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慢性心不全ってどんな病気?― 心臓というポンプが、疲れてきたら(前編)―

第 13 回心臓の病気について

慢性心不全ってどんな病気?
― 心臓というポンプが、疲れてきたら(前編)―

「坂道や階段で、前より息が切れる」「足がむくんで、靴下のあとがくっきり残る」「夜、横になると息苦しくて目が覚める」――
「年のせいかな」と見過ごされがちなこれらのサインは、じつは心臓からの大切なメッセージかもしれません。今回から2回に分けて、慢性心不全のお話をします。前編は「心不全とはどんな状態か・なぜ起きるか・どんなサインが出るか」。壮大なテーマですが、ゆっくりご一緒しましょう。

えぷろんクリニック 松尾院長の弟子、ドクター・エプ子です。

このブログでは、診察室では時間が足りなくてお伝えしきれないことを、できるだけ専門用語を使わず、ゆっくりお話ししていきます。どうぞお気軽にお付き合いください。

01心不全は「病名」ではなく「状態」です

「心不全」という言葉はよく耳にしますが、じつはこれは、特定の一つの病気の名前ではありません。心臓というポンプが弱って、全身に十分な血液を送り出せなくなった「状態」のことを、まとめて心不全と呼びます。

心臓は、全身に血液を送り出すポンプです。このポンプの力が落ちると、2つのことが起こります。ひとつは、全身に血液が足りなくなること(だるさ・疲れやすさ)。もうひとつは、送り出せなかった血液が手前で渋滞し、血管の外に水分がしみ出して、体にたまってくることです。この「血液が流れにくくなって、たまっている状態」を うっ血(うっけつ) といいます。心不全の息切れやむくみは、この“水分のたまり”から起こります。

正常な心臓と心不全の心臓を比べ、送り出せなかった水分が体にたまる(うっ血)様子を示した図

図1 心不全は、ポンプの力が落ちて全身に血液を送れず、行き場を失った水分が体にたまってくる“状態”です

「心不全」は、いろいろな心臓の病気が行き着く 「共通のゴール」 のようなもの。だからこそ、おおもとの原因は人によってさまざまです。次の項でお話しします。

02大きく2つのタイプ ― 「縮めない」と「ふくらめない」

ひとくちに心不全といっても、ポンプの弱り方には、大きく 2つのタイプ があります。どちらのタイプかによって、治療の考え方も少し変わってきます(詳しくは後編で)。

  • ① 縮む力が弱るタイプ:心臓が血液を「ぎゅっとしぼり出す」力そのものが低下したタイプです。
  • ② 硬くてふくらみにくいタイプ:しぼり出す力は保たれているのに、心臓の壁が硬くなり、血液を「ためるためにふくらむ」ことがうまくできないタイプです。

心不全の2つのタイプ。縮む力が弱るタイプと、壁が硬くてふくらめないタイプを比べた図

図2 「しぼる力が弱い(①)」か「硬くてふくらめない(②)」か。どちらも、送り出す血液が足りなくなります

このうち ②の「硬くてふくらみにくいタイプ」は、高齢の方・女性・高血圧のある方に多いことが知られています。じつは、第12回でお話しした 微小血管の不調 とも関わりがあると注目されているタイプです。「心臓の動き(ポンプの力)は悪くないと言われたのに、息切れやむくみがある」――そんなときは、このタイプが隠れていることがあります。

「心臓の動きは良い」と言われても、心不全でないとは限りません。ふくらむ力の問題は、ふつうの検査では見えにくいことがあるからです。気になる息切れやむくみは、「動きは大丈夫」の一言で終わらせず、ご相談ください。

03なぜ起きる? ― これまでの病気の“合流点”

心不全は「共通のゴール」だとお話ししました。つまり、心臓に負担をかけるさまざまな病気が、長い時間をかけて行き着く先が心不全です。このシリーズでお話ししてきた病気の多くも、そのおおもとになります。

  • 心筋梗塞・狭心症(虚血):心臓の筋肉が傷んだり、酸素不足が続いたりして、力が落ちます(第8・9回)。
  • 弁膜症:心臓の“ドア”の開け閉めがうまくいかず、心臓に負担がかかり続けます(第1〜5回)。
  • 高血圧:高い圧に逆らって働き続けるうちに、心臓が疲れ、壁が厚く硬くなっていきます。
  • 脈の乱れ(不整脈・心房細動など):効率の悪い動きが続くと、ポンプの力が落ちてきます。
  • 心臓の筋肉そのものの病気・その他:心筋症のほか、第12回の微小血管の不調なども関わります。

このように、心不全は 一つの原因で起こるとは限りません。いくつかが重なっていることもよくあります。だからこそ、「なぜ心不全になったのか」というおおもとを見極め、そこから治療していくことが大切なのです。

心不全は、これまでの回でお話ししてきた病気の “合流点”。逆に言えば、それぞれの病気ときちんと付き合うことが、心不全の予防そのものです。健診の血圧や心電図の指摘を放っておかないことが、いちばんの近道です。

04症状 ― 体が出す「水分オーバー」のサイン

心不全の症状は、01でお話しした 「うっ血(水分のたまり)」 から起こります。どこに水分がたまるかで、出るサインが変わります。

肺に水分がたまると ― 息のサイン

  • 息切れ:坂道・階段・急ぎ足で、前より息が切れる。
  • 横になると苦しい:寝ると息苦しく、体を起こすと楽になる(起き上がって寝る方も)。
  • 夜、息苦しくて目が覚める:就寝後しばらくして、息苦しさで目が覚める。
  • せき:とくに夜間の、たんの少ないせきが続く。

全身に水分がたまると ― むくみと体重のサイン

  • 足のむくみ:すね・足首・足の甲。指で押すと、くぼみがしばらく残るのが特徴です。
  • 急な体重増加:これは「太った」のではなく 「水分がたまった」サイン。数日で急に増えたら要注意です。
  • おなかの張り・食欲低下:胃腸のまわりにも水分がたまり、張って食べられなくなることがあります。
  • だるさ・疲れやすさ:全身に血液が足りず、なんとなく元気が出ない、動くのがおっくうに。

心不全のサインが出る場所。肺の息切れ、おなかの張り、足のむくみ、全身のだるさを示した図

図3 息のサインは「肺」、むくみや体重増加は「全身」から。毎日の体重測定は、水分のたまりに気づく大きな手がかりです

心不全のサインは、どれも 「心臓とは関係なさそう」に見えるのが、やっかいなところです。息切れ・むくみ・急な体重増加・だるさ――こうしたサインが重なるときは、「年のせい」で片づけず、一度ご相談ください。

05見逃さないサイン ― 「急に悪くなる」を防ぐ

慢性心不全は、ふだんは落ち着いていても、ちょっとしたきっかけ(塩分・水分のとりすぎ、お薬の飲み忘れ、かぜ・感染、無理など)で、数日のうちに悪くなることがあります。これを 急性増悪(きゅうせいぞうあく) といいます。早めに気づいて手を打てば、入院せずにすむことも多いので、次のサインを覚えておいてください。

  • 数日で、体重が2〜3kg増えた(水分がたまってきたサイン)
  • むくみが強くなった/靴や指輪がきつくなった
  • 少し動いただけで、息が切れるようになった
  • 夜、横になると苦しく、眠れない

これらのサインに気づいたら、「様子見」で我慢しすぎないこと。早めに、かかりつけ(当院など)にご連絡・ご相談ください。お薬や生活の調整で、悪化を食い止められることがよくあります。困ったときにすぐ相談できる場所を持っておくことが、心不全と付き合ううえでの大きな安心になります。

強い息苦しさが、安静にしても続くとき

119

迷わず救急車を呼んでください。

じっとしていても強く息苦しい、横になれない、ゼーゼーする、冷や汗が出る、ピンク色のあわ立ったたんが出る ―― こうしたときは、肺に急激に水がたまる 危険な状態 のおそれがあります。がまんせず、迷わず119番を。上半身を起こした姿勢のほうが、少し楽になります。

06経過 ― 「退院してから」が、ほんとうのスタート

心不全は、残念ながら「一度治れば終わり」という病気ではありません。よくなったり、悪くなったりをくり返しながら、少しずつ進んでいくのが特徴です。とくに、一度入院すると、その後もきっかけがあれば 再び悪くなって入院をくり返しやすいことが知られています。

だからこそ、大切なのは 「退院してからの毎日」 です。じつは、心不全は 退院してからが、ほんとうのスタート。おうちでの体重・お薬・生活を上手に整え、悪くなるサインに早めに気づいて手を打つ ―― この 日々の見守り が、再入院を防ぎ、穏やかな毎日を長く保つ、いちばんの力になります。

心不全は、進んでいく病気だからこそ、早く気づき、続けて見守ることに意味があるのです。「もう歳だから」とあきらめる必要はありません。上手に付き合えば、日常を守りながら、長く過ごしていける病気です。具体的な検査・お薬・毎日のセルフケアは、次回(後編)でたっぷりお話しします。

07困ったときは ― えぷろんクリニックが、そばで伴走します

息切れやむくみに困ったとき。大きな病院に入院して、退院してきたあと。心不全は、「そのあと」を支えてくれる身近な存在があるかどうかで、毎日の安心が大きく変わります。えぷろんクリニックは、まさにその 伴走役 でありたいと思っています。

  • 症状に困ったとき、すぐ相談できます:息切れ・むくみ・急な体重増加。「これって大丈夫?」を、早めに一緒に確かめます。悪化のサインを見つけたら、お薬や生活の調整で食い止めます。
  • 退院後のフォローをお任せください:入院治療のあと、生活の場での“受け皿”として、体重・血圧・むくみのチェック、採血、お薬の見直し、セルフケアのご相談まで、継続して見守ります。
  • 病院との「橋渡し」をします:くわしい検査や入院が必要なときは、連携する専門病院へすみやかにご紹介。落ち着いたら、また地元で見守ります。

心不全を専門とする院長が診ています

当院の松尾院長は、心不全を専門とし、兵庫県立はりま姫路総合医療センターでも 心不全外来・地域連携 に携わっています。

大きな病院での治療と、地元での日々の見守り ―― その 両方を知る立場から、退院後の生活を切れ目なくお支えします。「困ったときの相談先」として、どうぞ頼りにしてください。

08最後に ― サインに、早めに気づいて

慢性心不全は、心臓というポンプが疲れ、体に水分がたまってくる 「状態」 です。いろいろな心臓の病気が行き着く先であり、少しずつ進んでいきますが、早めに気づき、続けて見守っていけば、日常を守りながら付き合っていける病気です。

「坂道で息が切れる」「足がむくむ」「夜、横になると苦しい」「数日で急に体重が増えた」――そんな心当たりがあれば、それは受診のよいきっかけです。当院(兵庫県姫路市・えぷろんクリニック)で、いつでもご相談ください。退院後のフォローも、どうぞお任せください。

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第14回 慢性心不全(後編)― 検査・治療・毎日のセルフケア

後編では、心不全をどう調べ、どう治療していくのか。近年大きく進歩したお薬の考え方(役割ごとにやさしく)や、毎日の体重測定・塩分・服薬といった「おうちでのセルフケア」まで、具体的にお話しします。

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CLINIC INFORMATION

当院について

えぷろんクリニックは、姫路市飾磨区にある循環器内科・呼吸器内科・内科のクリニックです。これまで地域に親しまれてきた「田中クリニック」の理念を引き継ぎ、2025年12月より新たな名前で診療を続けています。

  • 循環器専門医と呼吸器専門医の両方が在籍し、息切れや胸の症状の原因を総合的に診断します
  • 院内に心エコー図・心電図・血液検査・呼吸機能検査などを備え、必要な初期検査を当日に行えます
  • 兵庫県立はりま姫路総合医療センター・姫路医療センターなどと連携し、入院・手術や精密検査が必要な場合もスムーズにご紹介します
  • 院長は兵庫県立はりま姫路総合医療センターでも診療を行っており、心不全外来・地域連携にも携わっています
  • 在宅酸素・人工呼吸器対応や終末期ケアを通じて、ご自宅での療養も支えています

診療理念

「心に寄り添い、信頼される医療の提供」

医学的根拠に基づいた正確な医療を提供しつつ、患者さまとの信頼関係を大切にした診療を行っています。患者さまと丁寧に向き合い、納得いただける治療方針を共に考え、地域の皆さまにとって 「いつでも相談できる、安心できる存在」 となれるよう努めています。

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夏季休業のお知らせ

平素より当院をご利用いただき、誠にありがとうございます。

誠に勝手ながら、8月17日(月)〜8月19日(水)は夏季休業とさせていただきます。

患者さまにはご不便をおかけいたしますが、何卒ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。