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胸痛の鑑別を詳しく解説|原因の頻度と緊急度、姫路市での受診の目安

医学情報の確認日:2026年10月18日 | 姫路市飾磨区

突然の強い胸痛、胸痛に伴う冷汗・呼吸困難・失神は119番へ。直前に起きて治まった場合も、緊急性がなくなったとは限りません。救急要請の目安を確認する

胸がチクチクする、締め付けられる、息を吸うと痛む、みぞおちが重苦しい。ひとくちに「胸痛」といっても、症状も原因もさまざまです。

胸の筋肉や肋骨周辺の痛み、胃酸の逆流、不安に伴う症状などが原因のこともあれば、心筋梗塞、大動脈解離、肺血栓塞栓症など、迅速な対応が必要な病気が隠れていることもあります。

胸痛の鑑別で大切なのは、「よくある原因」を知ることと、「見逃すと危険な原因」を先に確認することです。 痛みの場所や強さだけで決めず、発症の仕方、続き方、息切れ・冷汗などの随伴症状、持病、診察・検査を組み合わせて考えます。この記事では、一般診療と救急外来での頻度を分けて示し、各疾患の特徴と受診の目安を詳しく解説します。[5]

1.胸痛で119番を考える症状:まず緊急度を確認しましょう

今すぐ救急車を呼ぶ目安

次のような症状が今ある、または直前に起きた場合は、記事を読み進めたり、予約や診療開始を待ったりせず、119番へ連絡してください。症状がいったん軽くなっても、緊急性がなくなったとは限りません。

  • 突然、強い胸の痛みや背中の痛みが出た。
  • 胸の中央の圧迫感・締め付けが数分続く、または繰り返す。
  • 胸の痛み・重苦しさに、冷汗、強い吐き気、顔色の悪さを伴う。
  • 急な息苦しさ、会話しづらいほどの呼吸困難、失神がある。
  • 胸や背中の痛みと同時に、片側の手足の力が入りにくい、ろれつが回らないなどの症状が出た。

「20分続いてから救急車」といった待ち方はしないでください。 危険な随伴症状があれば、痛みが短時間でも緊急性があります。厚生労働省も、突然の胸背部痛、急な呼吸困難、胸中央の圧迫・締め付けが続く場合などを、119番の目安として示しています。[1]

救急要請が必要な症状のときは自分で運転せず、楽な姿勢で待ち、指令員の指示に従ってください。[1] [5]

緊急徴候がなく、症状が落ち着いていても、当日中に相談したい症状

以下は、上記の119番の目安に当てはまらず、現在は症状が落ち着いている場合の目安です。

  • 初めて、歩行や階段で胸の圧迫感が出た。
  • 以前より軽い動作で痛む、発作が増えた、長引くようになった。
  • 安静時や夜間に、原因のわからない胸の痛みが起こるようになった。
  • 発熱・咳と胸痛が重なる、感染症の後に胸痛や動悸が出た。
  • 胸の片側に皮膚の痛みがあり、発疹や水ぶくれが出てきた。

突然の強い胸背部痛、冷汗・失神、手足の麻痺などを伴う発作が直前にあった場合や、強い症状が再発する場合は、いったん治まったことを理由に待たず、119番へ連絡してください。[1] [5] [13] [19]

2.胸痛の原因はどのくらい多い?一般診療と救急外来の頻度

一般診療では、胸壁に由来する痛みが多くみられます

ドイツの一般医74人が、35歳以上の胸痛患者1,212人を調べた研究では、胸壁症候群が46.6%でした。これは胸の筋肉、肋骨周辺、関節などに由来する痛みをまとめた分類です。

胸痛の原因:原著の主な分類割合
胸壁症候群46.6%
安定した虚血性心疾患11.1%
心理的要因に関連する疾患〔原著の心因性疾患〕9.5%
上気道感染8.1%
急性冠症候群:心筋梗塞・不安定狭心症3.6%
胃食道逆流症:GERD3.5%
外傷3.2%
良性胃疾患2.1%
胸膜肺炎2.1%
COPD・喘息1.9%

出典:Bösnerら、2009年。登録は2005~2006年で、急性・慢性の胸痛を含みます。表は主な分類の抜粋のため合計は100%になりません。日本全国や、えぷろんクリニックでの割合を示すものではありません。[2]

京都の一施設の救急外来では、急性冠症候群が15.5%だった報告があります

京都の洛和会音羽病院で、2022年6月~2023年5月に胸痛で救急外来を受診した成人420人を解析した研究では、次の結果でした。

疾患人数/420人割合
急性冠症候群全体65人15.5%
急性心筋梗塞〔急性冠症候群の内数〕42人10.0%
不安定狭心症〔急性冠症候群の内数〕23人5.5%
急性大動脈解離15人3.6%

心筋梗塞42人は、原著のST上昇型36人と非ST上昇型6人の合計です。15.5%と10.0%を足し合わせることはできません。 高齢者が多い単施設の研究で、紹介患者や院外心停止などは主解析から除かれています。2026年の訂正記事も確認し、上記の診断人数・割合に変更はありません。[3] [4]

頻度の数字は、そのまま「自分の確率」にはなりません

一般診療と救急外来では、年齢、持病、症状の強さ、受診経路が異なります。研究された国や時代も違うため、上の数値を単純な倍率として比較することもできません。

また、「胸痛全体に占める胃食道逆流症の割合」と「心臓病が否定された胸痛に占める割合」は、分母が違います。頻度を読むときは、誰を調べた数値なのかを確認する必要があります。

診療では、頻度が高い病気を考えながら、低頻度でも緊急性の高い疾患を見逃さないように評価します。

3.緊急度の高い胸痛:最初に考えるべき疾患

以下は、疑った段階で速やかな医療評価が必要な病気です。緊急度は病名だけで固定されず、呼吸や血圧、意識、症状の経過によっても変わります。

① 急性冠症候群:急性心筋梗塞・不安定狭心症

心臓の筋肉に血液を送る冠動脈の血流が急に不足する状態です。代表的な機序は、動脈硬化の病変が破綻し、血栓ができることです。心筋虚血によって心筋の壊死が生じるのが心筋梗塞です。心筋梗塞を示す所見がなくても心筋虚血が不安定な状態なら、不安定狭心症を考えます。

手がかりになるのは、胸の中央の圧迫感、締め付け、重苦しさです。「痛み」という言葉を使わず、胸が詰まる、焼ける、押されると表現されることもあります。腕、肩、顎、背中、みぞおちへ症状が広がる場合や、冷汗、吐き気、息切れが前面に出る場合もあります。[6]

新しい安静時症状、発作の増加、以前より軽い運動で起こる症状は、急いで評価すべき変化です。 症状が続く・繰り返す、冷汗や息苦しさを伴う場合は119番を考えます。

心電図でST上昇がない心筋梗塞もあります。また、不安定狭心症ではトロポニン上昇を認めないことがあります。したがって、「ST上昇なし」「採血が1回正常」だけで急性冠症候群全体を否定することはできません。[5] [7]

② 急性大動脈解離・急性大動脈症候群

大動脈解離は、大動脈の壁が裂け、壁の中に血液が入り込む病気です。解離などを含む急性大動脈の病態を、急性大動脈症候群と呼びます。破裂、心タンポナーデ、脳や臓器への血流障害につながることがあります。

特に注意するのは、突然始まり、発症した時点から強い胸・背中・腹部の痛みです。痛む場所の移動、失神、手足の麻痺、左右の脈や血圧の違いなどが手がかりになります。

ただし、「引き裂かれる痛み」と表現しない人も、左右の血圧差がはっきりしない人もいます。典型的な特徴が揃うのを待つ病気ではありません。疑う場合は、病状に応じて造影CTや経食道心エコーなどで緊急に評価します。[8]

③ 急性肺血栓塞栓症:肺塞栓

多くは脚などの静脈にできた血栓が肺動脈へ流れ、詰まる病気です。突然の息切れ、深呼吸で増える胸痛、頻脈、失神などがみられ、血痰や片脚の腫れを伴うこともあります。

手術後、長い安静、長時間移動、がん、過去の静脈血栓症、妊娠・産後、エストロゲンを含む薬の使用などは、診断の重要な背景情報です。[9]

重い呼吸困難や失神、血圧低下を伴う場合は緊急性が高く、119番が必要です。一方で、肺塞栓でも酸素化が保たれる場合があります。パルスオキシメーターの値が正常という理由だけでは、肺塞栓を否定できません。[10]

④ 気胸、特に緊張性気胸

気胸は、肺から漏れた空気が胸の中にたまり、肺が縮む状態です。突然の片側の胸痛、息を吸ったときの痛み、息苦しさが手がかりになります。

気胸の中でも、胸腔内の圧力が上がり、心臓へ血液が戻りにくくなる緊張性気胸は、急速な呼吸・循環の悪化を来します。強い呼吸障害や血圧低下がある場合は、即時の処置が必要です。

気胸すべてが同じ重症度ではありませんが、初めての突然の片側胸痛、特に息苦しさを伴う場合は、早急な評価が必要です。[5] [11]

⑤ 食道破裂

頻度は低いものの、見逃せない疾患です。激しく吐いた後や、食道への処置の後などに食道壁が破れ、胸の中に炎症や感染を起こします。

激しい嘔吐に続く強い胸痛・背部痛・上腹部痛、息苦しさ、全身状態の悪化が手がかりになります。すべての典型的所見が最初から揃うわけではありません。嘔吐後だから胃の不調と決めず、疑われる場合は緊急に画像検査などを行います。[12]

⑥ 心筋炎・心膜炎

心筋炎は心臓の筋肉、心膜炎は心臓を包む膜の炎症です。感染症の後などに起こり、胸痛、発熱、動悸、息切れを生じますが、先行する感染症が明らかでない場合もあります。

心膜炎では、深呼吸や仰向けで痛みが増え、座って少し前かがみになると軽くなることがあります。心筋炎では、心筋梗塞に似た胸痛や心電図・採血の変化がみられる場合があります。

胸痛に失神、強い息切れ、持続する動悸、血圧低下を伴う場合は緊急性が高くなります。 新しい胸痛は当日中の評価が必要ですが、適切に評価された低リスクの心膜炎などでは外来管理が可能なこともあり、全例が同じ緊急度ではありません。[13]

⑦ 心タンポナーデ

心臓の周囲にたまった液体や血液が心臓を圧迫し、十分に血液を取り込めなくなる状態です。心膜炎、悪性腫瘍、大動脈解離などが背景になることがあります。

胸部不快感に加え、息苦しさ、頻脈、血圧低下、意識の変化などを来す場合は、速やかな処置が必要です。胸の痛みが強いかどうかだけでは、重症度を判断できません。[13]

4.繰り返す胸痛で考える狭心症:労作性・冠攣縮性・微小血管性

労作性狭心症:歩行や階段で胸が苦しくなる

動脈硬化などで冠動脈が狭くなり、運動で増えた心筋の酸素需要に血流が追いつかなくなると、胸部症状が起こります。歩行、坂道、階段などで胸が重くなり、休むと数分程度で軽くなる、という経過が手がかりです。

ただし、症状が初めて出た場合や、以前より軽い動作で起こる場合は、患者さん自身で「安定した狭心症」と判断できません。早急に相談してください。症状を確かめるために、無理に運動することも避けましょう。[14]

冠攣縮性狭心症:安静時や夜間・早朝にも起こる

冠動脈が一時的に強く収縮し、血流が不足する病気です。夜間から早朝、安静時に起こりやすい特徴がありますが、日中や軽い動作で出現する場合もあります。

発作がないときの心電図や、冠動脈の形を見る検査だけではわからないことがあります。症状の記録、発作時の心電図、必要に応じた専門的な検査を組み合わせます。発作に重い不整脈や失神を伴う場合もあり、安静時に起こることを安心材料にはできません。[15]

微小血管狭心症:太い冠動脈に強い狭窄がなくても起こる

心筋の中の細い血管の機能に異常があると、太い冠動脈に大きな狭窄がなくても、胸痛や息切れを生じる場合があります。

冠動脈CTやカテーテル検査で「太い血管に強い狭窄はない」と言われても、症状が続く場合は、冠微小循環障害や冠攣縮を含めて再評価することがあります。必要な検査は、症状、心筋虚血の証拠、これまでの検査内容から選びます。[14] [15]

冠動脈以外の心臓病でも、胸部症状が起こります

大動脈弁狭窄症や肥大型心筋症でも、労作時の胸痛・息切れが起こります。頻脈性不整脈によって、動悸と胸部不快感を生じることもあります。心雑音、心電図、心エコーなどを組み合わせて評価し、胸痛に失神や強い息苦しさを伴う場合は緊急に対応します。[5] [7]

5.比較的よくみられる胸痛:筋肉・食道・呼吸器・皮膚・不安

胸壁痛・肋軟骨炎・筋肉の痛み

胸の筋肉、肋骨、肋軟骨、関節などの痛みです。重い物を持った後、咳が続いた後、特定の姿勢や動作に関連して出現することがあります。

指で場所を示しやすい、押すと同じ痛みが再現される、上半身をひねると痛む、といった所見は胸壁由来を支持します。肋軟骨炎では、胸骨と肋骨のつなぎ目付近に痛みや圧痛が生じます。[16]

「押すと痛い」は有用な情報ですが、それだけで心筋梗塞を除外できるわけではありません。 圧痛を調べた前向き研究でも、急性冠症候群の可能性はゼロにはなりませんでした。発症の経過、随伴症状、危険因子などと合わせて判断します。[17]

「動くと痛い」の中でも、上半身をひねった瞬間に痛むことと、歩行によって心臓への負荷が増えると苦しくなることは、区別して伝えると診断に役立ちます。

胃食道逆流症・逆流性食道炎

胃の内容物が食道へ逆流し、胸やけや胸骨の裏側の痛みを起こします。食後や横になったときの悪化、酸っぱいものが上がる感覚などが手がかりです。

ただし、心筋虚血も焼ける感じやみぞおちの不快感として現れます。食後に起きた、胃薬で軽くなったという情報だけでは、心臓病を否定できません。胸痛が続く場合は、心疾患の評価と、必要に応じた内視鏡・食道の検査を組み合わせます。[18]

呼吸器感染症・胸膜炎

咳、発熱、痰に伴って胸が痛む場合には、肺炎や胸膜炎などを考えます。深呼吸や咳で増える痛みが手がかりです。咳による胸壁への負担が痛みの原因になることもあります。

ただし、呼吸で増える胸痛は、肺塞栓や気胸、心膜炎でも起こります。急な息苦しさや全身状態の悪化を伴う場合は、単なる咳の痛みと判断せず、早急に評価します。[5] [9] [13]

肋間神経痛・帯状疱疹

肋骨に沿って電気が走るように痛む、片側の皮膚がヒリヒリする場合は、神経に関連する痛みも考えます。ただし、痛みの表現だけで「肋間神経痛」と決めることはできません。

帯状疱疹では、胸や背中の片側に帯状の痛みが起こり、数日遅れて赤い発疹や水ぶくれが出る場合があります。発疹がまだない段階では診断が難しいこともあるため、皮膚の変化を伴ったら早めに受診してください。[19]

パニック発作・不安に伴う胸部症状

不安やパニック発作でも、胸痛、動悸、息苦しさ、めまい、手のしびれなどが生じます。身体症状として実際につらさを伴い、適切な治療や支援の対象になります。

大切なのは、初めての症状や、これまでと違う発作を、最初からストレスだけで説明しないことです。必要な身体疾患の評価を行います。また、パニック障害がある人に心臓病や呼吸器疾患が併存することもあります。[25]

6.胸痛の特徴から考える鑑別:どこまで見分けられる?

以下は診断の手がかりを整理した表です。一つの特徴で確定・除外するための表ではありません。

症状の特徴考える主な疾患・病態判断するときの注意
圧迫される、締め付けられる、重い心筋虚血、食道由来の痛みなど冷汗・息切れ、新しい安静時症状があれば緊急度が上がる
歩行・階段で出て、休むと軽くなる労作性狭心症など初発・増悪なら安定しているとは決められない
夜間・早朝の安静時に繰り返す冠攣縮性狭心症、逆流症など時間帯だけでは区別できない
突然始まり、最初から強い胸背部痛大動脈解離、気胸、肺塞栓、急性冠症候群など原因を自己判断せず緊急評価する
深呼吸や咳で悪化する胸膜炎、肺炎、肺塞栓、気胸、心膜炎、胸壁痛「呼吸で痛むから心配ない」とは言えない
押す・ひねると同じ痛みが出る胸壁痛、肋軟骨炎、外傷など胸壁由来を支持するが、他疾患の併存はありうる
仰向けで悪化し、前かがみで軽くなる心膜炎など体位変化だけで診断を確定しない
食後・横になったときの胸やけ胃食道逆流症など胸やけのような心筋虚血もある
激しい嘔吐の直後に強く痛む食道破裂など緊急性が高い組み合わせ
片側の皮膚痛の後に発疹が出る帯状疱疹発疹前は診断できない場合がある

表は横にスクロールできます。

これらの手がかりは、ガイドライン・診断研究をもとに整理したものです。[5] [8] [9] [12] [13] [15] [17] [18] [19]

「左胸」「右胸」「みぞおち」だけでは判断できません

心筋虚血の症状は左胸に限定されません。胸の中央、肩や腕、首・顎、背中、上腹部に現れることがあります。逆に、左胸が痛む原因に、胸壁や食道の病気もあります。痛む場所に加え、何をしているときに始まり、どのくらい続き、何を伴うかを伝えてください。[22]

痛みの強さ・長さにも限界があります

一瞬だけの局所的な痛みは、典型的な心筋虚血らしさを下げる情報です。しかし、これだけで原因は決まりません。反対に、軽い圧迫感でも心筋梗塞のことがあります。危険な症状を伴う場合に、「まだ短時間だから」「激痛ではないから」と待つことは避けます。[5] [6]

7.年齢・持病・状況によって、注意する疾患は変わります

高齢者、糖尿病・腎臓病がある方

心筋虚血でも強い胸痛が目立たず、息切れ、吐き気、脱力感などが中心になる場合があります。以前できていた動作で急に苦しくなるなど、本人にとっての変化が重要です。

高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、過去の心筋梗塞などは、冠動脈疾患の可能性を考える際の背景情報です。ただし、危険因子がないことだけでは、心臓病は否定できません。[5] [14]

女性の胸痛

急性冠症候群では、男女とも胸痛が最も多い症状です。女性では吐き気や息切れなどの随伴症状が多い場合がありますが、「女性は胸が痛くならない」と理解するのは不正確です。症状を年齢や性別だけで軽く扱わず、必要な評価を行います。[22]

若い方、妊娠中・産後の方

若い人でも、気胸、心筋炎、冠攣縮などは起こりえます。妊娠中・産後の胸痛や息切れでは肺塞栓が重要で、冠動脈の壁が自然に裂ける自然冠動脈解離も考慮することがあります。一般的な動脈硬化の危険因子が少なくても、緊急疾患を除外できません。[9] [20]

強いストレスの後に起きた胸痛

不安に伴う症状に加え、たこつぼ症候群などの心疾患が起きることもあります。たこつぼ症候群は胸痛・息切れを呈し、心筋梗塞と似た症状や検査所見を示すことがあります。重い心不全や不整脈を伴う場合もあるため、「ストレスのせい」という説明だけで評価を終えないことが重要です。[26]

8.胸痛の検査:何がわかり、何がわからないのでしょうか

問診と診察:検査を選ぶ前の重要な段階

いつ、どこで、何をしているときに始まったか。突然だったか、徐々に出たか。持続時間、繰り返す頻度、運動・呼吸・体位・食事との関係、冷汗・息切れ・失神などを確認します。

診察では血圧、脈拍、呼吸数、酸素化、意識、心音・呼吸音、胸壁の圧痛、脚の腫れなどを調べます。検査前に病気の可能性を見積もることで、必要な検査を選びます。[5]

心電図:早く行うことと、必要に応じて繰り返すこと

急性胸痛では重要な初期検査で、AHA/ACC胸痛ガイドラインでは来院後10分以内の取得・評価が推奨されています。

心筋梗塞、心筋虚血、不整脈などの手がかりが得られますが、初回心電図が正常、またははっきりしないことだけでは、急性冠症候群を否定できません。 痛みの持続・再発や疑わしさに応じて、心電図を繰り返し、必要なら追加の誘導で記録します。[5]

トロポニン:心筋の傷害を調べる採血

高感度心筋トロポニンは、急性胸痛で心筋梗塞を評価する重要な検査です。発症して間もない場合には最初の採血で異常が出ないことがあるため、発症からの時間、測定値、その変化を組み合わせます。

一方、トロポニン上昇は心筋炎、肺塞栓、心不全などでもみられます。腎機能低下に伴って高値が続く場合もあります。高いことは心筋傷害の手がかりですが、それだけで血栓による心筋梗塞と決まるわけではありません。[7]

少し専門的に:単回測定と0/1時間・0/2時間アルゴリズム

救急外来では、検査法ごとに検証された高感度トロポニンの値と変化量を使い、0/1時間・0/2時間などの診断経路で心筋梗塞の可能性を評価します。すべての採血法に、同じ基準を当てはめることはできません。

ここでの「0時間」は医療機関で最初に採血した時点で、症状が始まった時刻ではありません。 1時間・2時間は初回採血から再採血までの時間です。発症時刻は、それとは別に評価します。

また、正常心電図、発症から3時間以上、高感度トロポニンが測定法ごとに定められた非常に低い値など、検証済みの条件を満たす場合には、単回測定を用いる診断経路もあります。したがって「1回では絶対に判断できない」も、「通常の基準範囲内なら安全」も正確ではありません。

単回測定を使えるかどうかは医療機関で判断します。検査の精度を上げるために、自宅で時間がたつのを待ってよいという意味ではありません。

これらは医療機関で心筋梗塞を評価するための仕組みで、不安定狭心症、大動脈解離、肺塞栓など、胸痛の全原因を一括して否定する検査ではありません。[5] [7]

Dダイマー:先に肺塞栓をどれだけ疑うかを考えます

Dダイマーは、体の中で血栓が分解される際に生じる物質です。肺塞栓が低~中程度に疑われる場合に、適切な基準と組み合わせて除外に役立てます。

高齢、炎症、がん、妊娠などでも上昇しうるため、陽性だけで肺塞栓とは診断できません。強く肺塞栓が疑われる場合は、Dダイマーの結果だけで判断せず、造影CTなどの画像検査を優先します。胸痛の人全員に測る万能な検査ではありません。[9]

画像検査:疑う疾患によって目的が変わります

検査主に確認すること主な限界・注意点
胸部レントゲン肺炎、気胸、うっ血など正常でも心筋梗塞・肺塞栓・大動脈解離は否定できない
心エコー心臓の動き、弁膜症、心嚢液、右心負荷など正常でも急性冠症候群・狭心症や肺塞栓を除外できない
冠動脈CT冠動脈の狭窄・動脈硬化冠攣縮や微小血管の機能異常は別の評価が必要な場合がある
造影CT大動脈解離や肺塞栓など撮影目的と造影のタイミングが異なり、検査内容を選ぶ必要がある
負荷心電図・負荷画像検査運動や薬剤負荷に伴う心筋虚血進行中の急性冠症候群が疑われる場合は行わず、緊急評価を優先する
心臓MRI・カテーテル検査など心筋炎、虚血、冠動脈病変・機能などの精査初期評価と疑う病態に応じて選択する

表は横にスクロールできます。

検査は数を増やすほどよいわけではありません。症状、検査前の可能性、初期検査の結果に合わせて組み合わせます。[5] [8] [9] [13] [14] [15]

緊急性が高い場合は、外来の検査結果待ちで搬送を遅らせません

心筋梗塞などが疑われる場合、クリニックで採血や追加検査を完了するまで待つことが適切とは限りません。必要な初期対応と救急医療機関への連携を進めます。AHA/ACC胸痛ガイドラインも、外来の検査のために救急搬送を遅らせることを避けるよう示しています。[5]

9.胸痛でよくある5つの誤解

よくある理解実際に必要な考え方
「押すと痛いから心臓ではない」胸壁由来を支持しますが、それだけで心疾患は除外できません。
「心電図や採血が一度正常なら大丈夫」発症時刻、検査の種類、症状の変化によって、再検査が必要です。
「ニトロが効いたから狭心症」ニトロでの改善だけでは、冠動脈疾患の診断はできません。
「痛みが治まったから受診しなくてよい」不安定狭心症や冠攣縮など、発作と無症状の時間を繰り返す病気があります。
「ストレスがあるから心因性」心臓病や呼吸器疾患が併存する場合もあり、必要な身体評価を行います。

表は横にスクロールできます。

ニトログリセリンによる胸痛の改善が、活動性冠動脈疾患を予測しなかった前向き研究もあります。症状の反応は参考情報の一つとして扱い、薬の効き方だけで病名を決めません。[17] [7] [21] [15] [25]

10.姫路市で胸痛を相談するなら:えぷろんクリニックでできること

姫路市飾磨区のえぷろんクリニックでは、循環器内科・内科の診療として、胸痛、息切れ、動悸などを相談いただけます。循環器専門医と呼吸器専門医が在籍し、症状や診察所見に応じて評価します。[23] [24]

  • 痛みの経過や持病、服薬状況の確認と診察
  • 心電図、血液検査、胸部レントゲン
  • 必要に応じた心エコー、ホルター心電図など
  • 高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙などのリスク管理
  • 冠動脈CT、心臓MRI、心臓カテーテル検査などが必要な場合の専門医療機関への紹介

検査は病状と必要性、検査体制に応じて選びます。すべての検査が初診当日に完了するという意味ではありません。[23]

姫路市で繰り返す胸痛にお悩みの方、生活習慣病や心臓の病気が心配な方は、えぷろんクリニックへご相談ください。症状や検査結果を確認しながら、必要に応じて適切な検査や専門医療機関との連携を行います。

突然の強い胸痛、胸の圧迫感に冷汗・呼吸困難・失神を伴う場合は、当院の受診予約を待たず119番へ連絡してください。[1]

よくある質問:胸痛の原因と受診の目安

Q1.左胸がチクチクします。心臓の病気でしょうか?

胸壁や神経に関連した痛みのこともありますが、場所と痛み方だけでは判断できません。歩行や階段で出る、圧迫感がある、冷汗や息切れを伴う場合は、心筋虚血などを考える必要があります。初めての症状、繰り返す症状は内科・循環器内科へ相談してください。[5] [17]

Q2.右胸の痛みや、みぞおちの痛みでも心臓病はありますか?

心筋虚血の症状は左胸に限りません。胸の中央や上腹部、肩、腕、首・顎などの不快感として出ることがあります。胃の症状に思えても、冷汗や息苦しさ、失神を伴う場合は119番を考えてください。[1] [22]

Q3.胸を押すと痛みます。様子を見てもよいですか?

押して同じ痛みが出る所見は胸壁由来を支持しますが、それだけで心臓病を否定できません。強い痛み、急な息苦しさ、冷汗、失神があれば緊急評価が必要です。危険な症状がなくても、原因不明の痛みが続く場合は受診してください。[17]

Q4.心電図が正常と言われました。狭心症は否定できますか?

一度の正常心電図だけでは否定できません。発作がない時間には変化が出ない病気もあります。症状が続く・変わる場合は再評価し、必要に応じて追加検査を検討します。新しい強い症状は、以前の正常結果にかかわらず判断します。[5] [15]

Q5.胸痛は何科へ?姫路市ではどこに相談できますか?

原因がわからず緊急徴候がない場合は、内科・循環器内科が相談先になります。えぷろんクリニックでも症状に応じた評価と専門医療機関への紹介を行っています。ただし、突然の激痛、続く圧迫感、冷汗・呼吸困難・失神などがあれば、通常外来の予約を待たず119番へ連絡してください。[1] [23]

関連する当院の記事・診療案内

医師紹介

松尾 晃樹
えぷろんクリニック院長/日本循環器学会認定 循環器専門医。[23] [24]

※本記事は一般的な医学情報を提供するものです。個々の胸痛の原因や緊急度は、症状の経過と診察・検査によって判断します。緊急徴候がある場合は、オンライン上の情報で自己判断せず、救急要請を優先してください。

参考文献・確認資料

本文の番号から出典へ移動できます。頻度の数値は研究対象・診療場所を明示しています。参照日:2026年10月18日。