経食道心エコー図検査ってどんな検査?
― 「のどから」見る、もうひとつのエコー ―
「経食道(けいしょくどう)の心エコーを受けましょう、と言われた」
「のどから管を入れると聞いて、少し怖い……」
「ふつうの心エコーとは何が違うの?」
――前回(第6回)は、胸に当てて受ける身近な心エコー図検査のお話でした。今回は、それと対になる「経食道心エコー図検査」について。勧められて不安に感じている方に向けて、やさしくお話しします。
01経食道心エコー図検査って、どんな検査?
経食道心エコー図検査(けいしょくどう しんエコーずけんさ) は、口から細い管を入れて、その先端についた小さな超音波の機器(プローブ)で 心臓を「裏側」から観察する検査です。英語の頭文字をとって TEE(ティーイーイー) とも呼ばれます。
前回お話しした、胸の上からプローブを当てる検査は、正しくは 「経胸壁(けいきょうへき)心エコー図検査」 といいます。一般に「心エコー」「心エコー図」と呼ばれるのは、こちらのことです。
この2つは、同じ超音波の検査でも、心臓を「見る場所」が違うのです。
02なぜ、わざわざ「食道」から見るの?
口から管を入れると聞くと、「どうしてそんなことをするの?」と思われるかもしれません。理由は、食道が心臓のすぐ裏側を通っているからです。
胸の外から見る経胸壁の検査では、超音波が 胸の骨や肺(空気)に邪魔されて、心臓の奥のほうがよく見えないことがあります。一方、食道の中からなら、心臓との間に骨も肺もありません。心臓のすぐ裏から、さえぎるものなしに、くっきりと観察できるのです。
たとえるなら、分厚いカーテン越しに部屋を見る(経胸壁)のと、隣の部屋からドア一枚で見る(経食道)の違いです。経食道のほうが、ずっと近くで細かいところまで見えます。
特に、こんなときに力を発揮します
- 心臓の中の血のかたまり(血栓)を探すとき:特に心房細動のある方で、左心房の隅にできる血栓は、経食道でないと見つけにくいことがあります。これまでの弁膜症シリーズでも登場した、脳梗塞の予防に関わる大切な確認です。
- 弁膜症をより詳しく調べるとき:弁の逆流や傷み具合を、より細かく評価したいとき。
- 弁膜症の手術やカテーテル治療の前後:治療の方針を決めるため、また治療中・治療後の確認のために行われます。
- 感染や腫瘍が疑われるとき:弁に細菌のかたまりが付く感染(感染性心内膜炎)などを詳しく調べるとき。
つまり経食道心エコー図検査は、経胸壁の検査では見えにくい部分を、さらに詳しく確かめるための検査です。勧められたということは、「より正確に診断するために、しっかり見ておきましょう」ということなのです。
03実際どうやるの? ― 痛くない? 苦しくない?
いちばん気になるのが、「のどから管を入れる」という部分だと思います。検査の流れに沿って、できるだけ具体的にお話しします。
検査の流れ
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のどに麻酔をします
のどの感覚を鈍くするため、スプレーやゼリーで のどの局所麻酔 をします。これで管が通るときの不快感をやわらげます。
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横向きに寝て、マウスピースをくわえます
ベッドに横向きに寝ます。歯と管を守るためのマウスピースを、軽くくわえます。
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管をゆっくり飲み込みます
合図に合わせて、ごくんと飲み込むようにすると、管がスムーズに入ります。胃カメラを受けたことのある方は、それに近い感覚です。
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心臓を観察します
管の先のプローブで、心臓をいろいろな角度から観察します。検査自体は、目的によって 15〜60分ほどかかります(血栓を探すだけなら短く、弁膜症を詳しく調べる場合は長くなります)。
麻酔と鎮静について
「眠っている間に終わる」と聞いたことがある方も、「起きたまま受けた」という方もいて、戸惑われるかもしれません。これは 施設によってやり方が違うためです。
- のどの局所麻酔だけで受ける方法:意識ははっきりしたまま受けます。
- 静脈注射の鎮静剤を併用する方法:点滴から眠くなるお薬を使い、うとうとした状態で受けます。検査の記憶がほとんど残らないこともあります。
どちらの方法をとるかは、検査を受ける病院の方針や、患者さんの状態によって決まります。不安な場合は「眠った状態で受けられますか?」と、事前に確認しておくとよいでしょう。
よくあるご質問
のどの麻酔でやわらげます
管が通るとき、一時的にえずく感じがあることがありますが、のどの麻酔でやわらげます。鎮静剤を使う場合は、ほとんど気づかないうちに終わることもあります。
目的により15〜60分
検査の目的によって幅があり、血栓を探す場合は15分ほど、弁膜症を詳しく調べる場合は60分ほどかかることもあります。鎮静剤を使った場合は、検査後に休む時間も加わります。
多くは日帰りで可能
多くの場合は日帰りで受けられますが、これも病院によって異なります。受ける病院の案内に従ってください。
入れ方は似ています
管を飲み込む点は胃カメラに似ていますが、目的は胃ではなく 心臓を見ること。管の先についているのはカメラではなく超音波の機器です。
04検査の前後で気をつけること
経食道心エコー図検査は、前回の経胸壁の検査と違って、いくつか準備と注意が必要です。代表的なものをまとめます。
| 検査前の絶食 | 胃の中が空になっているよう、検査前の 数時間は食事を控えるのが一般的です(時間は病院の指示によります)。 |
|---|---|
| 検査後の飲食 | のどの麻酔が効いている間は、むせたり誤って気管に入ったりしやすいため、麻酔が切れるまで1時間ほどは飲食を控えます。最初は少量の水で、むせないか確かめてからにしましょう。 |
| 当日の運転 | 鎮静剤を使った場合は、その日は車・バイク・自転車の運転を避けます。公共交通機関や、ご家族の送迎をご利用ください。 |
| お薬 | ふだんのお薬の扱い(特に血液をサラサラにするお薬や糖尿病のお薬)は、病院から指示があります。指示に従ってください。 |
いちばん大切なこと ― 受ける病院の指示に従う
ここに書いた内容は、あくまで 一般的な目安です。絶食の時間、お薬の調整、検査後の過ごし方などは、施設によって細かく異なります。
検査を受ける病院から渡される説明書や、スタッフからの案内が、その方にとっていちばん正確で大切な情報です。最終的には、必ず検査を受ける病院の指示に従ってください。
05当院で勧められたら ― 専門病院へのご紹介
当院(兵庫県姫路市・えぷろんクリニック)では、胸の上から行う経胸壁の心エコー図検査を院内で実施しています。まずはこの検査で、心臓の状態を詳しく確認します。
そのうえで、より詳しい評価のために経食道心エコー図検査が必要と判断した場合は、連携する専門病院へご紹介します。特に 兵庫県立はりま姫路総合医療センター(はり姫) をはじめとする地域の病院と連携し、スムーズに検査を受けていただけるよう橋渡しをしています。
「経食道の検査を勧められた」ということは、決して大げさなことではなく、あなたの心臓をより正確に診るための、前向きな一歩です。不安なことは、紹介元の当院でも、紹介先の病院でも、遠慮なくお尋ねください。
06最後に ― 「のどから」を、こわがりすぎないで
のどから管を入れる、と聞くと身構えてしまいますが、経食道心エコー図検査は、のどの麻酔や鎮静のもとで、多くの方が無事に受けている、確立された検査です。そして、経胸壁の検査では見えにくい部分まで、しっかり確かめられる頼もしい検査でもあります。
大切なのは、なぜその検査が必要なのかを理解して、納得して受けること。そして、検査前後の注意は、受ける病院の指示をしっかり守ることです。
当院では、検査の前の段階のご相談から、検査が必要になったときの専門病院へのご紹介まで、患者さんが安心して次の一歩を踏み出せるよう、丁寧にお手伝いします。気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
この記事は検査の一般的な流れをご紹介するものです。実際の準備・注意点は施設によって異なりますので、必ず検査を受ける病院の説明と指示に従ってください。
えぷろんクリニックのご案内
当院について
えぷろんクリニックは、姫路市飾磨区にある循環器内科・呼吸器内科・内科のクリニックです。これまで地域に親しまれてきた「田中クリニック」の理念を引き継ぎ、2025年12月より新たな名前で診療を続けています。
- 循環器専門医と呼吸器専門医の両方が在籍し、息切れや動悸の原因を総合的に診断します
- 院内に心エコー図・心電図・血液検査・呼吸機能検査などを備え、必要な初期検査を当日に行えます
- 兵庫県立はりま姫路総合医療センター・姫路医療センターなどと連携し、入院・手術や精密検査が必要な場合もスムーズにご紹介します
- 院長は兵庫県立はりま姫路総合医療センターでも診療を行っており、心不全外来・地域連携にも携わっています
- 在宅酸素・人工呼吸器対応や終末期ケアを通じて、ご自宅での療養も支えています
診療理念
「心に寄り添い、信頼される医療の提供」
医学的根拠に基づいた正確な医療を提供しつつ、患者さまとの信頼関係を大切にした診療を行っています。患者さまと丁寧に向き合い、納得いただける治療方針を共に考え、地域の皆さまにとって 「いつでも相談できる、安心できる存在」 となれるよう努めています。