期外収縮とは?
― 健診で言われた「脈がとぶ」 ―

第19回 で「とぶタイプ」としてご紹介した不整脈、期外収縮(きがいしゅうしゅく)。健診の心電図でこの名前を書かれて、どきっとした方も多いのではないでしょうか。
前回の 第21回(心房細動)は「症状がなくても大切な不整脈」でした。今回はちょうどその反対側、「症状があっても、心配のいらないことが多い不整脈」です。期外収縮とはどんなもので、どんなときに調べたほうがよいのか。そのお話をします。

えぷろんクリニック 松尾院長の弟子、ドクター・エプ子です。

このブログでは、診察室では時間が足りなくてお伝えしきれないことを、できるだけ専門用語を使わず、ゆっくりお話ししていきます。どうぞお気軽にお付き合いください。

01「早く出て、そのあと間があく」脈

第19回でお話ししたとおり、心臓は 洞結節(どうけっせつ)という“指揮者” がつくる電気のリズムにあわせて、規則正しく動いています。期外収縮とは、この指揮とは別のところから電気が出て、予定より早いタイミングで、脈が1回出てしまうことです。

早く出たぶん、次の脈までは いつもより間があきます。そのあとは、また元のリズムに戻ります。

正常な脈と期外収縮を比べた図。期外収縮では脈が予定より早く出てそのあと間があき、早く出た脈は弱くてふれにくく「脈がとんだ」と感じ、間のあとの脈は強くふれて「ドンとした」と感じる
図1 期外収縮では、脈が予定より早く出て、そのあと間があきます。早く出た脈は弱く、間のあとの脈は強く感じられます

なぜ「とんだ」「ドン」と感じるの?

早く出た脈は、心臓に血液が十分にたまる前に打つため、弱い脈になります。手首ではふれにくく、「脈がとんだ」「一瞬止まった」と感じます。

反対に、間があいたあとの脈は、そのあいだにたっぷりたまった血液を送り出すので、いつもより強く打ちます。これが 「胸がドンとした」「どきっとした」という感覚です。つまり感じているのは、多くの場合、とんだ脈そのものより、そのあとの強い一拍なのです。

期外収縮は、心臓が止まったわけではありません。早く出た脈が弱かっただけで、心臓はきちんと動き続けています。

02出てくる場所で、2つに分かれます

早く出る電気がどこで生まれるかによって、心房期外収縮 と 心室期外収縮 に分けられます。

期外収縮が出る場所を示した心臓の図。ふだんは洞結節から電気の通り道を伝わるが、心房から早く出るものが心房期外収縮、心室から早く出るものが心室期外収縮
図2 ふだんは洞結節から電気が伝わります。期外収縮は、それとは別の場所から電気が早く出てしまう状態で、心房から出るものと心室から出るものがあります
心房期外収縮心房(心臓の上の部屋)から出るもの。健康な方にもよく見られます。健診の結果には 「上室期外収縮」 と書かれることもあります。数が多い場合は、心房細動のきっかけになることがあるため、経過を見ていくことがあります。
心室期外収縮心室(心臓の下の部屋)から出るもの。こちらも健康な方にごくふつうに見られますが、心臓の病気が隠れていないかを確かめておくことが大切なタイプです。今回は、おもにこちらのお話をします。

「自分はどちらだろう」と気にしすぎる必要はありません。見分けるのは心電図の仕事です。どちらなのか、どう考えればよいのかは、医師がお伝えします。

03どんなときに出やすく、どう感じるの?

出やすくなるきっかけ

期外収縮は年齢とともに増えていくほか、次のようなことがきっかけで出やすくなります。

  • 寝不足、疲れ
  • ストレスや緊張
  • コーヒーなど カフェインのとりすぎ
  • お酒の飲みすぎ、喫煙
  • かぜ薬など、一部の市販薬
  • 甲状腺のはたらきの異常、血液の成分(カリウムなど)のかたより
  • 高血圧 や 心臓の病気

感じかたは、人それぞれ

まったく何も感じず、健診ではじめて指摘される方 が少なくありません。一方で、「脈がとぶ」「胸がドンとする」のほかに、「のどがつまる感じがする」「思わず咳ばらいが出る」 と表現される方もいます。夜、横になって静かにしているときや、ほっとひと息ついたときに気づきやすいのも特徴です。

第19回でお話しした 「症状の強さと、病気の重さは一致しない」。前回の心房細動は「症状がなくても大切」な例でしたが、期外収縮はその反対 ―― 症状がはっきりしていても、心配のいらないことが多い不整脈です。

家庭の血圧計に「脈の乱れ」の表示が出たら

家庭の血圧計が脈の乱れを知らせてくれて、期外収縮に気づく方もいます。また、早く出た弱い脈を機械が数えきれず、脈拍数がふだんよりずっと少なく表示されることがあります。ただし、本当に脈が遅くなる不整脈もあるので、どちらなのかを自分で決めつけず、ご相談ください。

気づくきっかけとしては役立ちますが、どんな不整脈かを確かめるのは医療機関の心電図です。表示が出たときの記録が残っていれば、受診時にお持ちください。

04健診で「期外収縮」と言われたら

健診の心電図は、ほんの短い時間の記録です。そこに たまたま期外収縮が写った、ということもよくあります。指摘されたこと自体は、めずらしいことではありません。

大切なのは、それが 心配のいらないものか、くわしく調べたほうがよいものか を見きわめることです。手がかりになるのは、数、出かた、出るタイミング、ほかの症状、そして心臓そのものの状態 です。

期外収縮で心配のいらないことが多いときと、くわしく調べたほうがよいときを並べた図。どちらにあたるかは診察と検査をもとに医師が判断する
図3 見きわめの手がかり。左側の多くは検査をしてはじめて分かることなので、どちらにあたるかは医師が判断します

図の左側の多くは、検査で確かめてはじめて分かること です。「症状がないから」「前にも言われたから」というだけでは、どちらとも言えません。

次のようなときは、「どうせ期外収縮だから」と自己判断せず、早めに受診してください。

・脈のとぶ感じと一緒に、意識が遠のく・ふらつく
・運動中や体を動かしたときに増える
・とぶ感じが 続けて起こる、ドキドキが続く
・心筋梗塞・心不全・弁膜症など、心臓の病気を言われたことがある
・ご家族に、若くして突然亡くなった方がいる

とくに 意識を失った・失いかけた ときは、第19回でお話しした「急いだほうがよいサイン」にあたります。救急要請をためらわなくてよい場面です。

05どんな検査をするの?

期外収縮を調べるときは、「どんな期外収縮か」 と 「どんな心臓か」 の両方を確かめます。

心電図期外収縮が心房から出ているか、心室から出ているか。心臓のほかの病気のサインがないかも見ます。
ホルター心電図長い時間記録して、一日にどれくらい出ているか、続けて出ていないか、どんな時間帯に多いか を調べます。症状を感じたときの記録とも照らし合わせます(第20回)。
心エコー図検査超音波で心臓を直接観察し、心臓の動き、弁、壁の厚さなどに問題がないか を確かめます(第6回)。
血液検査甲状腺のはたらきや、カリウムなど血液の成分に、期外収縮を出やすくするかたよりがないかを見ます。
運動負荷心電図体を動かしながら記録し、運動で増えるか、減るか を見ます。必要なときに行います。

数が多いと、なぜ調べるの?

心臓に病気のない方でも、期外収縮がとても多い状態が長く続くと、まれに心臓のポンプのはたらきが落ちてくる ことがあります。そのため、ホルター心電図で 数 を、心エコー図検査で 心臓の状態 を確かめておくのです。この場合は、期外収縮を減らす治療によって、心臓のはたらきの回復が期待できることがあります。

「どれくらいの数なら大丈夫」という線は、心臓の状態や症状とあわせて判断 します。数だけで決まるものではないので、結果は主治医と一緒にご確認ください。

06治療は必要なの?

調べてみて 心臓に病気がなく、数も多くなければ、多くの場合は治療がいりません。そうした期外収縮そのものが命にかかわることは、ほとんどないからです。

「治療しなくていい」と聞くと、かえって不安になる方もいます。けれどこれは 放っておく という意味ではなく、「調べたうえで、心配のいらないものと分かった」 という意味です。

症状がつらいとき、数がとても多いとき、心臓のはたらきに影響が出ているときは、次のように段階をふんで考えます。

  1. 生活を見直す

    03で挙げたきっかけのうち、減らせるものを減らします。これだけで症状が軽くなる方も少なくありません。

  2. お薬を使う

    期外収縮を出にくくするお薬 や、心臓の負担を減らして脈を落ち着かせるお薬 を使うことがあります。心臓の状態によって、使えるお薬・使わないほうがよいお薬が違う ため、選ぶのは主治医です。

  3. カテーテルで処置をする

    お薬で効果が不十分なときや、お薬を続けにくいときなどに、期外収縮が出てくる場所に、カテーテルで処置をする方法 が検討されることがあります。行うかどうかは、治療を行う専門の病院で、患者さんごとの背景をふまえて決まります。くわしくは第24回でお話しします。

また、心臓の病気が見つかった場合は、まずその病気の治療 が優先されます。期外収縮は、その病気を知らせてくれたサインだった、ということもあるのです。

お薬を始めたら、自己判断でやめたり、量を変えたりしないでください。ご家族や知人が飲んでいる「脈のお薬」を分けてもらうのも危険です。同じ期外収縮でも、心臓の状態によって合うお薬はまったく違います。やめたくなったとき、飲み忘れが続いたときは、その前にご相談ください。

07期外収縮と、上手に付き合うために

心配のいらない期外収縮と分かったら、あとは 出にくい毎日 をつくっていきましょう。

  • しっかり眠る ― 寝不足は、いちばん身近なきっかけです
  • コーヒーやお茶、エナジードリンクを とりすぎない ― 全部やめる必要はありません。多いと感じたら、少し減らしてみましょう
  • お酒を控える、禁煙する
  • 疲れやストレスをためこまない
  • 市販のかぜ薬や鼻炎薬を買うときは、薬局で「期外収縮がある」と伝える

そしてもうひとつ。期外収縮は、気にすればするほど、気づきやすくなる ものです。何度も脈にふれて確かめているうちに不安がつのり、さらに気になってしまう ―― そんな悪循環に入ってしまう方もいます。「調べて、心配のいらないものと分かっている」こと自体が、いちばんの安心材料 になります。

当院でできること

えぷろんクリニック(兵庫県姫路市)では、心電図・24時間ホルター心電図・心エコー図検査・血液検査 を院内で行っています。「どんな期外収縮か」と「どんな心臓か」の両方を、当院で確かめることができます。

運動負荷心電図やカテーテルによる治療が必要なときは、行っている専門の施設へご紹介します。検査の結果、心配のいらないものと分かれば、「なぜ心配いらないのか」まで しっかりご説明します。健診で指摘されたまま気になっている方も、どうぞお気軽にご相談ください。

08最後に ― 「心配いらない」を、確かめてから

前回の心房細動は「症状がなくても、大切な不整脈」。今回の期外収縮は「症状があっても、心配のいらないことが多い不整脈」。正反対に見えますが、お伝えしたいことは同じです。症状だけで、ご自分で決めないこと。

期外収縮の多くは、心配のいらないものです。けれど 「心配いらない」と言えるのは、一度きちんと調べてから。健診で指摘されたら、「よくあるものらしいから」で終わらせず、一度ご相談ください。安心して付き合っていくための、いちばんの近道です。

※ 期外収縮をふくむ不整脈の診断や治療の考え方については、日本循環器学会のガイドライン(専門家向け)でも公開されています。より詳しく知りたい方は、あわせてご参照ください。

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当院について

えぷろんクリニックは、姫路市飾磨区にある循環器内科・呼吸器内科・内科のクリニックです。これまで地域に親しまれてきた「田中クリニック」の理念を引き継ぎ、2025年12月より新たな名前で診療を続けています。

  • 循環器専門医と呼吸器専門医の両方が在籍し、息切れや胸の症状の原因を総合的に診断します
  • 院内に心エコー図・心電図・血液検査・呼吸機能検査などを備え、必要な初期検査を当日に行えます
  • 兵庫県立はりま姫路総合医療センター・姫路医療センターなどと連携し、入院・手術や精密検査が必要な場合もスムーズにご紹介します
  • 院長は兵庫県立はりま姫路総合医療センターでも診療を行っており、心不全外来・地域連携にも携わっています
  • 在宅酸素・人工呼吸器対応や終末期ケアを通じて、ご自宅での療養も支えています

診療理念

「心に寄り添い、信頼される医療の提供」

医学的根拠に基づいた正確な医療を提供しつつ、患者さまとの信頼関係を大切にした診療を行っています。患者さまと丁寧に向き合い、納得いただける治療方針を共に考え、地域の皆さまにとって 「いつでも相談できる、安心できる存在」 となれるよう努めています。