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慢性心不全ってどんな病気?― 検査・治療、そして毎日のセルフケア(後編)―

第 14 回心臓の病気について

慢性心不全ってどんな病気?
― 検査・治療、そして毎日のセルフケア(後編)―

前編では「心不全とは、心臓というポンプが弱って水分がたまる“状態”」だとお話ししました。後編は、その先――どう調べ、どう治療し、毎日どう付き合っていくかです。
近年、心不全のお薬は大きく進歩しました。でも、いちばんの主役は、じつは “あなた自身の毎日” です。ゆっくりご一緒しましょう。

えぷろんクリニック 松尾院長の弟子、ドクター・エプ子です。

このブログでは、診察室では時間が足りなくてお伝えしきれないことを、できるだけ専門用語を使わず、ゆっくりお話ししていきます。どうぞお気軽にお付き合いください。

01どうやって調べるの?

心不全の診断は、まず 診察 から始まります。足のむくみ、肺の音、首の血管の張りなどを診て、水分のたまり(うっ血)の様子を確かめます。そのうえで、いくつかの検査を組み合わせます。

  • 血液検査(BNP)心臓への負担を示す数値です。高いほど心臓が無理をしているサイン。経過を見るのにも役立ちます。
  • 胸部レントゲン:肺に水がたまっていないか、心臓が大きくなっていないかを確かめます。
  • 心電図:脈の乱れや、過去の心筋梗塞のあとなど、背景を調べます。
  • 心エコー図検査(第6回):超音波で心臓の動きを見る、いちばん大切な検査です。ポンプの力(縮む力)を測り、前編でお話しした 2つのタイプ(縮めない/ふくらめない)の見分けもできます。

心不全の検査の中心は 心エコーです。当院(兵庫県姫路市・えぷろんクリニック)では、心電図・胸部レントゲン・血液検査・心エコーを 当日に行える体制を整えています。気になる息切れやむくみは、まずご相談ください。

02治療の全体像 ― 3つの柱

心不全の治療は、3つの柱を組み合わせて進めます。どれか一つではなく、3つがそろってこそ、力を発揮します。人によって、重点の置き方は変わります。

心不全治療の3つの柱。お薬、セルフケア・リハビリ、原因への治療が日常を守り再入院を防ぐことを示した図

図1 お薬・セルフケア/リハビリ・原因への治療。この3本の柱がそろって、はじめて日常を守れます

03お薬 ― 2つの役割

心不全のお薬には、大きく 2つの役割 があります。むずかしいお薬の名前は覚えなくて大丈夫。「何のためのお薬か」を知っておくと、続けやすくなります。

  • ① 症状をやわらげるお薬:代表が、余分な水分を体の外に出すお薬(利尿薬)です。たまった水分(うっ血)を減らし、息切れやむくみを楽にします。前編でお話しした“水のたまり”を、直接減らしてくれるお薬です。
  • ② 心臓を守る・長持ちさせるお薬:弱った心臓の負担を減らし、悪化や再入院を防ぐためのお薬です。近年この分野は大きく進歩し、何種類かを組み合わせて使うのが標準になりました。

心不全のお薬の2つの役割。余分な水分を出して症状をやわらげる役割と、心臓を守り長持ちさせる役割を示した図

図2 お薬には「症状をやわらげる(水を出す)」役割と、「心臓を守り、長持ちさせる」役割があります

進歩する、心不全のお薬

「心臓を守るお薬」は、この数年で大きく進歩しました。たとえば、もともと糖尿病のお薬だったものが、心臓や腎臓も守るとわかって加わる、といった新しい流れもあります。

どのお薬を、どれくらい、どんな順番で組み合わせるかは、心不全のタイプ・原因・ほかの病気などによって 一人ひとり変わります。主治医が、あなたに合わせて少しずつ調整していきます。

自己判断でお薬をやめないことが、とても大切です。とくに「心臓を守るお薬」の中には、急にやめると心不全が悪くなるものがあります。飲み忘れが続いたり、やめたくなったりしたときは、その前に必ず主治医にご相談ください。

04毎日のセルフケア ― いちばんの薬は、あなた自身

ここが、心不全と長く付き合ううえで いちばん大切なところです。お薬と同じくらい、ときにはそれ以上に、毎日の過ごし方が心不全を左右します。むずかしいことはありません。次のことを、こつこつ続けるだけです。

毎日の体重測定 ― いちばん身近な“検査”

心不全のセルフケアの主役は、体重計です。体重の急な増加は、体に水分がたまってきたサイン。前編でお話しした「うっ血」に、症状が出る前に気づける、いちばん早い方法です。

毎日の体重の記録グラフ。数日で急に体重が増えたときが水分のたまりのサインであることを示した図

図3 毎朝、同じ時間・同じ服装で体重を。数日で2〜3kg増えたら、水がたまってきたサインです

  • 体重測定:毎朝、トイレのあと・朝食前など、同じ時間・同じ服装で測り、記録を。数日で2〜3kg増えたら、早めにご連絡を。
  • 塩分は控えめに:塩分は体に水分を呼び込みます。うす味を習慣に。
  • お薬をきちんと:飲み忘れは、悪化のいちばんの引き金です。
  • 禁煙・節酒:心臓の負担を減らす、大切な習慣です。
  • 感染を防ぐ:かぜやインフルエンザ、肺炎は心不全を悪化させます。手洗いや予防接種も、心臓を守る一手です。

体重計は、おうちにある いちばん身近な“検査機器”です。毎日の小さな記録が、悪化を早く見つけ、入院を防ぐ大きな力になります。「最近ちょっと増えたかも」――その気づきを、遠慮なくお持ちください。

05心臓リハビリ ― 「動かない」より「上手に動く」

ひと昔前は、「心臓が悪い人は、安静がいちばん」と考えられていました。でも今は違います。専門家の指導のもとで、無理のない運動を続けることが、かえって心臓の働きを助け、再入院を減らすことがわかっています。これを 心臓リハビリテーション といいます。

ただし、自己流の運動は禁物です。どのくらいの運動が適切かは、一人ひとり違います。必ず主治医や専門スタッフと相談しながら、少しずつ進めていきましょう。

06おおもとを治す ― 原因への治療と、進んだ治療

前編でお話ししたとおり、心不全は、さまざまな心臓の病気が行き着く “合流点”です。ですから、おおもとの原因を治すことも、とても大切です。狭心症や心筋梗塞が原因なら血管を広げる治療(第10・11回)を、弁膜症が原因なら、弁そのものを治す治療を検討します。

また、お薬でも症状が十分に改善しない重い心不全には、心臓の動きのタイミングを整える特殊なペースメーカー(CRT)や、危険な不整脈から命を守る機器(植込み型除細動器・ICD)といった治療が選択肢になることもあります。いずれも 専門的な検査のうえ、主治医の判断で、専門施設 で行われます。

とくに、心臓の“ドア”である弁の不具合(弁膜症・第1〜5回)が心不全のおおもとになっている場合、息切れやむくみといった症状が出て、お薬だけでは足りなくなったときには、弁そのものを治す治療が大きな助けになります。次回からは、その 弁膜症の治療 についてお話ししていきます。

07最後に ― ひとりで、抱えこまないで

慢性心不全は、お薬・毎日のセルフケア・原因への治療を組み合わせ、悪くなるサインに早めに気づいて手を打っていけば、日常を守りながら、長く付き合っていける病気です。むずかしく考えず、まずは「毎日の体重を測る」ことから始めてみてください。

そして、どうか ひとりで抱えこまないでください。息切れやむくみに困ったとき、退院してきたあと、お薬のこと、生活のこと――えぷろんクリニックが、そばで一緒に見守ります。心不全を専門とする院長のもと、大きな病院とも連携しながら、あなたの毎日をお支えします。当院(兵庫県姫路市・えぷろんクリニック)で、いつでもご相談ください。

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第15回 弁膜症の手術(外科治療)― 心臓の“ドア”を、治す・取り替える

次回からは、心不全のおおもとにもなる「弁膜症」の治療編。まずは外科手術について、どんなときに検討し、弁を「治す(形成)」のか「取り替える(置換)」のかを、やさしくお話しします。

えぷろんクリニックのご案内

CLINIC INFORMATION

当院について

えぷろんクリニックは、姫路市飾磨区にある循環器内科・呼吸器内科・内科のクリニックです。これまで地域に親しまれてきた「田中クリニック」の理念を引き継ぎ、2025年12月より新たな名前で診療を続けています。

  • 循環器専門医と呼吸器専門医の両方が在籍し、息切れや胸の症状の原因を総合的に診断します
  • 院内に心エコー図・心電図・血液検査・呼吸機能検査などを備え、必要な初期検査を当日に行えます
  • 兵庫県立はりま姫路総合医療センター・姫路医療センターなどと連携し、入院・手術や精密検査が必要な場合もスムーズにご紹介します
  • 院長は兵庫県立はりま姫路総合医療センターでも診療を行っており、心不全外来・地域連携にも携わっています
  • 在宅酸素・人工呼吸器対応や終末期ケアを通じて、ご自宅での療養も支えています

診療理念

「心に寄り添い、信頼される医療の提供」

医学的根拠に基づいた正確な医療を提供しつつ、患者さまとの信頼関係を大切にした診療を行っています。患者さまと丁寧に向き合い、納得いただける治療方針を共に考え、地域の皆さまにとって 「いつでも相談できる、安心できる存在」 となれるよう努めています。

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夏季休業のお知らせ

平素より当院をご利用いただき、誠にありがとうございます。

誠に勝手ながら、8月17日(月)〜8月19日(水)は夏季休業とさせていただきます。

患者さまにはご不便をおかけいたしますが、何卒ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。