血圧の正しい測り方。コロトコフ音と歴史

検査と医療の歴史

BLOOD PRESSURE MEASUREMENT

毎日目にする「上の血圧」と「下の血圧」。その数字は、腕の動脈をいったん圧迫し、血流が戻る変化を捉えて測っています。家庭で数値をぶらさずに測る方法から、聴診器で聞くコロトコフ音、血圧計が現在の形になるまでを循環器内科の視点で解説します。

JSH2025を踏まえた解説
この記事の要点 家庭では「検証された上腕式血圧計」を使い、朝と晩に同じ条件で測ることが大切です。診察室では140/90mmHg以上、家庭では135/85mmHg以上が高血圧の診断基準です。ただし、1回の数字だけで診断や薬の調整は行いません。

家庭血圧の正しい測り方

血圧は、緊張、運動、寒さ、睡眠、食事などで常に変動します。大切なのは「いちばん低い数字を選ぶ」ことではなく、同じ条件で測った記録を積み重ねることです。

上腕式を選ぶ手首式や指式より、上腕をカフで巻く自動血圧計が推奨されます。腕周りに合うカフを使います。
測る時刻をそろえる朝は起床後1時間以内、排尿後、朝食・服薬前。晩は就寝前が基本です。
1〜2分座って休む背もたれのある椅子に座り、足を組まず、測定前と測定中は会話を控えます。
素肌にカフを巻く厚い服の上から測らず、カフの中心を心臓と同じ高さにします。腕は机などで支えます。
原則2回測る1機会に2回測定して平均を記録します。毎回、都合の悪い値も含めて残しましょう。
週5日以上を目安に朝・晩の記録を受診時に持参すると、白衣高血圧や仮面高血圧の評価に役立ちます。
家庭血圧と診察室血圧は、同じ基準ではありません 高血圧の診断基準は、診察室血圧が140/90mmHg以上、家庭血圧が135/85mmHg以上です。治療目標は年齢、持病、立ちくらみの有無などで個別に考えます。

血圧を高く・低くする測定誤差

よくある状況起こりやすい影響対策
カフが小さすぎる実際より高く出やすい上腕周囲に合うサイズを選ぶ
腕が心臓より低い高く出やすい腕を机やクッションで支える
会話、足組み、背中や腕が不支持高く出たり、ばらついたりする正しい姿勢で静かに測る
運動、喫煙、カフェインの直後一時的に高く出ることがある少なくとも30分は避ける
不整脈がある自動血圧計の値が不安定になることがある複数回の記録と脈の表示を医師に見せる

コロトコフ音とは?なぜ血圧を「音」で測れるのか

聴診法では、上腕のカフを収縮期血圧より高く加圧して動脈を閉じ、ゆっくり減圧します。カフの圧が収縮期血圧を下回ると、心臓が収縮する瞬間だけ血液が押し出され、聴診器に「トントン」という音が現れます。これがコロトコフ音です。最初に聞こえた圧が収縮期血圧、成人では音が消えた圧が拡張期血圧の目安になります。

カフをゆるめたときの動脈と音の変化
収縮期より上動脈が閉じ、音なし
収縮期〜拡張期断続的な血流で音が出る
拡張期より下血流が滑らかになり、音が消える
I相明瞭な音が出現
収縮期血圧
II相雑音を伴う
やや柔らかい音
III相再び明瞭で
強い音
IV相音が急に
弱くなる
V相音が消失
拡張期血圧

なお、コロトコフ音は単純な「乱流の音」だけで説明しきれるわけではなく、動脈壁の振動や脈動性の血流などが関係すると考えられています。発見から100年以上たった現在も、その発生機序には研究の余地があります。

家庭の自動血圧計はコロトコフ音を聞いていない

多くの家庭用電子血圧計は、マイクで音を聞くのではなく、カフ内に生じる小さな圧の振動を検出するオシロメトリック法を使います。振動が最も大きくなる付近から平均血圧を捉え、機器ごとの計算方法で収縮期・拡張期血圧を推定します。そのため、不整脈、体動、不適切なカフ、手首の高さなどで誤差が大きくなることがあります。

  • 医療機器として販売され、精度検証情報が確認できる上腕式を選ぶ
  • 細い腕・太い腕では、対応するカフ周囲長を必ず確認する
  • 購入後は一度、受診時に持参して使い方や値を確認する

血圧測定器はどのように開発されたのか

1733年|スティーヴン・ヘイルズ
馬の動脈に管を入れ、血液の柱が上がる高さから圧を測定しました。正確でも体を傷つける「直接測定」であり、日常診療には使えませんでした。
1881年|フォン・バッシュ
動脈を外から圧迫して血圧を推定する血圧計を考案。皮膚の上から測る非侵襲的な血圧測定への重要な一歩でした。
1896年|シピオーネ・リヴァ=ロッチ
腕を一周する空気式カフと水銀柱を組み合わせ、実用的な血圧計を発表しました。当初は手首の脈が消える圧から収縮期血圧だけを測っていました。
1905年|ニコライ・コロトコフ
ロシアの外科医コロトコフが、カフをゆるめる途中で上腕動脈から聞こえる音を報告。収縮期血圧と拡張期血圧の両方を測れる聴診法が成立しました。
20世紀後半〜現在|電子化・自動化
圧振動を読むオシロメトリック法が普及し、家庭でもボタン一つで測定できるようになりました。日本では水俣条約を背景に、2020年12月31日から水銀血圧計の製造・輸出入などが規制され、電子式への移行が進みました。

200年以上の進歩で測定は安全で身近になりましたが、カフで上腕動脈を圧迫し、血流が戻る変化を捉えるという中心原理は、リヴァ=ロッチとコロトコフの時代から受け継がれています。

姫路市で血圧の相談・受診を考える目安

  • 家庭血圧135/85mmHg以上が繰り返し続く
  • 診察室では正常でも、朝や夜だけ高い
  • 治療中なのに値が安定しない、立ちくらみやふらつきがある
  • 左右の腕で大きな差が続く、脈が不規則と表示される
  • 健診で高血圧、心電図異常、腎機能低下を指摘された
非常に高い血圧に、胸痛・息苦しさ・麻痺・ろれつが回らない・視覚異常・意識障害などを伴う場合 高血圧緊急症の可能性があります。数値が下がるのを待たず、119番へ連絡してください。強い胸痛、突然の息苦しさ、片側の麻痺や言葉の異常、意識障害では、血圧が180/120mmHgを超えていなくても119番です。症状がなくても、1分以上あけて測り直してなお非常に高い場合は、速やかに医療機関へ相談してください。

えぷろんクリニックで相談できること

姫路市飾磨区のえぷろんクリニックでは、家庭血圧の記録や測定方法を確認し、診察、血液・尿検査、心電図などを症状に応じて組み合わせます。高血圧だけでなく、糖尿病、脂質異常症、腎臓病、睡眠時無呼吸症候群、心不全リスクも含めて評価し、必要時には心エコーや専門医療機関への紹介を行います。

血圧測定についてよくある質問

Q. 血圧は右腕と左腕、どちらで測ればよいですか?

初めは両腕で測り、差がある場合は一般に高い側を基準にします。左右差が繰り返し大きいときは、血管の病気などを確認するため受診してください。

Q. 1回目だけ高く、2回目は下がります。どちらを記録しますか?

原則2回測定し、両方を残して平均を記録します。高い値だけ、低い値だけを選ばないことが大切です。

Q. 服の上から測ってもよいですか?

厚い服や袖を強くまくった状態は誤差の原因になります。カフは原則として素肌の上腕に巻いてください。

Q. 手首式血圧計ではいけませんか?

測れますが、手首の高さや解剖学的条件の影響を受けやすいため、家庭での継続測定には検証された上腕式が推奨されます。

Q. 姫路市で高血圧は何科に相談すればよいですか?

内科または循環器内科で相談できます。家庭血圧の記録、健診結果、お薬手帳、使用中の血圧計があれば受診時にお持ちください。

血圧の数字だけで判断せず、記録全体を確認します

姫路市で高血圧や血圧測定にお悩みの方、生活習慣病や心臓の病気が心配な方は、えぷろんクリニックまでご相談ください。症状や検査結果を確認しながら、必要に応じて適切な検査や専門医療機関との連携を行います。

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参考文献・情報源

  1. 日本高血圧学会「家庭で血圧を測定しましょう」
  2. 日本高血圧学会「血圧計の試験結果に関する集計」
  3. American Heart Association: Home Blood Pressure Monitoring
  4. Paskalev D, et al. A centenary of auscultatory blood pressure measurement: a tribute to Nikolai Korotkoff. Kidney Blood Press Res. 2005.
  5. Baranger J, et al. The fundamental mechanisms of the Korotkoff sounds generation. Sci Adv. 2023.

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の診断や治療方針は、診察と検査結果に基づいて判断されます。