ホルター心電図とは?
― 脈の乱れを「つかまえる」検査 ―

前回(第19回)で、不整脈は 「そのとき出ている脈の乱れを、記録でとらえること」 が大切だとお話ししました。今回は、その 記録のしかた のお話です。
診察室でとる心電図と、体につけたまま長く記録する検査 ―― ホルター心電図とは どんな検査なのか、何が分かって何が分からないのか、そして「心電図では異常なし」と言われたあとにどうすればよいのかを、やさしくお話しします。

えぷろんクリニック 松尾院長の弟子、ドクター・エプ子です。

このブログでは、診察室では時間が足りなくてお伝えしきれないことを、できるだけ専門用語を使わず、ゆっくりお話ししていきます。どうぞお気軽にお付き合いください。

01まずは、診察室の心電図から

健診でもおなじみの検査です。ベッドに横になって、胸と手足に電極をつけ、数分で終わります。痛みはなく、体に電気を流すこともありません。心臓が出しているごく小さな電気を、体の表面から 受け取っているだけ です。

短い検査ですが、分かることはたくさんあります。そのときの 脈のリズムと速さ、電気の伝わり方の異常、心臓に負担がかかっている様子、そして 過去に心筋梗塞を起こした跡 ―― こうしたものが読み取れます。いろいろな方向から心臓を眺めるので、「どのあたりで起きているか」の見当もつきます。

ただし、ひとつだけ、どうにもならない弱点があります。記録しているのは、検査をしている数分間だけだということです。

「心電図では異常ありませんでした」―― これは 「検査をした数分間には、異常が出ていませんでした」 という意味です。病気がない、という意味ではありません。とくに不整脈は出たり出なかったりするので、ここを取り違えないことが大切です。

02だから、つけたまま記録します

そこで登場するのが ホルター心電図 です。小さな記録器を身につけて、ふだんどおりに生活しながら、長い時間の心電図を記録し続ける検査です。

診察室の心電図とホルター心電図を比べた図。左は胸と手足に電極をつけて数分で終わる心電図、右は小さな記録器を身につけたまま、ふだんの生活のなかで記録し続けるホルター心電図
図1 診察室の心電図は、電極をつけて数分で終わります(左)。ホルター心電図は、小さな記録器を身につけたまま、ふだんの生活のなかで記録し続けます(右)

仕事をしていても、家事をしていても、眠っていても記録は続きます。「症状が出たそのとき」の心臓を、そのまま写しとれるのが、この検査のいちばんの強みです。診察室では決してつかまえられない、夜中の脈の乱れも記録できます。

分かるのは、脈の乱れの正体だけではありません。1日のうちどの時間帯に多いのか、どれくらいの数が出ているのか、症状と本当に一致しているのか ―― こうしたことが分かって、はじめて「治療が必要か、様子をみてよいか」の判断ができます。

03どれくらいの期間、記録するの?

いちばん多いのは 約1日(24時間) 記録するタイプです。近年は、数日から2週間ほど記録し続けられるタイプ も使われるようになってきました。保険のうえでは、どちらも 同じ「ホルター型心電図検査」として扱われます。長く記録するから特別な検査になる、というわけではありません。

では、長く記録できるほうが良いのでしょうか。そうとは限りません。大事なのは、症状がどれくらいの頻度で起きているか です。

2週間の時間軸で、症状の起こる回数と記録期間の関係を示した図。症状がほぼ毎日あるときは1日の記録でつかまえられ、数日から数週間に1回のときはもっと長く記録する必要があることを示している
図2 症状がほぼ毎日あるなら、1日の記録でつかまえられます(①)。数日〜数週間に1回のときは、もっと長く記録する必要が出てきます(②)

毎日のように症状があるなら、1日の記録で十分つかまえられます。反対に、月に1回しか起きない症状は、2週間記録しても写らないかもしれません。「どれくらい記録するか」は、症状の起こりかたを聞いたうえで決めるものなのです。

ですから、診察のときに 「どれくらいの頻度で、どんなときに起こるか」 をお聞かせいただけると、とても助かります。「週に2〜3回」「朝起きたときが多い」―― その一言で、選ぶ検査が変わることがあります。

どのタイプの機器を置いているかは 施設によって異なります。長く記録するタイプが必要そうなときは、扱っている施設へご紹介します。当院(えぷろんクリニック)で行っているのは、約1日(24時間)記録するタイプです。

04受けるときは、こんな感じです

  1. 電極をつけて、そのまま帰ります

    胸に電極を貼り、記録器を身につけます。装着は短時間で終わります。入院は必要ありません。そのままお帰りいただき、ふだんどおりに過ごしてください。「いつもと違う一日」を過ごしてしまうと、ふだんの脈が記録できなくなります。

  2. 症状があったら、記録に残します

    ★ここがとても大切です。症状が出た時刻をメモし、機器にボタンがあれば押してください。あとで 「そのとき、心臓で何が起きていたか」 を突き合わせられます。「ドキドキした」「めまいがした」だけでなく、「階段をのぼったとき」「横になったとき」 といった状況も書いておくと、判断の助けになります。

  3. 翌日(または期間の終わりに)お返しいただきます

    機器を外してお返しいただき、記録を解析します。結果が出るまでには少しお時間をいただきます。

  4. 結果をご説明します

    記録された脈の乱れの種類、数、時間帯、そして 症状との対応 を確認し、治療が必要かどうかを一緒に考えます。

入浴やシャワーはどうなるの?

よくいただくご質問です。答えは 「機器によって異なります」。従来のタイプは入浴できないことが多い一方、防水になっていて条件つきで入浴やシャワーができる機器もあります。受ける施設の説明にしたがってください。ご心配なときは、装着の前に遠慮なくお尋ねください。

記録の途中で 電極がはがれてしまうと、その間の記録が残りません。強くこすったり、汗を大量にかいたりするとはがれやすくなります。はがれてしまったときや、機器の様子がおかしいときは、ご自分で貼り直そうとせず、検査を受けた施設にご連絡ください。また、貼った部分がかゆくなったり赤くなったりしたときも、お知らせください。

05それでも見つからなかったときは

ホルター心電図をつけた日に限って、症状が出ない ―― じつは、めずらしくありません。がっかりされる方も多いのですが、ここで終わりではありません。

もっと長く記録する数日から2週間ほど記録できるタイプに切り替える方法です。症状が数日〜数週間に1回のときに向いています。
症状のときに、自分で記録する携帯できる小さな記録器を持ち帰り、症状が出たときにご自分で当てて記録する方法です。症状がはっきり自覚できる方に向いています。
体の中に記録計を入れる皮下に小さな記録計を入れて、長期間記録し続ける方法です。ただし 使える場面ははっきり決まっており、くり返す失神の原因が調べても分からないときなど、限られた場合に 専門の施設で検討 されます。

どこまで調べるかは、症状の重さと、危険なタイプの不整脈が疑われるかどうか によって変わります。とくに 意識を失ったことがある方 は、原因をはっきりさせる意味が大きくなります。

もうひとつ大切な検査 ― 心臓そのものを診る

不整脈が見つかったとき、「その背景に、心臓の病気が隠れていないか」 を確かめることが、同じくらい大切です。同じ脈の乱れでも、心臓そのものが元気な方と、弁膜症や心筋梗塞のある方とでは、意味がまったく変わってくるからです。

そこで役に立つのが 心エコー図検査(第6回)です。超音波で心臓の動き・弁のはたらき・心臓の大きさを、痛みなく直接見ることができます。ホルター心電図とあわせて行うことで、「どんな不整脈か」と「どんな心臓か」の両方が分かります。

06当院でできること

「どんな不整脈か」と「どんな心臓か」を、まとめて調べられます

えぷろんクリニック(兵庫県姫路市)では、心電図・24時間ホルター心電図・心エコー図検査・血液検査を院内で行っています。健診で不整脈を指摘された方、動悸やめまいが気になる方の 最初のひととおりの検査は、当院で完結できます。

そのうえで、もっと長く記録する必要があるときや、専門的な治療が必要そうなときは、扱っている施設・専門の病院へご紹介します。院長は循環器を専門とし、兵庫県立はりま姫路総合医療センターでも診療に携わっていますので、病院との連携もスムーズです。

07最後に ― 「異常なし」で終わらせないために

「心電図は異常ありませんでした」と言われて、それでも症状が続いている。そんなとき、「気のせいだったのかな」と自分を納得させてしまう方がいらっしゃいます。

けれども、ここまでお話ししたとおり、心電図に写らなかったことと、何も起きていないことは、別のことです。症状があるなら、それをつかまえる方法はまだあります。「いつ、どんなときに、どれくらいの頻度で」―― そのお話を聞かせていただくところから、次の一手が決まります。どうぞ、あきらめずにご相談ください。

※ 不整脈の診断とリスク評価の考え方については、日本循環器学会のガイドライン(専門家向け)でも公開されています。より詳しく知りたい方は、あわせてご参照ください。

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CLINIC INFORMATION

当院について

えぷろんクリニックは、姫路市飾磨区にある循環器内科・呼吸器内科・内科のクリニックです。これまで地域に親しまれてきた「田中クリニック」の理念を引き継ぎ、2025年12月より新たな名前で診療を続けています。

  • 循環器専門医と呼吸器専門医の両方が在籍し、息切れや胸の症状の原因を総合的に診断します
  • 院内に心エコー図・心電図・血液検査・呼吸機能検査などを備え、必要な初期検査を当日に行えます
  • 兵庫県立はりま姫路総合医療センター・姫路医療センターなどと連携し、入院・手術や精密検査が必要な場合もスムーズにご紹介します
  • 院長は兵庫県立はりま姫路総合医療センターでも診療を行っており、心不全外来・地域連携にも携わっています
  • 在宅酸素・人工呼吸器対応や終末期ケアを通じて、ご自宅での療養も支えています

診療理念

「心に寄り添い、信頼される医療の提供」

医学的根拠に基づいた正確な医療を提供しつつ、患者さまとの信頼関係を大切にした診療を行っています。患者さまと丁寧に向き合い、納得いただける治療方針を共に考え、地域の皆さまにとって 「いつでも相談できる、安心できる存在」 となれるよう努めています。