薬の発見の物語

毎日飲んでいる小さな錠剤にも、発見の物語があります。コレステロールを下げる薬として使われる「スタチン」。その出発点は、日本人研究者によるカビの研究でした。

「薬の名前は知っているけれど、何をしている薬かはよく分からない」という方も、発見の道のりをたどると、治療の意味が少し見えやすくなるかもしれません。[1]

記事責任者:えぷろんクリニック 院長 松尾晃樹(日本循環器学会認定 循環器専門医)
医師紹介・専門資格 / 記事更新日:

出発点は、京都の米穀店で集めた米の試料

遠藤章氏自身が記した回顧論文によると、1972年、京都の米穀店で集めた米から分離されたカビの培養液に、コレステロールをつくる働きを抑える活性が見つかりました。そこから約1年かけて有効な物質を取り出したことが、スタチン開発につながりました。[1]

身近な場所の試料から、後に医療へつながる発見が生まれたのです。ただし、「米やカビを食べればコレステロールが下がる」という意味ではありません。発見された物質を調べることと、食品を口にすることはまったく別の話です。

発見したら、すぐに薬になるわけではありません

その後も、作用の確認や安全性の検討、臨床での評価などが必要でした。最初の発見物質が、そのまま現在のすべてのスタチンの成分になっているわけでもありません。基礎研究で見つかった働きが、多くの検証を経て治療へつながった歴史です。[1]

スタチンは、コレステロールをどう下げるのでしょうか

スタチンは、肝臓でコレステロールをつくる過程に働きかけ、血液中のLDLコレステロールを下げる薬です。食べ物から入ってくるコレステロールだけでなく、体の中でつくられる分にも目を向けた治療といえます。[2][3]

LDLは「悪玉」と呼ばれますが、コレステロール自体は体に必要な物質です。治療はゼロにすることが目的ではなく、その人の病気や将来のリスクに合わせて、高すぎる状態を管理するために行います。[3]

食事を頑張っていても、薬が必要なことがあります

食事や運動の改善は大切ですが、それだけで十分に下がらない体質の方もいます。家族性高コレステロール血症のように、遺伝に関係する場合もあります。薬が必要になったことは、「生活改善に失敗した」という意味ではありません。[4]

症状がないのにコレステロールを治療する理由

高いLDLコレステロールは、自覚症状がないまま動脈硬化に関わることがあります。スタチンによる治療は、数値を下げるだけでなく、心筋梗塞などの動脈硬化性の病気を予防する目的で行われます。[3][5]

ただし、同じLDL値でも、薬を始める必要性や目標値が全員同じとは限りません。心筋梗塞などの既往、糖尿病、高血圧、喫煙、年齢、家族歴などを踏まえて判断します。検査用紙にある基準値だけで、薬の必要・不要を決めないことが大切です。[3]

数値が下がったら、薬はやめてもよい?

治療中に数値が改善したのは、薬が効いている結果かもしれません。改善したことだけを理由に自己判断で中止すると、再び高くなる場合があります。続ける期間や量の変更は、治療の目的と検査結果を確認しながら相談してください。[2][3]

受診時には、「自分の目標値はいくつか」「何を予防するための薬か」「次はいつ検査するか」を確認してみましょう。理由が分からないまま飲み続けるより、治療の意味を共有することが大切です。

副作用が心配なときは、我慢せず相談を

スタチンにも副作用があり、筋肉の症状や肝機能などに注意して診療します。ただし、服用中に起きた筋肉痛がすべて薬によるものとは限りません。症状の時期、運動量、他の薬、必要な採血などを確認します。[2][5]

  • 薬を始めた後から、筋肉の痛みや力の入りにくさが続く。
  • 薬の必要性や検査結果が分からず、自己判断で中止しようか迷っている。
  • ほかの薬やサプリメントを新たに使いたい。

このような場合は、処方した医療機関や薬剤師に相談してください。強い筋肉痛や脱力、赤褐色の尿などがある場合は、次回予約まで待たず、当日中に医療機関へ連絡して受診してください。重い筋障害などの確認が必要になる場合があります。[2]

姫路市でコレステロールの薬について相談したい方へ

えぷろんクリニックでは、採血結果や病歴、家族歴を確認し、脂質異常症の治療を相談できます。血圧や糖尿病も含めて、心臓・血管の病気の予防を考え、必要に応じて専門医療機関と連携します。[6]

よくある質問

スタチンはカビをそのまま使った薬ですか?

カビの研究が発見の出発点ですが、カビそのものを飲む薬ではありません。現在の薬は成分や用量を定め、有効性・安全性を評価した医薬品です。[1][2]

食事に気をつけていてもスタチンは必要ですか?

体質や心血管疾患のリスクによっては必要です。特にFHなどでは生活改善だけでは十分に下がらないことがあります。[3][4]

コレステロールが下がったら薬をやめられますか?

薬が効いて下がっている場合もあります。中止や減量は、治療の目的と検査結果をもとに主治医と相談してください。[2][3]

スタチンを飲み始めて筋肉痛が出たらどうすればよいですか?

処方元へ相談してください。強い痛み、脱力、赤褐色の尿がある場合は当日中に医療機関へ連絡・受診し、服用継続の可否も確認してください。[2][5]

姫路市でコレステロールの薬を相談できますか?

えぷろんクリニックでも相談できます。お薬手帳と過去の採血結果をご持参いただくと、治療の経過を確認しやすくなります。[6]

参考文献・参考情報

  1. Endo A. A historical perspective on the discovery of statins. Proc Jpn Acad Ser B Phys Biol Sci. 2010;86:484–493. doi:10.2183/pjab.86.484. 発見者自身による回顧論文。
  2. PMDA「ロスバスタチン錠・OD錠『DSEP』電子添文・患者向医薬品ガイド」※スタチンの一製剤の作用と安全性の例として参照。個別薬は処方薬の最新資料を確認。
  3. 日本動脈硬化学会「脂質異常症診療のQ&A」
  4. 日本動脈硬化学会「家族性高コレステロール血症(FH)とは?」
  5. 日本動脈硬化学会「スタチン不耐に関するステートメント」2017年5月。筋症状の評価や治療継続の考え方のみ参照。
  6. えぷろんクリニック「脂質異常症」