RESPIRATORY SUPPORT

人工呼吸器の設定と使い方|モードの違い・肺保護換気・離脱を詳しく解説

何を設定し、何が変わるのか。酸素化・換気・呼吸努力・循環をつなげて、人工呼吸器の使い方を理解します。

医療者向け成人の救急・集中治療

人工呼吸器を理解する出発点は、「何というモードか」に加えて、「何を設定し、その結果として何が変わるか」を考えることです。必要な酸素化と二酸化炭素の排出を確保し、呼吸筋の負担を調整しながら、肺や循環への悪影響を抑えることが管理の目標になります。

この記事では、成人の救急・集中治療で使う人工呼吸器を中心に、医療者向けに詳しく解説します。患者さん・ご家族には、冒頭の要点と末尾のFAQが参考になります。数値は教育用の目安や例であり、実際の設定は病態、血液ガス、波形、循環動態、使用機器に合わせて担当チームが調整します。小児・新生児の設定は対象にしていません。

最初に押さえたい5つのポイント

  • 酸素化と換気は別です。SpO₂が正常でも、二酸化炭素がたまっていることがあります。
  • VCV・PCVは吸気の制御方法、A/C・SIMVは呼吸の構成を表します。
  • 一回換気量は実体重ではなく、身長などから求める予測体重(PBW)を基準にします。
  • 設定値と実測値を見比べ、患者の呼吸努力、呼出換気量、圧、血圧を確認します。
  • 人工呼吸器を開始した日から、離脱できる条件も毎日評価します。[1] [2] [3]
目次を開く
  1. 1.人工呼吸器は何を補助するのか
  2. 2.「酸素化」と「換気」を分けて考える
  3. 3.VCV・PCV・A/C・SIMV・PSVはどう違うか
  4. 4.人工呼吸器の主な設定項目と、その意味
  5. 5.一回換気量は予測体重(PBW)から考える
  6. 6.初期設定はどう組み立て、どう再評価するか
  7. 7.ピーク圧・プラトー圧・driving pressureを使い分ける
  8. 8.FiO₂とPEEPは、酸素化だけでなく循環も見て調整する
  9. 9.NIV・CPAP・bilevel・S/Tの設定を理解する
  10. 10.ARDS・COPD/喘息・心原性肺水腫で設定はどう変わるか
  11. 11.Auto-PEEPを見逃さない
  12. 12.波形を読むと、設定と患者のずれが見えてくる
  13. 13.不同調はトリガー・吸気時間・呼気移行から整理する
  14. 14.アラームが鳴ったときは、患者の評価を優先する
  15. 15.加湿・人工気道・鎮痛鎮静も、人工呼吸管理の一部
  16. 16.人工呼吸器からの離脱:SBTと抜管を分ける
  17. 17.在宅人工呼吸器では、療養生活に合った安全な運用が必要
  18. 18.よくある質問
  19. 姫路市で息切れ・心臓や肺の病気をご相談いただくには

1.人工呼吸器は何を補助するのか

自分で呼吸するときは、横隔膜などが働いて胸腔内の圧を下げ、空気を吸い込みます。現在広く使われる人工呼吸器は、気道に陽圧をかけて空気を送り込み、呼吸を補助します。

補助の目的は、①血液に酸素を取り込む、②二酸化炭素を排出する、③呼吸筋の過剰な仕事を減らす、の3つです。肺炎、心不全、COPD増悪、神経筋疾患など、呼吸不全の原因そのものに対する治療も並行して行います。

呼吸補助の方法患者との接続主な特徴
侵襲的人工呼吸(IMV)気管挿管・気管切開チューブ呼吸回数や吸気を強く管理できる。気道管理、鎮痛鎮静、感染・損傷への配慮が必要
非侵襲的陽圧換気(NIV/NPPV)マスクなど挿管せずに陽圧を加える。適応、気道防御、リーク、失敗時の対応が重要
CPAPマスクまたは人工気道呼吸周期を通じて一定の陽圧を加える。吸気時だけの追加圧補助はない
HFNC鼻カニューレ加温加湿した高流量ガスを供給する。一定のVTや呼吸回数を保証する装置ではない

NIVという用語にCPAPを含める文献もあれば、bilevelによる換気補助をNIVと呼んでCPAPを分ける文献もあります。ここでは両者の動作を区別して説明します。[4] [5]

2.「酸素化」と「換気」を分けて考える

酸素化は、血液へ酸素を取り込む働き

酸素化はSpO₂や動脈血のPaO₂で評価します。人工呼吸器では主に、FiO₂(吸入酸素濃度)とPEEP(呼気終末陽圧)が調整の軸になります。ただし、肺胞が開くか、肺血流がどう変わるかで反応が異なり、PEEPを上げれば必ず酸素化が改善するわけではありません。

換気は、肺胞から二酸化炭素を排出する働き

分時換気量は、次の関係で表されます。

分時換気量 V̇E = 一回換気量 VT × 実際の呼吸数

しかし、気道などのガス交換に参加しない部分を含むため、CO₂排出に直接関係する肺胞換気量は、単純化すると次のようになります。

肺胞換気量 V̇A =(VT − 死腔量 VD)× 呼吸数

例えば、死腔量を150 mLで一定と仮定すると、VT 500 mL・12回/分では肺胞換気量は4.2 L/分、VT 300 mL・20回/分では3.0 L/分です。分時換気量はいずれも6 L/分ですが、有効な換気は同じではありません。実際には死腔量も病態や設定で変わります。

CO₂産生が一定の定常状態では、PaCO₂は肺胞換気量とおおむね逆の関係になります。したがって、PaCO₂上昇時には呼吸回数だけでなく、呼出VT、死腔、リーク、回路、気道閉塞も確認します。酸素投与でSpO₂が保たれていても低換気は隠れ得るため、必要に応じて血液ガスや呼気CO₂を評価します。[6] [7]

3.VCV・PCV・A/C・SIMV・PSVはどう違うか

モードは二つの軸に分けると整理できる

まず、1回の吸気で何を制御するかを考えます。

  • VCV(従量式・容量制御):換気量と流量パターンを設定し、必要な圧が変化します。
  • PCV(従圧式・圧制御):圧と吸気時間を設定し、結果としての換気量が変化します。

次に、患者の呼吸と機械の呼吸をどう組み合わせるかを考えます。

  • A/C(補助/調節換気):患者が開始した呼吸にも、設定に従う強制呼吸を送ります。自発トリガーがなければ時間で開始します。
  • SIMV(同期式間欠的強制換気):強制呼吸の間に自発呼吸を認めます。自発呼吸へのPSを別途設定する場合があります。
  • 自発呼吸を主体とする方式:代表がPSVです。

そのため、「VCVかA/Cか」という二択にはなりません。VC-A/C、PC-A/C、VC-SIMVなどの組み合わせになります。PSVも圧を用いますが、通常のPC-A/Cとは吸気の開始・終了条件が異なります。[2] [8]

モード・方式主に設定するもの患者や肺の状態で変わるもの評価の要点
VC-A/CVT、呼吸数、流量または吸気時間、PEEP、FiO₂気道内圧、患者トリガーによる総呼吸数圧上昇、流量不足、二重トリガー
PC-A/C吸気圧、呼吸数、吸気時間、PEEP、FiO₂VT、流量、総呼吸数コンプライアンス低下によるVT減少
SIMV+PS強制呼吸の設定と、自発呼吸へのPS自発呼吸のVT・回数・仕事量強制呼吸と自発呼吸を別々に評価
PSVPS、PEEP、FiO₂、トリガー、呼気移行条件VT、呼吸数、吸気時間補助不足・過補助、無呼吸、不同調
PRVC/VC+/APVなど目標VT、呼吸数、圧の制限など目標VTに近づけるための吸気圧自動調整の限界、患者努力、実測VT
APRV高圧・低圧と、それぞれを維持する時間圧開放時の換気量、自発呼吸量肺容量、呼気流量、過膨張、循環

名称や選べる設定項目は機種で異なります。呼出VT、実際の圧・流量波形、無呼吸時の作動を見て、その機器が何をしているかを確認します。[8] [9] [10]

VCVの長所と注意点

VTを管理しやすく、呼吸力学の変化が圧に表れやすい方式です。同じVTを送る場合、肺が硬くなる、気道が狭くなると必要な圧が上がります。

ただし、設定VTが常に肺へ届くわけではありません。圧上限による送気中断、リーク、回路の問題で実測値は変わり得ます。また、患者の要求に対して吸気流量が不足すると、吸気中の努力が増えます。

PCVの長所と注意点

吸気圧を管理しながら、肺と患者の状態に応じた流量で送気します。一方、同じ設定圧でも、肺が硬くなるとVTが減り、患者の吸気努力が強くなるとVTが増える場合があります。

気道内圧を制限しているだけで、肺の過伸展を完全に防げるわけではありません。 自発努力による胸腔内圧低下も、肺を広げる力に加わるからです。実測VT、呼吸努力、静的に測定した圧を合わせて評価します。[9] [10] [11]

容量制御と圧制御:気道内圧・流量・容量の波形 受動換気の単純な抵抗・コンプライアンスモデルによる模式図であり、実測値でも設定推奨値でもありません。左は流量一定の容量制御換気で、吸気終了直前に短い吸気ホールドを追加。右は圧制御換気。両者は同じ一回換気量です。抵抗10 cmH2O/L/s、コンプライアンス0.05 L/cmH2O、PEEP 5 cmH2O、1周期4秒。容量制御は0.5 L/sを0.8秒、その後0.2秒ホールドし400 mL。圧制御はPEEPより約9.25 cmH2O高い圧を1秒維持し400 mL。数値目盛は省略。圧制御の設定気道内圧と静的なプラトー圧は、吸気流量が残る場合には一致しません。 VCV と PCV の波形 受動換気の模式図(実測値ではありません) 容量制御(VCV) 流量一定 + 短い吸気ホールド 気道内圧 PEEP 流量 0 容量 0 時間 → Ppeak Pplat 流量一定 VT 圧制御(PCV) 吸気中の気道内圧を一定に保つ 気道内圧 PEEP 流量 0 容量 0 時間 → 圧一定 流量は漸減 VT VCV の淡い帯:吸気ホールド(流量 0・容量一定)
図1 同じ一回換気量となる単純モデルで、圧・流量・容量の違いを示した模式図。VCVには短い吸気ホールドを含みます。実測記録・推奨設定値ではありません。

圧制御の水平な波形は、人工呼吸器が保つ気道内圧を示します。吸気流量が残っている場合、この値をそのままプラトー圧として扱うことはできません。[19]

自動調整モードは、観察を省略するための機能ではない

PRVCなどは、目標VTへ近づくよう吸気圧を調整します。「目標換気量を入力する」点だけを見て、従来型のVCVと同じ動作と考えないことが大切です。

ASV(Adaptive Support Ventilation)は、目標分時換気量、呼吸力学などから呼吸数・VT・圧補助を調整する方式です。基本ASVではPEEPやFiO₂まで必ず自動になるわけではありません。なお、睡眠医療のASV(Adaptive Servo-Ventilation)とは別の方式です。[8] [12]

2025年のMODE試験では、成人566例の単施設クラスター無作為化クロスオーバー試験で、VC、PC、自動圧調整方式の28日人工呼吸器非使用生存日数に有意差は示されませんでした。パイロット試験であり全病態での同等性を証明したわけではありませんが、モード名だけで予後の優劣を決める根拠にはなりません。[13]

4.人工呼吸器の主な設定項目と、その意味

設定何を決めるか変更するときの観察点
FiO₂吸うガスの酸素濃度。0.40は40%SpO₂・PaO₂、酸素化目標、過剰な酸素曝露
PEEP呼気終末にも残す陽圧酸素化、肺の開存、過膨張、血圧、右心機能
VT1回の呼吸で送る量PBW当たりの呼出VT、Pplat、pH・PaCO₂
RR/f機械が送る呼吸の基準回数実際の総呼吸数、呼気時間、auto-PEEP
吸気圧圧制御で吸気に用いる圧PEEP上乗せか絶対圧か、呼出VT
PS自発吸気への圧補助呼吸努力、VT、呼吸数、過補助・補助不足
Ti吸気時間VT、平均気道内圧、呼気時間、患者との同調
I:E吸気時間と呼気時間の比呼気の完了、動的過膨張
吸気流量単位時間当たりに送る量吸気時間、抵抗性の圧、患者の流量要求
吸気トリガー自発吸気を検出する条件トリガー負荷、無効努力、オートトリガー
Rise time目標圧へ到達する速さ初期流量、圧のオーバーシュート、快適さ
呼気移行感度PSVなどで吸気を終える流量条件吸気が長すぎる・短すぎる不同調

設定可能範囲、表示、相互に連動する項目は機種・モードで変わります。機器マニュアルの確認と患者の実測評価を組み合わせて使います。[1] [9] [10]

A/Cの設定呼吸数は上限ではない

例えばA/Cを16回/分に設定していても、患者が毎分24回トリガーすれば、実際の呼吸数が24回/分になることがあります。したがって、設定RR×設定VTだけで実際の換気を把握することはできません。

過換気、呼気時間不足、鎮痛不足、発熱、代謝性アシドーシスなど、呼吸数が増える背景も評価します。呼吸数を下げる操作だけでは、患者が頻回にトリガーする原因は解決しない場合があります。[8]

吸気時間・呼気時間・流量は連動する

規則的な調節換気では、1呼吸に使える時間は60÷呼吸数[秒]です。呼吸数20回/分、Ti 1秒なら、1呼吸3秒のうち呼気は2秒です。Tiを変えず30回/分にすると、1呼吸2秒となり、呼気は1秒へ短くなります。

流量一定VCVでVT 400 mL、吸気流量60 L/分(1 L/秒)なら、送気自体に要する時間は0.4秒です。吸気ポーズがあれば、その時間も吸気時間に加わります。流量を増やすと呼気時間を確保できる場合がありますが、抵抗によるピーク圧や患者の快適さも変化します。

これらは単純な時間計算です。実際には患者のトリガーや機器の設定方式でも変わるため、表示されるTi・Teと波形で確認します。[9] [10]

「吸気圧15、PEEP5」では意味が一つに決まらない

吸気圧の定義表示の例吸気中の圧の目安
PEEPへの上乗せ圧ΔPcontrol 15、PEEP 5上側の圧は約20 cmH₂O
PEEPを含んだ上側圧Pinsp 15、PEEP 5上側の圧は約15、圧差は10 cmH₂O
NIVのIPAP/EPAPIPAP 15、EPAP 5PSに相当する圧差は10 cmH₂O

Hamilton C3の当該マニュアルでは、Pcontrol・Pinsp・PsupportはPEEPへの上乗せ圧として定義されています。一方、Dräger Evita V800/V600のPC換気で設定するPinspは、PEEPを含む上側の圧です。同じ「Pinsp」という表示でも、機種によって圧の定義が異なります。 機種、モード、圧の定義、単位をセットで引き継ぐことが必要です。実測圧は患者努力などで変動します。[9] [10]

5.一回換気量は予測体重(PBW)から考える

肺の大きさは実体重そのものとは一致しません。肥満や浮腫で体重が増えた分だけVTを増やすと、肺を過度に広げる可能性があります。

ARDSNetで使われる成人PBWの式は次のとおりです。

  • 男性:PBW[kg]=50+0.91×(身長[cm]−152.4)
  • 女性:PBW[kg]=45.5+0.91×(身長[cm]−152.4)

身長170 cmの男性ではPBWは約66.0 kgで、6 mL/kgなら約396 mLです。身長160 cmの女性ではPBWは約52.4 kgで、6 mL/kgなら約314 mLです。これは式から計算した教育例です。[14]

ARDSではVT 6 mL/kg PBWを基本に、プラトー圧、ガス交換、同調性に応じて4~8 mL/kgの範囲で調整する肺保護換気が基本になります。非ARDSでも過大なVTを避け、圧と患者の状態を含めて評価します。6 mL/kgという数字だけを守っても、強い努力呼吸や二重トリガーで大きな換気量になっていれば十分な肺保護とはいえません。[1] [15] [16]

2000年のARDSNet試験は、低VT・圧制限戦略の死亡率31.0%に対し、従来戦略では39.8%でした。ただし比較は主に6対12 mL/kgであり、「6 mL/kgは8 mL/kgより必ず優れる」と示した試験ではありません。[17]

6.初期設定はどう組み立て、どう再評価するか

設定前に確認すること

まず、なぜ人工呼吸が必要なのかを明確にします。低酸素が中心か、CO₂排出不良か、呼吸筋疲労か、気道防御の問題かによって設定の優先順位が変わります。

身長・PBW、自発呼吸の有無、血液ガス、血圧・循環、気流制限の有無を確認し、機器・回路・加湿・人工気道の準備と点検を行います。気管挿管後は呼気CO₂波形などで気道を確認し、深さや左右の換気も評価します。[1] [6]

教育用の出発点:成人、強い気流制限がない場合

次は、医療者が患者を直接観察しながら調整する場面の例です。特定の患者への処方ではありません。

項目考え方・例
モードVC-A/CまたはPC-A/Cなど、必要な換気を確保し評価しやすい方式
VTの目標PBW当たり約6~8 mL/kgを出発点に検討。ARDSは6を基本に圧をみて調整。通常のVCではVTを直接設定し、PCでは呼出VT・圧・呼吸努力を見て吸気圧を調整
呼吸数例えば12~20回/分の範囲から病態に応じて検討。代謝・pH・呼気時間で調整
PEEP例えば5 cmH₂Oを出発点に検討。ただしARDS、肥満、肺水腫などでは個別調整
FiO₂導入時の低酸素を避け、信頼できる測定で目標を上回れば、導入時の高いFiO₂を固定せず調整
吸気・呼気時間例えばI:E 1:2を出発点にし、閉塞性病態なら呼気をさらに確保
PCの吸気圧固定の数字を一律に入れず、呼出VTと実際の圧を見て決める
アラーム圧、低VT・低分時換気量、呼吸数、無呼吸などを患者に合わせて設定

これはガイドラインが全患者に指定した一組の設定ではなく、肺保護と一般的な呼吸生理を踏まえた設定の考え方です。強い閉塞性障害、重症ARDS、右心不全、重い代謝性アシドーシスでは、そのまま適用できません。[6] [15] [18]

接続直後と設定変更後の確認

見るべきものは、胸郭の動き、左右の呼吸音、SpO₂、呼気CO₂、血圧・心拍、呼出VT、総呼吸数、分時換気量、圧・流量波形です。必要なタイミングで血液ガスを再検し、pH・PaCO₂・PaO₂と患者の様子が合っているかを確かめます。

可能なら、何を改善する変更かを明確にし、変更前後の反応を記録します。急変時には、複数の問題を同時に扱いながら酸素化・換気の確保を優先します。[1]

7.ピーク圧・プラトー圧・driving pressureを使い分ける

ピーク圧(Ppeak)

吸気中の気道内圧の最大値です。肺・胸郭を膨らませるための圧だけでなく、流れる空気が気道抵抗を受けるための圧も含みます。

流量一定VCVで条件が同じなら、ピーク圧上昇には、分泌物、チューブの屈曲、気管支攣縮、コンプライアンス低下などが関係します。ピーク圧が高いという情報だけでは、肺が過度に膨らんでいるかは決まりません。

プラトー圧(Pplat)

吸気終末に流れを止め、圧が平衡したときの気道内圧です。吸気ホールドで測定します。患者の吸気・呼気努力、咳、リークなどがあると、静的な値として解釈できないことがあります。

Pplatは肺だけでなく、胸郭も含む呼吸器系の負荷を反映します。肥満、腹圧上昇、胸郭の硬さも影響します。ARDSでは原則として30 cmH₂O未満を目標にする推奨があり、ARDSNetプロトコルでは30以下を基準としています。[1] [14] [15]

Driving pressure(ΔP)

受動的な静的測定が成立する条件で、

ΔP = Pplat − total PEEP

と定義します。total PEEPは設定PEEPと内因性PEEPを含む、実測した呼気終末の圧です。

呼吸器系コンプライアンスは、

Crs = VT ÷(Pplat − total PEEP)

で表されます。例えばVT 400 mL、Pplat 24、total PEEP 8なら、ΔPは16 cmH₂O、Crsは25 mL/cmH₂Oです。

同じVTを送るために必要な圧差が大きいほど、換気に参加する肺が小さい、あるいは肺・胸郭が硬い可能性を考えます。ただし、胸郭要因や測定条件によって意味が変わります。PCやPSの設定圧を、そのまま静的ΔPに置き換えることはできません。[19] [20]

ΔP 15以下は「安全証明」ではない

AARCの評価指針では15 cmH₂O以下が目安として示されていますが、閾値を下回れば肺障害を防げるという意味ではありません。

2015年の解析はΔPと死亡の関連を示したもので、特定閾値へ無作為に割り付けた試験ではありません。2025年のSTAMINA試験でも、PEEP・VTを調整するΔP制限戦略で人工呼吸器非使用生存日数の有意な改善は示されませんでした。後者は早期中止し、群間のΔP差も小さく、「ΔPを低くしても意味がない」とも断定できません。[20] [21]

8.FiO₂とPEEPは、酸素化だけでなく循環も見て調整する

FiO₂:必要な酸素を確保し、過剰を避ける

酸素は低酸素血症の是正に必要ですが、高いFiO₂を漫然と続ける管理は避けます。一方で、「低い酸素目標ほど安全」ともいえません。

状況酸素化目標の考え方
多くの急性期成人AARC 2022ではSpO₂ 94~98%を提示。ただし全人工呼吸患者に同じ最適値が確立したわけではない
COPDなど高CO₂血症のリスクがある急性期SpO₂ 88~92%を目標とする指針がある。血液ガスと病態で調整
ARDSNetの肺保護プロトコルPaO₂ 55~80 mmHgまたはSpO₂ 88~95%。当該ARDSプロトコルとしての目標

ショック、重い貧血、脳の病態、測定誤差なども考慮します。SpO₂は組織への酸素供給そのものを測っているわけではありません。[7] [15] [18]

2025年のUK-ROX試験では、人工呼吸中の成人16,500例で、SpO₂ 90%(範囲88~92%)を目標とする保守的酸素療法は通常治療に対し90日死亡を減らしませんでした。死亡率は35.4%対34.9%です。一般的なICU患者すべてを低いSpO₂へ揃える根拠にはなりません。[22]

PEEP:肺胞を保つ利益と、過膨張の不利益

PEEPが虚脱した肺胞の開存に役立つ場合には、酸素化やコンプライアンスが改善します。しかし、すでに開いている肺を過度に膨らませれば、死腔増加、肺血管抵抗上昇、血圧低下につながる場合があります。

PEEPを上げたら、SpO₂・PaO₂に加えて、Pplat、ΔP、VT、血圧、必要に応じて心エコーなどを見ます。「酸素化がよくなった」だけで設定が最適とは判断できません。[6] [16]

9.NIV・CPAP・bilevel・S/Tの設定を理解する

CPAPとbilevelの違い

CPAPは、吸気と呼気を通して陽圧を加えます。上気道・肺胞の開存、酸素化、呼吸仕事量の軽減に役立ちますが、吸気時だけ圧差を上乗せする換気補助ではありません。

Bilevelでは、呼気のEPAPより吸気のIPAPを高くします。

換気補助の圧差(PS)=IPAP−EPAP

設定例IPAPEPAPPSに相当する圧差
例A1248
EPAPだけ上げた例B1284
圧差を保って上げた例C1688

単位はいずれもcmH₂Oです。例AからBへ変えると、呼気側の圧は上がりますが、吸気の圧補助は減ります。例Cなら圧差は保たれます。ただし、同じPSでもVTはリーク、呼吸力学、患者努力で変わります。これは設定の関係を示す計算例であり、推奨する圧の組み合わせではありません。[9] [23]

S/Tの意味

Sはspontaneous、Tはtimedです。患者が吸気を開始すればそれに合わせ、自発トリガーが不足する場合には設定された時間・回数に従ってバックアップします。PSやbilevelという名称だけで、無呼吸時の換気が保証されると考えないことが重要です。[8] [9]

COPD増悪ではbilevel NIVが重要な選択肢

標準治療後も呼吸性アシドーシスを伴うCOPD増悪では、bilevel NIVが有効な選択肢です。ERS/ATS 2017は急性または急性増悪を伴う慢性呼吸性アシドーシス、pH≤7.35を対象に強く推奨しています。

開始設定は資料でも幅があります。例えば成人COPDの公的プロトコルにはIPAP 10・EPAP 4、あるいはIPAP 14・EPAP 4 cmH₂Oなどの例があります。開始値のまま放置せず、呼吸努力、呼出VT、リーク、同調性、血圧、pH・PaCO₂を見て早期に調整します。[4] [24] [25]

2026年ATSガイドラインをどう読むか

2026年のATS指針は、標準酸素との比較で、急性高CO₂性呼吸不全にNIVを強く推奨しています。de novo急性低酸素性呼吸不全にはHFNCを強く、NIVまたはCPAPを条件付きで推奨しています。

この推奨の強さの違いだけで、「HFNCはNIVより優れる」とは判断できません。比較対照と患者集団が重要です。装置の選択は、病態、必要な換気補助、患者の耐容性、実施者の経験、監視体制で考えます。[5]

継続できるかを、開始直後から評価する

気道防御が破綻している、呼吸停止が迫るなど、直ちに気道確保が必要な患者では、NIVの試行・継続によって挿管を遅らせてはいけません。 強い嘔吐や分泌物排出不能、重大な循環不安定、急速な悪化でも、気道・循環への対応と挿管の必要性を直ちに判断します。高CO₂による意識低下だけでNIVの適応から一律に除外するわけではありませんが、気道防御と改善反応を評価し、必要時に速やかに挿管へ移れる環境で管理します。

臨床状態を連続的に観察し、一般に開始約1時間で血液ガスを再評価するプロトコルがあります。悪化していればその時点で対応し、決めた時間まで待ちません。NIVを装着できたことと、NIVで十分に治療できていることは別です。[4] [24] [25]

10.ARDS・COPD/喘息・心原性肺水腫で設定はどう変わるか

ARDS:肺を広げすぎず、虚脱も減らす

ARDSは重い炎症により肺が傷み、酸素を取り込みにくくなった状態です。換気に参加できる肺の容量が減るため、通常のVTでも一部の肺へ負担が集中します。

基本は、PBWに基づく低VT、Pplatの制限、PEEPの個別調整です。換気を適正化しても低酸素が強い場合は、腹臥位療法、必要な鎮静・筋弛緩、選択された症例でVV-ECMOなどを集中治療チームで検討します。[16] [26]

論点根拠に沿った位置付け
高PEEPATS 2024は中等症~重症ARDSで、recruitment maneuverを伴わない高PEEPを条件付きで提案
ガイドライン間の差ESICM 2023は、ARDS全体で高PEEPをルーチンに低PEEPより優先する推奨を出していない
腹臥位ESICMは侵襲的人工呼吸中のARDSで、挿管後に低VT・PEEP・循環を適正化してもP/F比<150 mmHgなら、早期に開始し1回を連続16時間以上とすることを推奨
長時間の高圧recruitmentATS・ESICMは長時間の高圧recruitmentを行わないことを強く推奨。ESICMの定義は気道内圧35 cmH₂O以上を1分以上維持する手技
筋弛緩薬ATSは発症48時間未満・P/F比100 mmHg以下の早期重症ARDSに条件付き提案。ESICMは非COVIDの中等症~重症ARDSで死亡低下を目的とする持続投与のルーチン使用に反対

P/F比はPaO₂[mmHg]をFiO₂[小数]で割った値です。例えばPaO₂ 60、FiO₂ 0.60なら100です。酸素化の指標であり、単独で全ての呼吸管理を決めるものではありません。[16] [26]

PROSEVA試験では、厳密な対象条件を満たす重症ARDSで、長時間の腹臥位により28日死亡が16.0%対32.8%と低下しました。一方、ART試験では高圧recruitmentとPEEP調整を組み合わせた戦略で死亡が増えました。後者を「高PEEP単独はすべて有害」と読むこともできません。[27] [28]

COPD・重症喘息:十分に吐ける時間を確保する

気道が狭い患者では、吸うこと以上に、次の吸気までに吐き切れるかが重要です。呼吸数を増やしてCO₂を下げようとして、呼気が終わらないうちに次の吸気を重ねると、動的過膨張が増えることがあります。

重い気流制限を伴う調節換気について、BTS/ICSは低めの呼吸数10~15回/分、I:E 1:3またはさらに長い呼気時間という考え方を示しています。実際にはVT、流量、Ti、呼気流量波形、total PEEPを合わせて調整します。[18]

VCVで吸気流量を上げて吸気を短くする、PCVでTiを短くする、呼吸数を減らすなどが選択肢になります。ただし、VTや患者との同調も変わるため、一つの数値だけで判断しません。

CO₂の正常化より、過膨張と高い肺胞内圧を避けることを優先する場面もあります。BTS/ICSでは必要時にpH 7.20~7.25を目標とする考え方が示されていますが、頭蓋内圧上昇、重い肺高血圧・右心不全、循環不安定などでは高CO₂や酸血症の許容範囲が異なります。

なお、COPD増悪でのNIVの利益を、急性喘息へそのまま一般化することはできません。薬物治療と呼吸補助の適応を病態ごとに検討します。[4] [6] [18]

急性心原性肺水腫:呼吸と心臓の負担を同時に考える

心原性肺水腫では、CPAPまたはbilevel NIVが酸素化と呼吸仕事量を改善し、左室後負荷を減らす助けになります。高CO₂や換気不全が強い場合には、吸気圧補助を追加する意義を考えます。

ただし、陽圧で静脈還流が減ったり、過膨張により右室負荷が増えたりすることもあります。心原性ショックはNIV試験から除外されていることが多く、肺水腫への推奨をそのまま適用できません。血圧、末梢循環、右心機能を含めて評価します。[4] [6]

利尿薬、血管拡張薬、急性冠症候群や不整脈への対応など、原因治療が欠かせません。また陽圧補助を外す過程では、左室負荷が増えて肺水腫が再び明らかになることがあり、離脱時も循環の観察が必要です。[6]

11.Auto-PEEPを見逃さない

auto-PEEP(内因性PEEP)は、呼気が十分に終わらず、肺内に圧が残った状態です。COPD、重症喘息、過大な分時換気、短い呼気時間などで問題になります。

  • 呼気流量がゼロへ戻る前に次の吸気が始まる。
  • 患者が吸おうとしているのに、呼吸器が作動しない。
  • 肺が過膨張し、血圧が下がる。
  • 呼気ホールドで測定したtotal PEEPが、設定PEEPより高い。

こうした所見から疑います。呼気ホールドは患者の能動的な筋活動やリークがあると評価が難しく、気道閉鎖などでは閉じ込められた領域を十分に反映しないこともあります。[1] [18] [19]

呼吸器系を単純なモデルで考えると、空気の出入りにかかる時間は時定数 τ=抵抗R×コンプライアンスCに関係します。抵抗が高いほど、空気が抜けるのに時間がかかります。これは均一な単一モデルでの説明で、実際の肺には部位ごとの差があります。

対策は、原因の気道狭窄・分泌物を治療し、必要に応じて呼吸数やVTを調整し、呼気時間を確保することです。自発呼吸患者では外因性PEEPがトリガー負荷を減らす場合もあるため、「auto-PEEPがあるから設定PEEPを必ずゼロ」とはしません。過膨張と循環反応を見ながら調整します。[9] [18]

12.波形を読むと、設定と患者のずれが見えてくる

圧・流量・容量の3種類を一緒に見る

圧波形は送気に必要な力、流量波形は空気が出入りする速さ、容量波形は1回の出入りの量を表します。一つだけでは原因を決められないため、患者の胸郭の動きと合わせて読みます。

波形・実測値の変化考えること次に確認すること
VCVでPpeak上昇、Pplatは同じ抵抗増大、吸気流量変更など分泌物、チューブ屈曲、気管支攣縮、設定流量
VCVでPpeak・Pplatとも上昇コンプライアンス低下、過膨張など肺水腫、無気肺、気胸、腹圧、total PEEP
PCVで設定圧は同じだがVT低下抵抗増大、コンプライアンス低下、リークなど気道、肺、回路、自発努力
呼気流量がゼロへ戻らない呼気が終わっていない可能性呼気時間、気流制限、auto-PEEP
吸気中の圧波形がへこむ患者の吸気要求に流量・補助が追いつかない可能性呼吸努力、流量、rise time、痛み・代謝
呼吸が連続して重なる二重トリガー、breath stacking実測VT、吸気時間、呼吸drive、不同調

圧の変化の比較は、VT、PEEP、流量などの条件がそろっていることが前提です。PCVでは圧が固定されるため、同じ問題がVT低下として現れることがあります。波形だけで病名を確定せず、診察、画像、血液ガスを組み合わせます。[9] [10] [19]

同じ「ピーク圧38」でも意味は異なる

例えば、同じVT・PEEP・吸気流量のVCVで、以前はPpeak 28・Pplat 22だった患者が、Ppeak 38・Pplat 22になれば、抵抗成分の増加を考えます。

一方、Ppeak 38・Pplat 34なら、肺・胸郭の硬さや過膨張など、静的な圧の上昇も問題になります。この二つを「ピーク圧が高い」という一つの対応で扱わないことが、圧を読む意義です。これらは鑑別の考え方を示す架空の例です。[19]

13.不同調はトリガー・吸気時間・呼気移行から整理する

不同調(非同調)は、患者が吸いたい・吐きたいタイミングと、機械が送気・呼気移行するタイミングなどが合っていない状態です。

不同調何が起きているか主な確認点
無効努力吸おうとしても機械が反応しないauto-PEEP、トリガー、過補助、筋力低下
オートトリガー吸気努力がないのに作動するリーク、回路内の水、過敏なトリガー
流量不足吸いたい流量に送気が追いつかないVCVの流量、圧立ち上がり、呼吸drive
早すぎる呼気移行患者が吸っている途中で送気が終わるTi、呼気移行条件、二重トリガー
遅すぎる呼気移行患者が吐きたいのに送気が続くTi、呼気移行条件、リーク、閉塞性病態

吸気トリガー:数字の意味を確認する

圧トリガーなら、PEEPからどれだけ圧が低下したら作動するかを設定します。例えば−2から−1 cmH₂Oへ変えると、より小さな努力で作動する方向です。流量トリガーも、閾値を小さくすれば一般に反応しやすくなりますが、表示の方式は機種で確認します。

敏感すぎるとリークなどでオートトリガーし、鈍すぎると患者に余分な仕事をさせます。[9] [10]

Rise time:早すぎても遅すぎても合わない

時間で設定する方式では、短いほど目標圧に早く到達します。遅すぎると流量要求を満たせず、速すぎると圧のオーバーシュートや不快感につながることがあります。「設定値を上げる」だけでは機種によって意味が変わるため、立ち上がりを速くするのか遅くするのかを明確にします。[9]

PSVの呼気移行感度:数値を上げると吸気が短くなる

吸気ピーク流量の何%まで流量が下がったら吸気を終えるか、という設定では、

  • 25%から50%へ:より早く呼気へ切り替わる。
  • 25%から10%へ:より遅く呼気へ切り替わる。

という関係になります。COPDなどで吸気が長すぎる場合は、早めに呼気へ移行する調整が候補になります。大きなリークがあると流量が下がりにくく、Ti maxなどの制限も重要になります。[29]

不同調を認めたら、痛み、発熱、代謝性アシドーシス、気道・回路の問題、補助量を調べます。観察研究では、breath stackingに対して換気設定の調整が鎮痛鎮静の増量より不同調を改善した結果もあります。必要な鎮静は行いますが、鎮静不足だけを原因と決めつけません。[30]

14.アラームが鳴ったときは、患者の評価を優先する

まず患者を直接見て、意識、胸郭運動、SpO₂、血圧、脈拍、呼気CO₂を評価します。重い低酸素や循環不全があれば応援を呼び、酸素化・換気を確保しながら原因を調べます。

挿管患者の急変を整理する手がかりにDOPEがあります。

項目代表的な原因
D:Displacementチューブの位置ずれ、抜去、片肺挿管
O:Obstruction分泌物、チューブ屈曲、閉塞
P:Pneumothorax気胸、緊張性気胸
E:Equipment failure回路外れ、機器・ガス供給のトラブル

DOPEは完全な鑑別リストではありません。auto-PEEP、肺水腫の悪化、気管支攣縮、肺血栓塞栓症なども病態に応じて考えます。緊張性気胸を強く疑い循環が破綻している場合は、画像検査を待つことが適切とは限りません。[31]

高圧アラームでは閉塞・抵抗増大・コンプライアンス低下など、低圧・低VT・低分時換気量では回路外れ・リーク・低換気などを確認します。アラーム閾値を変更して音を止める前に、発生理由を確認します。機器障害などで換気できない場合は、訓練を受けた医療者が代替手段へ切り替えます。アラームのたびに回路を外すとPEEPを失うため、必要性を判断して行います。[9] [10]

15.加湿・人工気道・鎮痛鎮静も、人工呼吸管理の一部

人工気道では上気道による加温加湿が迂回されます。分泌物、回路抵抗、死腔、換気量などを考えて加温加湿器や人工鼻を選びます。低VT管理では、人工鼻などによる追加死腔がCO₂排出に影響する場合もあります。

チューブの位置・固定、カフ圧、口腔・皮膚の状態、分泌物排出、体位、栄養、早期離床も評価します。カフ圧は指で触った感覚だけで判断せず、圧計で確認します。[1] [9]

鎮痛鎮静では、痛みを評価し、必要な鎮痛を行ったうえで鎮静の深さを調整します。原則として浅い鎮静を目指しますが、重い低酸素、危険な不同調、筋弛緩が必要な時期などでは深い鎮静が必要な場合があります。

2025年SCCM更新は、浅い鎮静やせん妄軽減を特に重視する成人人工呼吸患者で、プロポフォールよりデクスメデトミジンを条件付きで提案しています。全例の薬剤選択を一つに固定する推奨ではなく、必要な鎮静深度、徐脈・血圧などで個別に判断します。[32] [33]

16.人工呼吸器からの離脱:SBTと抜管を分ける

人工呼吸器を開始したら、原疾患の改善、酸素化、循環、覚醒、自発呼吸の回復を毎日評価します。離脱は、単にSIMVの回数を少しずつ下げる操作ではありません。

SBTは少ない補助で呼吸を続けられるかを見る試験

SBT(自発呼吸トライアル)では、少ない補助または補助なしで、通常30~120分程度の自発呼吸を評価します。Tピースや低いPSなどの方法があります。

2024年AARC指針では、SBT開始にRSBI計算を必須とせず、SBTはPSあり・なしのいずれでも実施できるとしています。呼吸数だけでなく、呼吸のパターン、苦しさ、ガス交換、血圧・心拍の変化を見ます。[3]

SBTの合格と、抜管できることは同じではない

抜管前には、咳、痰を出す力、気道を守る力、上気道の開存などを別に評価します。呼吸筋が十分でも、痰を排出できなければ抜管後に悪化することがあります。

また、SBTを合格させるためにFiO₂を増やして低酸素を隠すことは推奨されません。これは低酸素時にも酸素を投与してはいけないという意味ではなく、試験を中止し、必要な補助へ戻す判断が必要ということです。[3]

抜管失敗のリスクが高い患者では、計画的な抜管直後のNIVなどを検討します。2026年ATS指針にも高リスク患者へのNIVの条件付き推奨があります。一方、抜管後にすでに成立した呼吸不全を漫然とNIVで引き延ばすことは別の問題で、再挿管が必要かを早期に判断します。[4] [5]

17.在宅人工呼吸器では、療養生活に合った安全な運用が必要

在宅では、神経筋疾患、慢性呼吸不全などの病態、夜間のみか終日か、マスクか気管切開かによって管理が異なります。救急・ICUの初期設定例を、そのまま在宅の設定へ移すことはできません。

処方された設定、使用する回路・マスク、加湿、アラーム、電源・バッテリー、停電や故障時の連絡先、必要な代替手段を、本人・家族・訪問看護・医療機関で共有します。呼気ポートや排気経路は機器の作動に必要な場合があり、マスクと回路の組み合わせを自己判断で変更しません。[9] [23]

慢性的な息切れ、夜間の呼吸の問題、在宅療養の相談は外来や訪問診療で扱います。急に息が苦しくなった、会話が続かない、唇が青い、意識が低下した、強い胸痛を伴う場合は、通常の予約を待たず119番などの緊急対応が必要です。

18.よくある質問

Q1.人工呼吸器と、睡眠時無呼吸症候群で使うCPAPは同じですか?

どちらも陽圧を使いますが、目的と補助の仕方が異なります。一般的な睡眠時無呼吸用CPAPは上気道を開存させることが中心で、必要な一回換気量や呼吸回数を代わりに確保する装置とは異なります。[4] [9]

Q2.PCVとVCVでは、どちらがよいのですか?

病態とチームの習熟度、評価したい項目により選びます。どちらでも肺保護が必要です。モード名だけで安全性や治療成績を決めることはできません。[13] [15]

Q3.SpO₂が正常なら、換気は十分ですか?

十分とは限りません。酸素を投与していると、CO₂が増えていてもSpO₂が保たれる場合があります。必要に応じて血液ガスや呼気CO₂を確認します。[6] [18]

Q4.PEEPを上げると、なぜ血圧が下がることがあるのですか?

胸腔内圧の上昇で静脈還流が減ったり、肺の過膨張で右心への負担が増えたりするためです。一方、左心不全の肺水腫では後負荷軽減などの利益もあるため、呼吸と循環の両方を見て調整します。[6]

Q5.人工呼吸器を一度使うと、外せなくなるのでしょうか?

そうとは限りません。原因が改善し、呼吸、循環、気道防御などの条件が整えば離脱・抜管を検討できます。一方、慢性の神経筋疾患などでは長期的な補助が必要な場合もあり、病態によって見通しは異なります。[3] [9]

姫路市で息切れ・心臓や肺の病気をご相談いただくには

えぷろんクリニックは、姫路市飾磨区の内科・循環器内科・呼吸器内科です。循環器と呼吸器の視点から症状を評価し、必要に応じて心電図、採血、心エコーなどの検査や専門医療機関との連携を行います。在宅診療のご相談にも対応しています。[34]

姫路市で息切れにお悩みの方、生活習慣病や心臓・肺の病気が心配な方は、えぷろんクリニックへご相談ください。症状や検査結果を確認しながら、必要に応じて適切な検査や専門医療機関との連携を行います。強い呼吸困難などの緊急症状があるときは、救急受診を優先してください。

参考文献・一次資料

各ガイドラインは作成時点の対象・比較条件に沿って引用しています。機器の動作は機種・ソフトウェアで異なります。図と計算例は本記事の説明用に作成したものです。

  1. VT・圧・PEEP・人工気道の評価AARC Clinical Practice Guideline: Patient-Ventilator Assessment2024
  2. モード分類Chatburn RL, et al. A taxonomy for mechanical ventilation: 10 fundamental maxims2014
  3. SBTと離脱AARC Clinical Practice Guideline: Spontaneous Breathing Trials for Liberation From Adult Mechanical Ventilation2024
  4. COPD・心原性肺水腫・抜管後NIVRochwerg B, et al. Official ERS/ATS clinical practice guidelines: noninvasive ventilation for acute respiratory failure2017
  5. 非侵襲的呼吸補助の更新Goel NN, Ferreyro BL, et al. Noninvasive respiratory support for adult patients with acute respiratory failure: an official ATS Clinical Practice Guideline2026
  6. 陽圧換気と循環・呼吸生理Alviar CL, et al. Positive Pressure Ventilation in the Cardiac Intensive Care Unit2018
  7. 酸素療法目標AARC Clinical Practice Guideline: Management of Adult Patients With Oxygen in the Acute Care Setting2022
  8. モードの動作Hamilton Medical. Ventilation modes comparison機器公式資料
  9. 圧表示・各種設定・回路Hamilton Medical. HAMILTON-C3 Operator’s Manual, SW v2.0.x2021
  10. PinspとPEEPの定義Dräger. Evita V800/V600 Instructions for Use, SW 1.n機器公式資料
  11. 自発努力と局所肺伸展Yoshida T, et al. Spontaneous effort causes occult pendelluft during mechanical ventilation2013
  12. ASVの動作Hamilton Medical. Adaptive Support Ventilation (ASV)機器公式資料
  13. MODE試験Seitz KP, et al. Effect of Ventilator Mode on Ventilator-Free Days in Critically Ill Adults: A Randomized Clinical Trial2025
  14. PBW・低VT・圧制限ATS/ESICM/SCCM Clinical Practice Guideline: Mechanical Ventilation in Adult Patients with ARDS2017
  15. ARDSNet肺保護プロトコルNHLBI / ARDS Network. ALTA Protocol, Ventilator Procedures2007
  16. ARDS管理・腹臥位・PEEPGrasselli G, et al. ESICM guidelines on ARDS: definition, phenotyping and respiratory support strategies2023
  17. 低VTの無作為化試験ARDS Network. Ventilation with Lower Tidal Volumes as Compared with Traditional Tidal Volumes for Acute Lung Injury and ARDS2000
  18. 閉塞性疾患・高CO₂性呼吸不全Davidson AC, et al. BTS/ICS guideline for the ventilatory management of acute hypercapnic respiratory failure in adults2016
  19. 静的な圧の測定Hamilton Medical. Measured values for Ppeak and Pplateau公式技術資料
  20. ΔPと転帰の関連Amato MBP, et al. Driving pressure and survival in the acute respiratory distress syndrome2015
  21. ΔP制限戦略の介入試験Maia IS, et al. Effect of a driving pressure-limiting strategy for patients with ARDS secondary to community-acquired pneumonia: the STAMINA randomised clinical trial2025
  22. 酸素化目標の無作為化試験Martin DS, et al. Conservative Oxygen Therapy in Mechanically Ventilated Critically Ill Adult Patients: The UK-ROX Randomized Clinical Trial2025
  23. IPAP・EPAP・PSNHS Lanarkshire. Non-Invasive Ventilation in Adults with Acute Hypercapnic Respiratory Failure公的診療プロトコル
  24. NIVの開始設定と評価NSW Agency for Clinical Innovation. Non-invasive ventilation for patients with acute respiratory failure2023
  25. NIVの初期値と再評価NHS Ayrshire & Arran. Non-Invasive Ventilation (NIV) Protocol in COPD公的診療プロトコル
  26. PEEP・筋弛緩・VV-ECMOQadir N, et al. An Update on Management of Adult Patients with ARDS: An Official ATS Clinical Practice Guideline2024
  27. PROSEVA試験Guérin C, et al. Prone Positioning in Severe Acute Respiratory Distress Syndrome2013
  28. 高圧recruitment複合戦略ART Investigators. Effect of Lung Recruitment and Titrated PEEP vs Low PEEP on Mortality in Patients With ARDS2017
  29. PSVの呼気移行Hamilton Medical. How to set expiratory trigger sensitivity (ETS)公式技術資料
  30. 不同調への対応の観察研究Chanques G, et al. Impact of ventilator adjustment and sedation-analgesia practices on severe asynchrony in patients ventilated in assist-control mode2013
  31. 急変時の鑑別University of Maryland School of Medicine. DOPE—deterioration in the intubated patient公式教育資料
  32. 鎮痛・鎮静SCCM. PADIS Guidelines for Adult Patients in the ICU2018
  33. 鎮静薬選択の更新SCCM. A Focused Update to PADIS Guidelines for Adult Patients2025
  34. 診療案内・連携体制えぷろんクリニック公式サイト2026-10-17確認