睡眠と体重管理

「食事に気をつけているのに、体重管理がうまくいかない」。そんなとき、食べたものだけでなく、昨夜どのくらい眠れたかを振り返ってみてください。

睡眠は、休養のためだけの時間ではありません。食欲や代謝、日中の活動にも関係します。今回は、食事制限を指示せずに睡眠時間を延ばした研究から、生活習慣病と睡眠について考えます。[1][2]

記事責任者:えぷろんクリニック 院長 松尾晃樹(日本循環器学会認定 循環器専門医)
医師紹介・専門資格 / 記事更新日:

食事の指導をしていないのに、摂取カロリーに差が出た研究

2022年に発表された研究では、普段の睡眠が6.5時間未満で、BMIが25以上30未満の21〜40歳の成人80人を対象に、睡眠を延ばすための個別指導を行いました。食事制限や運動メニューは指定していません。

2週間の介入で、睡眠を延ばしたグループの睡眠時間は平均で約1.2時間増えました。対照グループとの比較では、1日の摂取エネルギーの変化に約270kcalの差が認められました。[1]

消費カロリーが増えたという話ではありません

この結果は「寝ている間に270kcal多く燃えた」という意味ではありません。主に食べ物から取り込むエネルギーに差が出た研究です。対象者や期間が限られるため、すべての年齢の方に同じ効果がある、長期に体重が減り続ける、とまではいえません。[1]

睡眠不足と食欲はどうつながるのでしょうか

睡眠が不足すると、空腹感や満腹感に関わる仕組みが変化したり、血糖を調整する働きに影響したりすることがあります。寝不足による疲れで、日中に体を動かすことが負担になる場合もあります。[2]

ただし、「睡眠不足なら必ず食欲が増える」と決まっているわけではありません。体重の変化には食事、活動量、薬、病気など複数の要因が関わります。睡眠だけを原因に決めつけず、生活全体を確認する視点が大切です。[2]

「食べ過ぎは意志が弱いから」と自分を責める前に、仕事や家事で睡眠が削られていないか見直してみましょう。原因を一つに決めるより、変えられる部分を探す方が現実的です。

体重管理のために、今日から見直せる睡眠習慣

まずは1週間程度、寝た時刻、起きた時刻、日中の眠気をメモしてみてください。食事や間食の時間も添えると、受診時に生活の流れを説明しやすくなります。記録の目的は点数をつけることではなく、無理が続いている時間帯を見つけることです。

就寝・起床の時刻を大きくずらさない、寝る前の強い光を避ける、寝室を暗く静かにする、夕方以降のカフェインや寝酒を見直す、といった工夫が基本になります。[3]

長く布団にいればよいわけではありません

米国NHLBIは成人の睡眠時間の目安を7〜8時間としていますが、必要な時間には個人差や年齢差があります。日中に支障がないか、眠って休まった感覚があるかも確認しましょう。不眠が続いている方が、無理に布団の中の時間を延ばすことを目標にする必要はありません。[4][10]

「睡眠を増やしたから、食事は何でもよい」という話でもありません。食事、運動、睡眠を別々の課題にせず、続けやすい組み合わせを考えることが大切です。

いびきや強い眠気があるときは、睡眠時無呼吸にも注意

十分に寝る時間を確保しているのに眠い、大きないびきを指摘される、睡眠中に呼吸が止まっているといわれる場合は、睡眠時無呼吸症候群などの確認が必要です。夜中に何度もトイレに起きることが手掛かりになる場合もあります。[5]

  • 大きないびきや、睡眠中の呼吸の停止を指摘される。
  • 日中の眠気が強く、仕事や家事に支障が出ている。
  • 不眠や休まらない感覚が続き、体調管理が難しい。

これらが続く場合は、早めに医療機関へ相談してください。眠気で運転に支障があるときは運転を控えましょう。睡眠時無呼吸の治療と、単に睡眠時間を延ばすことは同じではありません。[5][6]

姫路市で体重管理や生活習慣病が気になる方へ

えぷろんクリニックでは、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を診療しています。体重の変化、健診結果、睡眠の状態を伺い、診察や必要な採血を通して、見直す点を整理します。[7]

いびきや無呼吸が疑われる場合は、症状に応じて睡眠の検査を検討します。睡眠不足だけと決めつけず、循環器・呼吸器の病気も含めて確認し、必要時には専門医療機関と連携します。[8]

よくある質問

睡眠時間を増やすだけで痩せますか?

保証はできません。短期の研究では摂取エネルギーの減少が示されましたが、長期的な減量効果や全員への効果は確認されていません。[1]

大人は何時間眠ればよいですか?

米国NHLBIは成人で7〜8時間を目安としています。ただし年齢や個人差があり、日中の眠気や休養感も含めて判断します。長く寝床にいること自体を目標にする必要はありません。[4][10]

寝不足のときに食欲が増えるのは気のせいですか?

睡眠不足が食欲の調節に影響する可能性があります。ただし、食欲の変化には睡眠以外の要因も関わります。[2]

太っていなくても睡眠時無呼吸になりますか?

なります。体重だけでなく、あごや舌など気道の形にも関係するため、いびきや無呼吸があれば体型にかかわらず相談してください。[9]

姫路市でいびきと生活習慣病を一緒に相談できますか?

えぷろんクリニックでは、生活習慣病の診療と睡眠時無呼吸の相談に対応しています。必要な検査は診察により判断します。[7][8]

参考文献・参考情報

  1. Tasali E, et al. 睡眠延長とエネルギー摂取を調べたランダム化比較試験. JAMA Intern Med. 2022;182:365–374. doi:10.1001/jamainternmed.2021.8098.
  2. 米国NHLBI「Sleep Deprivation and Deficiency: How Sleep Affects Your Health」
  3. 米国NHLBI「Healthy Sleep Habits」
  4. 米国NHLBI「How Much Sleep Is Enough」
  5. 米国NHLBI「Sleep Apnea: Symptoms」
  6. 米国NHLBI「Sleep Apnea: Living With」
  7. えぷろんクリニック「生活習慣病の診療」
  8. えぷろんクリニック「睡眠時無呼吸症候群」
  9. 米国NHLBI「Sleep Apnea: Causes and Risk Factors」
  10. 厚生労働省 e-ヘルスネット「不眠症」

眠る時間が足りない場合と、眠っても休まらない場合

睡眠の相談で整理すること
状態確認すること次の行動
仕事・家事で睡眠時間を削っている就寝・起床時刻、日中の眠気、夕方以降のカフェイン無理のない範囲で睡眠を確保する工夫を考える
十分な時間があるのに眠れない寝床にいる時間と実際に眠れる時間、困りごとが続く期間布団の時間だけを増やさず、不眠の相談をする
いびき・呼吸停止・強い眠気同居者の指摘、眠気による仕事・運転への支障睡眠時無呼吸などの評価を相談し、眠気がある運転を控える

参考:厚生労働省・睡眠ガイド