.1016/S0140-6736(08)61170-8. PubMed
  12. Fox K, et al. Ivabradine in stable coronary artery disease without clinical heart failure〔SIGNIFY〕. N Engl J Med. 2014;371:1091–1099. DOI: 10.1056/NEJMoa1406430. 原著
  13. Komajda M, et al. Effect of ivabradine in patients with heart failure with preserved ejection fraction: the EDIFY randomized placebo-controlled trial. Eur J Heart Fail. 2017;19:1495–1503. DOI: 10.1002/ejhf.876. PubMed
  14. 日本循環器学会・日本心不全学会.JCS/JHFS 2025 Guideline on Diagnosis and Treatment of Heart Failure. Circ J. 2025;89:1278–1444. DOI: 10.1253/circj.CJ-25-0002. ガイドライン
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  16. Sheldon RS, et al. 2015 Heart Rhythm Society Expert Consensus Statement on POTS, IST, and vasovagal syncope. Heart Rhythm. 2015;12:e41–e63. 原文
  17. PMDA掲載.コララン錠 適正使用ガイド.適正使用ガイド
  18. えぷろんクリニック.心不全の診療案内.公式HP
  19. European Medicines Agency. Procoralan: EPAR. 欧州での承認情報
  20. Pal N, et al. Effect of Selective Heart Rate Slowing in Heart Failure With Preserved Ejection Fraction. Circulation. 2015. PubMed

本記事は一般的な医学情報です。コラランの開始・増量・減量・中止は、病状や検査結果に基づいて医師が判断します。