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僧帽弁閉鎖不全症(逆流症)ってどんな病気?|心臓の中で起こる血液の逆流

僧帽弁閉鎖不全症(逆流症)ってどんな病気?
― 心臓の中で起こる「血液の逆流」 ―

「健診で心雑音を指摘された」
「心エコーで“弁から血液が漏れている”と言われた」
そんな診断でよく見つかるのが、僧帽弁閉鎖不全症(逆流症)です。今回は、その仕組みから治療までをやさしく解説します。

えぷろんクリニック 松尾院長の弟子、ドクター・エプ子です。

このブログでは、診察室では時間が足りなくてお伝えしきれないことを、できるだけ専門用語を使わず、ゆっくりお話ししていきます。どうぞお気軽にお付き合いください。

01僧帽弁って、どこにあるの?

心臓には4つの「弁(ドア)」があります。そのうち、左心房と左心室の間にあるドア僧帽弁(そうぼうべん) です。名前は、その形がカトリック司教の被る帽子(僧帽)に似ていることに由来します。

僧帽弁は、左心房から左心室へ血液が流れ込むときに開き、左心室が縮んで全身に血液を押し出すときには ピシャリと閉じて、血液が左心房に逆戻りしないように しています。

この僧帽弁が しっかり閉まらなくなり、血液が左心室から左心房へ逆流してしまう 病気が、僧帽弁閉鎖不全症(へいさふぜんしょう)、別名 僧帽弁逆流症 です。どちらも同じ病気を指す言葉です。

正常な僧帽弁と僧帽弁閉鎖不全症の比較図
図1 正常な僧帽弁(左)と僧帽弁閉鎖不全症(右)。閉まりが悪く、血液が左心房に戻ります

僧帽弁閉鎖不全症は、大動脈弁狭窄症に次いで日本人に多い弁膜症です。逆流の量が少なければ問題ありませんが、量が多くなると心臓に負担がかかり、治療が必要になります。

02なぜ起こるの? ― 大きく分けて2つの原因

僧帽弁閉鎖不全症の原因は、大きく分けると2つのタイプがあります。

僧帽弁閉鎖不全症の一次性と二次性の違いを示す図
図2 一次性は「弁そのものの問題」、二次性は「心臓全体の問題で起こる」

一次性と二次性では治療の考え方が変わってきます。それぞれの詳しい治療については、また別の機会にお話しする予定です。

03症状 ― 気づかれにくい病気です

僧帽弁閉鎖不全症の特徴は、長い間、ほとんど症状が出ない ことです。逆流が少しずつ増えても、心臓は頑張って働き続けるため、本人は気づきにくいのです。

逆流が多くなり、心臓が疲れてくると、次のような症状が現れます。

僧帽弁閉鎖不全症で見られる代表的な症状の図
図3 僧帽弁閉鎖不全症で見られる代表的な症状

「最近、坂道で息が切れるようになった」「夜中に咳で目が覚める」――こうした変化は、何となく年齢のせいと思われがちですが、心臓からのサインかもしれません。健診で心雑音を指摘された経験のある方は、特に気をつけてください。

04どんな検査をするの?

第1回・第2回でもお話しした通り、弁膜症の診断の中心は 心エコー図検査 です。僧帽弁閉鎖不全症の場合、この検査で以下のことが分かります。

  • 逆流の有無と量:どれくらい血液が漏れているか(軽症・中等症・重症の判定)
  • 弁の状態:弁のどこに異常があるか、原因が一次性か二次性か
  • 心臓の大きさ:左心房や左心室がどれくらい拡大しているか
  • 心臓のポンプ機能:心臓全体の働きに影響が出ていないか

そのほか、必要に応じて 心電図・胸部レントゲン・血液検査・経食道心エコー・心臓CT などを組み合わせます。特に治療を考える段階では、より詳しい情報を得るために 経食道心エコー(口から細い管状の超音波装置を入れる検査)を行うことがあります。

05治療の選択肢

治療は、逆流の重症度・症状の有無・心臓への負担 などを総合して決めます。

① 経過観察 軽症〜中等症で症状がない場合。半年〜1年に1回の心エコー図で慎重にフォローします。
② お薬による治療 心不全症状を和らげる、血圧を下げる、不整脈を抑えるなどの目的で使います。逆流そのものを治すわけではありません。
③ 弁を治す治療 重症の場合、外科手術(弁形成術・弁置換術)またはカテーテル治療(経皮的僧帽弁修復術:例 MitraClip、PASCALなど)で治療します。

弁を治す3つの方法

僧帽弁閉鎖不全症の3つの治療法を示す図
図4 僧帽弁閉鎖不全症の3つの治療法。患者さんに合わせて選びます

どの治療がよいかは、逆流の原因(一次性か二次性か)・年齢・全身の状態・弁の形などを総合して、ハートチーム(循環器内科医・心臓外科医・麻酔科医など)で慎重に決定します。

カテーテル治療の選択肢が広がっています

これまで外科手術が難しいとされていた高齢の方や、心臓の機能が低下している方にも、経皮的僧帽弁修復術というカテーテル治療が広く行われるようになってきました。足の付け根から細い管を通して、僧帽弁の真ん中をクリップでつまみ、逆流を減らす治療です(代表的な医療機器として、MitraClipやPASCALなどがあります)。

外科手術と比べて体への負担が少なく、入院期間も短いのが特徴です。ただし、すべての患者さんに適しているわけではなく、弁の形や逆流の状態によって適応が決まります。

※ 経皮的僧帽弁修復術については、別の回で詳しく解説する予定です。

06大切なメッセージ ― 「無症状でも治療を検討する」場合があります

僧帽弁閉鎖不全症で大切なのは、症状がなくても、定期的に心エコー図で経過を見ることです。

なぜなら、症状が出るころには、すでに 心臓が拡大して元に戻りにくい状態になっていることがあるからです。最近の医学の流れでは、無症状でも、心エコーで心機能の低下や心房の拡大が進んでいる場合には、治療を検討するという考え方が広まってきています。

「症状がないから大丈夫」ではなく、「症状がないうちに、心臓の状態をきちんと診てもらう」。これが、僧帽弁閉鎖不全症と上手に付き合う鍵です。

07最後に ― 健診の心雑音を見過ごさないで

僧帽弁閉鎖不全症は、長い間症状が出にくく、健診の心雑音で偶然見つかることが多い病気です。だからこそ、早く見つけて、定期的に経過を診てもらうことが、長く元気に過ごす鍵になります。

「健診で心雑音を指摘された」「以前、僧帽弁の逆流があると言われたが、しばらく病院から離れている」――そんな方は、お気軽にご相談ください。当院では心エコー図検査による正確な評価を行い、必要に応じて連携病院での治療もスムーズにご紹介いたします。

NEXT WEEK

第4回 三尖弁閉鎖不全症(逆流症) ― 近年注目されている弁膜症

来週は、長らく「忘れられた弁」と呼ばれてきた三尖弁の逆流について、原因から最新の治療まで、やさしく解説します。

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CLINIC INFORMATION

当院について

えぷろんクリニックは、姫路市飾磨区にある循環器内科・呼吸器内科・内科のクリニックです。これまで地域に親しまれてきた「田中クリニック」の理念を引き継ぎ、2025年12月より新たな名前で診療を続けています。

  • 循環器専門医と呼吸器専門医の両方が在籍し、息切れや動悸の原因を総合的に診断します
  • 院内に心エコー図・心電図・血液検査・呼吸機能検査などを備え、必要な初期検査を当日に行えます
  • 兵庫県立はりま姫路総合医療センター・姫路医療センターなどと連携し、入院・手術が必要な場合もスムーズにご紹介します
  • 院長は兵庫県立はりま姫路総合医療センターでも診療を行っており、心不全外来・地域連携にも携わっています
  • 在宅酸素・人工呼吸器対応や終末期ケアを通じて、ご自宅での療養も支えています

診療理念

「心に寄り添い、信頼される医療の提供」

医学的根拠に基づいた正確な医療を提供しつつ、患者さまとの信頼関係を大切にした診療を行っています。患者さまと丁寧に向き合い、納得いただける治療方針を共に考え、地域の皆さまにとって 「いつでも相談できる、安心できる存在」 となれるよう努めています。

夏季休業のお知らせ

平素より当院をご利用いただき、誠にありがとうございます。

誠に勝手ながら、8月17日(月)〜8月19日(水)は夏季休業とさせていただきます。

患者さまにはご不便をおかけいたしますが、何卒ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。